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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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410/415

消えた舞台に、先輩は立っていた ――淡路・天空イリュージョンパーク、黒鷹の「ファントム・キュー0」

淡路島の夕暮れは、海から始まる。


西の播磨灘へ太陽が沈み、海面が銅色に染まる。北を見れば明石海峡大橋の巨大な主塔が空へ突き刺さり、その向こうには神戸の輪郭が霞んでいた。南へ目を向ければ島は細長く続き、その先には鳴門海峡と四国がある。


島でありながら、孤立していない。


むしろ淡路島は昔から人と物が行き交う場所だった。


国生み神話の島。


温暖な気候。


花。


海産物。


玉ねぎをはじめとする豊かな農産物。


温泉。


丘陵。


漁港。


リゾート。


明石海峡大橋と大鳴門橋によって本州と四国をつなぐ今では、島全体が巨大な観光地でありながら、関西圏から短時間でたどり着ける別世界でもある。


その北部。


海を見下ろす丘陵の一角に、夕闇の中でひときわ強い光を放つ巨大施設があった。


AWAJI SKY MIRAGE PARK。


天空イリュージョンパーク。


遊園地。


劇場。


映像施設。


体験型アトラクション。


その全てを一つへ詰め込んだような巨大エンターテインメント施設だった。


中央にそびえるのは、国内最大級の立体劇場。


客席の前だけが舞台なのではない。


舞台は上下へ動く。


壁が開く。


床が沈む。


頭上には何層もの空中回廊が走り、巨大なスクリーンが観客席を包み込み、可動式の舞台装置が建物内部を縦横に移動する。


観客から見える華やかな世界。


その裏には、何倍もの複雑な機械と通路が隠されていた。


細い保守路。


巨大な昇降機。


資材用リフト。


ワイヤー機構。


照明ブリッジ。


舞台床の下へ続くサービスフロア。


迷路だった。


そして今夜、その巨大劇場では特別公演の最終リハーサルが行われていた。


世界的イリュージョニスト、高田美雪。


公演名。


『MIRAGE OF JAPAN――高田美雪・天空大脱出』


舞台中央。


美雪が静かに立っていた。


漆黒を基調にしたステージ衣装。


照明を受けるたび、布地に散らされた細かな装飾が微かに光る。


美雪が右手を上げる。


次の瞬間。


舞台中央にあった巨大な箱が消えた。


スタッフの何人かは毎日のように見ている。


それでも息を呑む。


さらに照明が落ちる。


暗闇。


一秒。


照明が戻る。


美雪はいない。


観客席側のスタッフが振り返る。


後方。


二階席。


そこに美雪が座っていた。


誰にも気づかれず。


妖艶な笑み。


「もう少し照明を半拍遅くして」


スタッフが慌ててメモを取る。


「はい!」


「このままだと消える前に目が追いついちゃうから」


穏やかな口調だった。


だがその一言だけで、世界レベルの人間が何を見ているのか分かる。


視線。


呼吸。


間。


人間が次に何を見るか。


美雪はそれを読んでいた。


誰も知らなかった。


その夜。


同じ劇場の裏側で、本物の犯罪者が物を消そうとしていることを。


黒鷹。


彼らが狙っていたのは、イリュージョンそのものではなかった。


巨大劇場の統合舞台制御システム。


照明。


映像。


昇降舞台。


可動壁。


搬送路。


ワイヤー。


それら全てを制御するプログラムの中に、正規の公演では絶対に使用されない命令が一つだけ潜んでいた。


PHANTOM CUE-0。


ファントム・キュー・ゼロ。


存在しない演出番号。


これを実行すると、舞台の一部が保守モードへ移行する。


通常は閉ざされているサービスシャッターが開く。


大型演出装置の搬出ルートが自動的に切り替わる。


時間は数分。


黒鷹はその数分へ、盗み出した次世代無人機群制御用の高性能演算モジュールと暗号媒体を紛れ込ませるつもりだった。


巨大イリュージョン装置の内部へ入れる。


その装置は公演終了後、国外公演用機材として施設外へ搬出される。


帳簿上はただの舞台装置。


黒鷹は舞台から物を消す演出を利用して、本物の機密を消そうとしていた。


ヒロ室西日本分室。


大型モニターに施設断面図が映し出されていた。


玲奈が指し示す。


「ファントム・キュー0が動いた瞬間、ここが開きます」


