↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
違う!違う!脳じゃない!〜転生したオレは、パンダ型ヒューマノイドの脳らしい〜  作者: 梶皣 もゆら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/9

7 レア魔法

(アンドロイドなのに空腹が……)

「アンドロイド ナノニ クウフクガ」


 あれから結局食べ物にありつけないまま、一夜を明かした。パパンが、次の目的地にいけば美味しいものにありつける、と言うから何とか気力を保っているものの、もういつ魔法出力が途切れてもおかしくない。


「あの辺りはもう少し動物がいるはずなんだがな。裏組織の連中が連れて行ってしまったのかもしれない」


(裏組織の連中め。会ったら絶対に許さない)

「ウラソシキノ レンチュウメ。アッタラ ゼッタイニ ユルサナイ」


「アハハハ。食べ物の恨みは恐ろしいからね」


(ところでそのリス、連れてきたの?)

「トコロデ ソノ リス、ツレテキタノ?」


 パパンの白衣のポケットには、昨日の親リスが入っている。


「帰しても帰してもついてきてしまってな」


(懐かれてる)

「ナツカレテル」


「どうやらそのようだ」


(そうだ、パパン。パッラマのいたところから西に20キロのあたりの海に行きたいんだけど)

「ソウダ、パパン。パッラマノ イタトコロカラ ニシニ 20キロノ アタリノ ウミニ イキタインダケド」


「急にまたどうして」


 パッラマから聞いた話を説明し、できるだけ早めに行きたいことを伝えた。


「うーん……。一人で冒険を始めてからではだめだろうか」


(いいけど、早めだと助かるなーと思って)

「イイケド、ハヤメダト タスカルナー トオモッテ」


「……できるだけ早く必要な魔法を集めてしまおう」


(分かった)

「ワカッタ」


 昨日言っていた事情とやらが関係しているのかもしれない。そういうことならば仕方がない。不便なだけで死ぬわけではない、深追いする必要もないだろう。



 今回は牧場の広がる丘に降り立った。一面牧場。牛模様の豚に、真っ赤な羊のような生き物、丸々肥った猫。マルーもいる。めちゃくちゃいる。


 ぐぅ~


 お腹がなった。パンダ型のアンドロイドにしては人間を投影し過ぎではないか。


(美味そう……)

「ウマソウ」


「食べるな!捕まえるな!」


(分かってる分かってる)

「ワカッテルワカッテル」


「しばらくここで待っていてくれ。古い知り合いでな。挨拶してくる」


 そう言って、丘のふもとにある小屋へ降りていった。


 ずっと食べていない空っぽの胃。

 目の前に広がる食べ物の山。


(ダメだ。食べたい)

「ダメダ。タベタイ」


 その場で寝転び、食べ物から目をそらす。空はあいにくの曇り。もうすぐ雨が降りそうだ。


(あれ、そういえばオレ、防水か?)

「アレ、ソウイエバ オレ、ボウスイカ?」


 雨が降ってショートしました、なんてことになったら目も当てられない。

 まあパパンのことだ。心配はない。



「合羽を着ればいいだろう」


 戻ってきたパパンに念のため確認したところ、予想外の返事が返ってきた。


(オレ雨に弱いのかよ)

「オレ アメニ ヨワイノカヨ」


「とりあえず行くぞ。この丘の下に魔法がある」


 パパンは足早に丘の頂上を目指した。


「食事を用意して待っていてくださるそうだ」



 丘の頂にある巨木の根に隠れて、穴があった。パパンが根の隙間を縫うように穴へと飛び込んだ。


(いや、ちょっと待って)

「イヤ、チョット マッテ」


 突き出たパンダの腹が邪魔をして、木の根の隙間に入れない。


 もがきながらも何とか木の根は突破したが、穴につかえた。頭上には木があり、寝転んだまま足から下りたせいで、変な体勢だ。おかげで戻ることもできない。


(オレどうすんの、これ)

「オレ ドウスンノ、コレ」


「おーい。どうしたー?来ないのかー?」


 パパンが下で呼んでいる。相当深いのか、声がものすごく反響している。


(腹がつっかえた)

「ハラガ ツッカエタ」


「なんと!?」


 カツカツカツという音が上がってくる。はしごがあるようだ。


「おう……」


(こっちのセリフだ)

「コッチノ セリフダ」


「とりあえず引っ張ろう。下に体重をかけてくれ。せーの」


 ピクリともしない。


(上から押してもらいながら方がいいかも)

「ウエカラ オシテ モライナガラ ノホウガ イイカモ」


「助けを呼びに行こうにも、出入り口はパンが塞いでいるここだけだ」


 ……。


「ちょっと凹ませてくれないか。ちょっとでも隙間があれば抜けると思うんだ」


(パパン。オレは極限まで強化した独自開発の合金だ)

