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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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415/415

三円を惜しんだ黒鷹は、二万枚で足がつく――小野・企業研修センター、黒鷹「無料コピー」作戦

小野は、派手な町ではない。


だが。


兵庫県の内陸。


北播磨。


大阪や神戸から極端に遠くなく。


中国自動車道。


山陽自動車道。


幹線道路。


企業。


工業団地。


物流。


そして。


少し走れば。


緑。


田畑。


静けさ。


ある。


仕事。


学ぶ。


泊まる。


都会の喧騒。


少し。


離れる。


企業が社員を集め。


新人。


中堅。


管理職。


技術者。


何日か。


腰。


据える。


そういう研修施設を置くには。


小野は。


ちょうどいい。


播州そろばん。


刃物。


古くから。


ものづくり。


根付く。


町。


人。


育てる。


技。


磨く。


その土地柄も。


悪くない。


小野市郊外。


木立。


囲まれる。


大規模。


企業研修センター。


講義棟。


宿泊棟。


実習棟。


食堂。


資料室。


大小。


会議室。


そして。


大量の紙を吐き出す。


大型複合機。


何台も。


ある。


新人研修。


品質管理。


技術講習。


管理職教育。


メーカー。


物流。


IT。


複数企業。


利用。


当然。


持ち込まれる。


内部資料。


製造工程。


試作。


調達。


品質。


新製品。


その中へ。


黒鷹。


潜る。


国家転覆。


産業スパイ。


元県知事。


政財界。


国外勢力。


大きな。


言葉。


並ぶ。


悪の秘密結社。


ところが。


足がついた。


理由。


一枚。


三円。


だった。


県警本部。


会議室。


大型画面。


夜間。


コピー記録。


四千八百枚。


六千二百枚。


九千枚。


西川彩香。


腕。


組む。


見る。


しばらく。


無言。


岡本玲奈。


横。


立つ。


「……玲奈さん」


「はい」


「一応確認しますけど」


「何でしょう」


「黒鷹ですよね?」


「黒鷹です」


「国家転覆から企んどる」


「はい」


「産業スパイもやる」


「ええ」


「企業機密も盗む」


「その通りです」


彩香。


画面。


指す。


「その悪の秘密結社が、一枚三円のコピー代ケチるんか?」


玲奈。


「そのようです」


彩香。


目。


閉じる。


「……セコっ」


麻衣。


口元。


緩む。


あかり。


小声。


「三円やに」


彩香。


「そこ強調すんな!」


黒鷹の内部協力者。


夜間。


研修センター。


複合機。


使う。


本来。


有料。


一枚。


三円相当。


ところが。


使用部門。


別。


付け替える。


研修費。


紛れ込ませる。


つまり。


盗んだ。


機密資料。


コピー。


する。


代金。


自分。


払わない。


しかも。


内部通達。


ある。


カラー印刷は原則禁止。


両面印刷を徹底。


裏紙を優先的に使用。


トナー節約モードを使用すること。


彩香。


紙。


持つ。


見る。


「……」


玲奈。


「どうしました?」


「これ秘密結社の指示書?」


「はい」


「自治会の経費削減ちゃうん?」


麻衣。


顔。


伏せる。


玲奈。


真顔。


「彩香」


「はい」


「金額の大小はありません」


声。


静か。


揺れない。


警察官。


鑑。


不正。


三円。


三万円。


三億。


金額。


違う。


犯罪。


変わらない。


「三円でも不正に他者へ負担させれば犯罪です」


「分かってます」


「しかも、そのコピー機で企業機密が複製されている」


「分かってます」


「ならば」


彩香。


先。


言う。


「任務や。そういうことですね」


玲奈。


「そうです」


彩香。


息。


吐く。