麻衣が画面を見る。


「旧演出区画」


「ええ」


「今は使ってない?」


「正規公演では使われていません」


美咲が資料をめくる。


「でも保守経路としては残ってるんやね」


「そうです」


あかりは立体図を見ながら眉を寄せた。


「ややこしい建物やに」


麻衣が横から言う。


「だから勝手に走り回らんといてよ」


「まだ何もしてへん」


「先に言うとくんよ」


今回。


彩香はいない。


だが作戦会議の空気に穴はなかった。


玲奈が麻衣を見る。


「現場指揮は麻衣」


「はい」


即答だった。


以前なら一瞬だけ迷ったかもしれない。


今は違う。


山本あかり。


春日美咲。


二人も自然に麻衣を見る。


それが現在の紀伊ハンターだった。


そこへ波田顧問が口を挟む。


「おう、てやんでぇ! また紀伊ハンターの出番じゃねぇか」


あかりが振り返る。


「まだ言っとるに」


美咲も淡々。


「元ネタは今回も分かりません」


麻衣はもう諦めたように手を振る。


「波田さん好きにしてください」


「そうこなくっちゃよ!」


玲奈。


「続けます」


「へいへい」


潜入は翌朝から始まった。


あかりは舞台設備保守・機材搬送班。


作業着。


ヘルメット。


安全靴。


劇場へ入った最初の感想は単純だった。


「広っ」


舞台裏。


さらに。


「高っ」


頭上。


空中ブリッジ。


そして。


「階段多っ」


ベテラン作業員が笑う。


「まだ半分も見てへんぞ」


あかりの仕事は体力勝負だった。


大型照明機材。


演出用ケース。


ワイヤー器具。


舞台装置用パーツ。


五階へ。


地下へ。


また上へ。


資材リフトが使えない場所は人間が持つ。


「山本ちゃん!」


「はい!」


「このケース五階!」


「はい!」


数分後。


「悪い、今度地下二階!」


「はい!」


さらに十分。


「また五階!」


「はい!」


ベテランが呆れる。


「お前、疲れへんの?」


「まだ全然やに」


「若いなぁ……」


大型機材ケース。


二人で持つよう指示される。


あかりが一度持ち上げかける。


「一人でいけるに」


「二人で持て!」


「あ、はい」


通信。


麻衣。


『あかり』


「何?」


『ちゃんと二人で持って』


「持っとるに」


『今一人で行こうとしたやろ』


「見てたん?」


『見てるよ』


あかり。


笑う。


「麻衣、母親みたいやに」


『同い年やよ!』


「分かっとる」


『今日ほんま勝手に動かんといてね』


「分かってるに」


麻衣。


間。


『……その言い方が一番怖い』


「心配しすぎやって」


『私、今日キャップなんやよ』


「知っとるに」


『なら指示聞いて』


「分かってる」


麻衣。


小さくため息。


二人は同い年。


普段から仲がいい。


だからこそ、あかりの中にほんの少しだけ甘えがあった。


玲奈の指示なら即座に止まる。


彩香に怒鳴られれば渋々でも止まる。


だが麻衣なら。


少しくらい。


大丈夫。


そんな油断。


一方、美咲は公演統合運営室へ入っていた。


スタッフID。


搬入記録。


演出プログラム。


安全確認。


保守ログ。


淡々と処理する。


「春日さん」


「はい」


「この明日の技術班配置お願い」


「入力済みです」


「もう?」


「はい」


「こっちの機材搬入も」


「処理済みです」


担当者が苦笑する。


「春日さん、仕事早すぎへん?」


美咲は微笑む。


「普通です」


目立たない。


だが正確。


そして。


その目が一行で止まった。


正規演出。


CUE-147。


CUE-148。


CUE-149。


その下。


通常画面では非表示。


PHANTOM CUE-0。


美咲の目が静かに変わる。


通信。


『麻衣』


「何?」


『幽霊見つけたよ』


「幽霊?」


『ファントム・キュー0』


麻衣の表情が締まる。


「実行時刻は?」


『まだ設定されてない。でも起動権限が裏側から生きてる』


「場所は?」


『旧演出区画。最上層側』


同じ頃。


あかりは休憩中、ベテラン作業員の話を聞いていた。


「あそこ昔使っとった区画なんやけどな」


「どこ?」


「上の旧演出区画。今夜、何か搬出するらしい」


あかり。


「公演機材?」


「知らん。俺らには触るなって」


あかりの目が変わる。


数分後。


『麻衣』


