表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
西日本特別諜報班 NST 影の特命  作者: スパイク


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

119/246

北風のスカイライン

兵庫県の日本海側、但馬地方。

瀬戸内海の穏やかな海とは対照的に、日本海は荒々しい。冬になれば灰色の空と鉛色の海が続き、強い北風が波を砕く。だがその厳しさの中に、但馬の海岸線には独特の美しさがある。


竹野浜の白い砂浜。

城崎温泉の柳並木と外湯巡り。

さらに西へ行けば、断崖と奇岩が続く山陰海岸ジオパーク。


世界的にも珍しい地形を持つこの海岸線は、観光地として高く評価されている。

だが、その入り組んだ海岸線は同時に——


密輸にも向いている。


その夜、NSTが追っていたのは黒鷹の武器搬入ルートだった。


——


夜の日本海上空。


若林あおいの操縦するヘリが、暗い海の上を滑っていた。

ローターの振動が機体を震わせる。


窓の外は真っ黒な海。

波だけが白く光っている。


あおいが言う。


「竹野浜上空到達」


隣で山本あかりが窓に張りついていた。


「うわぁ……すごい海!」


あおいは苦笑する。


「観光じゃない」


あかりは興奮している。


「でも夜の日本海って映画みたいですね!」


無線から玲奈の声が入る。


「……あかり」


「はい!」


「静かにしとき」


「はい!」


三秒後。


「でもめっちゃ綺麗です!」


あおいは肩をすくめた。


「元気ですね」


玲奈は淡々と言う。


「それがあかりや」


その時、レーダーに反応が出た。


あおいの声が変わる。


「小型船確認」


岩礁の影を縫うように進む船影。


玲奈が言う。


「高度上げとき」


あおいは即答する。


「それじゃ見えません」


玲奈。


「突っ込みすぎや」


あおい。


「止まりすぎです」


無線越しに沈黙。


NSTの隊員たちは知っている。


また始まった。


令和のストップゴー事件。


玲奈は冷静に言う。


「警察は証拠取る」


あおいは答える。


「自衛隊は逃がさない」


玲奈。


「現場は私が読む」


あおい。


「空は私が読む」


二人とも一歩も引かない。


あかりが小声で言う。


「……怖い」


だがその瞬間だった。


別の無線が割り込む。


「玲奈さーん!」


玲奈が眉をしかめる。


「……なんや」


元気すぎる声。


赤嶺美月だった。


美月は、明るい色のハーフツインテールを揺らしながら、

城崎温泉の柳並木の通りでカメラに向かっていた。


「はい!こちら但馬の城崎温泉です!」


CS旅番組のレポーターとしてロケ中だった。


「外湯巡りが有名でですねー!」


その時、美月は空を見上げる。


夜空をヘリが横切った。


「あ!」


美月が大きく手を振る。


「玲奈さーん!」


玲奈は目を閉じた。


「……なんで分かる」


美月はさらに叫ぶ。


「がんばってー!」


カメラマンが困惑する。


彩香が無線で呟く。


「なんで任務の場所におるんや……」


あおいが笑いをこらえる。


「有名人なんですね」


玲奈は短く言う。


「違う」


その時。


あおいが言った。


「目標減速」


密輸船は岩場に近づいている。


玲奈。


「彩香」


「はい」


「今や」


「了解!」


NSTが海岸で動く。


数分後。


密輸グループは確保された。


作戦は成功だった。


——


ヘリポート。


日本海の風は冷たい。


あおいがヘリから降りる。


玲奈が歩いてくる。


少し沈黙。


あおいが言う。


「空の判断、間違ってなかったでしょう」


玲奈は答える。


「地上の読みもな」


少しだけ笑う。


「ええ飛びや」


あおいも頷く。


「ええ指揮でした」


二人は海を見る。


黒い日本海。


その向こうに北の国がある。


その時、スマホが鳴った。


美月からだった。


「玲奈さん!旅番組出るで!」


玲奈は遠い目をした。


「……なんでや」


但馬の夜は静かだった。


だがNSTの任務は、

なぜかいつも少しだけ騒がしい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