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第13話 ⭐︎変⭐︎態⭐︎復⭐︎活⭐︎

 話は、勇者パーティーが魔蟲の長を打倒し、帰途についた所まで戻る。


「ヒエェ〜勇者様も無茶苦茶にやるもんだぜ全く」

 

 そう腰に手を当て言ったのは、ガイウス卿に長の死体処理と山付近の安全確保のために残された、軍の兵士のうちの1人であった。


「全くだぜイジョー!!あぁ良いなあ・・・勇者様方は帰ったら王宮でパーティーなんだろ?」


 そう言って、その兵士の愚痴に反応するもう1人の兵士。


「そうだニラース!都に戻ったらお前、酒奢ってくれよ!確か、奥さんがもうすぐ出産なんだろ?くぅ〜!可愛い女の子嫁にもらってよぉ〜!羨ましいぞこのこのー!」

「お前は酒が飲みたいだけだろ、サンガ!!」


 そう言って愚痴を漏らした兵士の脇腹を、別の兵士が肘で突くが、兜に手刀を喰らう。


「・・・俺は娘と喧嘩したから、帰ったら何か甘いものでも買ってやるか」


 イジョーと呼ばれた兵士が空を見上げて、ボソッと呟いた。

 すると、その3人の兵士たちの後ろから影がさした。


「はっはっは!!長が討伐され、国を揺るがす脅威は去った!!実にめでたい日よ!!だが、手は動かせよ?もたもたしていると出産に立ち会えなくなるぞ!!良いのか?」

「「カイドーラ隊長!?」」


 髭を生やした筋肉質の男が、3人の兵士たちの背中をバンバンと叩く。

 そして、大きな声で言った。


「さっさと回収しろ!!長の死骸回収に携わる名誉は、今後語り継がれるものである!!つまーり!!この仕事が終わったあと、酒場で自慢するもよし!村で自慢するもよし!女の子を口説く時に使うもよしだ!・・・もしかすると、それが決め手になるかもしれんな!!」


 隊長の話に兵士全員が耳を傾けていた。そして・・・


「「「「「「「「「「ウオォォォォオオオオオ!!!!!!」」」」」」」」」」


 山がビリビリと震えるほどの雄叫びが上がった。


 隊長の演説より後の兵士の仕事効率は、圧倒的であった。

 勇者の聖剣により半壊していた山は幾分か、なだらかになり、そこらじゅうに散乱していた瓦礫も撤去された。

 何日もかかると予想されていたが、一日で終わってしまう程の勢いであった。

 ・・・きっと愛国心のなせる業なのであろう。




ーー夕日が赤く、隊長の鎧兜を照らす。


「よーし! あとは長の死骸の回収だけだ。皆よく頑張ったな! これが終われば、軍から酒の提供があるぞ!」

「あれ?ということは・・・?」

「フッ、察しが良いでは無いか! そう、勇者様方は明後日の朝からパーティーである! つまり、我らの方が勇者様に先駆けて、宴を開くことができるのだ!! サンガ、よかったな。今日もタダ酒が呑めて!!」


 そう言ってガッハッハと隊長が大笑いする。

 兵士たちは皆ソワソワし始めた。


「では皆! 最後の一仕事だ!」

「「「「「「「「「「応ッ!!」」」」」」」」」」


 そう言って、兵士全員が長の死骸の周りを取り囲む。


「しっかし、デカイなぁ・・・この芋虫。切り裂かれているとはいえ、今にも動き出しそうだぜ」

「おいおい・・・。本当に動き出したらどうすんだよ」

「もし動き出したら、子供が生まれてくるニラースが真っ先に死ぬかもな」

「縁起でも無いこと言わないでくれ・・・」


 そう喋りながら、3人も死骸を取り囲む。


「総員!!縄を長にかけろ!!きつく縛れよ!!」


 隊長の声が響く。


「ほらな、大丈夫だったろ? 生物なんて、真っ二つにされたら死ぬもんだぜ? ホレホレ。」


 そう言ってサンガが背を向けながら後ろ手で、ペチペチと長の体を叩く。


ーーボッ!!


