絶対命令
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案・執筆の大半を著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
AIを活用しつつも、自己規範にのっとり、執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIを活用しつつ創作性を確保する」を模索する試みでもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「月乃やめろ! どういうつもりだっ!」
「それはこっちの台詞だっ‼」
青と赤の閃光がぶつかりあった。
「月乃っち! やめなって! 気持ちは解るけど落ち着きなぁ!」
「落ち着いていられるか! 殺してやるっ‼」
ヤミ子の説得も届かない。
『オマエなんなの⁉ 世羅くんにひどいことするなよっ‼』
「誰のせいだっ‼」
世羅の壁になろうとボスが行く手を遮るが、影すら踏まさぬ速度ですり抜ける。
ガガガガガッ!
炎をまとって振るわれる刃には、なんの躊躇もなかった。
かすっただけでも頸が飛ぶ。
木々や壁、工場内の設備を切り刻みながら鬼は奔った。
「ちぃ!」
感情任せの太刀筋は単調だが、それゆえに速く重い。
再び┃欲望強化が発動し、折れた両腕が復元、力を取り戻した世羅といえども避けるのが精一杯だった。
「月乃ぉ! 敵を見誤るなっ!」
「女の敵はお前だぁ‼」
月乃の放った蹴りが、地面を抉りながら襲った。
世羅はかろうじて回避したが、背後にあった大型機械はくちゃくちゃに潰れて飛んでいった。
「避けるな浮気者っ‼」
もはや、口調を整えるどころではない。技もなく、理屈もない。ただ感情を爆発させるだけの女がいる。
「クソっ! MONOLITHッ!」
《はい。┃決闘に関する質問があるなら回答します。ただし、一時中断等の対応は――》
「絶対命令だっ! 月乃を止めろ!」
《マスター権限による絶対命令の執行には50000スコアの支払いが――》
「いいからさっさっとやれっ! 命令を強制できるんだろう⁉」
《その通りです。リクエストを受理しました。絶対命令を発令します》
世羅のR.I.N.Gから「ピロリン」と音が鳴った直後だった。
「あああぁぁーーーー‼」
月乃の絶叫が辺り一面に響いた。鬼が鳴いている。
バチバチと電撃が走る。月乃の体がぶるぶると震えていた。
その姿と、悲鳴と、鼻をつく焦げ臭さに世羅がぎょっとした表情で立ち尽くす。
「電撃っ⁉ おい‼ ┃MONOLITH! 何をやっているんだ⁉」
世羅は唾を飛ばしながら左腕にはめたR.I.N.Gを怒鳴りつけた。
《リクエスト通りに絶対命令を発令しています。メンバーが従わない限り続行され――》
「ばかやろう! やりかたってものがあるだろうがっ!」
《手段はケースバイケースです。極度の興奮状態にある変異体を抑える手段は限られて――》
絶対命令はクランマスターの権限のひとつだ。
相応のコストを払うことで配下への命令を“強制”できる。手段に関してはMONOLITHが状況に応じて選択するが、基本的には即効性があり、問答無用になる。
今回は感電により苦痛が用いられた。ねちねち根回し遠回しという手段が取られることはない。それは人間の領分だからだ。
「あああああああぁぁぁぁぁ‼」
体表の水分が蒸発し、薄い煙が立ち昇っている。白目を剥き、歯をガチガチと鳴らしてもいた。
筋肉が痙攣し、動くことはおろか、地面に倒れることすらできない。処刑だと言ってもよい光景だった。
「とにかくやめろっ! 俺の月乃を傷つけるなっ‼」
《絶対命令の中断は可能ですが、その場合でも支払われたスコアの返却は――》
「だまれっ! いますぐやめないかっ‼」
「うああああああ‼」
バギイィィッ‼
