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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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議場に落ちた赤い影 ――県庁の赤いファイル

神戸の山手に建つ兵庫県庁は、昼も夜も同じ顔をしている。

白い壁、規則正しい窓、正面玄関に掲げられた県章。

その内部で動くのは、書類と数字と、無数の思惑だ。


災害対策費。

地域振興補助金。

名目はいつだって美しい。


だがNSTが掴んだ“赤いファイル”は、その裏を示していた。


ヒロ室西日本分室。

彩香が腕を組む。


「公共事業の入札、三社が輪番で落札。

裏で一社に戻っとる」


悪党は県庁の中堅幹部。

総務系の実力者。

議会答弁もそつなくこなし、記者対応も巧み。

だが元県知事派の資金源を、県予算から静かに吸い上げていた。


「証拠は?」


彩香の問いに、澪香が静かにノートPCを開く。


「ここに」


迫田ツインズの妹、澪香。

冷静沈着、理系脳。

双子の姉・澄香が前線型なら、澪香は深層型。


彼女が掴んだのは、改ざん前の原本データ。

補助金決裁文書の“赤い修正履歴”。


「改ざんログ、消したつもりやったみたいですけど」


澪香は淡く笑う。


「サーバーは、正直です」


舞台は兵庫県議会本会議。

議場は緊張に満ちている。

今日のテーマは災害復興予算。


悪党幹部は答弁席に立つ。


「本県の予算執行は、厳正かつ透明性を確保しております」


拍手が起こる。


その瞬間。


議場後方のモニターが一瞬だけノイズを走らせる。


澪香の指がキーボードを叩く。


「接続完了」


スクリーンに映し出されたのは、赤字で塗りつぶされた文書履歴。


改ざん前の金額。

改ざん後の数字。

送金先の企業名。


ざわめき。


議長が顔を上げる。


「これは何だ」


悪党の声が震える。


「システムの不具合です!」


さらに音声データ。


「予算は調整できる。

どうせ議会は通る」


本人の声。


議場が騒然となる。


県議の一人が立ち上がる。


「説明を求めます!」


澪香は冷静に次の資料を投影。


海外口座。

関連企業株式の持ち株比率。


悪党の顔色が変わる。


「これは……捏造だ!」


だが赤い修正履歴は、消せない。


「サーバーは正直です」


澪香は無線で呟く。


「嘘をついたのは、人です」


議場内は混乱。


そのころ。


議会中継の特設ブースで、さつきがマイクを握っている。


「兵庫県議会から中継です。

本日は災害復興予算の審議が――」


背後のスクリーンに突然、赤い修正履歴が映る。


さつきが一瞬だけ目を見開く。


「……何か予期せぬ映像が流れています」


だがプロ意識が勝つ。


「現場は騒然としています」


議場では悪党が後退する。


椅子に足を引っかけ、

資料をばらまく。


赤い修正履歴が印刷された紙が、床に散らばる。


“赤いファイル”が物理的にも舞う。


県議の怒号。


「辞任しろ!」


悪党は答弁席で立ち尽くす。


ネクタイが曲がり、

額に汗。


ついにはマイクがハウリングし、

声が裏返る。


議長が静かに告げる。


「本件、調査委員会を設置する」


議場の視線が一斉に悪党へ。


逃げ場はない。


さつきがカメラに向かって言う。


「歴史的瞬間かもしれません」


その背後で、悪党が警備員に囲まれる。


まるで舞台の終幕。


ヒロ室西日本分室。


彩香が報告を聞く。


「……ようやった」


澪香は淡々。


「数字は裏切りません」


双子の姉が肩を叩く。


「ナイスや、澪香」


窓の外、港の灯り。


玲奈はまだ戻らない。


だが県庁の腐食は一つ剥がれた。


県章は、まだ立っている。


赤いファイルは閉じられた。

だがNSTの影は、次の書類を探している。

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