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衆の子、毛利の子  作者: ルビー
1章・戦国に生まれて
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4/5

新しい住処

父の毛利隆元との対面を果たしてからしばらくしたある日。

俺はいつもの通り助六との稽古に勤しんでいた。

稽古にも熱が入り、助六が俺に向かって木刀を振り上げた。

その時、屋敷の玄関から男の声が聞こえた。

「国司殿はご在宅か。」

助六は振り上げた木刀をすぐさま下ろし玄関へ向かっていった。

その姿は少しではあるが恐縮しているような様であった。

助六は自分が席を外しているときに俺が稽古をさぼれば叱ってくる。

男のことなど気にせず、おとなしく木刀を振っておく。

しばらくすると屋敷の中から助六が俺に向かって話しかけた。

「興丸よ。こちらに来なさい」

俺はすぐさま声のする部屋へ向かった。



「助六。どうしたのですか?」

俺はそう言いながら部屋に入った。

するとそこには助六と、見知らぬ男が座っていた。これは、さっきの声の男だろうか。

助六は随分畏まっている様子であった。

「興丸。ここに座りなさい。」

助六は見知らぬ男のちょうど正面のところに座るように指示してきた。

俺は指示されたところに座り見知らぬ男の目を見る。

「…」

その場は静寂に包まれた。

「お前が兄上の。」

しばらくして見知らぬ男が口を開いた。

そして続けざまにこういった。

「おれの城に来い。今からだ。俺がお前を使えるようにする。」

こういうと見知らぬ男は立ち上がり部屋を出ていこうとする。

俺は呆気にとられた。

誰だこの男は。名前も名乗らないまま自分の城に来いだの無礼にも程がある。

助けを求めようと助六のほうに目を向けるとじっと目を閉じている。

これは俺が見知らぬ男の城に行くことを了承しているということか。

「何をぐずついておる。ついてこい。置いていくぞ。」

見知らぬ男から声を掛けられるが、俺はこの状況を全く理解できていない。

最近こんなことばかりだ。



しびれを切らした見知らぬ男に手を引かれ、俺は助六の屋敷の前に連れ出された。

ここで見知らぬ男が言った。

「お前、馬には乗れるか。」

「助六に基本は教わっています。」

俺はびくびくしながらもそう答えた。

俺がそう答えると見知らぬ男は俺を助六の屋敷前に止めていた馬に乗せ、自分はもう一頭の馬にまたがりこう言った。

「助六の指導を受けたのであれば問題ない。ついてこい。」

そういうと手綱を引き急スピードで馬を走らせ始めた。

屋敷前から助六の姿は見えない。部屋での様子から俺がここに残るという選択肢はないのだろう。

俺は意を決し手綱を引く。

遠くに見える見知らぬ男の馬を必死に追いかけた。



助六の屋敷を出てから分かったことは、見知らぬ男は意外と優しいということだ。

馬に慣れていない俺のために休憩を挟んでくれている。竹筒の水も分けてもらった。

俺を引っ張って行ったときには恐ろしい人かと思っていたが、その予想が外れて少しほっとしている。

小休憩を繰り返しつつ俺と見知らぬ男はある城についた。

俺と見知らぬ男は馬を降りる。

城門が開けられ、見知らぬ男が場内へと入っていく。

俺は急いでそのあとを歩いていく。

これからなにが起こるのか。そのことだけを考えながら後ろをついていった。



「ここで待ってなさい。」

見知らぬ男はそういうと部屋から立ち去った。

この光景には憶えがある。父に初めて会った日もこうであった。

あの日のように、俺に大きな転機が訪れるのだろうか。

少しすると見知らぬ男が戻ってきた。

軽装に着替えている。

「日野山城へよくぞ来た。歓迎しよう。」

見知らぬ男がそう言った。

俺はここに来るまで疑問に持っていたことを尋ねた。

「ありがとうございます。ところであなたは誰ですか?」

すると見知らぬ男は一瞬驚いた顔をした後、姿勢を正した。

「おれは吉川元春という。この日野山城の城主で吉川家の当主だ。

 お前の父である毛利隆元の弟でもある。」

俺の父親の弟。俺の叔父か。

「今日からここはお前の住処になる。そう思っておけ。

 それと、これからこの城でお前が使い物になるように鍛える。そのことを心得ておくように。」

先ほどの様子とは違い低いトーンで言ったその言葉に俺は戦々恐々とせずにはいられなかった。

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