十円を惜しんだ黒鷹は、赤穂で討たれる ――塩の町・赤穂、国家転覆組織「一袋十円」の末路
赤穂には、塩がある。
瀬戸内海から吹く風。
穏やかな海。
かつて一面に広がった塩田。
江戸の昔から「日本第一」とまで称された播州赤穂の塩は、城下町を潤し、人を集め、産業を育てた。
そして。
赤穂には、もう一つ。
全国に知られた名前がある。
赤穂浪士。
浅野内匠頭。
大石内蔵助。
四十七士。
忠義。
討ち入り。
冬になれば今なお、その物語を求めて多くの人がこの町を訪れる。
塩。
城。
海。
温泉。
牡蠣。
そして忠臣蔵。
歴史と食が、瀬戸内の穏やかな風景の中へ自然に溶け込んでいる。
そんな赤穂で。
国家転覆を企てる秘密結社が。
袋を盗んでいた。
一枚。
十円。
県警本部の作戦会議室。
大型モニター。
画面。
事件概要。
業務用食品スーパーにおける有料持ち帰り袋不正取得事案。
西川彩香。
無言。
見る。
ページ。
めくる。
戻る。
もう一回。
読む。
そして。
岡本玲奈を見る。
「……玲奈さん」
「はい」
「これ、ほんまに黒鷹です?」
「黒鷹です」
「元県知事とつるんで国家転覆狙っとる、あの?」
「そうです」
「産業スパイやる?」
「ええ」
「機密情報盗む?」
「はい」
「国外ともつながっとる?」
「その通りです」
彩香。
資料。
指差す。
「ほんで」
一拍。
「袋一枚十円?」
玲奈。
「はい」
彩香。
顔。
引きつる。
「……黒鷹、カネないんか?」
麻衣。
横。
俯く。
あかり。
いない。
美咲。
静か。
資料。
読む。
玲奈。
真顔。
事件は。
本当に。
セコかった。
赤穂市郊外。
飲食店関係者も一般客も利用する、大型の業務用食品スーパー。
冷凍食品。
業務用油。
米。
調味料。
包装資材。
紙容器。
厨房用品。
そして。
当然。
赤穂らしく。
塩。
多い。
大小。
産地。
製法。
用途。
様々。
黒鷹系列の飲食店。
ダミー会社。
そこ。
頻繁。
利用。
そして。
会計。
袋。
買わない。
荷捌き場。
行く。
一枚十円。
大型持ち帰り袋。
勝手。
取る。
一枚。
二枚。
五枚。
十枚。
彩香。
資料。
読む。
「……」
次。
保冷材。
「二十円相当……」
次。
段ボール。
「無料」
次。
包装資材。
「数円」
さらに。
返品コンテナ。
保証金。
「これまで誤魔化しとるん?」
玲奈。
「はい」
彩香。
頭。
抱える。
「セコさに思想があるやん……」
玲奈。
「?」
「一貫して一円でも払いたないいう思想です」
麻衣。
口元。
緩む。
玲奈。
変わらない。
「ただ」
「はい」
「これだけ資金源を絶てている、とも考えられます」
彩香。
顔。
上げる。
玲奈。
静か。
「以前の黒鷹なら、十円単位の経費など気にしなかったでしょう」
「まあ……」
「末端組織まで節約を強いられている」
一拍。
「効いているのです」
彩香。
少し。
考える。
「……そう言われると」
玲奈。
「はい」
「めちゃくちゃ勝ってる気してきましたわ」
そして。
十円袋の写真。
もう一度。
見る。
「でも」
一拍。
「十円ぐらい払えや」
玲奈。
「それには同意します」
麻衣。
とうとう。
笑う。
ただ。
NSTが出る理由は。
十円。
ではない。
不正に扱われていた返品用コンテナ。
そのうち。
特定番号の容器だけ。
おかしい。
店舗。
黒鷹系列飲食店。
配送会社。
別の倉庫。
妙な。
往復。
底部。
二重。
加工。