「……それでも国家転覆組織がコピー代で尻尾出すん、情けなさは残りますけど」


玲奈。


「犯罪者の面子は捜査対象ではありません」


あかり。


吹き出す。


「玲奈さん強いに」


潜入。


白浜麻衣。


山本あかり。


二人。


麻衣。


研修運営。


受付。


資料配布。


講義室。


備品。


コピー申請。


配送。


小柄。


童顔。


最初。


また。


言われる。


「高校生のアルバイト?」


麻衣。


笑顔。


「大学生です」


「そうなん?」


「はい」


笑顔。


維持。


少し。


傷つく。


しかし。


仕事。


速い。


百人。


名札。


座席。


資料。


昼食。


変更。


全部。


捌く。


研修担当者。


「白浜さん、この部屋のプロジェクター」


「交換済みです」


「午後の名簿」


「机の上です」


「昼食三人追加」


「手配してます」


「……早いな」


数日。


完全。


馴染む。


一方。


あかり。


施設運営。


備品。


担当。


コピー用紙。


箱。


運ぶ。


机。


動かす。


椅子。


並べる。


研修資材。


搬入。


A4。


五千枚。


箱。


一つ。


二つ。


三つ。


先輩。


「山本さん!」


「はい?」


「台車!」


「あ」


「使って!」


「はい」


次。


また。


手。


持つ。


「山本さん!」


「あ、台車やった」


常連。


講師。


「あかりちゃん、ホワイトボードもう一枚」


「はい!」


「延長コード」


「持ってくに!」


「マイク一本足りん」


「すぐ持ってく!」


働く。


妙に。


合う。


バックヤード。


彩香。


モニター。


見ながら。


「二人とも研修センターに就職しに来たんちゃうぞ……」


玲奈。


通信。


『自然に馴染んでいるということです』


「玲奈さん、前向きやなぁ」


そして。


愛知県。


大手メーカー。


研修日。


中京圏。


ローカル番組。


取材。


入る。


新コーナー。


山田真央の突撃レポート。


テーマ。


「愛知企業の社員は、なぜ兵庫・小野で学ぶ? 企業研修の現場へ突撃!」


企画。


真っ当。


許可。


正式。


断れない。


問題。


レポーター。


山田真央。


特徴。


巻き髪。


笑顔。


人懐っこい。


明るい。


そして。


取材。


異常。


熱心。


彩香。


モニター。


その姿。


見た瞬間。


低く。


「……来よった」


麻衣。


『誰です?』


「あの巻き髪」


あかり。


『真央さん?』


彩香。


「あの巻き髪しつこいねん」


真央。


入る。


受付。


見る。


麻衣。


いる。


目。


輝く。


「あっ!」


麻衣。


気づく。


同時。


踵。


わずか。


方向。


変える。


資料。


持つ。


隣。


カウンター。


移動。


真央。


追う。


「麻衣ちゃん!」


麻衣。


聞こえない。


顔。


する。


「麻衣ちゃーん!」


麻衣。


資料。


確認。


「三番教室、午後二時開始……」


真央。


横。


回り込む。


「麻衣ちゃん!」


麻衣。


初めて。


気づいた。


ような。


顔。


「……あ、真央さん。こんにちは」


彩香。


通信。


『うまい』


真央。


「何しとりゃあす?」


「仕事です」


「また?」


「また、とは?」


「最近、いろんなところで働いとるがね!」


麻衣。


笑顔。


「社会経験です」


「今日は何担当?」


「受付です」


「受付だけ?」


「色々です」


「色々って?」


「色々です」


「研修資料も?」


「扱います」


「コピーも?」


「します」


「一人何枚ぐらい?」


「場合によります」


「両面?」


「場合によります」


「カラー?」


「場合によります」


真央。


一歩。


詰める。


「コピー機何台ある?」


麻衣。


一歩。


横。


「存じません」


「使っとるのに?」


「全部数えたことはないです」


「ほんなら今から数えよ!」


麻衣。


笑顔。


「失礼します」


そのまま。


横。


抜ける。


真央。


「あっ、待って!」


