表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/240

市街地に落ちる火花

昼の三宮は、人の波が途切れない。


高架下エリアは昼間から賑わい、立ち飲み屋の暖簾と古着屋の看板が雑多に並ぶ。列車が通るたびに、鉄骨が低く唸る。


その喧騒の下に、火薬が仕込まれていた。


元県知事一派が計画したのは、市街地同時多発爆破。

狙いは混乱。

行政機能を麻痺させ、クーデターの土台を作る。


NSTと兵庫県警は合同捜査に入っていた。


彩香は高架柱の影で地図を広げる。


「設置ポイントは三カ所。配線は地上に出るはずや」


県警幹部が険しい顔で言う。


「指揮は県警が執る。君たちは補助だ」


彩香の目が細くなる。


「時間がない。爆弾は移動式の可能性がある」


「現場は市街地だ。勝手な行動は許可できん」


指揮権を巡る空気が一気に張り詰める。


銃声が響いた。


乾いた破裂音が高架下に反響する。

人々が悲鳴を上げ、散り散りに逃げる。


違法拳銃を持った男たちが路地を走る。


「動くで!」


彩香は走った。


県警が制止する声を振り切る。


必要とされている場所で、結果を出す。


その瞬間、父の話が脳裏をよぎる。


都市対抗野球近畿予選敗退。

その後、大阪市の保険会社チームから補強選手として呼ばれた。


外様の自分が予選を戦ったチームを離れ、本戦出場チームに加わる。複雑だったという。


それでも父は言った。


「必要とされたところで結果を出す。それが仕事や」


一回戦敗退。

だが三安打。

献身的な守備。


補強先の監督は感謝したという。


若い選手の見本になった、と。


彩香は足を止めない。


必要とされている。

なら、やるしかない。


高架柱の裏に爆弾らしき装置を発見。


配線は三方向に分岐。


同時に、敵が発砲。

弾丸がコンクリートを削る。


あかりが飛び出し、路地で敵を制圧。

澄香と澪香が挟み込む。

美咲が配線を解析する。


「時間は?」


「三分!」


その時だった。


「こちら神戸三宮・高架下からお伝えしております!」


聞き覚えのある、落ち着いた声。


さつき。


神戸放送の「高架下グルメ特集」取材中。


カメラとマイクを手に、銃撃戦の現場に立っている。


あかりが叫ぶ。


「さつきさん伏せて!」


弾丸が看板を撃ち抜く。

さつきは一瞬身を屈めるが、すぐに顔を上げる。


「現在、現場では銃声のような音が……市民の皆さんは安全な場所へ――」


スタッフが慌てて言う。


「危ないです!撤退しましょう!」


だが、さつきの目が変わる。


「今、伝えなければいけないことがあります」


女子アナウンサー志望の矜持。

ジャーナリスト魂に火がついた。


銃声の中、淡々とレポートを続ける。


その照明が、配線の色分けを鮮明に照らした。


美咲が気づく。


「赤と青、逆や!」


爆弾解除。


残り五秒で停止。


敵は最後の一人が高架上へ逃げるが、県警が包囲し確保。


静寂が戻る。


さつきはマイクを握ったまま、息を整える。


「現場は現在、警察によって制圧されました――」


その映像は夕方の神戸放送ニュースで流れた。


スタジオのアナウンサーが真顔で言う。


「高架下での緊迫した様子です」


その背後で、さつきの落ち着いたレポート映像。


NSTは画面を見て沈黙する。


彩香は苦笑する。


「……なんで巻き込まれるんや」


あかりがぽつり。


「結果、助かりましたけど」


県警幹部が歩み寄る。


「今回は……感謝する」


指揮権争いは一旦収まる。


だが、元県知事一派はまだ健在。


玲奈の手がかりは、ない。


高架下のコンクリートには、まだ火花の跡が残る。


彩香は空を見上げる。

列車が通過し、鉄骨が震える。


必要とされた場所で、結果を出す。


それが自分の役割だ。


市街地に落ちた火花は、

まだ消えていなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