三つの敵
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「あれが人間の動きなの? どうかしてるわ……」
ソフィアは誰に向けるべくもなく呆れた表情を浮かべた。
「ほんとやばくねー? あっ、ほら! 氷室せんせーこれ見てよ! あーしらがライブ配信されてるよ?」
ヤミ子のR.I.N.Gから映像が浮かび上がった。この場を真上から捉えた、配信画面だ。
変異島において決闘は昼夜を問わず繰り広げられている。しかし、複数人が欲望強化を発動しての激闘などそうそうない。
だからこそ本日のベストマッチに選定され、島全域へのライブ配信が行われていた。
決闘はすべてを得るための戦いであると同時に義務でもある。
この島において戦わない自由はなく、それは弱者に限らない。隠れて強くあることをMONOLITHは許さない。
視聴する同時接続数は凄まじく、強者に惹かれる変異体の特性が恋愛だけに限らないことを証明していた。
「すげー! せんせーほらぁ! いいねの数がエグくね?」
ヤミ子が目を輝かせた。
「そうなの? 普段から見ている訳じゃないから、よくわからないけれど……」
ソフィアは向けられたホロコンソールにちらりと目をやり、また視線を戻した。
「たしかにすげーな……」
バット男がため息をつく。
同接数はすでに三十万を超えている。そして、千単位で上昇を続けていた。
最終的にどこまで伸びるかはわからない。
ひとつ訂正する。このライブ配信は“島全域”ではなく、外界を含めた“全世界”に向けられている。
「コメントもすごいことなってる! あーしのこと可愛いってさぁ♪」
バット男が横から覗き込んだ。
「黒ギャルは趣味じゃねーって言ってる奴等もいるみてーだが?」
コメント欄の流れが速い。戦況が動くたびに書き込み数が跳ね上がり、断片的な反応が画面を埋めていく。
女性陣の容姿への言及、碌でもない野次と煽り。まともな内容はほとんどない。民度は終わっている。
「ばーか! こんなもん、都合の良いやつだけ拾えば良くね……あっ! てかアンタ! もう魅了とけてるねっ⁉」
ヤミ子が声を上げると、ソフィアが銃口を向けた。
「おっと! やめろ! もう争う気はねーよ!」
バット男は観念したように両手を上げる。
「その言葉を信じろというの?」
ソフィアの目元は厚いレンズで覆われ、表情は読めない。だが声に遊びはなく、一歩でも動けば躊躇なくトリガーが引かれる。それは明らかだった。
「ちっ……」
捨てられたバットがガランガランと跳ねた。
「ほら……これでいいんだろ?」
「……」
ソフィアは何も応えない。まだバット男の真意を測りかねている。
「あいつらがあんな戦いしてるんじゃ、もう俺らに出る幕なんてねーだろ? 無様な姿をさらしたくねーしな」
バット男が指差した廃工場の中では、四つの閃光が交差していた。
「月乃! 正気に戻れっ!」
「わたくしは正気だっ! ばかやろうっ!」
手にした柱をブンブン振り回し、月乃は世羅に迫った。
手加減など一切なく、廃工場の壁も機械も、何もかもが巻き込まれて弾け飛んだ。
「くそっ!」
世羅は完全に防戦一方。いや、戦いではない。
ひたすらに距離をとって、必殺の一撃を避け続ける。ただそれだけしか出来なかった。
《“独占”トリガーによるカタリシス反応……180%……200%……》
欲望強化の出力は上昇を続けている。敗れればすべてを失うからだ。だが、戦況を打破するには至らない。
『やめろ! ブスっ!』
月乃の背中越しに小鳥が見えた。
『世羅くん! こんな奴にやられたら怪我するよ! ボクに倒されなよ! 手加減したげるからぁ‼』
月乃ごと薙ぎ払うように、鉄腕が振るわれた。
スコップで柔らかい地面を掘り起こすかのように、コンクリートの床が抉れる。
「四影触っ!」
世羅の背中から四本の影が生まれた。そのうちの一本で、小鳥の攻撃が月乃を巻き込む前に押しのけた。月乃は怒りに囚われて前しか見えていなかったからだ。
別の二本を使って小鳥そのものを止めようともしたが、三メートルの突進を抑えこむことは出来なかった。
最後の一本は、天井の梁をつかんでいた。ぐいっと引いて跳躍する。壁際に追いやられ逃げ場がない状況で、世羅は地上ではなく頭上に活路を求めたのだ。
廃工場の天井は穴だらけ。経年劣化による損傷よりも、今回の決闘、特に月乃と小鳥がやり合った際の損傷が大きい。
世羅は大穴を通って屋根上へと移動した。
「なんだっ⁉ 壁が迫ってきている⁉」
空にはマス目状に並ぶドローンが見えた。その数は百を軽く超えており、バリバリと黄色の放電を放つ壁が隙間を埋めていた。
《決戦領域は徐々に縮小します。世羅悠希、決着の時です。逃げずに戦いなさい》
「勝手なことを!」
ドローン群によって形成されるこの閉鎖空間は決戦領域と呼ばれる。
殺傷兵器や欲望強化を伴う“過熱”する決闘において周辺環境への被害は大きくなりがちだ。
対策として重積バリアフィールドにより決闘の場を隔離するのだが、目的はそれだけではない。
何人も入れず出さず。領域は徐々に狭まり、決着を強要する。ゆえに決戦領域なのだ。
「おらぁ! 六影触っ!」
世羅が抜けた大穴から、後を追うように多胡が屋根上へ飛び出した。
「ちっ!」
息つく暇もない。多胡の触手が屋根を砕き、世羅の足場ごと抉り取る。
飛んでかわしたが、踏みしめていた屋根は崩れ落ちた。
「衝撃波っ!」
空気が弾ける。多胡を牽制しつつ、その反動で足下の穴から逃れた。
「おせぇっ!」
音速に迫る衝撃波を、多胡は体を捻って避けた。続けざま、世羅の着地際を狙って触手での追撃。
ドンッ! ドガッ!