「パパン。オレハ キョクゲンマデ キョウカシタ ドクジカイハツノ ゴウキンダ」


「ハッ!」


(ハッ!じゃねえ。ハッ!じゃ)

「ハッ!ジャネエ。ハッ!ジャ」


(殴って穴広げるか)

「ナグッテ アナ ヒロゲルカ」


「やめてくれ。パパンを生き埋めにする気か」


 落ちることも抜けることもできない。

 助けも呼べない。


 ここで残りの83年を過ごすのは絶対に嫌だ。何としてでも出なければ。

 体を捻ったり、足をバタつかせたりしながら脱出を試みる。

 が、うんともすんとも言わない。


(パパン、恨む)

「パパン、ウラム」


「物騒だな」


 長いこと、引っ張ったり押したり捻ったりバタバタしたりを繰り返した。時計がないから何とも言えないが、体感では一時間。ついに、穴から落ちた。


 うわあああ!


(ヤベ、パパン)

「ヤベ、パパン」


 オレが引っこ抜けた拍子に、パパンがはしごから落ちてしまった。このまま落ちれば、地面に叩きつけられたパパンの上にパンダの巨体がのしかかることになる。


 パスータコレ


 気がつけばパパン抱きしめ、防御系の魔法、ボンゴラッレを発動していた。


 ドンッ


「グッ……」


(うわー!ごめんパパン!待って……動けない)

「ウワー!ゴメン パパン!マッテ……動けない」


「お、ちつけ……魔法を、、解除するんだ……」


(魔法解除!?あ)

「マホウ カイジョ!?ア」


 光を消す、光を消す


 シールドが消え、手足の自由が戻った。想像以上に体ギリギリにシールドが展開され、抱き合ったまま手足が固定される形になった。これでは攻撃をしたくともできない。


 結果地面に落ちたオレらだが、パパンがオレの上でぐったりしている。

 ボンゴラッレを発動するとき、咄嗟に身をよじりパパンを上にしたが、落下の衝撃でパパンがオレに頭をぶつけてしまった。首から下が完全に固定されていた分、首から上が受けた衝撃が強くなってしまったのかもしれない。


「ちょっとだけ休ませてくれ」


(ごめん)

「ゴメン」


「いや、守ってくれて助かった。あの高さからまともに落下していたら、最悪内臓破裂で死んでいただろうからな。この程度で済んだのはパンのおかげだ。ありがとう」


 風系の魔法があれば、ゆっくり着地できたかもしれない。もっと魔法がほしい。ヒールみたいな魔法があれば、何があってもパパンを助けられるし。


 ……ジェットでできたのでは?


(ハッ!)

「ハッ!」


 ジェットは移動するもの、飛行するものだと思っている上、守ることに意識が向きすぎてボンゴラッレを発動したが、ゆっくり降りるのにジェットが使えるではないか。


(魔法を応用して使えるようにもならないといけないな)

「マホウヲ オウヨウシテ ツカエル ヨウニモ ナラナイト イケナイナ」


(強さって一筋縄じゃないんだな……)

「ツヨサッテ ヒトスジナワジャ ナインダナ」


 パパンがそっと頭を撫でてくれた。



 しばらく休み復活したパパンと共に、真横に伸びた穴を進む。


「この先に森林系魔法があるはずなんだ」


(森林系魔法?)

「シンリンケイ マホウ?」


「ああ。攻撃にも使えるが、物によっては破壊した木々を再生させることもできる。再生できる魔法に出会えれば良いが……」


(必要なの?)

「ヒツヨウナノ?」


「魔獣が目撃されるのは山か森がほとんどだ。奴らが暴れれば当然森は破壊される。そうなれば、そこで生活していた動物が別の場所に追いやられ、慣れない餌場で、餌か否か見分けられないまま、魔法の欠片を摂取してしまうことになるんだ。

 実際、すでにそういった被害は出ている。前に言った、街を焼き尽くした魔獣の事例のうち一つは、それが原因だとされている。別の魔獣が森を破壊したことによって追いやられた動物が、人間の生活圏まで出てきた結果、見慣れない食べ物ばかりで、魔法の欠片も餌だと勘違いしたようだ」


 森の破壊と聞いて、昨日のことを思い出した。


(どうしよう。オレ、昨日めっちゃ破壊した……)

