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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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409/415

同じ顔は、二度認証される ――三木・生体認証セキュリティ博覧会、黒鷹が盗む「もう一人の本人」

三木の夜は、神戸ほど派手ではない。


だが。


光が少ないからこそ。


巨大な建物の灯りは、遠くからでもよく見えた。


丘陵。


田園。


工業団地。


ゴルフ場。


その向こうを高速道路が走る。


兵庫県三木市。


古くから金物の町として知られ、全国へ刃物や工具を送り出してきた。


農地では酒米の王とも呼ばれる山田錦。


郊外には広い土地を利用したゴルフ場。


さらに高速道路網を使えば神戸、大阪、姫路、中国地方へ出やすい。


大都市では確保しにくい広大な土地。


物流。


高速道路。


企業立地。


研究施設。


三木は派手に自分を主張する町ではない。


だが。


新しいものを受け入れるだけの場所と、古いものを磨き続ける力。


両方を持っている。


だから。


市郊外に巨大な企業展示施設が造られたとしても、不思議ではなかった。


三木フロンティア・コンベンションパーク。


巨大展示ホール。


国際会議棟。


VIPホテル。


大規模駐車場。


実証試験フィールド。


企業向けの機密商談室。


自動運転車。


ドローン。


ロボット。


警備装置。


大都市中心部では実演できない大型機器まで、実際に動かして見せられる。


その施設で。


今回。


開かれていた。


JAPAN IDENTITY & SECURITY EXPO 2026。


顔認証。


虹彩認証。


静脈認証。


歩容認証。


AI監視。


空港。


銀行。


研究所。


企業。


国家施設。


その全てで問われる。


たった一つ。


「あなたは、本当にあなたなのか」


展示会中央。


最大ブース。


国内大手セキュリティ企業。


新型統合生体認証システム。


JANUS-X。


顔だけではない。


目。


耳。


骨格。


身長。


歩幅。


微細な表情。


複数の情報を同時に照合する。


似ている。


だけでは。


通らない。


一卵性双生児ですら。


別人として。


見分ける。


それが。


売りだった。


黒鷹が狙ったのは。


その精度。


ではない。


開発途中。


研究者しか知らない。


一つの。


脆弱性。


認証テンプレートを書き換える。


本来。


Aという人間。


それを。


Bとして。


認証させる。


偽物の指紋を作るのではない。


偽物の顔を作るのでもない。


別人を。


「本人」に変える。


黒鷹が盗もうとしているのは。


顔。


ではなかった。


本人であるという資格。


それが。


完成すれば。


研究所。


銀行。


空港。


軍事関連施設。


正規の本人として。


侵入。


できる。


県警が掴んだのは。


黒鷹が展示会期間中。


JANUS-Xの脆弱性マスターキーを。


国外へ持ち出そうとしている。


という情報だった。


そして。


その作戦に。


最適すぎる二人が。


NSTには。


いた。


ヒロ室西日本分室。


大型モニター。


玲奈。


表示。


二人。


迫田澪香。


迫田澄香。


宮崎県都城。


大規模酪農家。


娘。


一卵性双生児。


同じ輪郭。


同じ目。


同じ鼻。


同じ口元。


身長。


ほぼ同じ。


体型。


ほぼ同じ。


並べば。


鏡。


それだけでも目立つ。


さらに。


二人とも。


長身。


細身。


長い脚。


華やかな美女。


よく似た女性。


ではない。


瓜二つの、美人双子。


玲奈ですら。


急いでいる時。


一瞬。


間違える。


彩香も。


たまに。


外す。


そして。


赤嶺美月。


ほぼ。


毎回。


逆。


しかも。


本人だけは。


「ウチ、迫田姉妹見分けんの得意やで」


と。


言う。


全員。


信用。


していない。


玲奈。


「今回は、迫田姉妹が潜入します」


澪香。


「了解です」


澄香。


「はい」


麻衣。


二人。


見る。


今回。


彩香。


いない。


現場キャップ。


白浜麻衣。


もう。


誰も。


驚かない。


玲奈。


「麻衣」


「はい」


「二人の現場指揮をお願いします」


「分かりました」


即答。


あかり。


見る。


美咲。


見る。


麻衣。


短く。


「今回は人多いから、通信混線させんようにね」


あかり。


「分かったに」


美咲。


「了解です」


澪香。


「麻衣ちゃん」


「何?」


「私と澄香、間違えない?」


麻衣。


少し。


首。


傾げる。


「何で?」


澄香。


「玲奈さんでもたまに間違うよ」


玲奈。


一瞬。


視線。


逸らす。