「何?」


『上の旧演出区画、今夜誰か入るって』


「分かった」


『今見に行ったら分かるかもしれんに』


麻衣。


即答。


『行かんといて』


「でも今近くやに」


『そこで待って』


「ちょっと見るだけ」


『あかり』


麻衣の声。


強くなる。


『行かんといてって言うたよ』


「分かってるに」


『分かってへんやん!』


あかり。


少しだけ。


ムッとする。


「大丈夫やって」


麻衣。


今度。


声。


低く。


『大丈夫かどうか決めるんは、今はキャップのうちやよ』


一瞬。


あかり。


黙る。


「……はい」


通信。


切れる。


麻衣。


美咲へ。


『美咲ちゃん、旧区画へのルート見れる?』


『確認する』


数分。


麻衣。


もう一度。


あかり。


呼ぶ。


『あかり?』


返事。


ない。


『あかり』


無音。


麻衣。


目。


閉じる。


「……行った」


美咲。


通信。


『行ったね』


麻衣。


額。


押さえる。


「もう……!」


その頃。


あかりは上層へ向かっていた。


階段。


三段。


飛ばし。


上。


サービス通路。


狭い。


右。


巨大な舞台機構。


左。


吹き抜け。


その先。


人影。


一人。


黒い作業着。


大きなケース。


「あ!」


男。


振り返る。


走る。


あかり。


「待つに!」


追う。


角。


曲がる。


男。


さらに奥。


あかり。


速い。


距離。


詰める。


旧演出区画。


入口。


男。


消える。


あかりも飛び込む。


そして。


止まる。


前。


二人。


背後。


ドア。


閉まる。


三人。


左。


一人。


右。


一人。


さらに奥。


一人。


計。


七人。


あかり。


視線。


ゆっくり。


動く。


「……やってもうたに」


男。


笑う。


「一人か」


通信。


ノイズ。


『あか……戻……!』


切れる。


男。


「さっきから嗅ぎ回ってたの、お前だな」


あかり。


構える。


「そうやったら?」


一人。


来る。


速い。


あかり。


身体。


沈める。


腕。


受ける。


肩。


押す。


男。


壁際。


二人目。


横。


あかり。


避ける。


拳。


返す。


相手。


後退。


三人目。


背後。


あかり。


振り返る。


腕。


取る。


身体。


流す。


床。


強い。


だが。


四人。


残る。


一人。


また。


立つ。


人数。


減らない。


一人が工具ケースを蹴る。


通路。


狭くなる。


あかり。


逃げ場。


さらに。


減る。


前。


二人。


左右。


二人。


後ろ。


壁。


一人。


掴みかかる。


あかり。


押し返す。


二人目。


続く。


呼吸。


少し。


荒い。


「しつこいに!」


男。


「勢いだけじゃどうにもならんぞ」


あかり。


もう一人。


かわす。


足。


滑る。


一瞬。


隙。


肩。


壁。


ぶつかる。


男たち。


包囲。


狭める。


さすがの。


四日市の突貫娘。


万能。


ではない。


麻衣。


遠い。


美咲。


遠い。


玲奈。


特殊部隊。


まだ施設外周。


間に合わない。


男。


前。


出る。


「終わりだ」


あかり。


歯。


食いしばる。


その時。


照明。


落ちた。


完全な暗闇。


一秒。


何も。


見えない。


男たち。


足。


止まる。


非常灯。


淡い。


光。


戻る。


あかり。


目。


上。


一人の工作員も。


同じ方向。


見る。


最上段。


細い。


演出用キャットウォーク。


そこ。


数秒前。


誰も。


いなかった。


女。


一人。


立っていた。


黒を基調にしたステージ衣装。


長い髪。


華やか。


それでいて。


影へ。


溶ける。


ような。


立ち姿。


片手。


軽く。


上げる。


口元。


妖艶な。


笑み。


声。


柔らかい。


「お待たせ」


あかり。


目。


見開く。


「……美雪さん?」


高田美雪。


黒鷹。


一人。


叫ぶ。