触手による攻撃を防いだのは、同じく触手だった。世羅は自身の四影触で体全体を覆い隠し、守りを固めた。
「おら! おらぁ!」
多胡はガードごとぶち破る勢いでラッシュを仕掛けた。
六本の触手、二本の腕、二本の脚をそれぞれ力いっぱい振り回した。
技術も型も何もない、ただただ叩きつけるだけの攻撃だったが、あまりに速くあまりに重かった。
(受けに回ったらまずいっ!)
ガードごと押し潰されると直感した。一瞬の判断だった。
世羅はガードを解き、多胡の攻撃にぶつけるように拳と触手を振るった。
彼が背負う四本の触手は、多胡からラーニングしたもの。そっくりそのまま同じだ。
扱いの巧みさもパワーも五分。ただ、多胡の六本に対して世羅は四本と、本数で劣っている。
「おららぁぁ! おらぁああ! うがっ!?」
多胡の攻撃に攻撃をぶつけて打ち消しつつも、徐々に捌きや受けを織り交ぜ、手数の少なさを補った。
やがて見えた隙に拳をねじ込んで反撃。多胡の手が止まった瞬間、更に蹴り込んだ。
「ぐえぇっ!」
多胡がのけぞった。
「いけるっ!」
多胡が相手であれば支障はない。活路が見えた気がした。
止めを刺せるうちに決めてしまえ――体勢を崩した多胡に迫ろうとした、その瞬間だった。
『世羅くん! そこにいるんだろぉ⁉』
眼下の室内から、巨大な腕が屋根をぶち破って現れた。
「ちぃ!」
小鳥から屋根上の世羅の姿は見えていない。気配だけで、真下から捕まえにきたのだ。
『あれぇ⁉ ここか⁉ ここかなぁ⁉ 世羅くぅうん‼』
ドゴン、ドゴン、ドゴンと腕が飛び出し足場が崩れていく。
世羅は捕まるまいと後方への宙返りを繰り返す。
視界の端に多胡を捉えたまま、距離だけが離れて行く。ここで仕留めきれなかった事実は、後に重くのしかかるだろう。
「あるじぃ‼」
今度は月乃が、向かう先の屋根を粉砕して室内から飛び出してきた。このまま進めば怒り狂った鬼とぶつかる。避ける必要がある。
だが、小鳥の腕は執拗に追いかけてくる。廃工場は広々としているが、天井のほとんどが崩れ落ちて、足場はほぼなくなっている。逃げ場がない。
「月乃!」
月乃を傷つけるわけにはいかない。だが、何もせずに抑え込める相手でもない。
欲望強化の出力で上回っているならまだしも、月乃は300%上限に達して、完全なる鬼形態となっている。
そもそもの話、同じ出力値だったら勝てるという話でもない。
世羅は亜人型だ。変異体の中でも最も数が多いタイプで、このタイプは異能のバリエーションに富んでいるが、特化型に比べて戦闘力の面で劣ってしまう。
つまり、同じ亜人型である多胡に対しては、格闘技術の有無がそのままアドバンテージとなった。しかし、怒島兵法を修得する月乃に対しては、そうもいかない。素のスペックでも負けているし、技術でも後れを取る。早い話、勝ち目がない。
「うがぁあああ‼」
すべて蹴散らす暴風のような攻撃。何千何万と繰り返してきた動作は月乃の細胞一つ一つに染み込んでいる。
怒りに任せ、闇雲に振るっているように見えるが、そうではないのだ。
制御された暴力。殺傷するための技術が雨あられとなって世羅に振りかかる。
「月乃ぉ!」
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
世羅は必死だった。四影触が弾き、払い、受け止める。腕で守り、素早い足捌きで回避する。それでも足りない。
致命的な一撃をかろうじて避けているだけで、多くの攻撃を受けていた。
「あるじぃ‼」
一方で世羅の攻撃も当たっていたが、月乃は意に介さなかった。
硬質化した皮膚が打撃を無効化し、腹の底から湧き出る憤怒が痛みを塗りつぶした。
「ぐぅう‼」
世羅の被弾が目に見えて増えた。
皮が破れ、肉が弾け、骨が砕ける。それでも、活性化した治療因子が瞬時に傷を塞いだ。
その代償は気力と体力だ。決してただではない。
(後ろから……来るっ!)