あかり。


笑い。


麻衣。


二人。


見比べる。


「間違えへんよ」


澪香。


「ほんと?」


麻衣。


「うん」


それだけ。


玲奈。


少し。


麻衣を見る。


潜入初日。


三木フロンティア・コンベンションパーク。


展示会。


開場。


照明。


白。


ガラス。


金属。


巨大LED。


最新技術。


その中。


人。


一斉に。


見る。


二人。


歩く。


迫田澪香。


迫田澄香。


今日は。


いつものNST装備。


違う。


澪香。


深いネイビーのフォーマルドレス。


肩から腰。


端正。


長い脚。


裾。


歩くたび。


静かに揺れる。


澄香。


シャンパンゴールド。


光。


柔らかく拾う。


上品。


派手。


違う。


しかし。


視線。


奪う。


長い手足。


整った姿勢。


穏やかな表情。


二人。


並ぶ。


その瞬間。


展示会そのものが。


一段。


華やぐ。


カメラ。


向く。


企業担当。


止まる。


「モデル事務所の方ですか?」


澪香。


「違います」


澄香。


「実家は酪農です」


担当者。


「……酪農?」


澪香。


「牛です」


澄香。


「たくさんいます」


「……そうですか」


全く。


繋がらない。


外見。


都城。


牛。


だが。


それも。


迫田姉妹。


だった。


JANUS-X。


公開デモ。


司会。


「本システムは、一卵性双生児であっても別人として識別します」


澪香。


ゲート。


前。


顔。


スキャン。


青。


MIoka SAKODA――AUTHORIZED


次。


澄香。


同じ。


顔。


同じ。


角度。


青。


SUMIKA SAKODA――AUTHORIZED


観客。


拍手。


二人。


目。


合わせる。


ほんの少し。


微笑む。


その姿。


ただの。


実演。


なのに。


ショー。


なる。


麻衣。


会場。


裏。


運営スタッフ。


小柄。


童顔。


迫田姉妹。


並べば。


完全。


年下。


だが。


通信。


入る。


声。


変わる。


『澪香ちゃん、Aホールへ』


『了解』


『澄香ちゃん、そのままVIPラウンジ』


『はい』


途中。


二人。


わざと。


交差。


役割。


入れ替える。


黒鷹の視線。


欺くため。


後ろ姿。


同じ。


髪。


同じ。


歩幅。


ほぼ同じ。


それでも。


麻衣。


即。


『澪香ちゃん、右』


澪香。


止まらない。


『了解』


『澄香ちゃん、そのまま直進』


『分かった』


数秒。


澪香。


通信。


『麻衣ちゃん』


「何?」


『今、後ろからしか見てへんよね』


「うん」


澄香。


『何で分かったん?』


麻衣。


普通。


答える。


「澪香ちゃんの方が、曲がる前に半歩だけ外へ出るもん」


沈黙。


澪香。


『……そんなとこ見とるん?』


「見るよ」


澄香。


『私ら、玲奈さんでもたまに間違えるよ』


玲奈。


遠隔指揮。


通信。


一瞬。


沈黙。


麻衣。


少し。


笑う。


「うちの仲間やもん」


迫田姉妹。


一瞬。


黙る。


澪香。


『……了解』


澄香。


『了解です、キャップ』


玲奈。


何も。


言わない。


ただ。


口元。


少し。


柔らかい。


あかり。


裏方。


展示設営。


認証ゲート。


モニター。


大型機材。


「山本ちゃん!」


「はい!」


「これ精密機器!」


「分かっとる!」


「落とすなよ!」


「落とさんに!」


「ゆっくり!」


「ゆっくりやっとる!」


大きなケース。


持つ。


スタッフ。


「……軽そうに持つなぁ」


あかり。


「軽くはないに」


「そう見えへん」


「力あるから」


また。


現場。


馴染む。


今回は。


役割。


明確。


迫田姉妹の。


背後。


守る。


美咲。


運営本部。


事務。


入場者。


VIP。


認証ログ。


デモ端末。


相変わらず。


目立たない。


「春日さん、このパス」


「確認済みです」


「もう?」


「はい」


「こっちの入退場」


「こちらです」


美咲。


静か。


黒鷹側も。


ほぼ。


意識しない。


そして。


午後二時十三分。


美咲。


画面。


止まる。


ID。


一つ。


Aホール。


通過。


同時刻。


VIP研究棟。


同じID。


通過。


美咲。


拡大。


同じ。


本人。


同時に。


二か所。


美咲。


通信。


『麻衣』


「何?」


『黒鷹、もうテストしてる』


麻衣。


顔。


変わる。


『どういうこと?』


『同一IDが同時刻、二か所』


「偽造?」


『違うと思う』


美咲。


一拍。


『本人認証そのものを書き換えてる』


麻衣。


目。


細く。


