第十章 直接使用(一)過ぎた締切
第九話の改稿は、足す場面の方針を決めるところから始めた。残っていた半月は、ほとんどこの一話に使った。第十話から最終話までは、読み直して細かい直しをするだけで済んだ。締切の前日に、なんとか最後の場面まで書き終えた。
締切の日に、第七話から最終話までの改稿を早坂へ送った。直し終えた第四話から第六話も付けた。今後の進め方の連絡は、結局来ないままだった。もう来ないのかもしれない、とも思った。締切は、変更する連絡が来ていない以上、最初に決めた日付が生きていると考えて、そのとおりに送った。
返事は来なかった。受け取ったという一行も来ないまま、締切の月が終わった。
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金曜の朝、久しぶりに手記の新しい回が出ていた。
『第十七回。続けるかどうかは決めてから書くと前回書いたが、続けないことにした。
この連載は、積字TRACERがどういうものか、裁判で何を問われてどう答えたかを書くために始めた。確かめられることは、前回までで全部書いた。
『機械は書かない』は、これで完結とする』
瀬名彰久の連載は、それで終わりだった。積字TRACERをこれからどうするのかは、書かれていなかった。使わせてほしいという読者の頼みには、最後まで一行も触れなかった。
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改稿が全部終わったら、短編を再開する。第四話から第六話を提出した週末に、そう決めてあった。改稿は、私の手元では全部終わった。
容疑者の姉の話を書く。姉は弟を庇って刑事に嘘をつく。そして自分の嘘を、嘘だと気づいていない。書籍化の話が来る前からの書きかけで、いちばん書きたいけど、いちばん難しいと思っていた話だ。
文冴クラウドを契約した夜、私はこの話で使い勝手を試した。姉が刑事に嘘をつく場面だった。出力は保存せずに閉じたから、文章はどこにも残っていない。
夜の執筆に戻った。二十三時から一時間半、のペースに戻した。書いていて、覚えがある気のする言い回しに手が止まる夜があった。自分の言い回しなのか、あの夜の出力にあった言い回しなのかは、確かめる方法がない。でも、そのまま書いた。




