表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/65

絶対命令

■ 本作について

本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。


■ 活用の具体的な範囲

AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。

興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]


■公開済エピソートのプロットを公開中

「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。

https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/


■ AI活用の目的とスタンス

本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。

ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。

また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。

「月乃やめろ! どういうつもりだっ!」

「それはこっちの台詞だっ‼」


 青と赤の閃光(せんこう)がぶつかりあった。


「月乃っち! やめなって! 気持ちは解るけど落ち着きなぁ!」

「落ち着いていられるか! 殺してやるっ‼」


 ヤミ子の説得も届かない。


『オマエなんなの⁉ 世羅くんにひどいことするなよっ‼』

「誰のせいだっ‼」


 世羅の壁になろうとボスが行く手を遮るが、影すら踏まさぬ速度ですり抜ける。


 ガガガガガッ!


 炎をまとって振るわれる刃には、なんの躊躇(ちゅうちょ)もなかった。

 かすっただけでも(くび)が飛ぶ。

 木々や壁、工場内の設備を切り刻みながら鬼は奔った。


「ちぃ!」


 感情任せの太刀筋は単調だが、それゆえに速く重い。

 再び┃欲望強化リビドーブーストが発動し、折れた両腕が復元、力を取り戻した世羅といえども避けるのが精一杯だった。


「月乃ぉ! 敵を見誤るなっ!」

「女の敵はお前だぁ‼」


 月乃の放った蹴りが、地面を抉り(えぐり)ながら襲った。

 世羅はかろうじて回避したが、背後にあった大型機械はくちゃくちゃに潰れて飛んでいった。


「避けるな浮気者っ‼」


 もはや、口調を整えるどころではない。技もなく、理屈もない。ただ感情を爆発させるだけの女がいる。


「クソっ! MONOLITH(モノリス)ッ!」

《はい。┃決闘デュエルに関する質問があるなら回答します。ただし、一時中断等の対応は――》

絶対命令(マスターオーダー)だっ! 月乃を止めろ!」

《マスター権限による絶対命令(マスターオーダー)の執行には50000スコアの支払いが――》

「いいからさっさっとやれっ! 命令を強制できるんだろう⁉」

《その通りです。リクエストを受理しました。絶対命令(マスターオーダー)を発令します》


 世羅のR.I.N.G(リング)から「ピロリン」と音が鳴った直後だった。


「あああぁぁーーーー‼」


 月乃の絶叫が辺り一面に響いた。鬼が鳴いている。

 バチバチと電撃が走る。月乃の体がぶるぶると震えていた。


 その姿と、悲鳴と、鼻をつく焦げ臭さに世羅がぎょっとした表情で立ち尽くす。


「電撃っ⁉ おい‼ ┃MONOLITHモノリス! 何をやっているんだ⁉」


 世羅は唾を飛ばしながら左腕にはめたR.I.N.G(リング)を怒鳴りつけた。


《リクエスト通りに絶対命令(マスターオーダー)を発令しています。メンバーが従わない限り続行され――》

「ばかやろう! やりかたってものがあるだろうがっ!」

《手段はケースバイケースです。極度の興奮状態にある変異体を抑える手段は限られて――》


 絶対命令(マスターオーダー)はクランマスターの権限のひとつだ。

 相応のコストを払うことで配下への命令を“強制”できる。手段に関してはMONOLITH(モノリス)が状況に応じて選択するが、基本的には即効性があり、問答無用になる。