なる。


「JANUS-Xの脆弱性……」


『はい』


黒鷹。


もう。


使っている。


二日目。


正午。


取材車。


一台。


来る。


麻衣。


モニター。


見る。


「……」


美咲。


『どうしたん?』


麻衣。


顔。


しかめる。


「なんで真央さんおるの……?」


画面。


特徴的。


巻き髪。


元気。


マイク。


山田真央。


愛知県。


情報番組。


新コーナー。


『山田真央の突撃レポート!』


麻衣。


「名前からして嫌やわ……」


今回。


愛知県のベンチャー企業。


尾張ネクストID株式会社。


展示。


その取材。


正規。


正式。


何も。


悪くない。


真央。


カメラ。


前。


「今日は三木まで来とるでね! 愛知の企業が最新技術でどこまで頑張っとりゃあすか、でら突撃するがね!」


麻衣。


「ほんまに突撃する人が『突撃』言うたらあかんやろ……」


美咲。


『麻衣、落ち着いて』


「まだ落ち着いとるよ」


『声はもう落ち着いてないよ』


「美咲ちゃん」


真央。


会場。


歩く。


巻き髪。


揺れる。


そして。


発見。


シャンパンゴールド。


長身。


華やか。


澄香。


真央。


「あーっ!」


麻衣。


嫌な予感。


『澄香ちゃん、逃げ――』


遅い。


「澪香さーん!」


澄香。


止まる。


通信。


『……私、澄香』


麻衣。


『知ってる』


真央。


接近。


「こんなとこで何しとりゃあす!?」


澄香。


微笑む。


「お仕事です」


「モデル?」


「違います」


「でも、でら綺麗だがね!」


「ありがとうございます」


「このドレスどこの?」


「貸与品です」


「双子でも認証分けるん?」


「そうみたいです」


「澪香さん、自分と澄香さん、鏡見て間違えん?」


澄香。


一拍。


「……私、澄香です」


真央。


「え?」


「澄香です」


真央。


停止。


カメラマン。


笑う。


麻衣。


額。


押さえる。


「開始早々逆やん……」


真央。


「あーっ! そっちだがね!」


澄香。


「はい」


「知っとったよ」


澄香。


穏やか。


「今知りましたよね」


真央。


「細かいことはええがね!」


麻衣。


「良くないよ……」


それでも。


澄香。


優しい。


質問。


全部。


答える。


真央。


明るい。


しつこい。


止まらない。


澄香。


静か。


上品。


温厚。


二人。


真逆。


だから。


画面。


妙に。


面白い。


三十分後。


別ホール。


今度。


ネイビー。


澪香。


真央。


目。


輝く。


「あ!」


麻衣。


『今度はほんまに澪香ちゃん』


澪香。


『了解』


真央。


「澪香さーん!」


正解。


澪香。


「はい」


真央。


「さっき会ったがね!」


澪香。


「……?」


「インタビューしたがね!」


澪香。


一瞬。


黙る。


麻衣。


通信。


『適当に合わせてもええよ』


澪香。


「ああ」


にこり。


「そうでしたね」


真央。


「さっきよりドレス色変わった?」


「……変わりました」


「着替えるの早すぎん?」


「早いんです」


「さっき西ホールおったのに、何でここまでそんな早いん?」


「歩きました」


真央。


「速っ!」


麻衣。


通信。


「適当すぎるやろ……」


澄香。


別。


『面白い』


美咲。


『真央さん、完全に混乱してるね』


麻衣。


『元からやと思う』


黒鷹。


その様子。


見ている。


双子。


テレビ。


知人。


運営。


自由。


さらに。


あかり。


美咲。


麻衣。


連携。


偶然。


ではない。


可能性。


高い。


黒鷹。


即。


判断。


「予定変更」


脆弱性マスターキー。


今。


持ち出す。


美咲。


認証画面。


動き。


変化。


『麻衣』


「何?」


『マスター権限が移動した』


麻衣。


真央。


画面。


見る。


一瞬。


ため息。


次。


顔。


変わる。


「待ってました」


現場キャップ。


戻る。


『澪香ちゃん』


『はい』


『そのまま東通路』


『了解』


『澄香ちゃん、西側』


『分かった』


『あかり』


「はい!」


『VIPホール裏へ』


「任せて!」


『美咲ちゃん』


『もう追ってる』


麻衣。


少し。


笑う。


「さすが」


黒鷹。


マスターキー。


運ぶ。


裏通路。


工作員。


二人。


澪香。


ネイビー。


フォーマルドレス。


追う。


ヒール。


床。


乾いた。


音。


一歩。


二歩。


長い脚。


速い。


男。


振り返る。


「モデルが!」


澪香。


冷静。


「モデルじゃありません」


男。


腕。


振る。


澪香。


上体。


僅か。


後ろ。