薄型記録媒体。
暗号化。
使い捨て通信端末。
つまり。
袋泥棒。
追ったら。
黒鷹。
連絡網。
出た。
玲奈。
「小さな綻びです」
彩香。
「小さすぎてルーペいりますけどね」
「ですが」
玲奈。
まっすぐ。
「そこから崩します」
彩香。
表情。
変わる。
冗談。
終わり。
「了解です」
当初。
潜入。
迫田澪香。
迫田澄香。
山本あかり。
三人。
予定。
だった。
ところが。
作戦前日。
玲奈。
「山本さんは今回外します」
彩香。
嫌な予感。
「……何しました?」
玲奈。
「右前腕に軽い炎症があります」
「任務?」
「いいえ」
「訓練?」
「いいえ」
「何やったんです?」
玲奈。
淡々。
「大学の友人に誘われ、腕相撲十人抜きに挑戦したそうです」
彩香。
止まる。
「……」
麻衣。
目。
逸らす。
玲奈。
続く。
「十二人目まで勝ったそうです」
彩香。
机。
叩く。
「任務前日に何しとんねん、あのアホ!」
玲奈。
「十三人目へ挑戦する前に止められたとのことです」
「成績いらん!」
安全優先。
玲奈。
代打。
即。
投入。
大西結月。
香川県観音寺市出身。
元女子競輪選手。
現在。
スポーツインストラクター。
負傷。
競技引退。
だが。
脚力。
瞬発力。
持久力。
判断。
今なお。
一級。
そして。
玲奈。
全幅。
信頼。
置く。
切り札。
彩香。
「もう呼んだんです?」
「はい」
「いつ?」
「山本さんが腕相撲を始めたと連絡を受けた時点で」
彩香。
一瞬。
「……玲奈さん」
「はい」
「あかりの行動パターン、読めすぎちゃいます?」
玲奈。
「リスク管理です」
「それで全部説明つくんや……」
潜入。
開始。
澪香。
売場。
品出し。
商品案内。
長身。
華やか。
どうしても。
目立つ。
だが。
物腰。
柔らかい。
客。
「赤穂の塩、どれがええ?」
澪香。
「何に使います?」
「焼き魚」
「でしたら、粒が少し大きいこちらの方が使いやすいと思います」
客。
「詳しいな」
「少し勉強しました」
数日。
顔。
覚えられる。
澄香。
サービスカウンター。
返品。
コンテナ。
保証金。
履歴。
照合。
瓜二つ。
姉妹。
でも。
仕事。
違う。
澪香。
人。
読む。
澄香。
流れ。
読む。
そして。
結月。
荷受け。
配送ヤード。
完全。
体力勝負。
台車。
ケース。
コンテナ。
次々。
運ぶ。
ベテラン。
「大西さん、速いな」
「そうですか?」
「まだ午前中やぞ」
「まだ大丈夫です」
「疲れへん?」
結月。
笑う。
「昔はもっと脚使ってましたから」
「何してたん?」
「自転車です」
「荷物運びと関係ある?」
「脚は同じです」
妙に。
納得。
そして。
結月。
気づく。
返却。
空コンテナ。
三個。
軽く。
持つ。
一つ。
わずか。
重い。
別。
振る。
微妙。
音。
違う。
通信。
『彩香さん』
「何?」
『当たりです』
「理由」
結月。
コンテナ。
見る。
『空箱のくせに、空じゃない』
彩香。
ニヤリ。
「さすが切り札」
そして。
巻き髪。
来る。
中京圏。
ローカル情報番組。
最近。
新設。
コーナー。
「山田真央の突撃レポート」
今回。
テーマ。
「尾張の食卓を支える塩を追え! 本場・赤穂へ突撃」
彩香。
監視モニター。
見る。
特徴的。
巻き髪。
マイク。
笑顔。
止まる。
「……」
澄香。
通信。
『どうしました?』
彩香。
低い。
「巻き髪来た」
『真央さん?』
