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冒険者アル  作者: テステス
4章 Cランクの世界
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背水の要塞と、蕾を穿つ牙

防衛線の背後――すり鉢状の地形の底では、チャックたち『風の犬』による決死の猛攻が続いていた。


チャック「削り切れ! 外殻を引っぺがせ!」


チャックの振るう大剣が、分厚い肉のような蕾の外皮を豪快に叩き切る。そこへすかさず、彼らのパーティの魔術師が灼熱の炎弾を撃ち込んだ。鼓動を早める『蕾』から黒い樹液が噴き出し、森全体を揺るがすような悍ましい悲鳴が轟く。


その断末魔に似た咆哮は、周囲の魔物たちをさらに狂暴化させた。

入り口を塞ぐアルたちの前衛に、痛覚を失った魔物たちが自らの身体を弾丸のようにして突っ込んでくる。極度の消耗により、ついにガンテツの盾の端から一匹の『狂乱のグレートボア』がすり抜けた。


ザイン「あ……っ!」


聖水を撒き尽くし、祈りの言葉すら途切れていたザインに、巨大な牙が迫る。魔法を放ち終えたばかりのセシルも、体勢を崩したミラも間に合わない。誰もが最悪の事態を覚悟した瞬間――アルの身体が動いた。


アル「やらせるかぁっ!!」


アルは泥に沈みかけていた足を引き抜き、スパイクをガンテツの構える大盾の縁に深々と食い込ませた。

強靭な盾を跳躍の踏み台にし、ブーツのグリップ力で生み出されたバネを全身に乗せる。空中に躍り出たアルは、そのまま落下する体重と槍の刺突を一点に集中させ、ザインの目前まで迫っていたボアの頭頂部を完璧に貫き通した。


ドスゥンッ! という鈍い音と共に、巨体がザインの足元で沈黙する。


ガンテツ「ガハハハ! 最高の踏み込みだぜアル! お前なら盾を踏むと思ったわい!」


アル「はぁっ……はぁっ……! 悪い、ガンテツ! ……ザイン、無事か!」


ザイン「お、おお……神よ……。アル殿、あなたのその泥だらけのブーツが、今だけは天使の羽ばたきに見えました……!」


死の淵から仲間を救い出した起死回生の一撃。極限状態でのその動きは、薄れかけていた仲間たちの目に再び強い光を灯した。


チャック「アル! よく耐えた!! 外殻は破れた、今から核を潰すぞ!!」


背後から響くチャックの歓声。ついに蕾の奥に隠されていた「瘴気の核」が剥き出しになったのだ。俺たちは最後の気力を振り絞り、再び槍と盾を構え直した。


サイドストーリー


ボアの死骸を前に、へたり込んだザインが震える手で法衣を握りしめていた。


ザイン「……不条理です。このような生臭い血の匂いの中で命を拾うなど。ですが……アル殿、この恩は必ず、私の最も清浄なる祈りでお返ししましょう」


ミラ「……チッ。泣き言の代わりに感謝の言葉が出るようになっただけ、少しは成長したじゃないか、生臭坊主。ほら、立つんだよ。終わるまでが防衛戦だ」


フィオ「♪~跳ねるワンちゃん、奇跡の槍! 泥だらけの英雄に、神様もびっくりさ!」


ミラの軽口とフィオの少し掠れた歌声に背中を押され、ザインはよろけながらも再び立ち上がり、最後の一滴となる魔力を杖に込めた。

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