第九章 言わなければ(一)書き直しの終わり
第五話の残りは、その週のうちに書き直し終えた。残るは第六話と、第八話に足したひと場面になった。
第六話は、もとからある文の言い回し直しにまで文冴クラウドを使った話だ。決められないまま空けてあった箇所を一つずつ埋めていき、二週間ほどで最後の一つが埋まった。第八話のひと場面は場面ごと書き直して、こちらは数日で済んだ。
これで、文冴クラウドを使った場所の書き直しは全部終わった。やっと本来の改稿に戻れる。残りの改稿の締切まで、ひと月あまり。
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その夜、早坂へのメールを書き始めた。第四話から第六話を直し終えましたので、あらためてお送りします。最初の一文を打って、そこで手が止まった。
書き直す作業は終わっている。改稿前の原稿と異なっていた部分は、全部自分の手で書き直した。文冴クラウドの出力と同じ文は、もう残っていない。ただ、私は出力を読んだ頭で書き直している。参考にしたかどうかは、確かめようがない。
このまま送れば、早坂はこの原稿を、文冴クラウドと関わりのない原稿として受け取って、本にする作業を進めることになる。
契約書を取り出して、保証という見出しのページを開いた。「乙は、本著作物が投稿サイト等で発表済みの著作物にもとづく場合、乙が当該サイトで行った申告が事実であること、および改稿の部分を含む本著作物の全体がその申告の内容に適合していることを保証する」。契約のときは、当たり前のことが書いてあると思った。第四話から第六話がどう書かれたのかを知っているのは、いま、私しかいない。
直し終えました、と打った一文を消して、別のことを書き始めた。