外す。


手首。


払う。


長い脚。


踏み込む。


男。


重心。


崩れる。


次。


ガラス壁。


その向こう。


同じ顔。


澄香。


シャンパンゴールド。


男。


「……?」


振り向く。


澄香。


微笑む。


「こっちですよ」


男。


澪香。


見る。


澄香。


見る。


「どっちだ……?」


澄香。


「どっちでしょう」


背後。


澪香。


「当ててみます?」


二人。


動く。


左右。


同時。


鏡。


のように。


長い手足。


大きなストライド。


一人。


前。


もう一人。


死角。


次。


交差。


役割。


反転。


フォーマルドレス。


裾。


翻る。


ヒール。


響く。


華やか。


優雅。


だが。


動き。


冷たい。


無駄。


ない。


澪香。


一人。


腕。


かわす。


澄香。


反対。


脚。


入れる。


男。


体勢。


崩す。


澪香。


そこ。


肩。


流す。


床。


別。


男。


どちら。


追う。


分からない。


鏡面パネル。


二人。


四人。


六人。


見える。


黒鷹。


混乱。


迫田ツインズ。


今まで。


華やかなだけ。


思っていた者。


全員。


間違う。


二人。


美しい。


だから。


目を奪われる。


そして。


目を奪われた瞬間。


もう。


遅い。


通信。


麻衣。


『澄香ちゃん、右!』


「了解」


『澪香ちゃん、そのまま!』


「分かった」


二人。


交差。


また。


入れ替わる。


黒鷹。


追えない。


麻衣。


即。


『澪香ちゃん、左!』


澪香。


少し。


笑う。


『麻衣ちゃん』


「何?」


『また分かったん?』


「分かるよ」


澄香。


『何で?』


麻衣。


短く。


「うちの仲間やもん」


一瞬。


二人。


通信。


静か。


そして。


『了解』


『了解、キャップ』


その声。


少し。


違う。


麻衣。


ちゃんと。


聞き分ける。


黒鷹。


セキュリティゲート。


閉鎖。


迫田姉妹。


分断。


工作員。


二人。


前。


麻衣。


即。


『あかり!』


「はい!」


『正面開けて!』


「任せて!」


あかり。


走る。


真正面。


男。


「止まれ!」


あかり。


止まらない。


「そっちがどくに!」


一人。


突進。


あかり。


真正面。


受ける。


一歩。


下がる。


次。


前。


押し返す。


二人目。


横。


腕。


受ける。


身体。


返す。


敵。


隊形。


壊れる。


四日市の突貫娘。


閉じられた。


流れ。


また。


開く。


ゲート。


横。


あかり。


一人。


押し込む。


「澪香さん、今やに!」


澪香。


通る。


反対。


澄香。


合流。


双子。


再び。


鏡。


完成。


美咲。


運営本部。


マスター権限。


追跡。


認証テンプレート。


停止。


一つ。


二つ。


三つ。


偽装ID。


無効。


黒鷹。


別棟。


顔。


かざす。


赤。


ACCESS DENIED


「何で開かない!」


美咲。


通信。


静か。


「もう本人じゃないから」


その時。


管理室。


内部協力者。


入る。


「お前か!」


美咲。


振り返る。


「はい」


「戻せ!」


「できません」


男。


来る。


美咲。


横。


避ける。


手首。


取る。


身体。


返す。


床。


もう一人。


美咲。


一歩。


前。


静か。


攻撃。


外す。


腕。


取る。


肩。


足。


床。


奈良の静かな女。


派手。


ではない。


だが。


美咲。


動くたび。


戦場。


整う。


扉。


閉じる。


一般客。


避難。


黒鷹。


逃げ道。


なくなる。


麻衣。


高所通路。


走る。


黒鷹。


一人。


待つ。


麻衣。


小柄。


童顔。


男。


笑う。


「お前が指揮官か?」


麻衣。


「そうやよ」


「ガキじゃねぇか」


「それ、聞き飽きた」


男。


来る。


麻衣。


半歩。


横。


空振り。


二歩。


反転。


三歩。


男。


追う。


麻衣。


手すり。


壁。


階段。


全部。


使う。


捕まらない。


一瞬。


背後。


腕。


取る。


身体。


流す。


安全な踊り場。


床。


紀州の舞姫。


そして。


止まらない。


『澪香ちゃん、右!』


『はい!』


『澄香ちゃん、下へ!』


『了解』


『あかり、三秒待って!』


「一、二――」


『今!』


「はい!」


『美咲ちゃん、第二ゲート』


『もう閉めた』


麻衣。


「さすがやね」


自分。


戦う。


同時。


五人。