麻衣。


止まらない。


廊下。


曲がる。


資料室。


入る。


扉。


閉まる。


真央。


前。


立つ。


「逃げられたがね……」


彩香。


通信。


笑う。


『麻衣、ええぞ』


麻衣。


『任務中ですから』


一言。


冷静。


真央。


どれだけ。


食いつく。


麻衣。


華麗。


スルー。


紀州の舞姫。


戦闘。


だけ。


違う。


取材。


かわす。


時も。


舞う。


真央。


しかし。


諦めない。


五分後。


別。


入口。


待つ。


麻衣。


出る。


真央。


「麻衣ちゃん!」


麻衣。


資料。


別。


職員。


渡す。


そのまま。


方向。


変更。


真央。


追う。


「社員研修って何日ぐらいやるの?」


「担当者へ聞いてください」


「宿泊?」


「担当者へ」


「食事?」


「担当者へ」


「コピー代?」


麻衣。


一瞬。


止まりそう。


なる。


だが。


止まらない。


「担当者へ」


彩香。


『完璧や』


真央。


「全部担当者やん!」


麻衣。


遠く。


「そうですよ」


真央。


「担当者どこ!?」


麻衣。


指。


だけ。


別。


方向。


真央。


そちら。


走る。


彩香。


「撒いた!」


だが。


次。


真央。


見つける。


コピー用紙。


箱。


持つ。


あかり。


これは。


悪い。


相手。


真面目。


聞かれれば。


答える。


困っている人。


見れば。


助ける。


あかり。


真央。


相性。


最悪。


「あかりちゃーん!」


あかり。


即。


振り向く。


「あ、真央さん!」


彩香。


『振り向くな言う前に振り向いた!』


真央。


駆ける。


「何持っとるの?」


「コピー用紙やに」


「何枚?」


「五千枚」


「一箱?」


「うん」


「重さ何キロ?」


あかり。


止まる。


箱。


見る。


「……知らん」


「運んどるのに?」


「重いか軽いかで持っとるから」


真央。


笑う。


「筋肉基準だがね!」


あかり。


「そうかもしれんに」


彩香。


『そこで会話成立させんな!』


真央。


さらに。


「これどこ持ってくの?」


「コピー室」


「コピー室どこ?」


「あっち」


指。


差す。


彩香。


『場所教えんな!』


真央。


「見に行ってええ?」


あかり。


真面目。


考える。


「関係者以外あかんと思う」


「じゃあ責任者に聞けばええ?」


「うん」


彩香。


『“うん”ちゃう!』


真央。


「責任者誰?」


あかり。


「えっとな」


彩香。


『答えるな!』


あかり。


「あ」


止まる。


真央。


「何?」


あかり。


苦しそう。


「……言えん」


「何で?」


「言ったら怒られるに」


真央。


目。


輝く。


「誰に?」


彩香。


通信。


『ウチや!』


あかり。


つい。


小声。


「彩香さん」


真央。


「彩香さん?」


あかり。


顔。


固まる。


彩香。


監視室。


両手。


頭。


「名前まで出したぁ……」


真央。


さらに。


追う。


コピー用紙。


運ぶ。


あかり。


横。


歩く。


「一日何箱使う?」


「日によるに」


「今日は?」


「多いと思う」


「何で?」


「研修多いから」


「何人?」


「二百……」


彩香。


『人数まで答えんな!』


あかり。


止まる。


「……言ったらアカンかった?」


真央。


「もう聞いたがね」


あかり。


困る。


「忘れてくれへん?」


真央。


「無理だがね」


そして。


カメラ。


回る。


真央。


マイク。


向ける。


「山本あかりさん! 研修センターで働く上で一番大変なことは?」


あかり。


真面目。


考える。


「……コピー用紙運ぶこと?」


彩香。


「そこなん!?」


真央。


「やっぱり重い?」


「まあまあ」


「腰に来る?」


「私は来ん」


「何で?」


「鍛えとるから」


「普段何しとるの?」


「戦隊――」


彩香。


『そこから先言うなぁ!』


あかり。


