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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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408/416

鉄塔番号ゼロは、空からしか盗めない ――丹波山地・送電線保守基地、黒鷹の「存在しない点検ポッド」

丹波の山は、電気を使わない。


それでも。


街の電気は、丹波の山を越えていく。


朝霧が谷を埋める。


山腹には杉林。


田畑。


集落。


その向こう。


尾根から尾根へ。


巨大な送電鉄塔が立っている。


鉄。


碍子。


送電線。


一本。


また一本。


遠くへ続く。


兵庫県丹波市。


派手な都市ではない。


だが。


土地そのものが。


妙に深い。


加古川水系。


由良川水系。


瀬戸内海と日本海。


二つの流れを分ける中央分水界。


春。


新緑。


夏。


濃い山。


秋。


丹波霧。


冬。


冷たい空気。


戦国時代には黒井城。


山南には太古の地層。


農地には丹波の実り。


市街地を離れれば。


すぐ。


山。


さらに。


山。


人間が暮らす場所と。


自然。


近い。


だから。


この町を走る。


電気。


通信。


道路。


橋。


全部。


地形との戦い。


その中でも。


山岳送電線は。


地味で。


厳しい。


道路のない稜線。


徒歩なら。


何時間。


資材。


重い。


設備。


高い。


雨。


風。


霧。


だから。


ヘリコプターを使う。


人。


運ぶ。


資材。


吊るす。


鉄塔。


点検。


上空。


確認。


街では。


誰も。


気にしない。


スイッチ。


押す。


灯り。


点く。


それで。


終わり。


だが。


その当たり前を守る人間が。


山にはいる。


そして。


人間が滅多に来ないということは。


犯罪者にとって。


隠し場所にもなる。


黒鷹は。


そこへ。


目を付けた。


県警本部の情報解析室。


一枚の設備データ。


妙だった。


鉄塔番号。


411。


412。


413。


414。


連番。


ところが。


古い保守管理システム。


一件。


だけ。


存在する。


TOWER-000。


ゼロ号。


そんな鉄塔。


ない。


地図にも。


ない。


電力会社の現行設備台帳にも。


ない。


それでも。


過去数年。


点検履歴。


残る。


しかも。


奇妙なことに。


記録日。


すべて。


ヘリコプター航空点検日。


県警。


内偵。


さらに。


NST。


調査。


そして。


見つける。


412号鉄塔。


南西斜面。


一般道路。


見えない。


急斜面。


鉄塔基部より。


約八十メートル下。


岩肌。


木。


その間。


正規の振動監視装置に。


酷似した。


小型耐候ポッド。


外見。


何でもない。


中。


違う。


次世代電力制御システム。


試験データ。


高性能産業用半導体。


設計情報。


黒鷹の国外工作員。


暗号通信記録。


街中。


受け渡さない。


倉庫。


使わない。


空港。


使わない。


人間が。


歩いて行くのも。


面倒。


そんな場所へ。


秘密を。


置く。


回収。


さらに。


空。


正規保守会社。


協力者。


混ぜる。


ヘリ。


点検。


偽装。


空中から。


取る。


玲奈。


モニター。


見る。


「今回は」


一拍。


「地上だけでは足りません」


ヒロ室西日本分室。


麻衣。


あかり。


美咲。


見る。


麻衣。


「空も、ですね」


「ええ」


彩香。


いない。


理由。


誰も。


言わない。


今回。


それでいい。


玲奈。


「現場指揮は麻衣」


麻衣。


「はい」


即答。


もう。


驚かない。


あかり。


美咲。


それも。


自然に。


受け入れる。


玲奈。


次。


画面。


切り替える。


女性。


