尾行
■ 本作について
本作は 世界観設定・アイディア構築・プロット立案をすべて著者自身が行っており、執筆の補助ツールとしてAIを活用しています。
■ 活用の具体的な範囲
自己規範にのっとり制作という一面はありつつも執筆であることは放棄しない方針です。
興味があればこちらをご覧ください→ChatGPT活用の具体的なイメージ[https://note.com/makenaiwanwan/n/nc92cf6121eb3]
■公開済エピソートのプロットを公開中
「主体性・創造性・発展性・連続性」を確保している事の査証が目的です。
https://editor.note.com/notes/n52fb6ef97d70/edit/
■ AI活用の目的とスタンス
本作は 「AIをどこまで活用できるか?」を模索する試み でもあります。
ただし、創作の主体はあくまで自分 であり、物語の本質やキャラクターの感情表現にはこだわりを持っています。
また、すべてを自身の手で執筆される方々を心から尊敬しており、競合するつもりはありません。
「ねぇねぇ、マスター? 気づいてるっしょ~?」
「ああ。あんな下手な尾行、気づかない方がおかしい」
世羅とヤミ子、学校からの帰り道。
夕暮れの歩道を並んで歩きながら、ふたりはうしろを振り返ることなく“尾行”に気づいていた。
通りをひとつ挟んだ向こう側。
距離にしておよそ五十メートル。
数人の男たちが、着かず離れずこちらを追っている。
隠れるつもりはないのか、ただ下手なのか。
どちらにせよ、これほどわかりやすい尾行に気づくなという方が無理な話だった。
「へへ~♡ やっぱマスターに送ってもらって大正解って感じ~?」
「そのようだな」
ヤミ子はわざとらしく世羅の腕に自分の胸を押しつける。
そのまま腕を抱き寄せ、甘えるように肩へと頭を預けた。
アイドルとは思えないほど堂々としたスキンシップ。
多湖にリーク写真をばら撒かれ、現在進行形で炎上していることなど、まるで気にしていない。
世羅もまた、そんなヤミ子を払いのけることなく、されるがままに歩き続ける。
「でさー、マスターどうすんの~?」
「尾行は撒くか……本体を叩くか。いずれにしろ、何かしら手を打たないとな」
ヤミ子は小首を傾げ、にへらと笑いながら言った。
「ん~……ま、尾行もあるけどさ? あーしが気にしてんのは借金の方じゃね?」
「……そっちの話か」
世羅は短くため息をついた。
「コンビニのシフトを増やすしかないな。それに、向こうから来てくれるなら、賞金稼ぎも楽かもしれない」
そう言いながら、後方をあるく男たちへ視線を流す。
「え、それフツーにヤバくない? 顔バレのままやる気なん?」
「ああ、そうなるな」
「さすがにやめときなよ~? いま何でつけられてんのかは知らんけど、そんなんやったら尾行どころじゃなくなるっしょ~?」
ヤミ子の声音には、笑いが交じりながらも、どこか冷静な“現実感”がにじんでいた。
「……ふむ」
一理ある。世羅はそう思った。
尾行してくる連中を潰し、報復がくるならそれも“芋づる式”に仕留めればいい。
そんな風に、半ば本気で考えていたのは事実だ。
けれど、リスクは大きい。
自分だけならまだしも、クランメンバーたちにまで被害が及ぶ可能性は否定できない。
そもそも、今日ヤミ子と共に帰っているのは、その“警戒”の一環だった。
多湖に襲われたのは、つい昨日今日のこと。ほとぼりはまだ冷めていない。
実際、いまもこうして、意図の知れぬ尾行を受けている。
五百万という金額が、冷静な判断力を蝕んでいる――世羅はそう感じ、静かに己を律した。
「ほらほら~! マスターこれみてみ!」
ヤミ子が得意げに左腕を掲げると、R.I.N.Gが青い光を放ち、空中にホロパネルが展開された。
そこに表示された“ある数値”に、世羅は目を細める。
「百二十万スコア……これはなんだ?」
「は? “なんだ”って、なんだぁ? あーしの個人口座に決まってんじゃん! アイドル活動で貯めたスコアっしょ! すごくねぇ!?」
ドヤ顔全開で胸を張るヤミ子。
炎上中であることも、さっきまでの借金の話題も、全部吹っ飛ばす勢いだった。
ヤミ子は第三学園の一年生。十六歳。
地下アイドルとしての活動歴は、まだ一年そこそこ。
見た目も派手で、ギャルらしくセルフメンテにもスコアを惜しまない。
