三円を惜しんだ黒鷹は、二万枚で足がつく――小野・企業研修センター、黒鷹「無料コピー」作戦
小野は、派手な町ではない。
だが。
兵庫県の内陸。
北播磨。
大阪や神戸から極端に遠くなく。
中国自動車道。
山陽自動車道。
幹線道路。
企業。
工業団地。
物流。
そして。
少し走れば。
緑。
田畑。
静けさ。
ある。
仕事。
学ぶ。
泊まる。
都会の喧騒。
少し。
離れる。
企業が社員を集め。
新人。
中堅。
管理職。
技術者。
何日か。
腰。
据える。
そういう研修施設を置くには。
小野は。
ちょうどいい。
播州そろばん。
刃物。
古くから。
ものづくり。
根付く。
町。
人。
育てる。
技。
磨く。
その土地柄も。
悪くない。
小野市郊外。
木立。
囲まれる。
大規模。
企業研修センター。
講義棟。
宿泊棟。
実習棟。
食堂。
資料室。
大小。
会議室。
そして。
大量の紙を吐き出す。
大型複合機。
何台も。
ある。
新人研修。
品質管理。
技術講習。
管理職教育。
メーカー。
物流。
IT。
複数企業。
利用。
当然。
持ち込まれる。
内部資料。
製造工程。
試作。
調達。
品質。
新製品。
その中へ。
黒鷹。
潜る。
国家転覆。
産業スパイ。
元県知事。
政財界。
国外勢力。
大きな。
言葉。
並ぶ。
悪の秘密結社。
ところが。
足がついた。
理由。
一枚。
三円。
だった。
県警本部。
会議室。
大型画面。
夜間。
コピー記録。
四千八百枚。
六千二百枚。
九千枚。
西川彩香。
腕。
組む。
見る。
しばらく。
無言。
岡本玲奈。
横。
立つ。
「……玲奈さん」
「はい」
「一応確認しますけど」
「何でしょう」
「黒鷹ですよね?」
「黒鷹です」
「国家転覆から企んどる」
「はい」
「産業スパイもやる」
「ええ」
「企業機密も盗む」
「その通りです」
彩香。
画面。
指す。
「その悪の秘密結社が、一枚三円のコピー代ケチるんか?」
玲奈。
「そのようです」
彩香。
目。
閉じる。
「……セコっ」
麻衣。
口元。
緩む。
あかり。
小声。
「三円やに」
彩香。
「そこ強調すんな!」
黒鷹の内部協力者。
夜間。
研修センター。
複合機。
使う。
本来。
有料。
一枚。
三円相当。
ところが。
使用部門。
別。
付け替える。
研修費。
紛れ込ませる。
つまり。
盗んだ。
機密資料。
コピー。
する。
代金。
自分。
払わない。
しかも。
内部通達。
ある。
カラー印刷は原則禁止。
両面印刷を徹底。
裏紙を優先的に使用。
トナー節約モードを使用すること。
彩香。
紙。
持つ。
見る。
「……」
玲奈。
「どうしました?」
「これ秘密結社の指示書?」
「はい」
「自治会の経費削減ちゃうん?」
麻衣。
顔。
伏せる。
玲奈。
真顔。
「彩香」
「はい」
「金額の大小はありません」
声。
静か。
揺れない。
警察官。
鑑。
不正。
三円。
三万円。
三億。
金額。
違う。
犯罪。
変わらない。
「三円でも不正に他者へ負担させれば犯罪です」
「分かってます」
「しかも、そのコピー機で企業機密が複製されている」
「分かってます」
「ならば」
彩香。
先。
言う。
「任務や。そういうことですね」
玲奈。
「そうです」
彩香。
息。
吐く。
「……それでも国家転覆組織がコピー代で尻尾出すん、情けなさは残りますけど」
玲奈。
「犯罪者の面子は捜査対象ではありません」
あかり。
吹き出す。
「玲奈さん強いに」
潜入。
白浜麻衣。
山本あかり。
二人。