一人。


航空自衛隊。


出向。


ヘリコプター搭乗員。


若林あおい。


長身。


凛とした顔。


姿勢。


無駄なし。


静かな目。


フライトスーツ。


ヘルメット。


持つだけで。


周囲。


少し。


緊張する。


麻衣より。


年上。


経験。


豊富。


山岳飛行。


航空偵察。


吊り下げ輸送。


緊急時対応。


全部。


一流。


対して。


白浜麻衣。


小柄。


童顔。


私服なら。


中学生。


間違われても。


不思議ではない。


二人。


並ぶ。


どう見ても。


あおいが。


指揮官。


麻衣が。


補助。


しかし。


玲奈。


言う。


「若林さんは航空支援」


あおい。


「了解しました」


「航空支援指示は白浜麻衣から出します」


一瞬。


誰か。


空気。


見る。


あおい。


麻衣。


見る。


麻衣。


まっすぐ。


返す。


あおい。


一切。


躊躇。


ない。


「了解、白浜キャップ」


麻衣。


少し。


驚く。


だが。


すぐ。


地図。


開く。


「若林さん」


「はい」


「最初から412号へ寄らんといてください」


「了解」


「北側の稜線を使って一回機影を切ってほしいです」


「了解」


「谷へ入る時は高度を下げすぎんといてください。相手側に航空支援を読まれたくないので」


「了解しました」


「そのあと南西斜面を確認してください」


「了解、白浜キャップ」


年齢。


見た目。


関係。


ない。


麻衣。


現場。


知る。


あおい。


空。


知る。


それぞれ。


役割。


プロ。


玲奈。


横。


ほんの少し。


目。


柔らかくなる。


そこへ。


波田顧問。


「おう!」


麻衣。


嫌な予感。


「紀伊ハンター、また三人揃ってやがんな!」


あかり。


「またそれやに」


美咲。


「今回も元ネタは分かっていません」


波田。


「てやんでぇ! いい加減見ろってんだ!」


麻衣。


「波田さんしか楽しんでないですやん」


「名作ってのはな、時代越えんだよ!」


玲奈。


静か。


「波田顧問」


「なんでぇ」


「作戦会議です」


「へいへい」


紀伊ハンター。


相変わらず。


波田。


一人。


呼ぶ。


三人。


否定。


しない。


でも。


自称。


しない。


その程度。


潜入。


始まる。


あかり。


山岳保守基地。


作業服。


ヘルメット。


安全ベスト。


手袋。


資材搬送。


地上荷役。


吊り荷。


準備。


ロープ。


工具。


碍子。


点検機材。


重量。


確認。


初日。


現場監督。


「山本ちゃん」


「はい!」


「吊り荷の下は絶対入るな」


「分かったに!」


「合図まで触るな」


「はい!」


「重量表示は二回確認」


「はい!」


「山やから勝手に近道せんこと」


「分かった!」


監督。


少し。


見る。


「返事ええな」


あかり。


「言われた通りすればええんやろ?」


「それが一番大事や」


三日。


あかり。


完全。


馴染む。


「山本ちゃん、こっち!」


「はい!」


「この箱、次便!」


「分かった!」


「休んだ?」


「まだ」


「休め!」


「はい!」


素直。


よく働く。


そして。


人当たり。


いい。


ベテラン。


「あかりちゃん」


「何?」


「412号の下、変な箱あるいう話聞いたことある?」


あかり。


顔。


変えない。


「箱?」


「昔の設備ちゃうかって」


「台帳には?」


「知らん」


「へえ」


「触るな言われとる」


あかり。


「そら触らん方がええな」


それ以上。


聞かない。


数分後。


通信。


『麻衣』


「何?」


『412号の下、変な箱あるって。現場の人も知っとるに』


麻衣。


「ありがとう」


あかり。


「当たり?」


「多分ね」


美咲。


保守センター。


事務服。


運航管理。


飛行予定。


作業員配置。


資材重量。


気象。


鉄塔点検。


設備コード。


全部。


静か。


「春日さん、この航空点検表」