動かす。


黒鷹から見れば。


別々。


でも。


NST側。


全部。


一つ。


麻衣。


頭。


中。


繋がっている。


VIP展示ホール。


最後。


黒鷹責任者。


マスターキー。


手。


前。


澪香。


ネイビー。


後ろ。


澄香。


シャンパンゴールド。


右。


あかり。


左。


美咲。


階段。


麻衣。


責任者。


「何者だ!」


あかり。


胸。


張る。


「四日市の突貫娘やに!」


美咲。


ちらり。


「あかり、自分で言うようになったんやね」


「今そこ?」


迫田姉妹。


同時。


「私たちは?」


麻衣。


「迫田姉妹」


澪香。


「普通」


澄香。


「普通だね」


麻衣。


「十分やろ!」


黒鷹。


動く。


五人。


同時。


澪香。


左。


澄香。


右。


ドレス。


翻る。


同じ顔。


同じ長い手足。


だが。


動き。


わずか。


違う。


麻衣。


それを。


全部。


読む。


『澪香ちゃん、そのまま!』


『はい』


『澄香ちゃん、後ろ!』


『了解』


一人。


澪香。


かわす。


次。


澄香。


入る。


男。


目。


追えない。


あかり。


真正面。


二人。


押し返す。


「邪魔やに!」


美咲。


逃走路。


閉じる。


「こちらは通れません」


責任者。


階段。


走る。


そこ。


麻衣。


上。


待つ。


「終わりやよ」


男。


突進。


麻衣。


一歩。


横。


手首。


取る。


腕。


流す。


男。


前。


崩れる。


マスターキー。


落ちる。


澪香。


長い脚。


一歩。


止める。


澄香。


拾う。


あかり。


責任者。


押さえる。


美咲。


端末。


確保。


終わった。


ほとんど。


その時。


ようやく。


外。


サイレン。


特殊部隊。


一斉。


突入。


先頭。


岡本玲奈。


「そこまでです」


特殊部隊員。


見る。


工作員。


すでに。


制圧。


一人。


二人。


三人。


壁際。


床。


責任者。


確保済み。


マスターキー。


澄香。


手。


美咲。


端末。


持つ。


あかり。


息。


整える。


迫田姉妹。


ドレス。


少し。


乱れ。


でも。


華やか。


クール。


姿勢。


崩れない。


麻衣。


中央。


特殊部隊員。


小声。


「……ほとんど終わってるな」


玲奈。


僅か。


口元。


緩む。


「そのようですね」


任務。


完了。


脆弱性マスターキー。


認証改竄データ。


黒鷹協力者。


国外ルート。


全て。


確保。


県警本部。


評価会議。


反応。


想定以上。


高い。


「白浜の指揮、かなり安定してきたな」


「迫田姉妹を完全に使い分けている」


「山本と春日も自律して動いている」


「西川がいなくても問題ない」


一人。


幹部。


資料。


見る。


「白浜をキャップに、もう一班作れないか」


別。


「それぐらいの段階だと思う」


玲奈。


静か。


聞く。


「迫田姉妹、一度も間違えなかったらしいな」


玲奈。


「はい」


「岡本、お前は?」


玲奈。


一拍。


「……時々、間違えます」


会議室。


少し。


笑い。


麻衣。


呼ばれる。


評価。


伝えられる。


「白浜。独立チーム案まで出ている」


麻衣。


驚く。


そして。


すぐ。


首。


振る。


「まだ早いです」


「そうか?」


「はい」


一拍。


「玲奈さんにも、彩香さんにも、まだまだ及びません」


謙遜。


だけ。


違う。


本気。


自分。


できるようになった。


分かる。


でも。


上。


見える。


だから。


まだ。


それが。


麻衣。


だった。


玲奈。


横。


何も。


言わない。


ただ。


その答え。


気に入っている。


数日後。


ヒロ室西日本分室。


麻衣。


静か。


コーヒー。


飲む。


あかり。


「麻衣、県警からめっちゃ褒められたんやって?」


「大げさなんよ」


美咲。


「もう一班作る話まで出てたって聞いたよ」


「まだ無理やって」


澪香。


「できると思う」


澄香。


「私も」


麻衣。


「二人までやめて」


非常に。


謙虚。


落ち着いている。


立派な。


現場キャップ。


だった。


ここまでは。


麻衣。


カップ。


置く。


「……それよりな」


美咲。


即。


「始まった」


麻衣。


「何が?」


「ボヤキ」


「まだ何も言うてへん!」


一拍。


そして。


麻衣。


紀州弁。


炸裂。


「真央さん、なんであない巻き髪なんよ! あれ見えた瞬間に『また来た』思てまうやん! 大体『山田真央の突撃レポート』て何なんよ! 名前の時点でもう嫌な予感しかせえへんわ!」