 そう、何かが破裂する音がした。


「あれ・・・俺の腕・・・?」


 サンガはつい、と言ったふうに目線を腕のあった方に向けた。


「あぁ・・・あああぁぁぁ!?」


 ドチャ、と肉塊が空から落ちてきた。

 それと同時に、長の死骸が光り輝き、縄が弾け飛んだ。


「全員戦闘体制!!抜剣せよ!!」


 隊長の判断は早かった。


ーーピキ、ピキキッ


 サンガの絶叫を背景に、その光の繭を破るような音がした。

 そして目が眩むような光が放たれ、兵士全員が目を逸らした。

 死骸から漏れ出る光に目が慣れた兵士たちが、長の死骸から出てきた何かを認識する。

 それは、ヘラクレスオオカブトが二足歩行を始めたら、このような姿になるのではないか?という姿であった。

 しかし、芋虫の時には無かった凶々しく、トゲトゲとした外装甲。その色は毒々しいまでの緑であり、太陽の光に反逆するかのように、テラテラと輝いていた。そして、噴火でも起きたのではないかと錯覚するほどのオーラを放っていた。その姿、まさに凶悪。 

 威圧の波動を放つ主が、兵士たちを睨む。


「ーーふむ、幼体であったとはいえ、勇者ごときに負けるとはな・・・。まだまだ未熟、時期尚早であったということだな。」


 そう言って、紅いボールのようなものを放り投げた。


「「サ、サンガァァァ!?」」


 それはサンガの首であった。

 コロコロ、と紅い線を引きながら兵士の足先まで転がる。


「ーーまあ良い。準備運動くらいにはなるだろう。」


 そう言って、長は、ユラリと体を動かした。


「〜ッ!! 全員密集ッ、防御陣形ィーッ!!」


 隊長が焦りを孕んだ声で、兵士全員に指示を下す。

 仲間の死のショックによる、兵士の恐慌を抑えるため直ちに命令を発したのは、さすが隊長というところだろう。

 兵士たちは後ろに背負っていたカイトシールドを持ち、ガシャン!と密集陣形を組む。

 まさに、砦もかくやというほどの陣形であった。

 しかし・・・


「ーーフン。下策だな。」


 長は全身に風を纏い、体を捻りながら四本の手で螺旋を作るが如く、盾で作られた城壁に突撃した。


「うわあァァァ!?」

「ぎゃアァァァ!!」


 盾を構えていた兵士たちは、風で細切れにされ、4本の腕で無理矢理押し除けられ、舞い上がった。

 そして吹き飛ばされても無事だった兵士たちを


「がッ!」

「ぺぴゅッ!」

「ぐほぉ!」


纏っている風が赤くなる程丁寧に、一人ずつ長は殺していく。

 さっきまで笑い合っていた兵士たちが、鞠かお手玉のように吹き飛ばされるのを、他の兵士たちは見る事しかできなかった。

 しかし・・・


ーーガコキィィィン!!


 拳と剣がかちあう音がする。

 隊長が剣を抜き放ち、長へと向かって行ったのだ。


「ヌグッ・・・。」

「た、隊長・・・。」

「ーー行け!!都に戻って勇者様方を呼んでくるのだ!!ここは私が引き受ける!!」

「ほう?少しは骨のありそうな奴がいたものだ。せいぜい壊れてくれるなよ?」


 そう言って二人は、何度も剣と拳をギャリギャリと交差させる。

 剣圧と拳圧が二人の周りに、凄まじい衝撃波を発生させた。


「ヒィィィィ!?」


 兵士たちは隊長の言葉に従い、逃げ出した。




ゴギィン!