「はい」


「明日の分」


「すでに入力済みです」


「え?」


「こちらです」


「早いな」


「ありがとうございます」


数日。


完全。


溶ける。


黒鷹協力者。


すぐ。


横。


話す。


「ゼロ番、明日の二便目」


「飛行計画には?」


「載せるな」


「回収したら?」


「そのまま外へ」


美咲。


画面。


見る。


顔。


上げない。


数分後。


通信。


『麻衣さん』


「何?」


『回収予定を確認しました』


「時刻」


『明日十一時二十分。第二便へ偽装します』


「正式飛行計画は?」


『載っていません』


麻衣。


「美咲ちゃん、完璧やね」


『ありがとうございます』


美咲。


目立たない。


だから。


強い。


翌日。


朝。


山岳保守基地。


取材車。


一台。


来る。


麻衣。


監視画面。


見る。


「……」


あおい。


横。


「どうしました?」


麻衣。


「……嫌な人が来ました」


あおい。


一瞬。


目。


鋭く。


「敵ですか」


麻衣。


「敵やった方が楽かもしれません」


あおい。


「……?」


画面。


女性。


一人。


長身。


すらり。


長い。


黒髪。


清楚。


端正。


派手さ。


ない。


だが。


画面映え。


する。


神戸放送。


三好さつき。


情報番組。


レポーター。


麻衣。


小さく。


「何でおるん……」


企画。


『空から守る兵庫の暮らし――山岳送電線を支えるプロフェッショナル』


さつき。


カメラ。


前。


凛。


爽やか。


「今日は、丹波の山中で送電線を守る皆さんの仕事を取材します」


仕事。


真面目。


コメント。


上手い。


「私たちが毎日当たり前のように使っている電気。その当たり前を守るために、山の中で人が働いているんですね」


麻衣。


通信。


『そのまま真面目に終わって……』


だが。


資材。


運ぶ。


小柄な作業員。


さつき。


目。


止まる。


「あれ?」


麻衣。


『見るな……』


さつき。


「あれ……」


麻衣。


『やめて……』


「あかりちゃん?」


麻衣。


額。


押さえる。


『あかり、振り向かんといて』


あかり。


聞こえる。


歩く。


さつき。


大声。


「あかりちゃーん!」


あかり。


足。


止まる。


麻衣。


『そのまま!』


さつき。


長い黒髪。


揺らす。


歩いてくる。


「あかりちゃんやろ?」


あかり。


耐える。


三秒。


五秒。


さつき。


顔。


覗く。


「なあ?」


あかり。


「あ、さつきさん」


麻衣。


「また返事したぁ……」


あおい。


横。


「問題なのですか」


麻衣。


「ものすごくあります」


さつき。


嬉しそう。


「あかりちゃん、何してるん?」


「仕事やに」


「何の?」


「ヘリで運ぶ荷物準備しとる」


「これ何?」


箱。


指。


あかり。


「知らん」


「仕事してるんやろ?」


「番号書いてあるから、それで分ける」


「中身は?」


「開けへんに」


「何キロ?」


あかり。


表示。


見る。


「……」


さつき。


「見てへんかった?」


あかり。


「私は運ぶ係やに」


さつき。


「あ、それ前も聞いた!」


麻衣。


通信。


『取材受けんといて!』


さつき。


「あかりちゃん、ヘリ乗るん?」


「乗らん」


「高いとこ平気?」


「別に」


「鉄塔登る?」


「今日は登らん」


「ヘリ運転できる?」


「できるわけないやん」


さつき。


少し。


考える。


「美音さんならできそう」


あかり。


「あー……何かできそうやに」


麻衣。


『美音さん巻き込まんといて!』


あおい。


初めて。


ほんの少し。


口元。


動く。


麻衣。


見る。


「今笑いました?」


あおい。


「いいえ」


「絶対笑いましたやん」


さつき。


まだ。


続く。


「あかりちゃん、このロープ何に使うん?」


「吊るす」


「何を?」


「荷物」


「どこへ?」


「山」


