表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/67

おもしれー女

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]


■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

 変異島第八特別区にあるオートマートの店内には、バーチャルアイドルと中堅芸人の小気味よい掛け合いが流れていた。

 新商品の宣伝とキャンペーン告知。つまりは店内CMで、一日中リピートされている。

 彼は聞き取ろうとも、無視しようとも考えてはいないのに、その面白トークの一文字一句が頭に刷り込まれていった。


 番組企画の合間には歌唱特化型原子力アンドロイド“DiVa(ディーヴァ)”の楽曲が流れる。金属骨格に人工生体組織、マイクロリアクターから供給される無限エネルギー。生身では発声不可能な音域に、正確無比な歌唱力を併せ持つ鋼の歌姫だ。

 人外のポテンシャルから発せられる圧倒的なサウンドは、チープな店内スピーカーを突き破って、心にダイレクトに響く。思わず作業の手を止めて、聞き入ってしまいそうになるほどだ。


 しかし、シフトが終わり店を出るなり、それらすべてを一瞬で忘れてしまうのだから、不思議なものだ。


「合計で五百スコアになります」

「……は、はいっ!」


 彼はいつもどおりゴッドブルとラムネ菓子を袋に詰めて差し出した。値段もいつもどおり、きっちり五百スコアだ。レジを通す必要すらない。

 受け取る相手も決まっている。ボサボサの黒髪。表情は前髪で隠されていて、どこを見ているのかも解らない。

 背丈もフォルムもよくて小学生高学年といったところだが、大きな胸の膨らみがアンバランスだ。


 レジカウンターを間に挟んで、少年と少女は立っている。


「……」

「……」


 つかの間の無言。


「――あの……」

「――あ、あのっ!」


 世羅は仕方なしに、小鳥は意を決して口を開いた。


「ひぃ! さ、先っ! 先にどうぞっ!」

「えっ? いや……そちらこそ……」


 そして、ぶつかった。


「そんなボクの話なんて、たいした話じゃないしっ! そっちの話のほうが重要っていうか……‼」


 手足をバタつかせ、顔は伏せて、目は泳いでいる。声は小さく早口で聞き取りにくい。


 ヒュイイィィィ


 小鳥の挙動不審に釣られるように、店内を巡回していたドローンが数機、近寄って来た。


 キュイ、キュィィ!