欲望強化により研ぎ澄まされた感覚は、視界の外まで届く。
隠す素振りもなく、一気に詰め寄る多胡の気配を背中に感じていた。
「世羅ぁ!」
真後ろにいる。月乃との挟みうちになる。
「衝撃波っ!」
「何ぃ⁉」
多胡の叫びを置き去りに、世羅は落下した。
狙ったのは月乃でもなく多胡でもない。足元だった。
廃工場の屋根上から室内に飛び込む。挟撃を避けるための、咄嗟の判断だった。
『世羅くぅん! おかえりぃ‼』
しかし、下には小鳥がいる。着地際を捕まえようと腕を広げて、世羅に迫った。
「三つの敵かっ!」
四影触で地面を殴りつける。その反動で自由落下の速度が緩まり、掴みにきた巨腕をかわした。
『ちょこまか逃げないでよぉ!』
天井から地面まで五メートル以上あるが、変異体には問題ない。着地と同時に追撃の腕もすり抜けた。
(このままでは同じ繰り返しだ……ならば飛び込む!)
小鳥から距離を取るべきだろうが、世羅は懐に潜り込んだ。巨人の足元に飛び込むなど正気の沙汰ではない。しかし、世羅はやってのけた。
『このぉ! このぉ!』
三メートルの巨体が残像を発する速度で殴りつけるが、世羅はそれを見切り続けた。
『世羅くん! 動かないでっ!』
小鳥のゴーレム形態は胴が大きく腕が長く太い。比べて脚が短く重心が低い。ゴリラに似たバランスだ。
腹の下に世羅はいるが、長いリーチが邪魔をして掴めない。後ろ後ろへと周り込まれると、なおさらそうなる。
世羅を追いかけ天井から降りた月乃が叫んだ。
「邪魔をするなぁ! あるじはわたくしがやると言っている!」
『はっ⁉ うるせーしっ! 世羅くんはボクのだしっ!』
「ちょっ! ボスっ! 何してんすかっ!」
多胡も下に降りて来ているが、巻き込まれる可能性があり、攻めあぐねていた。
世羅が張り付く立ち回りを徹底したことで、小鳥の攻撃が周りを寄せ付けない壁となっていた。
それでも構わぬと、月乃が斬り込んだ。
「どけぇ! デカブツがぁ‼」
ガギィン!
「くそっ! 邪魔をするな!」
鬼の踏み込みを小鳥は意に介さなかった。小鳥にその意図があったわけではない。世羅を狙って振り回す巨腕に月乃が触れただけだ。
(よし……! 一体一に持ち込めた……!)
小鳥が暴れる間は、月乃も多胡も近寄ってこない。三メートルの巨体に潰される危険はあるが、三人にボコられるよりは遥かにマシである。
ここまでは彼の思惑通りだった。
「それでっ⁉ ここからどうしろっていうんだ⁉」
思わず声が漏れた。小鳥とのタイマンに持ち込んだはいいが、その先の考えはなかった。
欲望強化状態にあるゴーレムを打ち倒す術が世羅にはない。
単純な打撃は硬い装甲に阻まれる。この決闘の最中に編み出した“発勁”であれば内部に直接ダメージを与えることができるが、仕留めきれる程の威力がない。
違う。倒せる倒せないに関しては未知数だ。
自身の欲望強化の出力も高まりつつあるから、最大威力の発勁であればあるいは――いやダメなのだ。
ゴーレムの中身が小鳥だと解った以上、世羅はフルパワーで撃ち込むことが出来なくなった。
それが出来るのであれば、この戦いの決着はとうについている。
(あきらめろというのか⁉)
そもそもあきらめるとは一体どういうことだ。世羅は動き続けながら、自問した。
小鳥はコンビニの常連。それ以上でもそれ以下でもない。
話なんかまともにしたことはない。話しかけたことはあるにはあるが、会話にはならなかった。
ボサボサの髪で表情は見えず、挙動不審。気味が悪い。
だが、顔は良い。それに気づいている奴は他にいるか?