「雑っ!」


あかり。


「ちゃんと説明しようとしとるに」


「もうちょい情報足して」


「ヘリが持ってく」


「それ最初から言うてる!」


麻衣。


頭。


抱える。


「あかり、完全にさつきさんのペースやん……」


さつき。


カメラ。


見る。


「山本あかりさんでした!」


あかり。


「勝手に終わらんといて」


麻衣。


『終わってええんよ!』


そして。


事務棟。


美咲。


出る。


さつき。


「あ!」


麻衣。


「……二人目」


「美咲ちゃん!」


美咲。


止まる。


「こんにちは」


さつき。


「何でおるん?」


「仕事です」


「また?」


「またとは?」


「最近みんな色んなとこで働いてへん?」


美咲。


「社会経験です」


麻衣。


『美咲ちゃん、そんな自然に返さんといて』


美咲。


小声。


『もう見つかっています』


麻衣。


「正論で返さんといて……」


最後。


麻衣。


安全管理区画。


移動。


さつき。


目。


いい。


「あれ?」


麻衣。


止まる。


「……」


「麻衣ちゃん?」


麻衣。


振り返る。


「こんにちは」


さつき。


「三人揃っとるやん!」


麻衣。


「偶然です」


「最近その偶然、多ない?」


「人生には色々あります」


さつき。


「何それ」


麻衣。


笑顔。


目。


疲れている。


あおい。


横。


初めて。


全部。


理解。


この清楚で長身のレポーター。


敵ではない。


だが。


麻衣にとって。


恐ろしく。


厄介。


黒鷹側。


笑わない。


三人。


最近。


入った。


作業員。


事務。


安全管理。


そして。


地方テレビ局のレポーター。


全員。


知っている。


偶然。


三回。


重なる。


なら。


警戒。


する。


黒鷹協力者。


通信。


「予定変更」


『今か?』


「今だ」


『十一時二十分だぞ』


「待てない」


ゼロ番。


今。


回収。


軽ヘリ。


エンジン。


始動。


美咲。


運航画面。


見る。


一機。


未登録。


『麻衣さん』


麻衣。


さつき。


逃れる。


途中。


「何?」


『未登録機が離陸します』


麻衣。


顔。


一瞬。


変わる。


『あおいさん』


あおい。


返事。


する前。


もう。


ヘルメット。


装着。


「離陸準備完了」


麻衣。


見る。


「早っ」


「動くと思っていました」


「さすがですね」


あおい。


機体。


向かう。


ローター。


回る。


麻衣。


通信。


切り替える。


現場。


始まる。


双発中型ヘリ。


浮く。


ローター音。


山。


反響。


麻衣。


地上。


地図。


画面。


複数。


見る。


『あおいさん』


『はい』


「直接追わんといてください」


一瞬。


あおい。


『理由は?』


「相手にこちらの意図を読ませたくないです」


『了解』


「北の尾根へ」


『了解』


「高度少し上げて、一回相手から機影を切ってください」


『上げます』


「そのあと西の谷」


『了解』


「まだ412号へ出んといて」


『了解、白浜キャップ』


年上。


エリート。


航空自衛隊。


凛。


勇ましい。


でも。


麻衣の指示。


一つ。


一つ。


正確。


実行。


ヘリ。


尾根。


向こう。


消える。


黒鷹。


見失う。


麻衣。


地上。


「美咲」


『はい』


「一般保守班、どこ?」


『第三待機所へ退避中です』


「あかり」


『はい!』


「412号下へ!」


『任せて!』


「走っても山道危ないから無理せんといて」


『分かったに!』


再び。


空。


『あおいさん』


『はい』


「谷へ入ってください」


『進入』


「そのまま」


地図。


指。


動く。


「……まだ」


数秒。


「……まだ」


さらに。


一秒。


「今です。上がって」


谷。


向こう。


県警ヘリ。


一気。


姿。


現す。


黒鷹。


軽ヘリ。


初めて。


気づく。


あおい。


