裏路地の情報屋と甘い誘い
ギルドを出て宿に向かおうとした俺たちを、ミラが呼び止めた。
彼女は周囲を警戒するように視線を走らせると、声を潜めて提案してきた。
ミラ「……ねえ、ちょっと寄り道しない? 実は、この近くの裏路地に顔なじみの情報屋がいるんだ。ギルドを通さない『裏の仕事』なら、もっと実入りが良いかもしれないよ」
セシル「ギルドを通さない非公式な依頼か……。仲介料や代読料を引かれないのは魅力だけど、同時に命の保証も、報酬が支払われる保証もない。リスクが高すぎるよ」
アル「だけど、いつまでもネズミの尻尾を集めてるだけじゃ、ジリ貧なのは確かだ。……話を聞くだけならタダだろ。行ってみようぜ」
俺たちはミラの案内に従い、日の当たらない薄暗い裏路地へと足を踏み入れた。
路地の奥、木箱の上に腰掛けていたのは、顔の半分を布で覆った痩せた男──情報屋のルークだった。
ルーク「……おや、ミラじゃないか。今日は仲間連れかい? 随分と大所帯になったもんだな」
ミラ「無駄口はいいから、何か割の良い仕事はないの? アタシの取り分が弾むやつをね」
ルークは俺たちを値踏みするように一瞥すると、しゃがれた声で笑った。
ルーク「あるぜぇ。ギルドには出回ってない、とっておきのヤツがな。……街の西にある『古い墓地』の様子を見てきてほしいって依頼だ。最近、夜な夜な不審な影が出入りしてるらしくてな。ただの盗掘者か、それともアンデッドか……見てくるだけで銀貨2枚出すってパトロンがいるのさ」
アル「見てくるだけで銀貨2枚……!? 今日のドブさらいよりずっと割がいいじゃねぇか」
ガンテツ「ガハハ! 盗掘者だろうが骸骨だろうが、わしの盾でぶっ飛ばしてやるわい! 美味い話じゃねぇか!」
セシル「……待ってよ。明らかに相場がおかしい。ただの偵察で銀貨2枚なんて、裏があるに決まってる。依頼主の素性も分からないし、罠の可能性が極めて高いよ」
ザイン「おやおや、アンデッドですか。彼らは神の言葉に耳を貸さない厄介な『汚れ』です。私の神聖なる祈りをもってしても、浄化には骨が折れますよ。……もっとも、銀貨の響きは悪くありませんがね」
サイドストーリー
俺たちが情報屋と話している間、路地の入り口で野良猫がゴミ箱を漁る音がした。
ふと見ると、ミラがそっと猫のそばにしゃがみ込み、自分のポケットからパンの欠片を取り出して与えていた。
ミラ「……ほら、食いな。お前も生きるのに必死だろ」
アル「お前、猫なんかに構ってる余裕あるのか?」
ミラ「うるさいね。これはアタシの自由でしょ。……それに、こういう路地裏の猫は、時々思いがけない道や隠し場所を教えてくれることもあるんだよ。損して得取れってやつさ」
ミラは猫の顎を撫でながら、そっぽを向いて小さく舌打ちをした。