麻衣。
研修運営。
受付。
資料配布。
講義室。
備品。
コピー申請。
配送。
小柄。
童顔。
最初。
また。
言われる。
「高校生のアルバイト?」
麻衣。
笑顔。
「大学生です」
「そうなん?」
「はい」
笑顔。
維持。
少し。
傷つく。
しかし。
仕事。
速い。
百人。
名札。
座席。
資料。
昼食。
変更。
全部。
捌く。
研修担当者。
「白浜さん、この部屋のプロジェクター」
「交換済みです」
「午後の名簿」
「机の上です」
「昼食三人追加」
「手配してます」
「……早いな」
数日。
完全。
馴染む。
一方。
あかり。
施設運営。
備品。
担当。
コピー用紙。
箱。
運ぶ。
机。
動かす。
椅子。
並べる。
研修資材。
搬入。
A4。
五千枚。
箱。
一つ。
二つ。
三つ。
先輩。
「山本さん!」
「はい?」
「台車!」
「あ」
「使って!」
「はい」
次。
また。
手。
持つ。
「山本さん!」
「あ、台車やった」
常連。
講師。
「あかりちゃん、ホワイトボードもう一枚」
「はい!」
「延長コード」
「持ってくに!」
「マイク一本足りん」
「すぐ持ってく!」
働く。
妙に。
合う。
バックヤード。
彩香。
モニター。
見ながら。
「二人とも研修センターに就職しに来たんちゃうぞ……」
玲奈。
通信。
『自然に馴染んでいるということです』
「玲奈さん、前向きやなぁ」
そして。
愛知県。
大手メーカー。
研修日。
中京圏。
ローカル番組。
取材。
入る。
新コーナー。
山田真央の突撃レポート。
テーマ。
「愛知企業の社員は、なぜ兵庫・小野で学ぶ? 企業研修の現場へ突撃!」
企画。
真っ当。
許可。
正式。
断れない。
問題。
レポーター。
山田真央。
特徴。
巻き髪。
笑顔。
人懐っこい。
明るい。
そして。
取材。
異常。
熱心。
彩香。
モニター。
その姿。
見た瞬間。
低く。
「……来よった」
麻衣。
『誰です?』
「あの巻き髪」
あかり。
『真央さん?』
彩香。
「あの巻き髪しつこいねん」
真央。
入る。
受付。
見る。
麻衣。
いる。
目。
輝く。
「あっ!」
麻衣。
気づく。
同時。
踵。
わずか。
方向。
変える。
資料。
持つ。
隣。
カウンター。
移動。
真央。
追う。
「麻衣ちゃん!」
麻衣。
聞こえない。
顔。
する。
「麻衣ちゃーん!」
麻衣。
資料。
確認。
「三番教室、午後二時開始……」
真央。
横。
回り込む。
「麻衣ちゃん!」
麻衣。
初めて。
気づいた。
ような。
顔。
「……あ、真央さん。こんにちは」
彩香。
通信。
『うまい』
真央。
「何しとりゃあす?」
「仕事です」
「また?」
「また、とは?」
「最近、いろんなところで働いとるがね!」
麻衣。
笑顔。
「社会経験です」
「今日は何担当?」
「受付です」
「受付だけ?」
「色々です」
「色々って?」
「色々です」
「研修資料も?」
「扱います」
「コピーも?」
「します」
「一人何枚ぐらい?」
「場合によります」
「両面?」
「場合によります」
「カラー?」
「場合によります」
真央。
一歩。
詰める。
「コピー機何台ある?」
麻衣。
一歩。
横。
「存じません」
「使っとるのに?」
「全部数えたことはないです」
「ほんなら今から数えよ!」
麻衣。
笑顔。
「失礼します」
そのまま。
横。
抜ける。
真央。
「あっ、待って!」
麻衣。
止まらない。
廊下。
曲がる。
資料室。
入る。
扉。
閉まる。
真央。
前。
立つ。
「逃げられたがね……」