「いつからそこにいた!」


美雪。


微笑む。


「それを教えたら」


少し。


首。


傾げる。


「イリュージョンじゃなくなるでしょう?」


次。


瞬間。


美雪。


消えた。


ように。


見えた。


男。


目。


追う。


いない。


「どこだ!」


背後。


「ここ」


男。


振り向く。


遅い。


美雪。


腕。


外す。


手首。


流す。


男。


身体。


崩れる。


二人目。


来る。


美雪。


身体。


半歩。


ずらす。


相手。


視線。


外れる。


一瞬。


美雪。


死角。


入る。


男。


見失う。


次。


膝。


崩れる。


三人目。


正面。


拳。


美雪。


かわす。


そのまま。


肩。


触れる。


力。


ほとんど。


見えない。


男。


体勢。


崩す。


床。


あかり。


唖然。


「……すご……」


人間業。


見えない。


美雪。


魔法。


違う。


でも。


視線。


誘導。


死角。


間。


呼吸。


相手。


見る。


場所。


全部。


読んでいる。


だから。


目の前。


いるのに。


いない。


ように。


見える。


美雪。


もう一人の攻撃。


かわす。


横目。


あかり。


見る。


「あかり」


「はい?」


「ボーっとしてないで手伝って」


一瞬。


あかり。


我。


戻る。


目。


変わる。


「……はい!」


足。


踏み込む。


「任せて!」


四日市の突貫娘。


復活。


一人。


正面。


あかり。


受ける。


押す。


後退。


美雪。


別。


相手。


右。


流す。


「あかり、右」


「はい!」


あかり。


身体。


入れる。


男。


押し返す。


美雪。


一人。


背後。


死角。


作る。


あかり。


そこ。


突破。


黒鷹。


隊形。


崩れる。


男。


叫ぶ。


「何なんだ、お前ら!」


美雪。


妖艶。


笑う。


「私はただのイリュージョニストよ」


あかり。


勢い。


「私は四日市の突貫娘やに!」


美雪。


一瞬。


見る。


「……自分で言うようになったの?」


「今そこですか!」


「元気でよろしい」


その時。


通信。


復活。


『あかり!』


「麻衣!」


『無事!?』


「無事! 美雪さん来た!」


向こう。


一瞬。


沈黙。


『……美雪さん?』


「そう!」


麻衣。


驚く。


だが。


一秒。


それだけ。


すぐ。


キャップ。


戻る。


『美雪さん、聞こえます?』


美雪。


黒鷹の腕を流しながら。


「聞こえるよ」


『西側に二人逃げます』


「了解」


『右へ流してもらえます?』


「分かった」


『あかり、正面!』


「はい!」


『美雪さん、三秒後に一歩下がってください』


美雪。


一瞬。


笑う。


「了解、キャップ」


麻衣。


胸。


一瞬。


熱くなる。


戦隊ヒロイン。


大先輩。


世界的。


イリュージョニスト。


その人。


自分へ。


「了解、キャップ」。


しかし。


今。


指揮。


止めない。


『美咲ちゃん!』


『西側、もう閉めたよ』


麻衣。


「さすが!」


黒鷹。


二人。


旧区画。


外。


逃げる。


非常通路。


曲がる。


前。


美咲。


立つ。


「そちら、通れません」


男。


「どけ!」


美咲。


静か。


「できません」


一人。


来る。


美咲。


横。


かわす。


腕。


取る。


身体。


流す。


床。


二人目。


美咲。


一歩。


前。


相手。


拳。


外す。


手首。


肩。


足。


崩す。


奈良の静かな女。


派手。


違う。


だが。


美咲。


立つ場所。


一つ。


逃げ道。


消える。


同時。


運営室。


遠隔。


PHANTOM CUE-0。


起動準備。


進む。


美咲。


端末。


操作。


『麻衣』


「何?」


『ゼロ番、あと三十秒で動く』


「止められる?」


『完全停止は無理。一回走らせてから遮断する』


「分かった。一般スタッフは?」


『退避済み』


「さすが」


麻衣。


