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第22話 神舞・パラパラ

『ではまず手始めに』


 オルベスを守るかのようにブワッと銀糸の竜巻が吹き上がり、あたり一帯を切りつける。

 銀糸に乗って回転する視界から、フラギルはチラとオルベスの方を見、自分の姿を見た。


『しかし、このままではただのスライムだ。かといって人間の姿を真似るのも異質だとして見られかねぬし……』


 銀色の肌をした人間はフラギルの記録にはなく、どうしたものかと考えていたが、その時、迷宮でゴーレムを撃破した時に使用した蝿頭フォームがフラギルの頭をよぎった。


『これだ』


 その声と共に散っていた銀糸がオルベスの前に収束し、一体の人型を形成した。


「な……」

『『『おぉ』』』

 

 ザッ、と地面を踏みしめる脚は甲虫のように刺々しく、力強く広げられた腕は二本の甲虫の脚が絡まりあったかのような意匠であり、腹には虹色に輝く雫型の巨大な宝玉が鍬形虫の大顎を模したフレームに挟み込まれて、燦然さんぜんと輝いていた。そしてその体の上に乗っかっている蝿頭フォーム。


『ふむ』


 フラギルは胸から生やした金属質の羽をカチャリ、と揺らしながら満足そうに自身の体を見回した。


「ギシャアーーー!!」


 すこぶる異質な雰囲気を纏うフラギルの威圧感に負けたのだろうか。一体の蟲兵が剣を振り上げ、狂乱の相を見せながら跳躍してきた。

 しかし、振り返ったフラギルの裏拳の一撃に微細なちりになるまで粉砕され、その体液がもやのように空に溶け込み、返り血すらそのフラギルの鈍色に輝く体に触れることができなかった。


『これなら害を成そうとした者たちとは違うと分かるだろう』


 二、三度フラギルは自身の三本指の手を開閉させてそう言った。

 蟲兵達の指は4本、対してフラギルの指は3本。他にも細かいところが蟲兵達とは違うのだ。何よりも腹にこんな宝玉はない。フラギルはそう考えながら、オルベスの方を再度見やった。


『これ、よく見ないと前方の蟲人とあまり大差ないと分からないんじゃ……?』

『言った方が良いじゃろ』

『主がお決めになったことです。黙っておきましょう』


 しかし、フラギルの中では人間側での視点から見たフラギルの外見に対する懸念が指摘されていた。

 腹に輝く虹色のコア以外は、遠目から見れば蟲兵達とあまり違いがないように見える。せいぜい希少種か何かで片付けられる程度の違いでしかなかった。

 ペルギムとゼルはフラギルにそのことを伝えようとしたが、ティナの言葉でひとまず静観することに決めた。


「あ、新手の蟲人族……」


 そして残念なことにやはりオルベスは、目の前に突然出てきたフラギルのことを蟲人族であると思っていた。さらに強いて言えば敵、それもかなり強い敵ではないかと認識していた。


「ぐっ……」


 ギリギリとオルベスの歯が食いしばられ、その胸にオルベスの傷付いた右手がのびる。

 フラギルはオルベスの感情がさらに不味くなったことを感知したが、せいぜい自分が頼りなく見えたのだろう、そこで倒れている騎士が装備している鎧のようにすべきだったか、という程度にしか考えなかった。むしろオルベスの感情をさらに不味くさせた蟲兵たちへの敵性認識を、焔へたきぎをくべるかのように轟々と引き上げた。


『不快の原因を排除する』


 フラギルが一歩を踏み出した。


「「「「「ーー!?」」」」」


 蟲兵達は大海が割れるかのようにフラギルの前から飛び退き、フラギルの歩みを邪魔しなかった。

 フラギルはその道をカチャカチャと体を揺らしながら、モーリスの盾に向かって歩いていく。

 そこでは沢山の蟲兵達がまだ、ボロボロになった盾を袋叩きにしていた。


『邪魔だ』


 フラギルが腕を振り抜き、蟲兵達を吹き散らす。盾に夢中になっていた蟲兵達は破裂音と共に、悲鳴すらあげることを許されず霧散した。

 

