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西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


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海上空港非常線 第68話  展望デッキの花火、見えない発射台 ― スカイ・イルミネーション

海上空港の夜は美しかった。


海に浮かぶ滑走路の灯火。

離着陸する航空機のランディングライト。

そして今夜は、年に一度の空港花火イベント。


展望デッキには家族連れ、カップル、航空ファンが集まり、まだ明るさの残る西の空を眺めていた。


しかし、その華やかな夜の裏側で、黒鷹は静かに動いていた。


狙いは花火そのものではない。


花火機材に偽装した妨害装置を空港へ搬入し、監視カメラや車両無線にノイズを発生させる。


花火の音と光に紛れれば異常は発見されにくい。


玲奈は作戦室で短く言った。


「花火は予定通り上げる」


「客にも気付かせるな」


「機材だけ抜く」


全員が頷く。


その時だった。


監視モニターの一つに見慣れた人物が映る。


長身。


長い黒髪。


上品で清楚な雰囲気。


神戸放送の人気レポーター。


三好さつき。


しかも肩にはマイク。


背後にはカメラマン。


生放送中だった。


彩香が頭を抱える。


「また来たんか、さつき……」


モニターを見てさらに呻く。


「しかも生放送かい」


玲奈は淡々としていた。


「触るな」


彩香は即座に全員へ無線を飛ばす。


「ええか」


「さつきは徹底無視や」


「話しかけるな」


「映るな」


「近寄るな」


「絶対やぞ」


あかりが聞く。


「そんなにですか?」


彩香は即答した。


「そんなにや」


その頃。


さつきは絶好調だった。


「皆さんこんばんは!」


「神戸放送情報ライブです!」


「今日は海上空港から花火イベントをお届けします!」


カメラの前で笑顔全開。


しかも好奇心旺盛。


何でも見たがる。


何でも聞きたがる。


今のNSTにとっては天敵だった。


「こちらが花火機材なんですね!」


「おお~!」


「近くで見てみましょう!」


彩香は無線で悲鳴を上げる。


「行くなぁぁぁ!」


当然聞こえない。


里緒が即座に動く。


空港警察官として自然に前へ出た。


「申し訳ありません」


「こちらは安全確認中です」


「撮影はあちら側からお願いします」


さつきは素直だった。


「そうなんですね!」


「ありがとうございます!」


「皆さん!あちらの方が飛行機も見えるそうですよ!」


スタッフ一同移動。


彩香は胸を撫で下ろす。


「助かった……」


しかし敵も動く。


花火業者を装った黒鷹の工作員。


搬入車両三台。


そのうち一台だけルートが違う。


それを見つけたのは空だった。


若林あおい。


ヘリから監視している。


「こちらあおい」


「三台目の搬入車両」


「動線が違います」


梓が即座に照合。


「登録番号不一致」


「偽装車両です」


美音も続く。


「機材重量も合いません」


玲奈が言う。


「当たりやな」


だが問題はさつきだった。


生放送は続いている。


しかも移動する。


「花火の裏側って気になりますよね!」


「おっと、あちらにも何かあります!」


彩香。


「気にすな!」


「ほんま気にすな!」


モニター越しに叫ぶ。


しかしさつきは止まらない。


里緒は半ば諦めていた。


「三好さん」


「こちらの展望位置の方が綺麗ですよ」


「本当ですか!」


「行きます!」


誘導成功。


彩香。


「里緒、ナイスや……」


その間に作戦は進む。


あおいが上空から指示。


「対象車両停止」


「箱型機材を搬出」


「発射台ではありません」


「妨害装置です」


玲奈。


「閉じろ」


美咲が搬入路を封鎖。


迫田ツインズが観客導線を整理。


麻衣が親子連れを安全圏へ誘導。


里緒が空港警察を配置。


あかりが待機。


あおいが空から全体を俯瞰する。


まるで巨大な盤上の駒を動かすようだった。


「右後方」


「逃走支援車両あり」


「搬出口へ向かいます」


あおいの声は冷静だった。


里緒が応じる。


「了解」


「搬出口閉鎖します」


工作員は気付く。


作戦失敗。


逃げる。


その瞬間。


彩香。


「あかり」


「今や」


「はい!」


あかりが飛び出す。


短い格闘。


工作員確保。


妨害装置押収。


花火は守られた。


そして夜。


定刻。


第一発。


大輪の花火が夜空に開く。


歓声が上がる。


展望デッキの家族連れが見上げる。


カップルが笑う。


航空ファンがカメラを向ける。


飛行機の灯りと花火が重なる。


その光景を、さつきは生中継していた。


「皆さん!」


「ご覧ください!」


「飛行機の光と花火が同じ空にあります!」


「海上空港ならではの景色です!」


その声は夜空へ溶けていく。


任務終了後。


詰所。


彩香は椅子へ沈み込んだ。


「疲れた……」


あかりが笑う。


「さつきさん、楽しそうでしたね」


彩香。


「楽しそうやったな」


「こっちは死にそうやったけど」


里緒も苦笑する。


「あれだけ近くにいたのに気付かれませんでしたね」


玲奈は窓の外を見る。


夜空にはまだ花火が咲いている。


「あおい」


「よう見とった」


あおいは少し照れる。


「空から見ただけです」


「それで十分や」


玲奈はそう言った。


花火は続く。


誰も知らない。


その夜空の下で、黒鷹の計画が静かに潰されたことを。


そして神戸放送のレポーターが、知らず知らずのうちに事件の真横を歩いていたことを。


空港の夜は平和だった。


その平和を守る者たちは、今日も誰にも知られず持ち場を去っていく。

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