旧区画。


到着。


扉。


開く。


あかり。


無事。


美雪。


いる。


安堵。


一瞬。


だが。


怒る。


今。


違う。


黒鷹。


まだ。


残る。


男。


麻衣。


見つける。


「こいつも仲間か!」


来る。


麻衣。


一歩。


横。


二歩。


反転。


三歩。


男。


追う。


麻衣。


狭い。


保守通路。


身体。


小さい。


生きる。


手。


伸びる。


掴めない。


鉄柱。


回る。


男。


方向。


見失う。


背後。


麻衣。


「こっちやよ」


腕。


取る。


肩。


流す。


足。


払う。


男。


安全側。


床。


紀州の舞姫。


美雪。


その動き。


見る。


目。


少し。


細く。


なる。


昔。


初めて。


会った。


麻衣。


怖かった。


前。


出られなかった。


今。


違う。


自分。


戦う。


仲間。


指示。


する。


現場。


見る。


美雪。


静か。


笑う。


その瞬間。


劇場全体。


低い。


機械音。


PHANTOM CUE-0。


起動。


巨大舞台。


動く。


床。


沈む。


壁。


開く。


旧搬送路。


出る。


黒鷹。


残党。


ケース。


持つ。


走る。


麻衣。


即。


『あかり!』


「はい!」


『搬送路!』


あかり。


走る。


真正面。


ケース。


運ぶ。


二人。


前。


あかり。


「置くに!」


「どけ!」


「嫌やに!」


一人。


体当たり。


あかり。


受ける。


一歩。


後ろ。


次。


押す。


男。


ケース。


手。


離す。


もう一人。


取り返す。


あかり。


身体。


入れる。


「それ黒鷹の荷物やろ!」


「触るな!」


「触るに!」


正面。


突破。


四日市の突貫娘。


完全。


本領。


麻衣。


『美雪さん!』


「はい」


『上のブリッジ、右から一人!』


「見えてる」


美雪。


一瞬。


影。


入る。


男。


追う。


いない。


次。


横。


美雪。


現れる。


男。


方向。


狂う。


麻衣。


『美咲ちゃん!』


『搬送シャッター閉じる』


巨大。


シャッター。


降りる。


黒鷹。


最後。


逃走。


止まる。


そして。


外。


サイレン。


複数。


県警特殊部隊。


一斉。


施設。


入る。


先頭。


岡本玲奈。


「そこまでです」


特殊部隊。


階段。


通路。


左右。


展開。


黒鷹。


残党。


確保。


内部協力者。


制圧。


PHANTOM CUE-0。


停止。


美咲。


システム。


完全。


遮断。


ケース。


開く。


高性能演算モジュール。


暗号媒体。


全部。


ある。


玲奈。


現場。


入る。


あかり。


見る。


「無事ですね」


あかり。


少し。


目。


逸らす。


「……はい」


玲奈。


麻衣。


見る。


麻衣。


顔。


静か。


でも。


分かる。


あと。


怒る。


玲奈。


次。


美雪。


「助かりました」


美雪。


穏やか。


「近くにいたから」


麻衣。


思わず。


「近くって……どこにおったんです?」


あかり。


「私も知りたいに!」


美咲。


「物理的な経路が気になります」


美雪。


妖艶。


笑う。


「秘密」


「えー」


「秘密」


世界。


トップ。


イリュージョニスト。


種。


明かさない。


任務。


完了。


数日後。


ヒロ室西日本分室。


高田美雪。


ソファ。


座る。


コーヒー。


手。


麻衣。


向かい。


少し。


緊張。


美雪。


見る。


微笑む。


「麻衣」


「はい」


「大きくなったね」


麻衣。


一瞬。


自分。


身体。


見る。


「身長は変わってないですけど……」


美雪。


笑う。


「そういう意味じゃないよ」


一拍。


「初めて会った時から、本当に大きく成長したね」


麻衣。


静か。


「最初は怖くて、一歩踏み出せなかったでしょう」


「……はい」


「今は自分が前へ出ながら、あかりと美咲を動かして」


