第八章 沈黙(二)総崩れ
週明け、ニュースの見出しに、また執筆サービスの名前があった。
文冴クラウドの検証で使われた方法は単純で、誰にでも真似ができる。途中に関係のない指示を紛れ込ませて、出力がそれに従うかを見る。同じやり方で、残っていた執筆サービスを試す人が次々に出た。生成AIを使わないことをうたうサービスは文冴クラウドのほかにもいくつもあって、数日のうちに、ほとんどが同じ結果を出した。突然、カレーの作り方や、富士山の標高を答えるサービスが続出した。
停止の告知が続いた。文言はどれも似ていた。基本の工程はこの春の判決の考え方に基づいている。補助的な処理に生成AI技術を援用していた。お詫びして、サービスを停止する。
週の半ばに、Notteにまとめの記事が出た。見出しは『「生成AIを使わない」執筆サービス、相次ぎ停止』。記事には検証をした人の話が載っていた。どのサービスも、方針を入れれば白紙から場面を書いて返すことを売りにしている。生成AIを使わずに白紙から場面を作る汎用的な方法は、いまのところ見つかっていない。だから、看板と中身のどちらかが嘘になる、という話だった。
記事は、判決が確かめたのは瀬名彰久の道具そのものであって、執筆サービスの中身を確かめた裁判ではないのだ、とも書いていた。
記事の下に、停止したサービスの一覧があった。最初に停止した文冴クラウドの名前が、一番上にある。月額と、停止の日付が添えてあった。
昼休みの職場で話題にする人はいないし、テレビのニュースにもならない。文なろの中でだけ話題になっていた。
利用レポを書いていた商業作家は、活動報告を更新していた。書き直しの終わった話から公開を再開するという。どの話を書き直したかも書き添えてあった。感想欄には応援が並んでいた。
夜は、第五話の続きに掛かった。