彩香。
通信。
笑う。
『麻衣、ええぞ』
麻衣。
『任務中ですから』
一言。
冷静。
真央。
どれだけ。
食いつく。
麻衣。
華麗。
スルー。
紀州の舞姫。
戦闘。
だけ。
違う。
取材。
かわす。
時も。
舞う。
真央。
しかし。
諦めない。
五分後。
別。
入口。
待つ。
麻衣。
出る。
真央。
「麻衣ちゃん!」
麻衣。
資料。
別。
職員。
渡す。
そのまま。
方向。
変更。
真央。
追う。
「社員研修って何日ぐらいやるの?」
「担当者へ聞いてください」
「宿泊?」
「担当者へ」
「食事?」
「担当者へ」
「コピー代?」
麻衣。
一瞬。
止まりそう。
なる。
だが。
止まらない。
「担当者へ」
彩香。
『完璧や』
真央。
「全部担当者やん!」
麻衣。
遠く。
「そうですよ」
真央。
「担当者どこ!?」
麻衣。
指。
だけ。
別。
方向。
真央。
そちら。
走る。
彩香。
「撒いた!」
だが。
次。
真央。
見つける。
コピー用紙。
箱。
持つ。
あかり。
これは。
悪い。
相手。
真面目。
聞かれれば。
答える。
困っている人。
見れば。
助ける。
あかり。
真央。
相性。
最悪。
「あかりちゃーん!」
あかり。
即。
振り向く。
「あ、真央さん!」
彩香。
『振り向くな言う前に振り向いた!』
真央。
駆ける。
「何持っとるの?」
「コピー用紙やに」
「何枚?」
「五千枚」
「一箱?」
「うん」
「重さ何キロ?」
あかり。
止まる。
箱。
見る。
「……知らん」
「運んどるのに?」
「重いか軽いかで持っとるから」
真央。
笑う。
「筋肉基準だがね!」
あかり。
「そうかもしれんに」
彩香。
『そこで会話成立させんな!』
真央。
さらに。
「これどこ持ってくの?」
「コピー室」
「コピー室どこ?」
「あっち」
指。
差す。
彩香。
『場所教えんな!』
真央。
「見に行ってええ?」
あかり。
真面目。
考える。
「関係者以外あかんと思う」
「じゃあ責任者に聞けばええ?」
「うん」
彩香。
『“うん”ちゃう!』
真央。
「責任者誰?」
あかり。
「えっとな」
彩香。
『答えるな!』
あかり。
「あ」
止まる。
真央。
「何?」
あかり。
苦しそう。
「……言えん」
「何で?」
「言ったら怒られるに」
真央。
目。
輝く。
「誰に?」
彩香。
通信。
『ウチや!』
あかり。
つい。
小声。
「彩香さん」
真央。
「彩香さん?」
あかり。
顔。
固まる。
彩香。
監視室。
両手。
頭。
「名前まで出したぁ……」
真央。
さらに。
追う。
コピー用紙。
運ぶ。
あかり。
横。
歩く。
「一日何箱使う?」
「日によるに」
「今日は?」
「多いと思う」
「何で?」
「研修多いから」
「何人?」
「二百……」
彩香。
『人数まで答えんな!』
あかり。
止まる。
「……言ったらアカンかった?」
真央。
「もう聞いたがね」
あかり。
困る。
「忘れてくれへん?」
真央。
「無理だがね」
そして。
カメラ。
回る。
真央。
マイク。
向ける。
「山本あかりさん! 研修センターで働く上で一番大変なことは?」
あかり。
真面目。
考える。
「……コピー用紙運ぶこと?」
彩香。
「そこなん!?」
真央。
「やっぱり重い?」
「まあまあ」
「腰に来る?」
「私は来ん」
「何で?」
「鍛えとるから」
「普段何しとるの?」
「戦隊――」
彩香。
『そこから先言うなぁ!』
あかり。
止まる。
「……色々」
真央。
「何その急な“色々”!」
麻衣。
