鋼の街に響く断罪
神戸の海沿いに、巨大な高炉が赤く燃えている。
昼も夜も火を絶やさず、鉄を溶かし、街を支えてきた企業。
造船、自動車、建設、そしてラグビー。
企業チームは全国に名を轟かせ、泥と汗で鍛えたスクラムは“鋼の誇り”と呼ばれている。
その誇りの裏に、腐食があった。
ヒロ室西日本分室。
彩香が資料を机に広げる。
「特殊鋼が横流しされとる。軍需転用可能なグレードや」
輸出先は第三国。
だが最終的に流れる先は、元県知事一派と繋がる権威主義国家。
「企業の看板背負って、裏で武器商人か」
あかりが吐き捨てる。
今回の主役は、美咲。
普段は寡黙で地味。
だが数字と構造には強い。
「出荷管理システムのログ、不自然です」
彼女は端末を操作する。
出荷量と在庫が一致しない。
帳簿は整っている。だが、夜間だけ数字が揺れる。
「高炉の熱より、こっちの方が怪しい」
NSTは出荷ルートを追う。
深夜の港湾エリア。
巨大クレーンの下、コンテナが静かに積み込まれる。
違法契約書のコピーを掴んだ美咲は、静かに言う。
「鋼は国を守るためにある。壊すためやない」
彩香が頷く。
「今夜、終わらせる」
潜入。
工場の敷地は広大。
火花が夜空を焦がす。
高炉の轟音の中、NSTは倉庫へ。
警備員をかわし、制御室へ到達。
幹部が現れる。
高級スーツ。
余裕の笑み。
「若い娘が何をしに来た」
美咲は視線を逸らさない。
「あなたの“裏帳簿”を見に来ました」
幹部は鼻で笑う。
「証拠はあるのか?」
その瞬間、制御室の大型モニターが切り替わる。
海外送金履歴。
違法輸出契約書。
暗号化された通信記録。
「な……!」
幹部の顔色が変わる。
美咲が冷静に言う。
「金融庁、警察、報道各社に同時送信済みです」
幹部は逃げようとするが、扉は閉まる。
彩香が影から現れる。
「鋼の街を、売り飛ばす気か」
幹部は狼狽する。
「私は会社のために!」
「会社のためちゃう。自分の金や」
高炉の火が揺れる。
数時間後。
早朝の工場正門前。
報道陣が詰めかける。
違法輸出疑惑がトップニュース。
幹部は緊急会見に立たされる。
汗だく。
ネクタイは曲がり、髪は乱れ。
質問が飛ぶ。
「裏契約は事実ですか!」
「国家転覆計画との関与は!」
幹部は口ごもる。
その背後の大型ビジョンに、ラグビー部の映像が流れる。
泥だらけの選手たちがスクラムを組む。
対比。
誇りと腐敗。
幹部はしどろもどろに言い訳を始める。
「わ、私は知らなかった!」
その姿は滑稽だった。
ヒロ室西日本分室。
テレビに映る会見を見つめるNST。
あかりが笑う。
「スクラム組む前に、自分の足元見とけやな」
美咲は静かに言う。
「鋼は曲がっても、折れません」
彩香が頷く。
「この街の誇りは、まだ生きとる」
玲奈の行方は依然不明。
だが、敵の資金源はまた一つ断たれた。
神戸の夜。
高炉の火が赤く燃える。
鋼の街に、断罪の音が響いた。
そしてその音は、
次の戦いの幕開けでもあった