あかり。


「巻き髪関係ないに」


麻衣。


「分かっとる!」


美咲。


「では、何で最初に巻き髪を?」


「目立つんよ!」


澪香。


「綺麗だったけど」


澄香。


「うん」


麻衣。


「褒める会ちゃう!」


さらに。


双子。


指。


「しかも澄香ちゃんと澪香ちゃん、思いっきり間違えとるやん!」


澄香。


「最初、澪香って呼ばれた」


澪香。


「私は『さっき会った』って言われた」


麻衣。


「ほら!」


あかり。


「美月さんも毎回逆やに」


麻衣。


「美月さんはもう殿堂入りよ!」


美咲。


「殿堂入りなんや」


麻衣。


「自信満々で毎回逆なんやもん!」


澪香。


笑う。


「でも真央さん面白かったよ」


澄香。


「悪い人じゃないし」


麻衣。


頭。


抱える。


「そこなんよ!」


全員。


見る。


「みんな悪い人ちゃうから、強く怒れへんのよ!」


あかり。


「今十分怒っとるに」


麻衣。


「任務終わってからや!」


美咲。


少し。


笑う。


「麻衣、ほんま彩香さんに似てきたなぁ」


麻衣。


「似てへん!」


美咲。


「その言い方も」


「分析せんといて!」


あかり。


「結果論って言うようになったら完成やに」


麻衣。


「うちは言わへん!」


澪香。


「この前言ってたよ」


澄香。


「言ってた」


麻衣。


固まる。


「……」


美咲。


「完成してるんちゃう?」


麻衣。


「してへん!」


一同。


笑う。


麻衣。


ため息。


「もう決めたわ」


美咲。


「意味のない罰やね」


「まだ言うてへん!」


あかり。


「何するん?」


麻衣。


今回。


顔認証。


思い出す。


「次、真央さんがうちらの任務邪魔したらな――」


腕。


組む。


「顔認証ゲート百台ずらーっと並べて、一台ずつ巻き髪直して『山田真央本人です!』って百回言わせたるわ!」


美咲。


首。


少し。


傾げる。


大和弁。


柔らかく。


「それ、何ぞ意味ありますの?」


麻衣。


即。


「特にないわ〜。何っちゃ意味あらへんわ」


あかり。


「即答やに!」


澪香。


「真央さんなら楽しみそう」


澄香。


「百台全部違う顔すると思う」


美咲。


「『山田真央、最新顔認証百番勝負』で番組になりますなぁ」


麻衣。


「また罰が番組になるん!?」


あかり。


「愛知の企業も宣伝になるに」


麻衣。


「スポンサーまで得させんといて!」


澪香。


「視聴率良さそう」


澄香。


「第二弾あるかも」


麻衣。


「シリーズ化すな!」


美咲。


「真央さんやったら『百台全部通ったら何もらえる?』って聞きそう」


麻衣。


思わず。


「絶対聞くわ!」


あかり。


「美月さんも聞くに」


麻衣。


「二人揃えたら最悪や!」


美咲。


「さつきさんも呼びます?」


麻衣。


「呼ばんでええ!」


一拍。


麻衣。


気づく。


声。


大きい。


ツッコミ。


速い。


言葉。


荒い。


あかり。


じっと。


見る。


「麻衣」


「何よ!」


「今の完全に彩香さんやに」


麻衣。


「……」


澪香。


「かなり」


澄香。


「うん」


美咲。


「ボヤキだけなら、もう追いついたんちゃいます?」


麻衣。


両手。


頭。


