第壱話 接近するモノ ②
それから一週間後
「なあ、キョウヤ。フリエルさん、お前に気があるんじゃないのか?」
とリュウジがニヤニヤしながら言う。
「ぼ、僕なんかに…?まさか!」
「でも、フリエルさんずっとお前のこと見てないか?それによく話しかけてくるだろ。」
「え、そうなの?まあ、確かによく話かけられるけど…。」
「やっぱそうじゃねーか!ほら、お前ヘタレでもやしだけど、顔はまあまあいい方だし?ハハハ」
と、リュウジはヘラヘラ笑っている。
「あ、合ってるけど…!いや、顔はわかんないけどさ…。でも僕みたいなこんなやつ好きになったってどうせ…。」
「まあ、知らねえけど、もしそうだったらフリエルさんの方から言ってくるだろ。」
でも僕は正直、いい気はしなかった。それに面倒くさいかも、とまで思ってしまった。僕は別に恋愛なんて興味ないし。というより、育った環境のせいか、人との関わり自体が面倒くさいと感じてしまう。学校の友達も、親戚も。きっと僕がこんな性格になってしまったのも両親のせいなんだろう。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
そう話しかけてきたのは、噂のマリア・フリエルだった。
「よお、フリエルさん!なんか用か?」
「いえ、リュウジくんじゃなくて、キョウヤくんに…。」
「僕?」
「ねぇ、今日放課後、少し教室に残ってほしいの。いいかな?」
「いいけど…なに…?」
「と、とりあえず今はそれだけなの!それじゃあまた後で!」
と、フリエルさんは走って行ってしまった。
「お、おい…キョウヤ!噂をすればじゃねーか!!」
リュウジに激しく肩を揺さぶられる。
「や、やめてよ!痛いよ!というか、そんなんじゃないよきっと…。」
「今の走って行く時の真っ赤な顔見たか?絶対そうだろ~。まあ頑張れよ!!」
「はぁ…。」
放課後
黙って帰ろうとも思ったけど、さすがにここで帰ったら相手が可哀想すぎる。少しだけ話を聞いてから帰ろうと思いながら教室に残った。
「ごめんね。残ってもらって。」
フリエルさんが来た。
「別に大丈夫だけど…、どうしたの?」
僕がそう言うとフリエルさんは少し恥ずかしそうに下を向いて話しはじめる。
「あの…、キョウヤくんは…今、付き合ってる人いる?」
まさかとは思っていたが、リュウジの言った通り本当にこの手の話だった。
「いないけど…。」
「それじゃあ、好きな人は?」
「え…いない…かな。どうして?」
もうだいたい想像はつくが、知らない振りをしてみる。
「えっとね、私…キョウヤくんのことが好きなの…!だからその、もしよかったら付き合ってほしいなと思って…。」
「そ、そっか…。でも、ごめん。僕、今そういうことに興味ないんだ。僕を好いてくれてる気持ちは嬉しいんだけど…ごめん。」
言ってしまった。なぜかわからないが罪悪感が込み上げてくる。
「お願い!今は私のこと好きじゃなくていいから!だから付き合うだけ…お願い…。」
「…ごめん。」
こんな時に、泣かれたら嫌だな、なんて思ってしまう僕は本当に最低なやつかもしれない。
「そう…。わかったわ…。」
彼女はそう言うと、帰るのだろうか、スクールバッグを手に取った。
「それじゃあ、仕方ないわね…。キョウヤくん……。死んでくれる…?」
次の瞬間、スクールバッグからナイフを取り出し振り上げ、僕に襲いかかって来た。
「フリエルさん!?」
僕は咄嗟のことに、腰を抜かし、床に手をつき、後ろへ倒れてしまった。
その瞬間。
バンバンバン!
と、数回教室内に銃声のようなものが響き渡った。
僕は混乱していて、固まったまま動けなかった。
「はあ、もっと綺麗に殺るつもりだったのに、まさか色仕掛けでくるとはねぇ。」
我に返ると、目の前には何発か銃で撃たれたフリエルさんが倒れていた。が、血は流れておらず、傷口からはバチバチと電気が火花を散らしている。
「アンドロイド…?」
そしてそのすぐ側にはなぜか銃のようなものを持ったニノミヤさんが立っていた。
「大丈夫?立てる?」
彼女は腰を抜かした僕に、手を差し伸べる。
「これは、どういうこと…?君はいったい……。っ!後ろっ!!」
手をつかもうとすると、まだ息があったのか、マリア・フリエルがニノミヤさんに襲いかかった。
「しっつこい!」
その瞬間、ニノミヤさんの回し蹴りが、マリア・フリエルの頭を直撃し、破壊した。彼女の首は吹っ飛び地に落ちた。
「さ、もう終わったわよ。早く立って。」
僕は今度こそ、その手を取り、立ち上がった。
「これは…?どういうことか…、ちゃんと説明してくれないかな。」
と、僕はニノミヤさんに尋ねるが、ニノミヤさんは、マリア・フリエルの粉砕された体とにらめっこしている。
「待って、後できちんと話すわ。…うーん。Type-Eかとも思ったけどやっぱりただの戦闘用ねぇ。誰かの指令で動いていたんだわ。」
「せ、戦闘用…?」
僕はさらに訳が分からなくなった。
「こちら、NO.02。目標を破壊。沈黙を確認。近辺に仲間がいる可能性があるので今後も厳重に警戒せよ。回収班には至急回収を要請する。後、総員速やかに帰還準備。」
と、急にニノミヤさんが自分の左手首に向かってぼそぼそと話し始めた。
「な、なんなんだよいったい…。」
「ごめんなさい。こんなことになった以上、ここも安全じゃないの。あんたには一緒に来てもらうわ。今からすぐに、荷物をまとめて頂戴。」
「え?帰るってこと?」
「違う。あんたが今世話になってる家から荷物をまとめてってこと。月へ行くのよ。」
何を言っているんだこの人は。と僕は思った。
「待ってよ、さっきから全く話が見えないんだけど!何で!どうしてそんな急に!」
「はぁ…。今はそんなこと長々と話してる場合じゃないの!狙われてんのよあんたは。命をね。だから一刻も早くこのコロニーから出て、より安全な場所に移動しなきゃなんないの。」
狙われてる?僕が…?
「一体何から狙われるってんだよ、こんな僕が!」
「だから難しい話は後!とりあえず、あんたの父親から、あんたを守れって言われてるの。だからほら、早く行くわよ!」
そう言うとニノミヤさんは強引に僕の腕を引っ張り歩き出した。
「父さんが…?わ、わかったよ…!だから引っ張らないでって!」
いや、わかってない。僕は彼女の言ってることは全くわからないが、さっき彼女に命を救われたことは確かだ。今は彼女に従っておいた方が良さそうだ。
「急いで支度するのよ!」
結局、僕は彼女に言われるまま、早急に親戚の家から荷物をまとめ、ここを出ていく為の、色々な手続きを済ませた。