遠く。
その様子。
見る。
首。
振る。
『あかり、付き合わんでええのに……』
彩香。
『変なとこ真面目やねん』
麻衣。
『聞かれたら答えな失礼やと思ってるんでしょうね』
彩香。
『任務中やぞ!』
真央。
しつこい。
本当に。
しつこい。
悪意。
ない。
むしろ。
仕事。
真面目。
だから。
余計。
止まらない。
コピー室。
扉。
映す。
廊下。
撮る。
講義室。
入口。
研修参加者。
休憩。
インタビュー。
食堂。
移動。
また。
あかり。
捕まえる。
「コピー終わった?」
「終わったに」
「何枚?」
「知らん」
「また知らん!」
「数えへんもん」
「紙詰まりした?」
「今日はしてへん」
「昨日は?」
「一回した」
「どう直した?」
あかり。
本気。
説明。
始める。
「横のレバー開けてな――」
彩香。
「紙詰まり修理講座始めんな!」
真央。
聞く。
頷く。
「なるほど!」
あかり。
「ローラー熱い時あるから触ったらアカンに」
「へえ!」
「そこ注意やに」
彩香。
「何で安全講習までしとんねん!」
麻衣。
通信。
笑い。
こらえる。
黒鷹。
その様子。
見る。
予定。
狂う。
テレビカメラ。
施設内。
予想外。
しかも。
潜入した麻衣。
あかり。
レポーター。
知り合い。
黒鷹幹部。
疑う。
「予定を早める」
本来。
深夜。
コピー。
実施。
搬出。
予定。
しかし。
研修。
終了。
直後。
動く。
複合機。
一台。
急。
作動。
カウンター。
跳ねる。
麻衣。
管理画面。
見る。
表情。
変わる。
今まで。
真央。
かわす。
軽い。
笑い。
消える。
『彩香さん』
「何?」
『動きました』
彩香。
椅子。
立つ。
播州の烈火。
『麻衣、コピー室』
「了解」
『あかり、資料倉庫側』
「はい!」
『真央は?』
麻衣。
遠く。
見る。
まだ。
別。
講師。
取材。
『今は離れてます』
「よし」
一拍。
彩香。
『あかり』
「はい」
『今度こそ巻き髪に捕まんなよ』
「分かったに!」
コピー室。
大型複合機。
唸る。
紙。
次々。
吐く。
モノクロ。
両面。
黒鷹。
男。
二人。
資料。
ファイル。
箱。
詰める。
麻衣。
扉。
開ける。
「その資料」
二人。
止まる。
「持ち出し許可、出てませんよね」
一人。
低く。
「どけ」
麻衣。
「嫌です」
男。
来る。
腕。
伸ばす。
麻衣。
半歩。
横。
複合機。
脇。
滑る。
書類ワゴン。
回る。
パーティション。
影。
消える。
次。
背後。
一撃。
腕。
落とす。
男。
振り返る。
麻衣。
もう。
いない。
一歩。
二歩。
小柄。
身体。
狭い。
空間。
生きる。
紀州の舞姫。
コピー機。
壊さない。
机。
倒さない。
資料。
散らさない。
敵。
だけ。
崩す。
一人。
書類箱。
蹴ろう。
する。
麻衣。
足。
止める。
「それ研修資料です」
男。
「知るか!」
「私は知ってます」
一撃。
胴。
適時。
入る。
男。
沈む。
別。
資料倉庫。
黒鷹。
三人。
箱。
持つ。
逃げる。
あかり。
前。
出る。
「止まるに!」
「どけ!」
「嫌や!」
真正面。
男。
来る。
あかり。
受ける。
一歩。
下がる。
次。
押し返す。
相手。
驚く。
二人目。
横。
入る。
あかり。
身体。
回す。
三人目。
箱。
持って。
逃げる。
「待て!」
あかり。
追う。
四日市の突貫娘。
正面。
突破。
敵。
隊形。
壊す。
コピー用紙。
箱。
ラック。
机。
椅子。
全部。
守る。
それでも。
