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秘密の軍事学校でニートが改心します  作者: ryuu
第1章 軍事学校
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力の発現

 明朝5時。

 いつものように学内訓練が始まり厳しい指導がびしばしと入っていく。

 俺も訓練にいそしんでみるもやはり昨晩の男のことが気にかかかって集中できない。

 あの少年は一体何だったのだろうか。

 最後の言葉は自分を憐れんで小馬鹿にしたような言い回しを吐き捨て消えていったがどういう意味を含んでる。


「おい、神咲辰也! 貴様ぼうっとして訓練に身が入っておらんぞ! 何をしてるんだ!」


 あいもかわらず訓練指導時が一番性格に難がある星姫大佐の喝のある言葉がかかった。

 考え事をしている場合ではない。

 腕立て伏せ2000回を行う最中であることを忘れてつい途中で止めてしまっていた腕を動かす。

 にしても、どのくらいまで行っていたっけ。

 昔ならば出来てもいない腕立て伏せを今では優にこなせるのだからこの学校の訓練は恐ろしいぜ。


「もう一度最初から数えなおしだ!」

「うぇ!?」

「なんか文句あるか!」

「サー、イエッサー」


 再度、言葉にしながら1から腕立てを始める。

 昨日のようにまた基礎だけで一日を終わらせるわけにはいかないぞ。

 少しばかりペースアップを行おう。

 ん?

 身体が妙に軽いぞ。


「おい、あれ?」

「やばっ、なんかおもしれぇー」

「つか、早くね。本人ぶれてみえるぞ」


 周りの視線とささやく声。

 なぜ、視線?

 ぶれてる?


「か、神咲。もういい! 十分だ!」

「え?」

「全員、次は障害物の匍匐走行を行う。移動しろぉ!」


 困惑したまま茫然と立つ俺の背中をぽんと誰かが叩いた。

 誰だろうと気にかけ後ろを振り返ってみるとそこにいたのは我がルームメイト神楽坂月である。


「あんたどうしたのよ? 突然そんな力つけちゃって。昨日まで至ってダメダメな訓練生だったじゃない」

「はぁ?」

「まさか、気づいてないの?」

「気づいてないって?」

「すごい速さであなたの体が上下に動いて腕立てして見えてたわよ。もう、きもち悪いくらいにね」

「なんだと?」


 だからか。

 視線を集めていた理由がわかった。妙に体が軽く感じたのもそれが原因何だろうか。

 でも、特に昨日は何もしていない。罰ゲームのような補習を行わされて挙句に妙な少年に襲撃を受けたくらいであるしなー。


「まぁ、今日は補修なしで終われそうでよかったじゃない。さぁ、行きましょう」

「あ、ああ」


 慌てて月の後を追いかけた。

 障害物の匍匐走行は軍事もの映画などを見たことある奴ならば誰もが知ってるだろうありきたりな障害物が配置されたのを匍匐前進だけで進んでいくという訓練方式だ。

 木でできたジャングルジムやら即席の川辺や不安定な岩づくりの坂道。

 他にもネットのようなものも貼られていたりしてそれすべてを匍匐前進でいくというのは無謀なことだろうが軍事訓練生になって数日経つと意外とできるようになるものなのである。

 俺もどうにかこうにかで最後まで到達できた。

 しかも、3着である。


「神咲、今日のお前はどうした? 昨日は夜まで何をしていた?」

「いえ、別に何も。星姫大佐に言われたとおりマラソンをしていただけですが……」

「……そ、そう」


 おもわず訓練指導員としての顔を忘れた彼女が素の声を出した。

 それがあまりにもおかしくって思わず笑ってしまうと鋭い眼光で睨まれてすぐにキリッとした精悍な顔に戻した。

 ――俺の後にも引き続いて訓練生がどんどんとゴールしていく最中に星姫大佐がもつトランシーバーにノイズ音が入る。どこからかの通信だ。

 非常事態以外にめったなことでは入ることはない。

 そのためか、彼女の顔も険しいものに変わりその場から離れていく。


「なにかしら?」

「さぁ?」


 俺よりも先にゴールをして能力訓練に移っていた月が後ろから自分の姉が通信する光景を気にかけて聞いてくる。

 そんなことを聞かれて俺も困る。


「きゃっ」


 星姫大佐に気を取られてる時である。障害物レース側から女性の悲鳴を聞いて振り返ってみた。

 ジャングルジム、おおよそ10メートルくらいの高さから足を踏み外しただろう東条紗枝が落ち行く姿を目視で確認する。

 こういう事態を早急に教官が助けたりするが今教官はどこかと通話中で気づいてはいない。


「まずいわ!」


 月が走りだし、いつも紗枝と一緒いいる沙耶が彼女を助け出そうとその手を伸ばすも捕まえることができない。


「くそっ!」


 俺も見ていられずに地を蹴って駆けだした。

 そこで、初めて気づいた。月を追いぬいたその力。確実に自分が成長を始めてることに。

 あっというまに紗枝の落下地点に到着して彼女をキャッチした。

 ずとんという人の重みが来るが俺自身も彼女にも被害はなく済んだ。


「だ、大丈夫か?」

「あ、ありがとうございます」


 顔を真っ赤にしてこちらから視線をそらしてそそくさと俺から離れる彼女。

 あれ? 嫌われた?


「さっちん!」


 慌てる様に沙耶がジャングルジムから降りてきて彼女の体を抱きしめる。

 俺はその横で土ぼこりを払いながら立ちあがって一息ついた。


「いやぁー、あぶなかったなぁ」

「ちょっと、あんたどういう速さしてんのよ! さっきのもそうだし今のも……今まで私を抜かせたことなんてなかったのに急にどうしたのよ?」

「抜かせたなぁ―なんでだろうなぁーアハハ」


 脳天に乾いた音が響いた。

 地味に叩かれた。そして、地味に痛いぞこの野郎。


「いったいな! 何すんだっ?」

「まともに答えないからよ!」

「わからないからまともに答えないんだ。叩くことねぇだろうが!」


 騒々しくも彼女といがみ合ってると星姫大佐がなにかを叫んでいる。


「なんだ?」


 訓練生と全員して星姫大佐を見た。

 星姫大佐がやっと通話を終えて戻って来た。

 月が代表して彼女に向かって行く。


「星姫大佐どうしたんですか?」

「今日の授業はここまでです。各自、寮に戻って待機をしてください」


 は?

 突然の中断は何ぞや。


「何かあったのですか?」

「……いいですから各自寮に戻ることです。私はこれから管理長室に向かいますので」


 星姫大佐は例の指導員口調を変えて大佐に戻っていた。

 そのまま、顔面蒼白と言った冷静さを失ったように訓練場をあとにして去っていく。

 残された特殊能力を与えられた特異生徒は茫然としてその場に残されてしまった。


「いったい何だっていうんだよ……」

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