何か硬いものが砕け、鎖でも引き千切ったかのような音がした。
同時に月乃の体が焔に包まれ、凝縮し、弾けた。
《“憤怒”トリガーによるカタリシス反応……300%を計測……ブーストリミッターの動作を確認。また絶対命令も強制解除されました》
「上限いっぱい? 強制解除っ⁉ なんだあの姿は……」
角が燃えていた。ほどけた黒髪が腰より下まで流れ、瞳は橙に変わっている。
頬に走る鱗紋様、のぞく鋭い犬歯。硬質化した赤い鱗が肌の上に直接張りついていた。指先も、足先も、爪だ。
服は跡形もなく焼き落ち、周囲も焼き尽くし、爆心地にひとり立つその姿はまさに“赤鬼”だった。
「……お、おい……月乃? だいじょうぶか?」
世羅は狼狽した様子で言った。
彼は欲望強化の作用により、痛みも恐れも感じない。
それでもなお自分の“女”を失う恐怖は耐え難い。
「……だいじょうぶ? だいじょうぶって……なに?」
月乃は俯いたままだった。
角にまとった炎と艷やかな黒髪が、境目なく揺らめいていた。
「月乃……?」
「主どの……あの女が惜しくなったのか?」
「月乃…………?」
「言うことを聞かなければ鞭打つのか?」
「違う……! そんなつもりは……!」
「そんなつもりは……? どんなつもりでわたくしに殺らせようとした……? このクソDV野郎がぁ……」
「月乃……」
月の顔が上がった。燃えるような目が、真っ直ぐに世羅を見ていた。まさに鬼の形相だった。
「あるじぃ! あれもこれも! おまえのせいでしょーがぁ! 浮気者がぁ‼」
「月乃⁉」
「地獄に落ちろっ‼」
ドンッ――と、地面を抉りながら鬼が駆け出した。
赤い残像だけを残して一直線に迫った。
「おまえがなぁっ‼」
ドオォォォンッ!
ボス、改め、小鳥が突如として現れた。肩を突き出し、月乃に真横からタックルをかますと、交通事故さながらに弾き飛ばされた。
月乃はグルングルンと横回転しながら、錆びた大型機械を巻き込んで跳ねた。金属が軋み、砕けたコンクリートと鉄くずが宙を舞う。
「世羅くん! 大丈夫⁉ あのバカはボクにまかせてっ‼」
砂埃と鉄くずが降り注ぐ中、小鳥は大きな足音を鳴らしながら世羅に駆け寄った。
「お、おい……小鳥……」
彼女の破壊された装甲はそのまま、まるで巨人に飲み込まれかけているような風貌だ。
だが、その姿はそっくりそのまま、コンビニの常連少女。
前髪で隠れがちとはいえ、整ったその顔立ちを世羅が見誤るはずがなかった。
「あのブスが君にはふさわしくないって思い知らせてやるっ‼ 着岩っ‼」
胸の前で巨大な拳を打ちつけ合うと、「ゴンッ」と大きな音がした。
同時に床が低く唸った。砕けたコンクリートと瓦礫が小鳥の足元へ吸い寄せられ、失った装甲を埋め直すように積み重なる。
ぎし、と軋みながら鉄の重みが戻り、再び巨大なゴーレムと化した。
『世羅くんはそこで寝てなっ! あいつはぶっ殺すっ!』
「小鳥ぃ⁉」
世羅の声を置き去りに巨体が宙を舞った。
ぐちゃぐちゃに変形した大型機械の隙間から、這い出る月乃に向かって飛び込んで行く。
「やめろぉ! 争うなっ! そんな必要はないぃ!」
手を伸ばしたその先でふたりの女が争っている。
罵詈雑言と「泥棒猫」といった単語が飛びかうそのさまは、浮気現場そのものだ。いや、事実そうなのだが、まったく洒落にはなっていない。
鬼とゴーレムが生み出す青と赤の奔流が辺りを照らした。
ふたりを止めなければ――このままではどちらかが死ぬまで争い続けかねない。そんなことになんの意味もない。
「おらぁ‼」
多胡が真後ろの死角から現れ、世羅の頬に拳を叩き込んだ。完全に虚を突かれた一撃だった。
「くっ……多胡ぉ! おまえに構ってる暇はっ!」
頬を殴られたことより、足を止められることのほうが問題だった。今は月乃と小鳥を止めることだけが重要で、多胡に構う余裕はない。
無視して横を通り過ぎようと踏み込んだ。