火力。
落ちない。
男。
「何なんだこいつ!」
あかり。
「施設のもん壊さんといて!」
「それどころじゃ――」
一撃。
止まる。
彩香。
モニター。
黒鷹幹部。
非常口。
向かう。
自ら。
出る。
廊下。
扉。
開く。
男。
彩香。
いる。
止まる。
「誰だ」
彩香。
ゆっくり。
袖。
整える。
「国家転覆」
男。
睨む。
「産業スパイ」
一歩。
「企業機密」
一歩。
「国外工作」
さらに。
「ほんで」
一拍。
「コピー代三円」
男。
「黙れ!」
来る。
彩香。
かわす。
腕。
取る。
体勢。
崩す。
一気。
床。
播州の烈火。
別。
一人。
飛び出す。
彩香。
正面。
受ける。
返す。
麻衣。
右。
あかり。
左。
黒鷹。
退路。
ない。
彩香。
低い。
播州弁。
空気。
変わる。
「おどられなぁ……」
男。
顔。
引きつる。
「大層な看板背負うて」
一歩。
「コピー代三円ケチって」
一歩。
「何が国家転覆や」
さらに。
「おどられ、セコすぎるねん!」
男。
後退。
彩香。
追う。
「三円やぞ!」
一喝。
「革命起こす前にコピー代払えや!」
言っている。
内容。
事務用品。
迫力。
完全。
極道。
あかり。
小声。
「彩香さん怖いに」
麻衣。
「聞こえるよ」
彩香。
「何か言うた?」
二人。
「何も」
その時。
サイレン。
県警。
特殊部隊。
到着。
先頭。
玲奈。
「そこまでです」
特殊部隊。
入る。
見る。
黒鷹。
床。
壁際。
全員。
制圧。
コピー。
盗難資料。
確保。
麻衣。
無傷。
あかり。
息。
少し。
上がる。
彩香。
幹部。
押さえている。
玲奈。
しばらく。
周囲。
見る。
「……私たちがすることは?」
彩香。
指。
資料箱。
「それ運ぶの手伝ってください」
玲奈。
「分かりました」
特殊部隊。
戦闘。
なし。
証拠品。
搬送。
のみ。
押収。
黒鷹。
内部指示。
出る。
一枚でも無駄コピーを減らすこと。
カラーは部門長承認制。
裏紙再利用率八十%以上。
トナー使用量前年比二割削減。
彩香。
読む。
静か。
「玲奈さん」
「はい」
「これ悪の秘密結社ですよね?」
「そうです」
「ISO担当部署ちゃいますよね?」
「違います」
「環境推進室でも?」
「ありません」
彩香。
頭。
抱える。
「セコい上に妙に意識高いん何なん……」
玲奈。
「経費管理でしょう」
「そこ真面目に分析せんでください」
後日。
ヒロ室西日本分室。
彩香。
コーヒー。
一口。
飲む。
麻衣。
あかり。
玲奈。
いる。
静か。
三秒。
彩香。
「それにしても」
麻衣。
「あ」
あかり。
「真央さんやに」
彩香。
即。
「あの巻き髪、しつこすぎるねん!」
麻衣。
笑う。
「かなり熱心でしたね」
「熱心で済ますな!」
彩香。
指。
一本。
「麻衣捕まえる!」
二本。
「あかり捕まえる!」
三本。
「コピー用紙何枚!」
四本。
「何キロ!」
五本。
「紙詰まりどう直す!」
両手。
広げる。
「何が『山田真央の突撃レポート』や! ほんまに突撃してくるやないか!」
麻衣。
「タイトルには忠実ですね」
「そこ褒めんな!」
あかり。
のんびり。
「でも真央さんのコーナー、評判ええに」
彩香。
止まる。
「何?」
「四日市でも見とる人おるに。うちの大学でも『真央さん今日どこ突撃するんやろ』って結構話題やに」
彩香。
即。
「知るかボケェ!」
あかり。
「ほんまやに」
「評判の話ちゃう!」
「でも取材熱心やったに」
「知っとる!」
「聞いたこと全部ちゃんとメモしとった」