 今回は感電により苦痛が用いられた。ねちねち根回し遠回しという手段が取られることはない。それは人間の領分だからだ。


「あああああああぁぁぁぁぁ‼」


 体表の水分が蒸発し、薄い煙が立ち昇っている。白目を剥き、歯をガチガチと鳴らしてもいた。

 筋肉が痙攣(けいれん)し、動くことはおろか、地面に倒れることすらできない。処刑だと言ってもよい光景だった。


「とにかくやめろっ! 俺の月乃を傷つけるなっ‼」

絶対命令(マスターオーダー)の中断は可能ですが、その場合でも支払われたスコアの返却は――》

「だまれっ! いますぐやめないかっ‼」

「うああああああ‼」


 バギイィィッ‼


 何か硬いものが砕け、鎖でも引き千切ったかのような音がした。

 同時に月乃の体が(ほのお)に包まれ、凝縮し、弾けた。


《“憤怒”トリガーによるカタリシス反応……300%を計測……ブーストリミッターの動作を確認。また絶対命令(マスターオーダー)も強制解除されました》

「上限いっぱい? 強制解除っ⁉ なんだあの姿は……」


 角が燃えていた。ほどけた黒髪が腰より下まで流れ、瞳は(だいだい)に変わっている。

 頬に走る鱗紋様、のぞく鋭い犬歯。硬質化した赤い鱗が肌の上に直接張りついていた。指先も、足先も、爪だ。


 服は跡形もなく焼き落ち、周囲も焼き尽くし、爆心地にひとり立つその姿はまさに“赤鬼”だった。


「……お、おい……月乃? だいじょうぶか?」


 世羅は狼狽(ろうばい)した様子で言った。

 彼は欲望強化(リビドーブースト)の作用により、痛みも恐れも感じない。

 それでもなお自分の“女”を失う恐怖は耐え難い。


「……だいじょうぶ? だいじょうぶって……なに?」


 月乃は俯いたままだった。

 角にまとった炎と艷やか(つややか)な黒髪が、境目なく揺らめいていた。


「月乃……?」

(あるじ)どの……あの女が惜しくなったのか?」

「月乃…………?」

「言うことを聞かなければ鞭打つ(むちうつ)のか?」

「違う……! そんなつもりは……!」

「そんなつもりは……? どんなつもりでわたくしに()らせようとした……? このクソDV野郎がぁ……」

「月乃……」


 月の顔が上がった。燃えるような目が、真っ直ぐに世羅を見ていた。まさに鬼の形相だった。


「あるじぃ! あれもこれも! おまえのせいでしょーがぁ! 浮気者がぁ‼」

「月乃⁉」

「地獄に落ちろっ‼」


 ドンッ――と、地面を(えぐ)りながら鬼が駆け出した。

 赤い残像だけを残して一直線に迫った。


「おまえがなぁっ‼」


 ドオォォォンッ!