「他に誰がおんねん」
そして。
深い。
ため息。
「あの巻き髪、アホツインテール以上の厄災や……」
山田真央。
明るい。
人懐っこい。
尾張弁。
そして。
取材。
執念。
異常。
塩。
見る。
店員。
捕まえる。
客。
捕まえる。
原材料。
見る。
物流。
聞く。
そして。
澪香。
発見。
「あっ!」
彩香。
『澪香ちゃん、逃げ――』
遅い。
真央。
駆ける。
「澪香さん! ええとこおったがね!」
澪香。
一瞬。
天。
見る。
「……こんにちは」
「何しとりゃあす?」
「仕事です」
「ここで?」
「はい」
「何の?」
「品出しです」
「何で?」
澪香。
淡々。
「商品が減るからです」
真央。
一瞬。
止まる。
「そりゃそうだがね!」
カメラマン。
笑う。
彩香。
モニター。
「澪香ちゃん、適当すぎる!」
だが。
真央。
めげない。
「赤穂の塩でおすすめどれ?」
「用途次第です」
「味噌煮込み!」
澪香。
少し。
考える。
「それは愛知の人に聞いた方がいいんじゃないですか?」
真央。
「確かに!」
彩香。
「そこで納得すんな!」
真央。
次。
「裏の流通も見たいがね!」
「立入禁止です」
「関係者になれば?」
「なれません」
「一日だけ!」
「無理です」
「五分!」
「無理です」
「三分!」
「値切る話じゃありません」
彩香。
「強いな澪香ちゃん……」
真央。
その後も。
止まらない。
売場。
荷受け口。
冷凍庫前。
返品コーナー。
塩。
包装。
箱。
全部。
聞く。
結月。
遠く。
見つける。
「あの人、こっち来てます?」
彩香。
『絶対目合わせんといてください』
「了解」
結月。
荷物。
持つ。
角。
曲がる。
真央。
遠く。
「あれ?」
気づく。
「あの人速っ!」
追う。
彩香。
監視室。
叫ぶ。
「追わんでええ!」
届かない。
そして。
午後二時十五分。
黒鷹。
本来。
動く。
予定。
偽装返品コンテナ。
三個。
内部協力者。
受領。
別車。
搬出。
しかし。
午後二時十一分。
真央。
配送ヤード。
マイク。
持つ。
「返品された業務用容器って、どうやって再利用されとりゃあす?」
黒鷹。
止まる。
計画。
変更。
第二出口。
そこ。
澄香。
いる。
再変更。
第三搬入口。
そこ。
結月。
いる。
黒鷹。
責任者。
苛立つ。
「何で全部塞がれてる!」
違う。
NST。
先回り。
違う。
真央。
引っ掻き回し。
黒鷹。
勝手。
監視網。
入る。
彩香。
最初。
頭。
抱えていた。
今。
モニター。
見る。
目。
細く。
なる。
口元。
僅か。
上がる。
「……使えるな」
澄香。
『止めなくていいですか?』
「ええ」
『でも真央さん……』
「そのまま暴れてもらお」
一拍。
「使える厄災や」
黒鷹。
焦る。
とうとう。
強行。
コンテナ。
持つ。
サービスヤード。
走る。
澪香。
前。
出る。
「それ、返品処理終わってませんよ」
男。
「どけ」
澪香。
上品。
笑う。
「嫌です」
別。
出口。
澄香。
閉じる。
「こちらも通れません」
男。
振り返る。
同じ。
顔。
一瞬。
止まる。
「……?」
迫田ツインズ。
右。
澪香。
左。
澄香。
瓜二つ。
長身。
長い手足。
同じ。
顔。
だが。
動き。
違う。
澪香。
長いリーチ。
相手。
先。
止める。
腕。
外す。
一歩。
深い。
相手。
押し返す。
澄香。
身体。
流す。
相手。
勢い。
使う。
二人。
交差。
黒鷹。