 大きなフォーカス音が響いた。ドローンはバレーボールほどの大きさで、その大半をカメラレンズが占めている。


「えぇ……いや、まだなにか用があるのか聞こうとしただけです」

「それだけっ⁉」


 ドローンは小鳥の姿を確認した瞬間、興味を失い散っていった。彼女の言動が“怪しい”のは“普段どおり”だと、データベースに記録済みだからだ。


「そんなに驚くことですか? もう会計は終えましたし……まぁ、他に待ってるお客様はいないんで問題はないんですが」

「そ、そうだった! ご、五百スコアですよね! はいぃ!」


 小鳥は腕ごと好きにしてくれと言わんばかりにR.I.N.G(リング)を差し出した。顔と体は真後ろに向けられて、まるで注射を嫌がる子供のようだ。


「いやいや、もう会計済んでますって……」

「ひぃいっ!」

「落ち着いてください」

「はいっ!」


 会計は済んでいる。あとは出口に向かうだけだが、彼女は動かなかった。


 再び沈黙が訪れる。


「……」

「……」


 長い沈黙だ。放っておくと、このまま数時間経過しかねない。


「……それで……まだなにか?」


 世羅は観念したかのように口を開いた。


「……あ、あの、ボク……い、岩肌小鳥は負けたんですよね?」


 小鳥はもじもじもじもじと体をくねらせ、目を伏せたままその質問を絞り出した。

 だが、最後の「……世羅くんに……」の一言だけは、チラリとした上目遣いとともに発せられた。


「……そうですね」


 世羅が短く答えると、ブワっと、モップでも振るように小鳥が顔をあげた。


 小柄な印象から童顔を想像してしまうが、どちらかといえば美人系。ただし、ちゃんとしていれば、という注釈付き。

 整った造形をうやむやにするボサ髪。茶色がかった瞳は自信なさげに濁っている。


 これだけの器量を覆い隠す陰気さをどこで身に着けたのだろうかと、世羅は疑問に感じていた。

 だが、答えはないのだ。生まれ持っての性格として言いようがないのだから。


「えっと……えっと……もうボクはキミの……世羅くんの“所有(モノ)“なんです……よね?」


 決闘(デュエル)に勝てばすべてを奪え、負ければすべてを失う。

 世羅が勝ち、小鳥が敗北した。


「……」


 世羅は小鳥を無言で見つめ返した。


「……ううう……」


 小鳥は逃げ出しそうになる衝動を必死に抑えながら、ただ不安げに言葉を待った。


「ルール上、そうなりますね」

「――っ⁉⁉」


 冷えた頭に血が流れこむように、少女の顔に朱がさした。

 目には薄っすらと涙が滲んでいる。


「それを確認したかったんですか?」

「……えっ⁉ ……うう、う……はい……」

「本当にそれだけ?」

「……は、はいぃぃ」


 いま、少女には、世羅の声と、心臓の鼓動しか聞こえていない。

 止まらない高鳴りで破裂してしまわぬよう、胸元を両腕できつく抱きしめた。


「……だって、あの日からなにも連絡ないし……ボク……どうすればいいのかわからなくて……」


 決着がついて今日までの数日間、小鳥は“世羅に会う”という日課を欠かしていた。

 世羅と会話する必要はなく、物陰から一目見るだけでもOK。その程度のルーティンだった。

 しかし、世羅に出会ったその日から一日も休まず続けてきた習慣なのだ。

 やめた理由は、迎えに来てくれると思っていたからだ。すくなくとも連絡くらいはくれるだろうと思っていた。


 自ら押しかけるような、ガッついて、卑しい、淫らな女にはなりたくなかった。

 世羅の周りをウロチョロしている黒ギャルとか、鬼女とか、女教師とか、ビッチどもとは違う。

 ボクは白百合だ――穢れ(けがれ)を知らず、しかし、堂々と咲き誇る一輪の華。

 焦らず、急かさず、ただ世羅が求めてくるのを待つ。それが淑女ってもんでしょう?


 小鳥はそんなことを考えながら、いまかいまかとR.I.N.G(リング)を凝視する日々を過ごした。

 結局、連絡もなにもなかった。そもそも、連絡先を交換した覚えがなかった。

 それじゃあダメだろと、家を飛び出して、いまここに居る。


「――なぁ……」

「――あのっ!」


 またも二人の声が重なった。小鳥は譲らず、そのまま話を続けた。


「あ、あわわわ……! あ、あの! め、命令とかないんですか⁉」

「はぁ?」

「ほ、ほらだって! ボクは世羅くん所有(モノ)だからっ! パン買ってこいとか! ジュースおごれとか! 靴の裏なめろとかっ!」

「えぇ……」


 世羅は普段から冷静で、感情がむやみに表に出るタイプではない。そんな彼が明らかな戸惑いを見せていた。


「……あんなこと、こんなことしろ……とか……」


 小鳥が真っ赤に染まった顔を伏せると、か細い声は地面に呑まれて消えていった。


「うーん……」


 世羅が言葉を探す一瞬、沈黙が流れた。

 それから「はぁ」とため息をひとつこぼし、腕を組んだ。


「私の配下になったからといってパシリには使いませんよ。靴の裏……ってのは意味わからないですし」

「えっ! そうなの⁉」


 小鳥は驚きながら顔をあげた。ボサ髪が跳ねて左目が露わになったが、代わりに右目が隠れた。


「いつもどおり生活してもらっていいですけどね」

「えっ⁉ なんで⁉ 負けたのに⁉ 配下なのに⁉」

「まぁ……用事ができたら連絡しますし、そのうち、なにかしらお願いすることにはなると思います」

「は、はいっ! 大丈夫です! 頑張りますっ! ボクはキミの“所有(モノ)”だから」

「そうですか……」

「はい!」


 不安や迷いは吹っ切れたような、ハツラツとした返事だった。前髪から覗く(のぞく)視線が潤んでいる。


「……で、“あんなことそんなこと”とは具体的には、なんですか?」


 姪っ子でもからかうような態度で世羅は言った。

 彼と小鳥には、姪どころか、祖父と孫といってよいほどの年齢差がある。成人しているソフィアですら、世羅から見れば未熟な少女に過ぎない。


「ええええっ! そ、それわぁっ!」


 小鳥は頭を抱えてブンブンと体を揺らした。頭のてっぺんから首先まで真っ赤に染まって、目が激しく泳いでいる。


「なにを想像してるかはわかりませんが……まぁ、私が想像してるのと一致してるんなら……」

「えっ! えっ! えっ⁉」

「ありえますよ? ……ウチではね」


 世羅はクッと小首を傾げ、怪しく微笑んだ。


「ええええっ‼ でも、でも、それはお互いに! お互いの気持ちっていうかぁ! エロゲじゃないんだからっ! お互いのぉ! お互いにぃ! まずは付き合ってから……!」

絶対命令(マスターオーダー)です」

「ひぃいいいいっ‼」


 小鳥は両手をあげながら逃げ出した。あまりの勢いに自動ドアの開閉が、間に合わなかった。

 ズガンと、ドアに弾かれて、近くの商品棚にもぶつかって、くるくる回ってすっ転んだ。


「……またか」


 世羅が目をやった先にはライトブルーの布地。スカートがめくれ上がって、下着が丸見えになっていた。

 地味な制服には不釣り合いなデザインだ。フリルで装飾されて、ゴムの代わりに紐になっている。

 淫魔で黒ギャルのヤミ子ですらそうそう履きそうにはない、気合の入ったパンツには、あきらかな戦意が感じられた。


「ちがっ……ちがうの! ちがうからっ! べ、べつに勝負しようとか思ってたわけじゃなくてっ! もしかしたらワンチャン! ワンチャンそういう可能性もあるかと思って! って! ちが! ちがうの! うわ! うわわ! わぁあああ!」


 ドタンバタンと棚と壁にぶつかりながら、腕を羽根のようにバタつかせ、ピーピーと喚き散らして、彼女は店外に消えていった。籠の中で暴れる鳥のようだった。


「……ふむ」


 世羅の目の前にはレジ袋が残されている。中身はゴッドブルとラムネ菓子。


「おもしれー女」


 世羅は肩をすくめ、笑った。

最後までお付き合いいただき、感謝です!

「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!

今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