加えて貴種のゴーレムであり、高い戦闘力。使える女だ。
陰キャを極めたような態度を取りながら、裏ではギャングクランを牛耳ってもいる。
おもしろい女だ。
それを知ってしまった。もう、気持ちを抑えることは出来ない。月乃を。ヤミ子を。ソフィアを欲した時と同じだ。
この女は俺のものだ――俺が“独占”する。
《“独占”トリガーによるカタリシス反応……300%に達しました……》
R.I.N.Gの告知にいち早く反応したのは多胡だった。
「ボスっ! 何遊んでるんすか! 邪魔せんといてください!」
『はぁ⁉ 何だよオマエ! ボクに向かってそんな口の利き方‼』
「だから! 世羅が欲しいんすよね⁉ だったらやることやってください‼」
多胡は小鳥に言い放ちつつ、月乃にも視線を向けた。
「副会長! こいつは身勝手な奴だよな! 同情するよ! 手伝ってやるから協力しろ!」
「あっ? 協力? 協力って何だ? しるかっ! わたくしに命令するなよ‼」
多胡の言葉は月乃には届かなかった。地を蹴り、小鳥の腕を掻い潜り、世羅に体ごとぶつかった。
「月乃っ⁉ ぐあっ‼」
『世羅くん⁉ おいぃ‼ オマエぇ‼』
月乃に向かいかけた小鳥を、多胡が制した。
「ボス! そうじゃないでしょ! 女同士の喧嘩は世羅を倒した後にしてくんないすか⁉」
小鳥は月乃ほど我を忘れてはいない。多胡の物言いは気に食わないが、筋が通っていることはわかった。
『ちぃ! 生意気だよキミもっ! 後で説教だからっ!』
「終わった後に好きにしてください! あの鬼に合わせるっすよ!」
多胡の声で、三人の動きがピタリと揃った。
周りを見ずに突進する月乃を、小鳥と多胡が的確にサポートする陣形だ。
「あるじぃ!」
「月乃ぉ!」
出力300%同士の戦いはやはり熾烈だった。一対一で打ち合った先刻の攻防の繰り返しに見えるが、決定的に違っている部分がある。
「おるらぁ!」
月乃の猛攻の合間を縫うように、多胡の六影触がうねりを上げる。
「えぇい! 厄介な!」
世羅は四影触での対応を余儀なくされた。致命傷になる鬼の攻撃を凌ぐのに使いたいが、嫌なタイミングで多胡が仕掛けてくる。
『世羅くぅん‼』
さらに小鳥は自ら攻撃には回らず、巨体を活かした壁となって退路を塞いだ。
「小鳥っ! 邪魔をするなっ!」
行く手を阻む巨体に気を取られた一瞬。地を薙ぎ払うような月乃の一撃が迫る。
即座に回避行動をとるが、多胡はそれを予測し、触手で邪魔をした。
「しまっ――!」
月乃の痛烈な一撃が叩き込まれた。
ズドンッ!
凄まじい衝撃と共に、世羅の体は廃工場の壁を突き破り、屋外へと吹き飛ばされる。地面を一度バウンドした勢いのまま、決戦領域の壁に激突した。
「くぁ……!」
痛みが走った。麻痺しているはずなのに、目の前がぼやけて、暗闇に閉ざされる感覚。
まともに喰らった。欲望強化がなければ即死だっただろう。
『着岩っ!』
壁に激突し、身動きが取れなくなった一瞬の隙を小鳥は見逃さなかった。
足元に拳を打ちつけると、さざ波のように地面が隆起する。
ダメージで意識が飛んでいた世羅は、迫る波に反応できない。
隆起した岩と鉄が下半身を飲み込み、そのまま強固な拘束具となって固まった。
「くっ……!」
自分で着れば装甲。他人に着せれば自由を奪う枷になる。小鳥は着岩の解釈をまたひとつ広げた。
「うぁああああっっっ‼」
咆哮が轟いた。炎に包まれた鬼が見える。真っ直ぐに、最短距離で突っ込んでくる。
体が動かなかった。小鳥の異能に拘束されている。一歩どころか半身ずらすことすら出来なかった。
「四影触っ――なにぃ⁉」
月乃の攻撃をこれ以上くらうわけにはいかない。しかし、身動きは取れない。
四本の触手を束ね、ガードを固めようとした。
「ひひぃ!」
月乃の背中越しに、多胡の薄笑いが見えた。
その触手が、世羅の触手を絡め取り、ガードをこじ開ける。
(多胡っ――またお前かっ――!)
生み出された隙に月乃が滑り込む。大きな音が鳴った。
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