止まる。


「……色々」


真央。


「何その急な“色々”!」


麻衣。


遠く。


その様子。


見る。


首。


振る。


『あかり、付き合わんでええのに……』


彩香。


『変なとこ真面目やねん』


麻衣。


『聞かれたら答えな失礼やと思ってるんでしょうね』


彩香。


『任務中やぞ!』


真央。


しつこい。


本当に。


しつこい。


悪意。


ない。


むしろ。


仕事。


真面目。


だから。


余計。


止まらない。


コピー室。


扉。


映す。


廊下。


撮る。


講義室。


入口。


研修参加者。


休憩。


インタビュー。


食堂。


移動。


また。


あかり。


捕まえる。


「コピー終わった?」


「終わったに」


「何枚?」


「知らん」


「また知らん!」


「数えへんもん」


「紙詰まりした?」


「今日はしてへん」


「昨日は?」


「一回した」


「どう直した?」


あかり。


本気。


説明。


始める。


「横のレバー開けてな――」


彩香。


「紙詰まり修理講座始めんな!」


真央。


聞く。


頷く。


「なるほど!」


あかり。


「ローラー熱い時あるから触ったらアカンに」


「へえ!」


「そこ注意やに」


彩香。


「何で安全講習までしとんねん!」


麻衣。


通信。


笑い。


こらえる。


黒鷹。


その様子。


見る。


予定。


狂う。


テレビカメラ。


施設内。


予想外。


しかも。


潜入した麻衣。


あかり。


レポーター。


知り合い。


黒鷹幹部。


疑う。


「予定を早める」


本来。


深夜。


コピー。


実施。


搬出。


予定。


しかし。


研修。


終了。


直後。


動く。


複合機。


一台。


急。


作動。


カウンター。


跳ねる。


麻衣。


管理画面。


見る。


表情。


変わる。


今まで。


真央。


かわす。


軽い。


笑い。


消える。


『彩香さん』


「何?」


『動きました』


彩香。


椅子。


立つ。


播州の烈火。


『麻衣、コピー室』


「了解」


『あかり、資料倉庫側』


「はい!」


『真央は?』


麻衣。


遠く。


見る。


まだ。


別。


講師。


取材。


『今は離れてます』


「よし」


一拍。


彩香。


『あかり』


「はい」


『今度こそ巻き髪に捕まんなよ』


「分かったに!」


コピー室。


大型複合機。


唸る。


紙。


次々。


吐く。


モノクロ。


両面。


黒鷹。


男。


二人。


資料。


ファイル。


箱。


詰める。


麻衣。


扉。


開ける。


「その資料」


二人。


止まる。


「持ち出し許可、出てませんよね」


一人。


低く。


「どけ」


麻衣。


「嫌です」


男。


来る。


腕。


伸ばす。


麻衣。


半歩。


横。


複合機。


脇。


滑る。


書類ワゴン。


回る。


パーティション。


影。


消える。


次。


背後。


一撃。


腕。


落とす。


男。


振り返る。


麻衣。


もう。


いない。


一歩。


二歩。


小柄。


身体。


狭い。


空間。


生きる。


紀州の舞姫。


コピー機。


壊さない。


机。


倒さない。


資料。


散らさない。


敵。


だけ。


崩す。


一人。


書類箱。


蹴ろう。


する。


麻衣。


足。


止める。


「それ研修資料です」


男。


「知るか!」


「私は知ってます」


一撃。


胴。


適時。


入る。


男。


沈む。


別。


資料倉庫。


黒鷹。


三人。


箱。


持つ。


逃げる。


あかり。


前。


出る。


「止まるに!」


「どけ!」


「嫌や!」


真正面。


男。


来る。


あかり。


受ける。


一歩。


下がる。


次。


押し返す。


相手。


驚く。


二人目。


横。


入る。


あかり。


身体。


回す。


三人目。


箱。


持って。


逃げる。


「待て!」


あかり。


追う。


四日市の突貫娘。