『対象視認』


麻衣。


「追い立てんでください」


『了解』


「東へ行かせんといて」


『進路制限します』


あおい。


機体。


滑らか。


移動。


黒鷹側。


東。


切る。


西。


山。


北。


県警監視。


南。


地上部隊。


少しずつ。


逃げ道。


消える。


県警本部。


通信。


聞く。


幹部。


一人。


呟く。


「……あれ、もう完全に白浜のチームだな」


地上。


412号。


黒鷹作業員。


ゼロ番ポッド。


外す。


ボルト。


最後。


緩む。


あかり。


山道。


駆ける。


「止まるに!」


男。


二人。


振り向く。


「どけ!」


あかり。


止まる。


「嫌やに!」


一人。


来る。


あかり。


受ける。


狭い。


山道。


左。


崖。


右。


山肌。


危険。


昔。


なら。


押す。


今。


見る。


位置。


相手。


力。


身体。


ずらす。


山側。


流す。


男。


「何だ!」


あかり。


「崖側行ったら危ないに!」


「こっちの心配するな!」


「落ちられたら寝覚め悪いやろ!」


前。


押す。


四日市の突貫娘。


力。


使う。


でも。


無謀。


違う。


二人目。


横。


あかり。


腕。


受ける。


足場。


悪い。


一歩。


下。


避ける。


相手。


バランス。


崩す。


山側。


押す。


「危ないとこで暴れたらあかんに!」


男。


「お前が言うな!」


「私は気ぃつけとる!」


真正面。


流れ。


変える。


保守センター。


美咲。


画面。


操作。


南林道。


閉鎖。


北。


県警。


開ける。


一般作業員。


退避。


逃走車。


特定。


『麻衣さん』


「何?」


『黒鷹車両、二台。北西方向へ移動準備』


「県警へ回して」


『送信済みです』


「さすが」


その時。


事務室。


ドア。


開く。


内部協力者。


「春日!」


美咲。


振り返る。


「はい」


「ゲート開けろ」


「できません」


「お前、何者だ」


「事務員です」


「ふざけるな!」


男。


手。


伸ばす。


美咲。


横。


手首。


取る。


身体。


返す。


床。


もう一人。


来る。


美咲。


一歩。


前。


攻撃。


外す。


腕。


肩。


足。


静か。


正確。


二人目。


床。


奈良の静かに燃える女。


美咲。


派手に。


追わない。


必要な場所。


閉じる。


必要な人。


守る。


場。


整える。


黒鷹。


気づけば。


山全体。


狭く。


なっている。


412号鉄塔下。


麻衣。


到着。


息。


整える。


工作員。


三人。


前。


一人。


麻衣。


見る。


笑う。


「お前が指揮官?」


麻衣。


静か。


「そう見えへん?」


男。


小柄。


童顔。


見る。


「ガキじゃねぇか」


麻衣。


目。


変わる。


「それ、よう言われる」


男。


来る。


麻衣。


半歩。


横。


拳。


空。


二人目。


挟む。


麻衣。


岩。


かわす。


鉄塔基部。


回る。


一歩。


二歩。


三歩。


華麗。


足。


軽い。


相手。


互い。


邪魔。


麻衣。


手首。


取る。


身体。


流す。


一人。


地面。


次。


二人目。


方向。


変える。


三人目。


背後。


麻衣。


もう。


いない。


「どこだ!」


背後。


「ここやよ」


紀州の舞姫。


小柄。


だから。


速い。


狭い。


だから。


強い。


その最中。


麻衣。


通信。


『あおいさん!』


『はい』


「黒鷹ヘリ、東へ振ります!」


『確認』


「追わんといて。北へ」


『了解』


「次の谷から出てください」


『了解、白浜キャップ』


麻衣。


一人。


かわす。


足。


払う。


二人目。


倒す。


『まだ出んといて』


『了解』