目。
追えない。
華やか。
優雅。
でも。
一発。
重い。
その時。
別。
男。
配送ヤード。
逃げる。
結月。
見る。
一瞬。
加速。
元競輪。
脚。
爆発。
「速っ!」
男。
振り返る。
もう。
結月。
横。
進路。
切る。
一人。
止める。
もう一人。
方向。
潰す。
代打。
ではない。
切り札。
玲奈。
信頼。
正しい。
彩香。
通信。
短い。
『澪香ちゃん、右』
『了解』
『澄香ちゃん、裏』
『はい』
『結月さん、南出口』
『任せて』
三人。
動く。
完全。
連携。
その裏。
表。
真央。
笑顔。
レポート。
「赤穂の塩って、ほんと奥深いがね!」
黒鷹。
裏。
地獄。
責任者。
最後。
搬入口。
逃げる。
扉。
開ける。
そこ。
西川彩香。
立っている。
腕。
組む。
男。
止まる。
彩香。
目。
怖い。
「お前らなぁ……」
一歩。
「国家転覆やら」
一歩。
「産業スパイやら」
一歩。
「国外工作やら」
男。
後退。
「大層な看板背負うとる割に」
さらに。
「十円の袋盗んで」
男。
顔。
引きつる。
「保冷材ケチって」
一歩。
「空箱持って帰って」
一歩。
「返品コンテナの保証金まで誤魔化して」
彩香。
低い。
声。
播州弁。
完全。
怖い。
「おどれら」
男。
来る。
彩香。
半歩。
外す。
腕。
取る。
身体。
一気。
崩す。
播州の烈火。
別。
一人。
来る。
真正面。
受ける。
返す。
迫田姉妹。
左右。
結月。
退路。
閉じる。
彩香。
最後。
責任者。
押さえ込む。
そして。
吐き捨てる。
「お前らセコすぎるんや!」
男。
黙る。
彩香。
さらに。
「袋一枚十円やぞ! 十円ぐらい払えや!」
言っていること。
スーパーの注意。
迫力。
極道。
麻衣。
後方支援。
通信。
笑い。
こらえる。
その時。
サイレン。
玲奈。
県警特殊部隊。
突入。
「そこまでです」
特殊部隊。
見る。
ほぼ。
終わっている。
澪香。
立つ。
澄香。
無傷。
結月。
平然。
彩香。
責任者。
制圧。
玲奈。
一拍。
「……あらかた片付いていますね」
彩香。
「十円袋泥棒相手ですから」
玲奈。
「通信網も押さえました」
彩香。
少し。
笑う。
「そこはちゃんと仕事しましたよ」
事件。
終わる。
そして。
さらに。
情けない。
事実。
判明。
袋代。
偽装。
カモフラージュ。
違う。
本当に。
払いたくなかった。
黒鷹。
末端。
経費。
逼迫。
一円。
十円。
節約。
玲奈。
報告。
「末端組織の資金事情はかなり悪化しています」
彩香。
「それは朗報です」
「ええ」
「つまり」
彩香。
資料。
見る。
「ウチらの仕事で黒鷹が十円に困るまで追い込まれた」
「そういう見方もできます」
彩香。
少し。
嬉しい。
「ほな勝ってるやん」
玲奈。
「ええ」
一拍。
彩香。
「でも十円は払え」
玲奈。
「同感です」
後日。
ヒロ室西日本分室。
あかり。
復帰。
彩香。
前。
立つ。
「あかり」
「はい」
「腕」
「もう治ったに」
「そうか」
「はい」
一拍。
「任務前日に腕相撲十二人抜きするアホがどこにおんねん!」
あかり。
「でも十二人目まで勝ったに」
「結果聞いてへん!」
「十三人目もいけそうやったんやに」
「反省せえ!」
結月。
横。
笑う。
「でも、おかげで私が行けました」
あかり。
明るい。
「結月さん、代わりありがとうございました!」
「どういたしまして」
彩香。