正面。


突破。


敵。


隊形。


壊す。


コピー用紙。


箱。


ラック。


机。


椅子。


全部。


守る。


それでも。


火力。


落ちない。


男。


「何なんだこいつ!」


あかり。


「施設のもん壊さんといて!」


「それどころじゃ――」


一撃。


止まる。


彩香。


モニター。


黒鷹幹部。


非常口。


向かう。


自ら。


出る。


廊下。


扉。


開く。


男。


彩香。


いる。


止まる。


「誰だ」


彩香。


ゆっくり。


袖。


整える。


「国家転覆」


男。


睨む。


「産業スパイ」


一歩。


「企業機密」


一歩。


「国外工作」


さらに。


「ほんで」


一拍。


「コピー代三円」


男。


「黙れ!」


来る。


彩香。


かわす。


腕。


取る。


体勢。


崩す。


一気。


床。


播州の烈火。


別。


一人。


飛び出す。


彩香。


正面。


受ける。


返す。


麻衣。


右。


あかり。


左。


黒鷹。


退路。


ない。


彩香。


低い。


播州弁。


空気。


変わる。


「おどられなぁ……」


男。


顔。


引きつる。


「大層な看板背負うて」


一歩。


「コピー代三円ケチって」


一歩。


「何が国家転覆や」


さらに。


「おどられ、セコすぎるねん!」


男。


後退。


彩香。


追う。


「三円やぞ!」


一喝。


「革命起こす前にコピー代払えや!」


言っている。


内容。


事務用品。


迫力。


完全。


極道。


あかり。


小声。


「彩香さん怖いに」


麻衣。


「聞こえるよ」


彩香。


「何か言うた?」


二人。


「何も」


その時。


サイレン。


県警。


特殊部隊。


到着。


先頭。


玲奈。


「そこまでです」


特殊部隊。


入る。


見る。


黒鷹。


床。


壁際。


全員。


制圧。


コピー。


盗難資料。


確保。


麻衣。


無傷。


あかり。


息。


少し。


上がる。


彩香。


幹部。


押さえている。


玲奈。


しばらく。


周囲。


見る。


「……私たちがすることは?」


彩香。


指。


資料箱。


「それ運ぶの手伝ってください」


玲奈。


「分かりました」


特殊部隊。


戦闘。


なし。


証拠品。


搬送。


のみ。


押収。


黒鷹。


内部指示。


出る。


一枚でも無駄コピーを減らすこと。


カラーは部門長承認制。


裏紙再利用率八十%以上。


トナー使用量前年比二割削減。


彩香。


読む。


静か。


「玲奈さん」


「はい」


「これ悪の秘密結社ですよね?」


「そうです」


「ISO担当部署ちゃいますよね?」


「違います」


「環境推進室でも?」


「ありません」


彩香。


頭。


抱える。


「セコい上に妙に意識高いん何なん……」


玲奈。


「経費管理でしょう」


「そこ真面目に分析せんでください」


後日。


ヒロ室西日本分室。


彩香。


コーヒー。


一口。


飲む。


麻衣。


あかり。


玲奈。


いる。


静か。


三秒。


彩香。


「それにしても」


麻衣。


「あ」


あかり。


「真央さんやに」


彩香。


即。


「あの巻き髪、しつこすぎるねん!」


麻衣。


笑う。


「かなり熱心でしたね」


「熱心で済ますな!」


彩香。


指。


一本。


「麻衣捕まえる!」


二本。


「あかり捕まえる!」


三本。


「コピー用紙何枚!」


四本。


「何キロ!」


五本。


「紙詰まりどう直す!」


両手。


広げる。


「何が『山田真央の突撃レポート』や! ほんまに突撃してくるやないか!」


麻衣。


「タイトルには忠実ですね」


「そこ褒めんな!」


あかり。


のんびり。


「でも真央さんのコーナー、評判ええに」


彩香。


止まる。


「何?」


「四日市でも見とる人おるに。うちの大学でも『真央さん今日どこ突撃するんやろ』って結構話題やに」


彩香。


即。


「知るかボケェ!」


あかり。


「ほんまやに」


「評判の話ちゃう!」