「そこ追いつきとうないんよ!」


少し離れた机。


玲奈。


報告書。


読む。


口元。


ほんの。


僅か。


緩む。


麻衣。


即。


見る。


「玲奈さん」


「はい」


「今笑いました?」


「いいえ」


あかり。


「笑っとったに」


澪香。


「笑ってました」


澄香。


「間違いない」


美咲。


「私も見ましたえ」


玲奈。


四対一。


一拍。


「……気のせいです」


麻衣。


「五人おって四人確認してるんですよ!」


玲奈。


資料。


閉じる。


「それより麻衣」


「はい?」


「今回の指揮は非常に良かったです」


麻衣。


少し。


静か。


「ありがとうございます」


「澪香と澄香を、一度も取り違えなかった」


双子。


麻衣。


見る。


玲奈。


続ける。


「よく見ているからでしょう」


麻衣。


少し。


照れる。


「……普通ですよ」


「普通?」


「仲間やもん」


玲奈。


ほんの少し。


目。


柔らかく。


「その普通が難しいんです」


麻衣。


黙る。


嬉しい。


でも。


顔。


出しすぎない。


あかり。


横。


「でもボヤキは彩香さんそのものやに」


麻衣。


反射。


「あかりぃ!」


一瞬。


静か。


声。


完全。


彩香。


ぽい。


美咲。


「今の完璧やったなぁ」


澪香。


「似てた」


澄香。


「すごく」


麻衣。


自分。


気づく。


「……あ」


玲奈。


口元。


また。


緩む。


麻衣。


頭。


抱える。


「……彩香さん、はよ戻ってきてぇ……」


分室。


笑い。


広がる。


三木。


夜。


コンベンションホール。


灯。


落ちる。


顔認証ゲート。


一台。


二台。


停止。


スクリーン。


消える。


「本人」。


便利な言葉。


だが。


その証明。


奪われれば。


人間は。


自分であることすら。


機械へ。


説明しなければならない。


黒鷹は。


その境界。


盗もうとした。


同じ顔。


二人。


それを。


利用しようとした。


だが。


読み違えた。


迫田澪香。


迫田澄香。


見た目。


同じ。


でも。


二人は。


別人。


そして。


NSTには。


それを。


誰より。


分かっている。


小さな現場キャップがいた。


白浜麻衣。


紀州の舞姫。


彼女にとって。


二人は。


「双子」。


ではない。


澪香。


と。


澄香。


だった。


だから。


指示。


迷わない。


だから。


二人も。


迷わず。


動く。


県警本部。


言った。


もう。


白浜麻衣を。


キャップに。


一班。


作れる。


麻衣。


否定。


した。


玲奈。


彩香。


まだまだ。


及ばない。


それも。


本心。


だった。


ただし。


一つだけ。


本人。


気づかないまま。


彩香へ。


急速に。


近づいているもの。


あった。


任務後。


止まらない。


ボヤキ。


それだけは。


もう。


ほとんど。


本人認証。


突破。


できるほど。


似てきていた。

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