それを咎めるように、多胡の背中から六本の影が伸びた。
「あぁん? 寝ぼけたこと言ってんじゃねーぞぉ世羅ぁ! いまは決闘の最中だろうがっ!」
「ちっ……!」
反論しようがない正論だった。ここまで来て“ブレ”てしまった世羅。
だが、多胡は最初から最後まで、世羅が気に食わないという姿勢で一貫している。
その差は欲望強化の数値として現れていた。
多胡は既に200%を越えている。対して世羅は、辛うじてブーストを維持できているに過ぎない。
欲望に迷いは禁物だ。
『ブス! ブス! ブス! ブス! 見てくれだけで性格悪いんだよおまえ‼』
「だから鏡をみればよくない⁉ ブスはおまえだろ‼ ブスっ‼」
月乃と小鳥はただ殴り合っていた。防御なく、真正面から拳をぶつけ合う。
一撃一撃の余波で空間が震える。常人なら間違いなく即死の威力だが、交互にビンタでも張り合うようなノリだった。
『世羅くんに付きまとうなブスっ‼』
「それも鏡に向かって言ってれば⁉ それにさぁ! あんな浮気者くれてやるけど‼」
月乃の手にすでに野太刀はなく、どこに落としたのかもわからない。しかし、そんなことは関係がない。
完全なる鬼と化した彼女にとって、拳は刃と変わらない。
「おいぃ! ボスっ! なにやってんすかぁ⁉ コイツのこと欲しいんでしょ? だったらそんな奴を相手してる暇あるんすか⁉」
世羅、月乃、小鳥、多胡。決闘はこの四人によって決着することはもはや間違いない。
皮肉なことに、いま一番冷静なのは多胡だった。
『そうだった! ボク……世羅くんを倒さなきゃなんだ……』
小鳥は我に返り手を止めた。
多胡の言う通りなのだ。世羅を手に入れるために始めた決闘なのだから、鬼一匹に構っている暇はない。
『おい! おまえとの勝負は後回しにしてやる! 今から世羅くんを倒すけど邪魔するなよっ!』
小鳥は月乃に指を差し、見下すように言った。
月乃は牙をギリギリと嚙みしめ、肩を震わせる。
「勝手にしろ! わたくしはもうしらん! 関係ないっ!」
いつの世も忠義など儚いものだ。多くのケースにおいて報われない。
上の都合ひとつでひっくり返される、その程度のものでしかない。
「まて! 月乃! それじゃあ困るぞっ! 頼む手伝ってくれ!」
「いやだっ!」
「月乃っ!」
「いやだって言ってるでしょ⁉ どうしてもって言うなら絶対命令してみれば⁉ さっきみたいに‼」
「くっ……!」
駅前で行われる痴話喧嘩のようだった。
振られる一歩手前、いや、もう女の気持ちは決まっているのだが、男だけが気づかない。
世羅にクランマスターとしての威厳はもはやなく、滑稽といってもいい。
「……やれって言うなら……ふたりはダメ。どっちかにして? この女は殺すけどそれでいいの?」
男は馬鹿で間抜けだが、女は時に甘すぎるのかもしれない。
このような裏切りに遭いながらも、月乃は世羅に選択肢を残した。
「それはダメだ……」
繰り返すが、男は馬鹿で間抜けで、欲深いのだ。
彼の欲望はひとりでは埋めきれない。三人でも少なすぎる。美少女なんてなんぼ居てもいいのだから。
「話し合おう! きっといい落としどころがある筈だ!」
小鳥も、多胡ですら「そりゃダメだろ」と口にしようとした――その瞬間だった。
「あるじぃ‼‼」
泣き声にも似た叫び。同時に炎の竜巻が起きた。波紋のように広がり、周囲の瓦礫を焼き払う。
「もはやゆるさん! このクソ浮気もんがぁ‼」
ずんずんと地団駄を踏む。鬼は小鳥に向かって歩き出した。
「どけっ!」
その一歩一歩が放つ圧に、小鳥が思わず後ずさる。月乃は目もくれず、コンクリートの床から突き出た折れた支柱を掴み、根本から引き千切った。
「わたくしが殺る! この男のイチモツを叩き潰してやるっ‼」
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