「でも取材熱心やったに」


「知っとる!」


「聞いたこと全部ちゃんとメモしとった」


「お前が全部答えるからや!」


あかり。


真顔。


「聞かれたら答えな失礼やに」


彩香。


両手。


頭。


「任務中や言うとるやろ!」


麻衣。


横。


笑う。


「私は全部スルーしましたけど」


彩香。


即。


「麻衣は完璧やった!」


麻衣。


少し。


胸。


張る。


「担当者へ聞いてください、でほぼ乗り切りました」


あかり。


「それちょっと冷たない?」


麻衣。


「任務優先」


あかり。


「でも真央さん困るに」


彩香。


「だからお前は捕まるんや!」


しばらく。


彩香。


黙る。


そして。


嫌な。


笑み。


浮かべる。


麻衣。


「来ましたね」


あかり。


「何が?」


彩香。


「決めた」


あかり。


「何を?」


彩香。


ゆっくり。


「次あの巻き髪が任務邪魔したらな」


小野。


名物。


播州そろばん。


彩香。


「播州そろばん一丁渡して、コピー二万枚分、一枚三円ずつ一枚ごとに珠動かして、六万円まで足させたるわ!」


麻衣。


一瞬。


考える。


そして。


目。


輝く。


「それ、ええですね!」


彩香。


「せやろ!」


麻衣。


乗る。


「両面コピーなら表と裏で二回ずつ動かさせましょか」


「それ採用!」


「カラーが一枚混じったら?」


「最初から!」


麻衣。


「厳しっ」


言いながら。


楽しそう。


あかり。


二人。


見る。


首。


傾げる。


「……それって意味ありますか?」


彩香。


麻衣。


顔。


見合わせる。


一拍。


そして。


綺麗。


ハモる。


「ないわ〜!」


あかり。


「ないんかい!」


麻衣。


笑う。


「何っちゃ意味ないね」


彩香。


「罰やからええねん!」


あかり。


考える。


「でも真央さんやったら」


彩香。


嫌な予感。


「何や」


「『山田真央の突撃レポート・播州そろばんでコピー二万枚分計算してみた!』って企画にすると思うに」


彩香。


固まる。


麻衣。


「……ありそう」


あかり。


「小野市のそろばんPRにもなるに」


麻衣。


「視聴率も取れそう」


彩香。


両手。


頭。


「何でウチの罰ゲームが毎回地域振興企画になるんや!」


あかり。


笑う。


「真央さん、最後までやると思うに」


麻衣。


「途中でそろばん職人さんまで取材しそう」


彩香。


「やめろ!」


その時。


少し。


離れた机。


玲奈。


報告書。


読む。


いつもの。


冷静。


冷徹。


端正。


横顔。


口元。


ほんの。


僅か。


緩む。


彩香。


即。


振り向く。


「玲奈さん」


「はい」


「今、笑いました?」


「いいえ」


麻衣。


「笑ってました」


あかり。


「私も見たに」


玲奈。


一拍。


「……気のせいです」


彩香。


「絶対ちゃうやろ!」


玲奈。


資料。


閉じる。


「ただ」


三人。


見る。


「一枚三円でも、不正は不正です」


彩香。


天井。


見る。


「まだそこ戻ります?」


「金額の大小はありません」


「はいはい」


彩香。


少し。


笑う。


「警察官の鑑には勝てませんわ」


玲奈。


「勝ち負けではありません」


麻衣。


笑う。


あかり。


笑う。


玲奈の口元。


また。


ほんの少し。


緩む。


小野。


ものづくり。


町。


人。


育てる。


企業。


学ぶ。


研修。


場所。


そこで。


国家転覆を狙う黒鷹は。


一枚三円。


惜しんだ。


そして。


二万枚。


刷った。


紙。


重なる。


ほど。


証拠。


重なる。


三円。


惜しい。


その気持ち。


誰でも。


少し。


分かる。


だが。


盗めば。


話。


別。


彩香なら。


この事件。


思い出す。


たび。


必ず。


言う。


「国家転覆する前に、コピー代払えや」


そして。


たぶん。


もう一言。


「セコすぎるねん」


と。

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