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第参話 ツキの都 ①




第参話‐ツキの都




ムーンメトロポリス メインターミナル




「とうちゃーく!お疲れ様!」

 


 僕たちは月の地に降り立った。



「まだこれから車で移動。」

 


「ええ。市内を移動するのにまた少し時間がかかるけど。」



「そうなんだね。」



 ターミナルから出ると、クラシックな黒い車が数台止まっていた。

 僕たちはそれに乗り込んだ。



「大きな荷物などは別で移動させるわ。同じくらいに着くでしょうから安心して。」



「うん…、それよりなんかすごいね…。急にお金持ちになったみたい。」



 これまたこんな形で、こんな高級車に乗る日が来るなんて、と僕は思った。



「そう?こんな2、300年前のクラシックなデザインなんてカッコイイと思うの?」



「うーん、やっぱりお金持ちとかお偉いさんが、ずっと昔から乗っているイメージだから、ロマンがあるっていうか…?」



「ふーん、そういうものなのね。まっ、性能は2、300年前なんかよりずっと上だけどね!」



「なんだ?アンドロイドはすぐそれなの?」

 僕は、今やさっきまでのアオイと話してきた中で、ふと思った。



「なによ。私自身が、人間の科学の結晶なんだから、人間の作り出した技術を誇らしく思って何か悪いことでも?」



「いや、そうじゃないけどさ…まあいいや。君はそんな風に思っているんだ。」



「私も、そう思っている。人間の知恵は素晴らしい。私たちが人間より、早く計算できることも、遥かに力が強いことも、全て、人間が作り出した。だから人間も、もっと誇りに思っていい。キョウヤ。あなたは父を誇りに思ったことはないの。」

 と、ユカリに問われる。



「父さんを誇りに…、どうだろう。父さんはすごい人だって大人が言うから、僕も父さんのことはすごい人なんだって思っていたけど、ほんとはよくわかってないんだ。父さんがどんな人だったのか。何がすごいのか。もしかしたら君たちより、僕は父さんのこと知らないのかもしれないな…。」


 そうだ。僕は全然父さんのことを知らない…。本当にシンヤ・イザナギは僕の父親だったのだろうか、と思うまでに。



「そう…。」

 ユカリはそう言いながら僕から目を反らし少し俯いた。



「それじゃあ今度から私たちが博士のこと色々教えてあげるわ!私たちだって、伊達に博士にプログラムされてないわ。」

 とアオイ。



「あはは、そうだね。」



「ちなみに、私たちのシリーズのNO.04までは博士自身が、性格や顔のデザインや何から何まで全てプログラミングしたのよ。つまりもう私たちは博士の子も同然って感じね!」



「そ、そっか。じゃあ兄弟だね…ははは…。」



 僕は内心、こんな元気でうるさい兄弟嫌だけど、と思った。







 そんなことを話しているうちに車は、ムーンハイウェイなる、街を見下ろせるくらい高い位置にある首都高速道路を走っていた。

時刻は午後9時前。月面コロニーの夜は、街の煌びやかな光で溢れ、第七コロニーとは比べ物にならないくらいであった。



「うわあ…。綺麗…。」



「この辺りはエリアBブロックC-1ね、眠らない街と言われている街よ。」



「なるほど。確かに、カジノっぽい建物が多いね。」



「私たちのこれから行く場所はエリアAブロックF-2だからあと少しで着くわ。」





 その後も車はしばらくムーンハイウェイを走り、第七コロニー出発からおよそ4時間半。ようやく目的地、地球連邦本部の敷地内に到着したようだ。





 Gate B と書かれた大きなゲートを通過し、トンネルをしばらく走ると、僕たちはバスターミナルのようなところに降車した。

 すぐ側には大きな建物がびっしり聳え建っていた。



「こ、ここ?」



「ええ。と言ってもここは連邦軍本部であって、全体のごく一部よ。地球連邦本部全体は、エリアAの全ブロックだけど、立ち入り禁止区画ばかりだからむやみに探索しないことをお勧めするわ!」



「そんなこと言ったって、道に迷って侵入しちゃうかもしれないよ!こんな複雑な場所…。」



「それは大丈夫。あなたにはずっと私たちがついているから。」

 とユカリ。



「そーよ!じゃあ、行きましょ!多分レイコが待ちくたびれているわ!」



 アオイがそそくさと歩き出す。



「え?あっ、ちょっとまって!」



 僕たちは近くの地下入り口なるゲートに入って行った。






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