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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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相場は嘘をつかない、嘘をつくのは人間だ

金は、海より深いところで流れている。


三宮の一等地。

ガラス張りのビルの高層階に、国内最大手の証券会社・県内中核支店が入っている。

数字に厳しい。ノルマに厳しい。

社員は笑顔だが、背中には常に目標達成率が貼りついている――そんな会社だ。


ヒロ室西日本分室。


彩香が机に広げたのは、株価チャートと送金履歴。


「不自然やな」


澪香が画面を拡大する。


「急騰前に特定口座へ集中買い。売り抜けは一時間後」


あかりが腕を組む。


「出来レースや」


問題の銘柄は、元県知事一派と繋がる再開発関連企業。

支店長が裏でインサイダー情報を流し、特定顧客に利益を誘導していた。


「投資は自己責任――その裏で仕込みか」


彩香は短く言う。


「今回は、あかりと澪香や。表に出ず、刺す」


あかりが頷く。


「了解」


数日後。

支店内で“顧客向け投資説明会”が開かれる。


会場はホテルの宴会場。

整然と並ぶ椅子。

高齢の投資家たち。

若いサラリーマンもいる。


壇上に立つ支店長。

仕立ての良いスーツ。自信満々の声。


「我が社の分析力は、常に市場をリードしております」


スクリーンにグラフが映る。


だがその裏で、NSTは動いている。


澪香が内部Wi-Fiへ侵入。

あかりが偽の顧客として最前列に座る。


支店長は続ける。


「こちらの銘柄は、我々がいち早く見抜き――」


その瞬間、スクリーンが切り替わる。


売買履歴一覧。


特定口座への集中購入。

売却タイミングの一致。


会場がざわつく。


「なんやこれ?」


支店長が顔を引きつらせる。


「これは……誤作動です」


次の瞬間、音声が流れる。


「情報は先に握った者の勝ちだ。顧客には夢を見せとけ」


支店長の声。


会場の空気が凍る。


あかりがゆっくり立ち上がる。


「夢やなくて、罠やろ」


関西弁が、会場に響く。


支店長は汗をかきながらマイクを握る。


「名誉毀損だ!」


澪香が追加データを投影。


海外送金記録。

元県知事側企業とのメール。


「数字は嘘つきません」


澪香の声は冷たい。


会場後方の顧客が叫ぶ。


「説明せえ!」


「俺らの金、何やと思っとる!」


支店長は後ずさる。

背後のスクリーンに映る“営業成績全国トップ”の文字が、滑稽だ。


そのとき、会場入口からカメラとマイク。


「こちら神戸放送、偶然通りかかりましたが――」


さつき。


情報番組の“経済コーナー”取材でホテルに来ていた。


スタッフが慌てる。


「なんか騒ぎですよ!」


さつきは状況を察しつつも、表情は穏やか。


「現場は投資説明会の最中、何らかのトラブルが――」


カメラが壇上を映す。


支店長、完全に赤っ恥。


汗だくでネクタイを緩め、言い訳を繰り返す。


「これは誤解です!私は会社のために!」


あかりが小さく呟く。


「会社ちゃう、自分や」


顧客の怒号。

フラッシュ。


支店長は足をもつれさせ、プロジェクターのコードに引っかかる。


――ガタン。


壇上で転倒。


スクリーンに自分の“裏メール”が映ったまま。


社会的に吊るされる。


数日後、金融庁の調査が入り、支店長は更迭。


ヒロ室西日本分室。


彩香がテレビを消す。


「これで一つ」


あかりが肩を回す。


「撃たれるより、精神にくるな」


澪香が淡々と。


「でも効きます」


玲奈の名は出ない。


だが、資金の蛇口はまた一つ閉じた。


三宮の夜。


株価ボードが静かに光る。


相場は嘘をつかない。


嘘をつくのは、人間だ。


NSTは影のまま、

次の数字を追う。

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