「お前が全部答えるからや!」
あかり。
真顔。
「聞かれたら答えな失礼やに」
彩香。
両手。
頭。
「任務中や言うとるやろ!」
麻衣。
横。
笑う。
「私は全部スルーしましたけど」
彩香。
即。
「麻衣は完璧やった!」
麻衣。
少し。
胸。
張る。
「担当者へ聞いてください、でほぼ乗り切りました」
あかり。
「それちょっと冷たない?」
麻衣。
「任務優先」
あかり。
「でも真央さん困るに」
彩香。
「だからお前は捕まるんや!」
しばらく。
彩香。
黙る。
そして。
嫌な。
笑み。
浮かべる。
麻衣。
「来ましたね」
あかり。
「何が?」
彩香。
「決めた」
あかり。
「何を?」
彩香。
ゆっくり。
「次あの巻き髪が任務邪魔したらな」
小野。
名物。
播州そろばん。
彩香。
「播州そろばん一丁渡して、コピー二万枚分、一枚三円ずつ一枚ごとに珠動かして、六万円まで足させたるわ!」
麻衣。
一瞬。
考える。
そして。
目。
輝く。
「それ、ええですね!」
彩香。
「せやろ!」
麻衣。
乗る。
「両面コピーなら表と裏で二回ずつ動かさせましょか」
「それ採用!」
「カラーが一枚混じったら?」
「最初から!」
麻衣。
「厳しっ」
言いながら。
楽しそう。
あかり。
二人。
見る。
首。
傾げる。
「……それって意味ありますか?」
彩香。
麻衣。
顔。
見合わせる。
一拍。
そして。
綺麗。
ハモる。
「ないわ〜!」
あかり。
「ないんかい!」
麻衣。
笑う。
「何っちゃ意味ないね」
彩香。
「罰やからええねん!」
あかり。
考える。
「でも真央さんやったら」
彩香。
嫌な予感。
「何や」
「『山田真央の突撃レポート・播州そろばんでコピー二万枚分計算してみた!』って企画にすると思うに」
彩香。
固まる。
麻衣。
「……ありそう」
あかり。
「小野市のそろばんPRにもなるに」
麻衣。
「視聴率も取れそう」
彩香。
両手。
頭。
「何でウチの罰ゲームが毎回地域振興企画になるんや!」
あかり。
笑う。
「真央さん、最後までやると思うに」
麻衣。
「途中でそろばん職人さんまで取材しそう」
彩香。
「やめろ!」
その時。
少し。
離れた机。
玲奈。
報告書。
読む。
いつもの。
冷静。
冷徹。
端正。
横顔。
口元。
ほんの。
僅か。
緩む。
彩香。
即。
振り向く。
「玲奈さん」
「はい」
「今、笑いました?」
「いいえ」
麻衣。
「笑ってました」
あかり。
「私も見たに」
玲奈。
一拍。
「……気のせいです」
彩香。
「絶対ちゃうやろ!」
玲奈。
資料。
閉じる。
「ただ」
三人。
見る。
「一枚三円でも、不正は不正です」
彩香。
天井。
見る。
「まだそこ戻ります?」
「金額の大小はありません」
「はいはい」
彩香。
少し。
笑う。
「警察官の鑑には勝てませんわ」
玲奈。
「勝ち負けではありません」
麻衣。
笑う。
あかり。
笑う。
玲奈の口元。
また。
ほんの少し。
緩む。
小野。
ものづくり。
町。
人。
育てる。
企業。
学ぶ。
研修。
場所。
そこで。
国家転覆を狙う黒鷹は。
一枚三円。
惜しんだ。
そして。
二万枚。
刷った。
紙。
重なる。
ほど。
証拠。
重なる。
三円。
惜しい。
その気持ち。
誰でも。
少し。
分かる。
だが。
盗めば。
話。
別。
彩香なら。
この事件。
思い出す。
たび。
必ず。
言う。
「国家転覆する前に、コピー代払えや」
そして。
たぶん。
もう一言。
「セコすぎるねん」
と。




