第十章 直接使用(三)直接使用
投稿をやめることも考えた。だけど、やっぱり読んでもらいたい。AI利用状況の区分を決めるしかない。
規程の文言の上では、間接利用が正解に近いと思う。
だけど、姉の場面での文冴クラウドの出力は、あまり覚えていない。本当は出力を見なくても書けたのなら、不使用だ。出力の影響で今のように書いたのなら、間接利用になる。無意識のうちに出力の文章をそのまま使っていたのなら、直接使用だ。どれを選んでも、正しいとは言い切れない。
人の小説を読んだ影響なら、こうはならない。申告の対象ではないし、気になれば、突き合わせて確かめられる。文冴クラウドの出力は、もうどこにも残っていない。
規程は、自分の書いた文の出どころを全部たどれることを前提にしている。瀬名彰久には記録が残っていたから、自分の原稿の出どころをたどれたし、裁判でも証明できた。
それなら、ルールは破ってない、と私はましろさんに書いた。あの一文はいまでも間違っていないと思っている。だけど私は、ルールは破ってない、と言えない。
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次の夜、また作品の設定の画面を開いた。AI利用状況の欄は、間接利用を選んだままになっている。
間接利用と直接使用の区分を付けた作品には、AI利用の表示が付く。不使用と補助的利用なら付かない。文なろの検索には、AI利用作品を除く、という条件もある。私も使ったことがある。AIが嫌いだったからではない。似たような作品が量産された時期があって、検索から外すために使った。
表示が付けば、検索からこの短編に来る人は減る。前から読んでくれている人にも、AI利用の表示が付いた作品を避ける人はいるだろう。間接利用のまま出せば、読んだ人を騙すことになるかもしれない。直接使用にすれば、読んでもらえなくなるかもしれない。
ましろさんは、ルールを破っていないと言われても嫌だとしか言えない、とエッセイに書いていた。どちらの区分を選んでも、その申告が事実かどうかは、誰にも確かめられない。
それなら、間違っていたときに誰の不利益になるかを考える。間接利用なら読んだ人で、直接使用なら私だ。
不使用、補助的利用、間接利用、直接使用の四つの丸が縦に並んでいる。直接使用の丸を選び直した。
この短編にはAI利用の表示が付くことになる。霜月書房に預けている原稿とは、別の作品だ。ただ、表示の付いた作品を公開すれば、AIを使って書く人だと見られるようになる。返事の来ないままの本の話に、影響するかもしれない。
――それでも、投稿のボタンを押した。
画面が切り替わって、投稿が完了しました、と出た。『姉は嘘をついていない』という題名の下には、AI利用作品の表示が付いている。私の作品にこの表示が付くのは、初めてのことだ。




