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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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高架に吊るされた約束

マルーン色の車両が、朝の光を受けて滑る。


艶のある塗装、静かな走行音、揺れの少ない車内。

沿線には品のある街並みが広がり、駅名標までどこか洗練されている。

関西で“上質”を語るとき、この大手私鉄の名は必ず挙がる。


安全第一。

時間厳守。

信頼の象徴。


その象徴の裏に、腐った約束があった。


ヒロ室西日本分室。


彩香が資料を机に叩きつける。


「鉄道は命を預かる仕事や。そこが汚れとる」


問題の人物は、同社の取締役常務。

再開発計画の裏で土地を転がし、地下インフラ整備費を水増し。

さらに元県知事一派の資金洗浄ルートに鉄道関連子会社を使わせていた。


「安全はブランド。裏は金か」


あかりが低く言う。


今回の主役は、あかりだ。


彼女は鉄道の整備員に偽装潜入した。

深夜の車両基地。

検査ピットに並ぶマルーンの車両。

磨かれたボディの下に、改竄された監査データが眠っている。


「これや」


内部サーバーから抜き出した数値。


安全点検の未実施箇所が“実施済み”に書き換えられている。

帳簿と現場の食い違い。


あかりは静かに拳を握る。


「約束守れへんやつに、線路語る資格ない」


一方、株主総会が大阪市の本社ビルで開かれていた。


高級感漂うエントランス。

スーツ姿の株主たち。

その外に報道陣。


そして――


「ちょ、ちょっと押さんといて!」


人混みに巻き込まれた美月。


手には紙袋。


中身はお気に入りのシュークリーム。


「うわあああ!」


記者が突っ込んできて袋が潰れる。


クリームがはみ出す。


「何してくれんねん!今日のご褒美やったのに!」


怒り顔でクリームを見つめる。


周囲は緊迫。

美月だけ別の意味で緊迫。


その頃、総会会場。


常務が自信満々に演壇に立つ。


「我が社は安全を最優先に――」


スクリーンに映るはずの決算資料が、突然切り替わる。


監査改竄データ。

裏契約書。

海外送金記録。


ざわめき。


「これは何だ!」


常務の顔色が変わる。


会場後方、あかりが静かに立っている。

正体は誰も知らない。


「安全は、数字で飾るもんやない」


彼女の声は小さい。

だが確実に届いた。


株主が次々と質問を浴びせる。


「説明しろ!」


「責任は!」


常務は言葉を失う。


外では報道陣が騒ぎを察知。


「不正発覚か!?」


美月は潰れたシュークリームを手に叫ぶ。


「何の騒ぎやねん!私のスイーツ返せ!」


カメラがその姿を映し、後に“シュークリーム激怒事件”としてネットで拡散される。


だが、本丸は別だ。


数日後、常務は辞任。

金融庁の調査開始。


鉄道会社は公式謝罪。


信頼は傷ついたが、致命傷は避けられた。


ヒロ室西日本分室。


彩香があかりを見る。


「ようやった」


あかりは照れたように言う。


「線路は真っ直ぐやないとあかんから」


玲奈の行方は依然不明。


だが、敵の資金ルートはまた一つ断たれた。


夜、マルーン色の列車が高架を走る。


街灯に照らされ、静かに進む。


約束は守られるべきものだ。


吊るされたのは、取締役の地位。


だが本当に守られたのは、

線路を走る信頼だった。

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