 ボス、改め、小鳥が突如として現れた。肩を突き出し、月乃に真横からタックルをかますと、交通事故さながらに弾き飛ばされた。

 月乃はグルングルンと横回転しながら、錆び(さび)た大型機械を巻き込んで跳ねた。金属が軋み(きしみ)、砕けたコンクリートと鉄くずが宙を舞う。


「世羅くん! 大丈夫⁉ あのバカはボクにまかせてっ‼」


 砂埃と鉄くずが降り注ぐ中、小鳥は大きな足音を鳴らしながら世羅に駆け寄った。


「お、おい……小鳥……」


 彼女の破壊された装甲はそのまま、まるで巨人に飲み込まれかけているような風貌だ。

 だが、その姿はそっくりそのまま、コンビニの常連少女。

 前髪で隠れがちとはいえ、整ったその顔立ちを世羅が見誤るはずがなかった。


「あのブスが君にはふさわしくないって思い知らせてやるっ‼ 着岩っ‼」


 胸の前で巨大な拳を打ちつけ合うと、「ゴンッ」と大きな音がした。

 同時に床が低く唸っ(うなっ)た。砕けたコンクリートと瓦礫(がれき)が小鳥の足元へ吸い寄せられ、失った装甲を埋め直すように積み重なる。

 ぎし、と軋みながら鉄の重みが戻り、再び巨大なゴーレムと化した。


『世羅くんはそこで寝てなっ! あいつはぶっ殺すっ!』

「小鳥ぃ⁉」


 世羅の声を置き去りに巨体が宙を舞った。

 ぐちゃぐちゃに変形した大型機械の隙間から、這い出る月乃に向かって飛び込んで行く。


「やめろぉ! 争うなっ! そんな必要はないぃ!」


 手を伸ばしたその先でふたりの女が争っている。

 罵詈(ばり)雑言と「泥棒猫」といった単語が飛びかうそのさまは、浮気現場そのものだ。いや、事実そうなのだが、まったく洒落にはなっていない。


 鬼とゴーレムが生み出す青と赤の奔流が辺りを照らした。

 ふたりを止めなければ――このままではどちらかが死ぬまで争い続けかねない。そんなことになんの意味もない。


「おらぁ‼」


 多胡が真後ろの死角から現れ、世羅の頬に拳を叩き込んだ。完全に虚を突かれた一撃だった。


「くっ……多胡ぉ! おまえに構ってる暇はっ!」


 頬を殴られたことより、足を止められることのほうが問題だった。今は月乃と小鳥を止めることだけが重要で、多胡に構う余裕はない。

 無視して横を通り過ぎようと踏み込んだ。

 それを咎めるように、多胡の背中から六本の影が伸びた。


「あぁん? 寝ぼけたこと言ってんじゃねーぞぉ世羅ぁ! いまは決闘(デュエル)の最中だろうがっ!」

「ちっ……!」


 反論しようがない正論だった。ここまで来て“ブレ”てしまった世羅。

 だが、多胡は最初から最後まで、世羅が気に食わないという姿勢で一貫している。


 その差は欲望強化(リビドーブースト)の数値として現れていた。

 多胡は既に200%を越えている。対して世羅は、辛うじてブーストを維持できているに過ぎない。


 欲望(リビドー)に迷いは禁物だ。


『ブス! ブス! ブス! ブス! 見てくれだけで性格悪いんだよおまえ‼』

「だから鏡をみればよくない⁉ ブスはおまえだろ‼ ブスっ‼」


 月乃と小鳥はただ殴り合っていた。防御なく、真正面から拳をぶつけ合う。

 一撃一撃の余波で空間が震える。常人なら間違いなく即死の威力だが、交互にビンタでも張り合うようなノリだった。


『世羅くんに付きまとうなブスっ‼』

「それも鏡に向かって言ってれば⁉ それにさぁ! あんな浮気者くれてやるけど‼」


 月乃の手にすでに野太刀はなく、どこに落としたのかもわからない。しかし、そんなことは関係がない。

 完全なる鬼と化した彼女にとって、拳は刃と変わらない。


「おいぃ! ボスっ! なにやってんすかぁ⁉ コイツのこと欲しいんでしょ? だったらそんな奴を相手してる暇あるんすか⁉」


 世羅、月乃、小鳥、多胡。決闘(デュエル)はこの四人によって決着することはもはや間違いない。

 皮肉なことに、いま一番冷静なのは多胡だった。


『そうだった! ボク……世羅くんを倒さなきゃなんだ……』


 小鳥は我に返り手を止めた。

 多胡の言う通りなのだ。世羅を手に入れるために始めた決闘(デュエル)なのだから、鬼一匹に構っている暇はない。


『おい! おまえとの勝負は後回しにしてやる! 今から世羅くんを倒すけど邪魔するなよっ!』


 小鳥は月乃に指を差し、見下すように言った。

 月乃は牙をギリギリと嚙みしめ、肩を震わせる。


「勝手にしろ! わたくしはもうしらん! 関係ないっ!」


 いつの世も忠義など儚いものだ。多くのケースにおいて報われない。

 上の都合ひとつでひっくり返される、その程度のものでしかない。


「まて! 月乃! それじゃあ困るぞっ! 頼む手伝ってくれ!」

「いやだっ!」

「月乃っ!」

「いやだって言ってるでしょ⁉ どうしてもって言うなら絶対命令(マスターオーダー)してみれば⁉ さっきみたいに‼」

「くっ……!」


 駅前で行われる痴話喧嘩(ちわげんか)のようだった。

 振られる一歩手前、いや、もう女の気持ちは決まっているのだが、男だけが気づかない。

 世羅にクランマスターとしての威厳はもはやなく、滑稽といってもいい。


「……やれって言うなら……ふたりはダメ。どっちかにして? この女は殺すけどそれでいいの?」


 男は馬鹿で間抜けだが、女は時に甘すぎるのかもしれない。

 このような裏切りに遭いながらも、月乃は世羅に選択肢を残した。


「それはダメだ……」


 繰り返すが、男は馬鹿で間抜けで、欲深いのだ。

 彼の欲望はひとりでは埋めきれない。三人でも少なすぎる。美少女なんてなんぼ居てもいいのだから。


「話し合おう! きっといい落としどころがある筈だ!」


 小鳥も、多胡ですら「そりゃダメだろ」と口にしようとした――その瞬間だった。


「あるじぃ‼‼」


 泣き声にも似た叫び。同時に炎の竜巻が起きた。波紋のように広がり、周囲の瓦礫(がれき)を焼き払う。


「もはやゆるさん! このクソ浮気もんがぁ‼」


 ずんずんと地団駄を踏む。鬼は小鳥に向かって歩き出した。


「どけっ!」


 その一歩一歩が放つ圧に、小鳥が思わず後ずさる。月乃は目もくれず、コンクリートの床から突き出た折れた支柱を掴み、根本から引き千切った。


「わたくしが()る! この男のイチモツを叩き潰してやるっ‼」

最後までお付き合いいただき、感謝です!

「いいね!」と思っていただけたら、高評価をいただけると嬉しいです!

今後の励みになりますので、もしよろしければ……!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