三人目。


来る。


麻衣。


反転。


かわす。


肩。


崩す。


『……今!』


上空。


ローター。


響く。


あおい。


谷。


向こう。


現れる。


黒鷹軽ヘリ。


進路。


塞がれる。


あおい。


勇ましい。


だが。


危険な接近。


しない。


距離。


守る。


相手。


逃げたい方向。


一つずつ。


消す。


操縦。


精密。


麻衣。


地上。


指示。


短い。


正確。


あおい。


全部。


形。


する。


地上の黒鷹工作員。


通信。


聞く。


麻衣。


見る。


初めて。


理解。


この。


童顔。


小柄。


女子大生。


本当に。


空と。


地上。


全部。


動かしている。


黒鷹。


ゼロ番。


回収。


失敗。


軽ヘリ。


渡せない。


地上。


車。


出られない。


責任者。


ポッド。


抱える。


走る。


前。


あかり。


「そっち無理やに」


右。


美咲。


山道。


来る。


「南林道は閉鎖されています」


左。


麻衣。


鉄塔基部。


歩く。


「終わりやよ」


上空。


あおい。


ヘリ。


旋回。


責任者。


「何なんだ、お前ら!」


あかり。


「また聞かれたに」


美咲。


「例の名前ですか?」


麻衣。


少し。


嫌そう。


「……紀伊ハンター、らしいわ」


あかり。


「波田さんしか呼んでへんけど」


美咲。


「元ネタはまだ分かっていません」


麻衣。


「今それ言わんといて!」


責任者。


「ふざけるな!」


工作員。


動く。


三人。


同時。


あかり。


正面。


押す。


四日市の突貫娘。


崩れた流れ。


真正面。


ひっくり返す。


美咲。


右。


一人。


止める。


逃走路。


消す。


奈良の静かに燃える女。


そして。


麻衣。


中央。


一歩。


二歩。


三歩。


舞う。


紀州の舞姫。


男。


一人。


外す。


二人。


交差。


麻衣。


隙間。


抜ける。


肩。


足。


流す。


男。


地面。


責任者。


方向。


変える。


あかり。


前。


止める。


「戻った方がええに!」


責任者。


逆。


美咲。


「こちらです」


誘導。


そして。


麻衣。


待つ。


男。


来る。


麻衣。


一歩。


外。


腕。


取る。


身体。


返す。


地面。


ポッド。


滑る。


美咲。


止める。


あかり。


男。


押さえる。


空。


あおい。


黒鷹ヘリ。


監視。


陸。


三人。


完全。


一つ。


その時。


山道。


サイレン。


県警車両。


一斉。


入る。


特殊部隊。


展開。


先頭。


岡本玲奈。


「そこまでです」


黒鷹。


地上班。


内部協力者。


責任者。


確保。


上空。


黒鷹軽ヘリ。


あおい。


指定地点へ。


誘導。


着陸。


待機していた県警。


搭乗員。


確保。


ゼロ番ポッド。


開封。


データ。


暗号記録。


国外工作員。


協力者名簿。


全部。


押さえる。


任務。


完了。


臨時ヘリポート。


ローター。


回転。


落ちる。


あおい。


降りる。


ヘルメット。


外す。


長身。


凛。


いつもの。


近寄りがたい。


空気。


麻衣。


前。


「ありがとうございました」


あおい。


「こちらこそ」


「細かく指示出しすぎました?」


「いいえ」


「年下の私からあれこれ言われて、やりにくくなかったです?」


あおい。


即答。


「任務中に年齢は関係ありません」


麻衣。


見る。


あおい。


まっすぐ。


返す。


「地上を最も理解していたのは白浜キャップです」


一拍。


「私は」


少し。


ヘリ。


見る。


「指示された空を、正確に飛んだだけです」


麻衣。


笑う。


「それを完璧にできる人が一番怖いんですけどね」


あおい。


ほんの少し。


口元。


緩む。


「褒め言葉として受け取ります」