 何度打ち合っただろうか。

 隊長の鎧はボロボロで、肌が見えている箇所もあった。

 単純に隊長は、腕の数から来る手数で負けており、技量も長の方が遥かに上回っているのである。


「オォっ!!喰らえェーッ!!」


 周りに人がいなくなったため、技の威力を気にする必要がなくなったのだろうか。

 隊長は赤く染まった髭を振り乱し、剣を振り上げ、その剣を眩く光り輝かせる。


『剛だ・・・』


 しかし、隊長が何か技を放つ前に


ーーゴパァ


 隊長の見事な髭を蓄えた顔が、消し飛んだ。

 ドッ、とその場に倒れ込む隊長だった肉塊。

 光の散ってしまった剣が、カランと音を立てて血の海に落ちた。


「あぁぁッ!?」


 その光景を二ラースは走りながら見てしまい、尻もちをついてしまう。

 ーーそれは幸運だったのだろう。


「散り散りに逃げる兵士・・・か。なるほど面倒だ。<空割>」


 そう言って長は、一本の手をゆるりと上げ、水平に振った。


「「「「「ぎゃあァァァ!?」」」」」


 次の瞬間、二ラースただ一人を残し、兵士全員の上半身と下半身が泣き別れした。

 二ラースには、透明な刃が頭の上を轟と、通り過ぎたように感じられた。

 腰を抜かしたニラースの顔に、誰とも知らない血が降りかかる。

 思わず、といった風に手で拭う。


「あ・・・あぁ?」


 ふと目線を上げると目の前には、腰を抜かして動けないでいるニラースを、覗き込むように見つめる長がいた。

 背中で開かれた翅は透き通るように美しくピン、と伸ばされ、外装甲はキラキラと輝き、血に染まった部隊員を映し出す。

 外装甲は、体を折り曲げる邪魔にならないように、折れ曲がる部位の間には伸縮性の装甲を繋ぎとして、胸の装甲を含めると、見事なシックスパックとなっている。

 そしてその中央に妖しく光る宝玉。

 その異様な姿は、この世界から明確に浮いて見えた。


「い、嫌だ!」


 長の金色に光る複眼に睨まれた、ニラースが叫ぶ。


「俺には帰りを待っている妻が!子供がいるんだ!こんなところで・・・我が子の顔も見ずに死ねるかァァァ!」


 ズリズリと懸命に腕を使って、地を這う。

 腰が抜けた状態で這ってでも逃げようとする姿は、無様の一言で片付けられないほどの信念が宿っていた。

 そんな二ラースの肩を、長はガッシリと掴む。


「ヒッ、ヒィィィ!?」

「怯えるな。怯えるなよ、ニンゲン」


 そう言ってニラースを軽々と掴み上げ、目線を合わせて言う。


「夫が無事に戦場から帰ってくるのを待つ妻の気持ちを、我は理解しているつもりだ。・・・何処にでも行くが良い。だがな、勇者にはこう伝えよ。『我の名は魔蟲皇サバニキス。我は復活し、この世界に今一度、宣戦布告する』と・・・行け」


 そして、用は終わったと言わんばかりにニラースを掴んでいた手を離した。

 地面にドサリ、と落ちたニラースは


「ありがとうございます!!ありがとうございます!!」


と、何度も壊れてしまった機械のように叫びながら、走っていった。

 走り去る兵士の姿を見て、長は首を傾げる。


「ふーむ・・・特段情けをかけた訳ではないのだがな」


 そう言いながら、粉砕した兵士たちの元に歩いて行き、


「やはり、戦いには数も必要だからな」


 ブツブツ言って、その死体のそばで両手を掲げ、詠唱した。


「<魂蟲葬列軍セクト・センチネル>」


 すると、死体の中から、カナブンのような甲虫が出てきた。

 そして瞬く間に、面影を残した成人男性ほどの鎧姿となる。

 ご丁寧にも皆、腰には剣を、片方の手にはグレイブらしき槍を装備していた。

 山の麓を埋め尽くさんばかりの兵士たちを見たサバニキスは、満足そうに頷く。


「よし、ここに主城を建てる。皆の者・・・かかれ」

「「「「「「「「「「ビギィィィィィ!!」」」」」」」」」」


 山をビリビリと揺らす雄叫びの大合唱。

 ・・・どうやら宴は始まったばかりのようである。


死亡フラグを折っていく長ェ・・・。


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