それでいて、この貯金額は大したものだろう。
世羅はわずかに感心しながら、目を細める。
「全部はムリだけどさ~、とりま百万だけマスターにあげるっ! 返済の足しにしな~?」
ヤミ子はR.I.N.Gを操作しながら、お小遣いでも渡すかのようなノリで言い放った。
その無邪気な笑顔に、世羅は眉ひとつ動かさず言い返す。
「いらん」
「なんでぇ!?」
「これは……私の問題だからな」
その声音に、ヤミ子が言葉を詰まらせる。
ボロアパートの修繕費、その他諸々。借金総額、五百万スコア。
MONOLITHの審査によって提示された支払いプランは、利息十パーセント、三十回払い。
月々の返済額は十八万三千三百三十三スコア。
借金の徴収は、生活よりも、命よりも、優先される。
その上で、彼には“クラン”がある。クランには、維持費という定期支出が存在している。
毎月規模に応じた額のスコアをMONOLITHに納めなければならず、一度でも滞れば、その場で即座に“解散”処理が行われる。
クランが消えるということは、忠誠を誓わせた三人の少女たちを“手放す”ことを意味する。
彼女たちは世羅の“独占”から解き放たれ、自由になるかもしれない、他者の手に渡るかもしれない。
ひょっとすると自身のクランを持ち、敵として現れるかもしれない。
それは彼にとって、何よりも許せないことだった。
「てか、借金返せないとかフツーにヤバくね~?」
その言葉に、世羅は昨晩のやり取りを思い出す。
相手はソフィアだった。
彼女は五百万スコアを一括で立て替えるという提案をしてきた。
利息分が浮くから、そちらの方が合理的だと。
だがその代わり、立て替えた金額を完済するまでの間、クランマスターの権限を移譲する。そういう条件を提示された。
教師の給料で五百万をぽんと出せるものかと、世羅は正直驚いた。
マスター権限を渡すということは、ソフィアの手足となり、こき使われるということに他ならない。
世羅も彼女の素性は測りかねている。
尋常ではないハッキングスキルに、スパイのような自宅――案外、本当にスパイなのかもしれない。
その可能性は、十分にありえる。
クランマスターという立場は、絶対だ。
絶対命令であれば、どんなことでも通る。拒否はできない。
実際、世羅は三人の少女たちに、さまざまな命を下してきた。
身の回りの世話に始まり、ギャング狩りの手伝い。極め付きは、夜の相手まで。
女性にとって最終ラインとも言える役目まで、僅かなスコアの支払いで命じることができる。
それがクランマスターという存在であり、それを現に実行しているのが世羅だった。
それだけのことをさせている自分が、マスター権限をソフィアに奪われたら。
自分が、どれだけ“こき使われる”か。支配され、搾り尽くされるか。
想像に難くないし“それ”だけのことをさせている自覚がある。
だからこそ、彼はソフィアの提案を迷わず拒否したのだ。
「いっそ、ギャングをまるごと潰すか?」
世羅は淡々と呟いた。
正式な“決闘”をMONOLITHに申請し、勝利すれば相手クランの“すべて”を奪う“権利”が与えられる。
このエリアを仕切るギャングクラン、“アイアンメイデン”。
その規模であれば、五百万スコア相当の資産を抱えていてもおかしくはない。
「えっ? マジ? 本気で言ってるん?」
ヤミ子が、興奮と不安の入り混じった表情で問い返した。
「本気だぞ……だが――」
世羅はため息まじりに現実を口にする。
「決闘を仕掛けるにも、スコアが必要だ。いまの私には、その賭け金のBETすらできない」
この島における“決闘”のルールはシンプルで、そして残酷だ。
勝てば、相手のすべてを奪える。スコアも、メンバーも、拠点さえも。
どんなに小さなクランでも、大きなクランに勝てば一発逆転がある。
だが、仕掛ける側には、規模に応じたスコアを支払う義務がある。
つまり、“持つ者”が常に有利という、絶対的な構造なのだ。
「向こうから仕掛けてくれれば、無料なんだがな」
「うちら四人しかいないし~? 仕掛けても、向こうに得なくね?」
ヤミ子が笑いながらそう返す。
彼女の言い分はもっともだが、世羅に対してアイアンメイデンが決闘を仕掛ける。
そのための“尾行”であるということを、ふたりともまだ知らない。
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