「もちろんです」


互い。


認める。


年齢。


身長。


見た目。


関係。


ない。


現場。


プロ。


だけ。


県警本部。


報告。


評価。


高い。


「西川がいなくても問題ない」


「山本、春日も自律して動いている」


「白浜は航空支援まで統率した」


そして。


一人。


幹部。


言う。


「もう麻衣のチームと言っていいんじゃないか」


麻衣。


即。


首。


振る。


「いえ」


「玲奈さんや彩香さんには、まだまだ及びません」


謙虚。


だけど。


自信。


ない。


違う。


今。


自分。


できる。


知っている。


その上。


上。


見る。


玲奈。


隣。


何も。


言わない。


ただ。


少し。


嬉しい。


後日。


ヒロ室西日本分室。


あかり。


「麻衣、県警でめっちゃ褒められたらしいな」


麻衣。


「大げさなんよ」


美咲。


「若林さんも高く評価されていました」


「それはあおいさんが凄いんよ」


あかり。


「でも麻衣の指示通り飛んどったに」


「チームやからそれでええの」


美咲。


「立派ですね」


麻衣。


「何その言い方」


非常に。


いい。


成長。


美談。


そして。


麻衣。


顔。


曇る。


「……それよりな」


美咲。


「始まりました」


「何が?」


「ボヤキです」


麻衣。


「まだ何も言うてへん!」


あかり。


「何?」


麻衣。


指。


一本。


「冷凍倉庫」


二本。


「空港」


三本。


「播州織」


四本。


「今回!」


机。


軽く。


叩く。


「何で毎回さつきさんおるん!?」


あかり。


「レポーターやから」


「便利な言葉で全部片付けんといて!」


美咲。


「今回の番組も好評だったそうです」


「知ってる!」


あかり。


「送電線の仕事よう分かったに」


「私も見た! ええ番組やった!」


美咲。


「では問題は?」


麻衣。


即。


「何で毎回うちら見つけるんよ!」


美咲。


「ああ」


「『ああ』ちゃう!」


あかり。


「さつきさん目ええんやに」


「その目ぇ違う方向向けといて!」


美咲。


「今回はあかりをかなり長時間取材していましたね」


麻衣。


「あかりもあかりや!」


あかり。


「何?」


麻衣。


振り向く。


「あかり、何遍言えば分かるの? 任務中にさつきさんに声かけられても、長話せんの!」


あかり。


「でも聞かれたら答えるやろ」


「答えすぎ!」


「仕事のこと聞かれただけやに」


「『私は運ぶ係やに』だけで終わらせたらええんよ!」


あかり。


「それ前も怒られたに」


「学習して!」


美咲。


少し。


見る。


あかり。


麻衣。


見る。


「麻衣」


「何よ!」


「彩香さんみたいやに」


麻衣。


固まる。


「……」


美咲。


静かに。


「かなり近づいています」


麻衣。


「美咲ちゃんまで!」


あかり。


「今の『学習して!』とかそっくり」


麻衣。


「似てへん!」


美咲。


「否定の仕方も」


「そこ分析せんといて!」


あかり。


「声も大きくなっとる」


「誰のせいよ!」


一拍。


麻衣。


自分。


気づく。


椅子。


座る。


深い。


ため息。


「……あかんわ」


美咲。


「何がです?」


「彩香さんの気持ち、また一段よう分かってもうた……」


あかり。


「成長やに」


麻衣。


「これ成長なん!?」


そして。


止まらない。


「ほんま、さつきさんも大概やわ」


美咲。


「正式取材です」


「分かってる!」


「番組も好評です」


「それも分かってる!」


あかり。


「清楚で綺麗やし」


麻衣。


「そこ関係ない!」


「背ぇも高いし」


「だから何!」


「髪も長くて綺麗やに」


麻衣。


「褒める会ちゃう!」


あかり。


「麻衣よりだいぶ背高いな」


麻衣。


止まる。


「……そこ今言う必要ある?」


美咲。


「ありません」


「美咲ちゃん、即答せんといて!」


分室。


笑う。


麻衣。


さらに。


「もう決めたわ」


美咲。