美雪。


少し。


楽しそう。


「私にまでちゃんと指示した」


麻衣。


思わず。


「すみません」


「何で謝るの?」


「大先輩に……」


「現場キャップは麻衣だったでしょう」


美雪。


穏やか。


でも。


言葉。


まっすぐ。


「こんなに早く成長して、現場で指揮を取れるようになるとは思わなかった」


麻衣。


照れる。


美雪。


短く。


「凄いよ」


麻衣。


目。


少し。


伏せる。


「……ありがとうございます」


横。


あかり。


ニヤニヤ。


麻衣。


「何よ」


「照れとる」


「うるさい」


美雪。


次。


あかり。


見る。


「あかり」


「はい!」


「相変わらずだね」


「え?」


「元気があって、突っ込める」


あかり。


少し。


笑う。


「でも」


美雪。


笑顔。


少し。


締まる。


「麻衣の指示は聞かなきゃダメ」


あかり。


「……はい」


「普段から仲がいいのは、とてもいいこと」


麻衣。


あかり。


見る。


「でも、仲がいいことと馴れ合いは別だよ」


今度。


あかり。


ちゃんと。


「はい」


美雪。


少し。


柔らかく。


「でも」


「?」


「強くなったね」


あかり。


ぱっと。


顔。


明るい。


「ほんま?」


麻衣。


即。


「あかり、そこで調子乗らんといて!」


あかり。


麻衣。


見る。


「ほら」


「何?」


「麻衣も彩香さんに似てきたに」


麻衣。


「誰のせいよ!」


美雪。


上品。


微笑む。


「確かに」


麻衣。


「美雪さんまで!?」


玲奈。


奥。


報告書。


見ながら。


「私もそう思います」


麻衣。


「玲奈さんまで!」


あかり。


少し。


得意。


その時。


扉。


開く。


「邪魔するで〜!」


美月。


麻衣。


反射。


「邪魔するなら帰って〜」


美月。


「あ、おぉ。そうやな」


くるり。


扉。


閉めようとする。


止まる。


一秒。


戻る。


「……って、なんでやねん!」


麻衣。


「そこまでセットなん……」


美月。


部屋。


見る。


「あれ? 怖いオバハンおらんの?」


麻衣。


眉。


動く。


彩香。


不在。


美月。


美雪。


発見。


「あっ、美雪さん! お久しぶりです!」


「久しぶり、美月」


美月。


袋。


上。


「いちご大福もろたから、みんなで食べよや!」


テーブル。


並ぶ。


いちご大福。


美月。


一つ。


取る。


食べる。


「で?」


あかり。


見る。


「何か麻衣に怒られたん?」


あかり。


「めっちゃ怒られそうやに」


麻衣。


「“そう”ちゃう。後でちゃんと話あるよ」


美月。


麻衣。


じっと。


見る。


「……似てきたな」


麻衣。


「何に?」


美月。


ニヤ。


背筋。


伸ばす。


眉間。


ぎゅっ。


皺。


眉。


吊るす。


顎。


引く。


口。


への字。


そして。


低い。


播州弁。


恐ろしく。


似ている。


「あかりぃ〜……何遍言わせんねん。任務中やぞぉ〜。ウチの言うこと聞け言うとるやろぉ〜!」


部屋。


一瞬。


沈黙。


あかり。


吹き出す。


美咲。


顔。


伏せる。


美雪。


上品。


口元。


押さえる。


玲奈。


目。


細く。


なる。


麻衣。


「……似てるのが腹立つ」


美月。


得意。


「やろ?」


さらに。


眉間。


限界。


「『このアホ! 何勝手しとんねん! 反省は後や! 先に取り返してこんかい!』」


あかり。


机。


叩く。


「彩香さんや!」


美雪。


「上手ね」


美月。


胸。


張る。


「特徴つかんどるからな」


麻衣。


「何でそこだけ芸達者なん……」


美月。


麻衣。


指。


「でも麻衣も最近、この顔するで」


「せえへん!」


「する!」


「せえへん!」


「眉間こうして」


美月。


顔。


作る。


「口こうして」


麻衣。


「やめて!」


「『あかりぃ〜!』」


「美月さん!」


美月。


笑う。


「ほら、もう似とる!」


美雪。


少し。


頷く。


「確かに」


玲奈。


「私もそう思います」