「何爽やかに引き継ぎ完了しとんねん!」
分室。
笑う。
ただ。
彩香。
まだ。
ある。
コーヒー。
置く。
低く。
「それにしてもな」
麻衣。
「あ、始まった」
美咲。
「ボヤキですね」
彩香。
指。
一本。
「加古川。ポイント五倍」
二本。
「伊丹。駐車料金二時間無料」
三本。
「赤穂。袋十円」
一同。
静か。
彩香。
両手。
広げる。
「黒鷹のセコさ、日に日に増しとるやないか!」
あかり。
「次五円やに?」
彩香。
即。
「言うな! ほんまにやりそうや!」
結月。
大笑い。
さらに。
彩香。
眉。
寄る。
「それとな」
澪香。
「真央さん?」
彩香。
「あの巻き髪もエエ加減にせえよ!」
澪香。
「でも結果的に助かったよ」
「分かっとる!」
澄香。
「黒鷹のルート三回潰してたね」
「知っとる!」
結月。
「かなり貢献してました」
「それも知っとる!」
彩香。
ますます。
腹。
立つ。
「こっちは静かに潜入しとんのに、あっち行って、こっち行って、澪香ちゃん捕まえて、荷受け場まで追っかけて!」
麻衣。
「取材熱心なんですね」
彩香。
「熱心すぎんねん!」
そして。
嫌な。
笑み。
「決めた」
澄香。
「何を?」
彩香。
腕。
組む。
「次あの巻き髪が任務引っ掻き回したら、赤穂の塩田で塩の結晶、一粒ずつ数えさせたるわ!」
沈黙。
澄香。
穏やか。
「それって意味ある?」
彩香。
止まる。
「……」
一秒。
二秒。
「……ないわ」
結月。
爆笑。
「ないんですか!」
彩香。
「何っちゃ意味あらへん!」
麻衣。
「真央さんなら途中から番組にしそうですね」
澪香。
「『山田真央の突撃レポート・塩百万粒数えてみた』」
澄香。
「スポンサー付きそう」
彩香。
固まる。
「……」
結月。
さらに。
笑う。
麻衣。
「赤穂の塩PRにもなりますよ」
彩香。
頭。
抱える。
「何でウチが考えた罰ゲームが地域振興企画になんねん!」
美咲。
静か。
「真央さんなら最後までやりそうですえ」
彩香。
「そこが一番腹立つ!」
その時。
少し。
離れた机。
玲奈。
報告書。
読む。
冷徹。
端正。
いつもの。
美貌。
口元。
ほんの。
少し。
緩む。
彩香。
即。
見る。
「玲奈さん」
「はい」
「今笑いました?」
「いいえ」
結月。
「笑ってましたよ」
澄香。
「私も見た」
澪香。
「見ました」
玲奈。
一拍。
「……気のせいです」
結月。
また。
笑う。
彩香。
「黒鷹より玲奈さんの方が手強いわ……」
玲奈。
資料。
閉じる。
そして。
静か。
「ただ」
全員。
見る。
「黒鷹が十円を惜しむまで追い込まれているのであれば」
一拍。
「私たちの仕事は確実に効いています」
彩香。
黙る。
しばらく。
そして。
口元。
少し。
上げる。
「……せやな」
一拍。
「ほな次は」
全員。
嫌な。
予感。
彩香。
ニヤリ。
「五円まで追い込んだろか」
玲奈。
口元。
また。
僅か。
緩む。
赤穂。
塩の町。
忠臣蔵。
四十七士。
歴史に残る。
名。
物語。
その町で。
黒鷹が。
盗んだもの。
袋。
一枚。
十円。
誰も。
後世。
語らない。
だが。
十円の穴。
小さい。
小さいから。
油断する。
その穴へ。
NST。
指。
入れる。
引く。
黒鷹。
連絡網。
全部。
ほどける。
悪事に。
大小。
ない。
ただ。
西川彩香なら。
きっと。
最後まで。
こう言う。
「十円ぐらい払えや。セコすぎるねん」
と。