「意味のない罰ですね」


「先に決めんといて!」


あかり。


「何するん?」


麻衣。


腕。


組む。


「今度また丹波の山で任務邪魔したらな」


少し。


考える。


「送電鉄塔一本一本回って、ボルト何本付いとるか全部数えさせたるわ!」


美咲。


真顔。


「麻衣」


「何?」


「それって意味あるん?」


麻衣。


一拍。


「……ないわ〜」


あかり。


「ないんや!」


麻衣。


「何っちゃ意味あらへんわ!」


美咲。


「さつきさんなら途中から『巨大鉄塔を支える一本のボルト』という取材を始めそうです」


麻衣。


固まる。


あかり。


「ええ番組になるに」


麻衣。


「また罰が企画になるん!?」


美咲。


「若林さんのヘリから鉄塔を撮影すれば、映像も非常に綺麗でしょう」


麻衣。


「あおいさんまで巻き込まんといて!」


あかり。


「『空から見る丹波の送電線』」


美咲。


「特番にできます」


麻衣。


「何でこっちが企画会議してんのよ!」


あかり。


「さつきさん喜ぶに」


麻衣。


「罰になってへんやん!」


美咲。


「視聴率も取れそうです」


麻衣。


「成功させんといて!」


少し離れた机。


玲奈。


報告書。


読む。


口元。


僅か。


緩む。


麻衣。


即。


見る。


「玲奈さん」


「はい」


「今笑いました?」


「いいえ」


美咲。


「笑っていました」


あかり。


「私も見たに」


玲奈。


「気のせいです」


麻衣。


「絶対ちゃいます!」


玲奈。


資料。


閉じる。


「ただ」


麻衣。


「何です?」


「今回の指揮は見事でした」


麻衣。


少し。


静か。


「ありがとうございます」


「地上班、事務班、航空支援。三つを同時に動かした」


「まだまだです」


「そうですね」


麻衣。


少し。


驚く。


玲奈。


続ける。


「だから、さらに伸びます」


麻衣。


少し。


笑う。


「はい」


あかり。


横。


「ボヤキはもう彩香さん級やけどな」


麻衣。


即。


「それはいらん!」


分室。


爆笑。


美咲。


「最近、ツッコミ速度も彩香さん並みです」


「美咲ちゃん!」


あかり。


「そのうち『アホか!』言い出すに」


「言わへん!」


一拍。


麻衣。


さっきまで。


自分。


何回。


大声。


出したか。


思い返す。


「ああもう……」


頭。


抱える。


「彩香さん、はよ戻ってきてぇ……。このままやったら私、紀州の舞姫やのうて紀州の烈火になってまうわ」


あかり。


「紀州の烈火、格好ええに」


美咲。


「新しい異名としては悪くありません」


麻衣。


「増やさんといて!」


玲奈。


今度。


隠さず。


ほんの少し。


笑う。


丹波の夕暮れ。


鉄塔。


黒い。


影。


山。


尾根。


送電線。


遠く。


続く。


空。


ヘリコプター。


一機。


帰っていく。


黒鷹は。


人が来ない場所へ。


秘密を。


隠した。


空からしか。


取れない。


そう。


思った。


だが。


その空には。


若林あおいがいた。


地上には。


山本あかり。


春日美咲。


そして。


白浜麻衣。


小柄。


童顔。


女子大生。


それでも。


誰より。


現場。


見ていた。


年上の。


航空自衛隊エリートへ。


迷いなく。


指示。


出した。


空。


動かした。


地上。


動かした。


仲間。


動かした。


彩香。


いない。


それでも。


NST。


止まらない。


県警本部。


言った。


もう麻衣のチームだ。


麻衣自身は。


まだ。


認めない。


玲奈。


彩香。


その背中。


遠い。


そう。


思っている。


だが。


本人が。


気づかないところで。


一つだけ。


確実に。


彩香へ。


近づいているものもあった。


任務後。


止まらない。


ボヤキ。


それだけは。


もう。


かなり。


追いついていた。

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