『ちょうどいい』

 

 フラギルは挑発を発動したままボロ雑巾のようになった盾を拾い上げて喰らい付き、咀嚼音も何もなくスッと消えるように吸収して俯き、そのまま沈黙してしまった。


「「「「「……」」」」」

「仲間を殺しただと……」


 周囲の者達はフラギルに注目し、フラギルのいる一帯が沈黙に包まれた。

 遠くから剣と剣がぶつかりあうような音が聞こえてくる。

 オルベスにはこの沈黙の時間が永遠にも思えた。しかし、実際の時間は1秒にも満たない。


「「「「「キャ!?」」」」」 

「うぅッ!?」


 フラギルから眩いばかりの光が放たれ、フラギルを注視していた者の目を白に塗りつぶした。

 オルベスは攻撃だと思って即座に剣を構えたが、地を砕くような光線も、構えた大剣ごと折り飛ばすような衝撃もなかった。

 その代わり。


「「「「「ギシャァーーーーーー!!」」」」」

「な!? 蟲兵の様子が!?」


 フラギルの光に吸い寄せられるかのように、蟲兵達が津波のごとくフラギルへと突撃していった。さらにここら一帯の蟲兵だけでなく、別の区画をに攻め込んでいた地上部隊や空から撃ち下ろして、人間軍に多大な損害を与えていた飛行蟲部隊までも引き寄せていた。

 フラギルが盾の挑発術式を解析し、使用したのだ。

 そんなフラギルが蟲兵達を引き連れて城壁の外へと走っていく。それを追う蟲兵達の群れは、まるでニンジンを鼻先にぶら下げられた馬のようであった。

 そして何層にも重なった全ての城壁を走り抜けた後、フラギルは急に反転し、その跡を追ってきた蟲兵の大群の中に突っ込んだ。

 蟲の甲殻が裂け、肉が弾け飛ぶ音が機関銃のように響く。

 そしてその大群を正面から突き抜けたフラギルは地面に着弾し、地面に手をついてこう言った。


「<城壁パンデラ>」


 瞬間、ズドォォォォ!と地響きを上げながら、宙に残る穴の空いた<聖大神堂ホーリー・カテドラル>を埋めるかのように土壁が作り上げられた。

 そしてその壁の上に乗ったフラギルは間髪いれずにーー。


「ーー<威砲アーブラス>」


 光線を放った。


 ーー下に。


 しかしその光線は足元の壁を壊すことなく、差し込まれたフラギルの両腕に巻き取られていった。


『プゥルルルLLLLLLLLLLLLLLLワァァア!!』

『『『……』』』


 中の三人が見守る中、フラギルは腹のあたりで交差した両腕を糸巻きのようにギュワンギュワンと高速回転させ、その腕の中に巨大な光を生成していった。


「ーー死ぬがよい」


 その一言でフラギルの交差した両腕がピッチングマシーンと化したかのように開かれ、超速回転する手に射ち出された光球はロケット花火も真っ青の弾数、光量を撒き散らしながら、尾を引いて蟲軍を絨毯じゅうたん爆撃した。


「「「「「ギャアァァァ!?」」」」」


 チュドドド、と地面が穿たれ爆炎が壁を揺らす。

 爆光に照らされたフラギルの姿は、まるでユーロビート調に乗ったパラパラを踊っているかのようであった。


『『Partyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyyy!!』』

『どうしたのじゃお主ら!?』


 爆発音と共に舞い上げられた剣が、光を反射してペンライトのようにキラキラと光った。


『『OHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHH!!』』


Da⭐︎i⭐︎su⭐︎ke







































(権利的にマズイようでしたら即座に消します)

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