麻衣。


「二人まで本気で認定せんといてください!」


美月。


さらに。


「麻衣、可愛い顔しとるんやからな。あんまり険しい顔ばっかしとったら、そのうちあの怖いオバハンみたいに人相悪なるで」


麻衣。


「彩香さんに失礼やろ!」


「怖いもんは怖いやん」


「本人の前で言ってみ!」


美月。


一瞬。


黙る。


「……それは嫌や」


あかり。


「言えへんのや」


「怖いやろ!」


部屋。


笑い。


その間。


あかり。


いちご大福。


一つ。


食べる。


もう一つ。


残る。


美咲。


見る。


「あかり」


「何?」


あかり。


手。


伸ばす。


ぱく。


美咲。


「あ、それ麻衣の分やったんちゃう?」


空気。


止まる。


あかり。


口。


もぐもぐ。


麻衣。


皿。


見る。


空。


ゆっくり。


あかり。


見る。


眉間。


寄る。


あかり。


一歩。


引く。


「麻衣?」


麻衣。


爆発。


「あかりぃ〜〜〜!」


美月。


即。


机。


叩く。


「これや!」


全員。


見る。


美月。


麻衣。


指。


大笑い。


「この顔! この顔があの怖いオバハンそのものなんや!」


麻衣。


「美月さん!」


あかり。


「ごめんやに」


「何で私のまで食べるんよ!」


「美味しかったに」


「感想聞いてへん!」


美月。


さらに。


彩香。


物真似。


「『あかりぃ! 食うたもん吐き出せとは言わへんけどなぁ! 次から確認せえ言うとるやろぉ!』」


美雪。


とうとう。


声。


出す。


美咲。


肩。


揺れる。


あかり。


笑う。


「似とる!」


麻衣。


「笑わんといて!」


少し。


離れた机。


玲奈。


報告書。


見る。


口元。


ほんの。


僅か。


緩む。


麻衣。


即。


「玲奈さん」


「はい」


「今笑いました?」


「いいえ」


美雪。


さらり。


「笑ってたよ」


玲奈。


一瞬。


止まる。


あかり。


「私も見たに」


美咲。


「私も」


美月。


「ウチも!」


玲奈。


四対一。


一拍。


「……気のせいです」


麻衣。


「無理ありますって!」


分室。


笑い。


広がる。


淡路島。


夜。


海。


黒い。


遠く。


明石海峡大橋。


光。


点。


巨大劇場。


照明。


一つ。


また。


一つ。


落ちる。


黒鷹は。


舞台。


利用。


した。


人間が。


「消えた」。


そう。


思う。


その仕組みへ。


本当に。


秘密。


消そうとした。


だが。


その舞台には。


本当に。


消えるように。


戦う。


女。


いた。


高田美雪。


誰も。


いなかった。


はずの。


場所。


現れた。


妖艶。


笑い。


「お待たせ」


それだけで。


絶体絶命。


空気。


変わる。


でも。


大先輩は。


あかりを。


助けて。


終わらなかった。


「ボーっとしてないで手伝って」


立て。


自分。


失敗。


自分。


取り返せ。


その言葉。


四日市の突貫娘。


戻る。


麻衣。


指揮。


美咲。


場。


閉じる。


美雪。


死角。


作る。


あかり。


突破。


最後。


玲奈。


県警。


制圧。


そして。


任務。


終わった。


あと。


美雪は。


麻衣。


言う。


凄い。


成長した。


現場。


指揮。


できる。


麻衣。


照れた。


でも。


あかり。


対して。


怒る。


声。


どこか。


似る。


西川彩香。


本人。


まだ。


認めない。


でも。


玲奈。


美雪。


美月。


あかり。


美咲。


みんな。


分かっている。


白浜麻衣。


現場キャップとして。


成長。


した。


そして。


ボヤキ。


だけ。


それ以上の速度で。


成長。


している。


そのうち。


本当に。


彩香と。


本人認証。


間違われる。


日が。


来るかもしれない。


それだけは。


麻衣。


絶対。


認めない。


だろう。

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