「ドウシヨウ。オレ、キノウ メッチャ ハカイシタ」


「今後ああいうことはよく起こるだろうから、再生できる魔法を持っていてほしいんだ。魔獣を増やさないために。

 昨日はどうしようもなかったことだ。それにあの辺りにはすでに動物がいなかったからな。あまり引きずるんじゃない。反省するに留めておけ」


「ああ、あった。パン、ついてるぞ」


 天井から魔法を取り出しながら、パパンが興奮している。再生の魔法が見つかったんだろうか。


「ご覧。珍しい魔法が手に入った」


 差し出されたパパンの手には二つの魔法が乗っていた。一つはペリドットのような淡い緑色、もう一つはアズライトのような深い藍色をしている。


「これがフォルセルチ、枝葉の成長を促進させる魔法だ。完全なる再生とは違うが、山や森林の再生には大いに役立つだろう」


 指し示したのは淡い緑色の方だった。ジェットのようにトゲトゲはしていないが、決して滑らかでもない。


(フォルセルチ)

「フォルセルチ」


「そしてこれが恐ろしくレアだ。数百年に一度発見できるかどうか。大魔法使いが持っていたものが帰ってきたのかもしれないな」


 深い藍色の方を見ながら、パパンがめちゃくちゃ興奮している。イグニースよりはるかに大きい。飲み込めるか?


「名はスクモー。魔法を発動した対象を、闇に隠すことができる。影になれると考えてくれ。

 これ自身があまりに強すぎるせいで、魔法耐性を持っている人でも、体内で暴走することがあると言われているんだ。パンなら大丈夫だろうが、万が一破壊されていたと考えるとゾットするな。並の魔獣化では済まなかっただろう」


 フォルセルチから飲み込む。



 ・ザルカルアルクル・



(ザルカルアルクル。ル(・)が多いな。覚えられるかこれ。ザルカルアルクル。ザルカルアルクル……)

「ザルカルアルクル。ル(・)ガ オオイナ。オボエラレルカ コレ。ザルカルアルクル。ザルカルアルクル」


「いつの間にスペル覚えたんだ」


 パパンが目を丸くしている。


(あ、まだ話してなかった)

「ア、マダ ハナシテ ナカッタ」


「何かあるのか」


(あとで落ち着いたところで話すよ。今は時間もないし)

「アトデ オチツイタ トコロデ ハナスヨ。イマハ ジカンモ ナイシ」


「ああ、そうだな。つっかえ事件で随分経っているだろうし急ごう」


 急いでスクモーを飲み込む。



 ・コスミロスクッガ・



(コスミロスクッガ)

「コスミロスクッガ」


 慣れと焦りは恐ろしく、こんなに大きな魔法を抵抗なく口に入れた。こんなに大きな魔法を、詰まらせることなく飲み込めるこの体もすごい。これが飲めるなら大概大丈夫だろう。……液状になった血肉がついていなければ。


「口にするのはいいが、この間みたいに突然発動しないでくれよ」


(……確かに。その可能性があった)

「タシカニ。ソノ カノウセイガ アッタ」


「アハハハ。とりあえず急ごう。せっかくの食事が冷めてしまう」


(オレ、通れる?)

「オレ、トオレル?」


「……」



 案の定詰まった。下からパパンに押してもらいながら、先に出した手で踏ん張って何とか脱出した。手の力を使えた分、降りる時よりは短時間で済んだ。

 が、


「……」


 外は雷鳴の鳴り響く土砂降りだった。


(ちなみに合羽は……)

「チナミニ カッパハ」


「飛行機の中だ」


 思わず目を伏せた。


「少し待てば止むだろうか」


 木の根元に仲良く、二人並んで雨宿りをする。沈黙が流れる。


「パンにも(・)防水機能が必要だったな」


(うん。オレもそう思う)

「ウン。オレモ ソウ オモウ」


(ん?にも、ってオレ以外にもアンドロイドがいるの?)

「ン?ニモ ッテ オレ イガイニモ アンドロイドガ イルノ?」


「私の飛行機の話だ。完全防水なんだ」


 再び沈黙が流れる。



 ドンガラガッシャーンッ


 沈黙を破ったのは、雷だった。地球が割れたかと思うような音を轟かせ、正面の木に落ちた。


「うわっ!」


(……今そこに落ちたよね)

「イマ ソコニ オチタヨネ」


「ここも危険だ。パパンが急いで飛行機から合羽を取ってくる。パンはここにいろ」


 パパンが、雨降りしきる牧場に飛び出していった。

 ショートする以上、何もできない。


 飛行機から合羽を取ってくるわずか数分で、パパンはずぶ濡れになっていた。

 合羽を羽織り、丘のふもとの小屋まで走り出す。後ろでまた雷が落ちた。振り返ると、さっきまでいた木が発火していた。危なかった。オレはパッラマの炎を受けても無傷だったから大丈夫だろうが、パパンは即死だっただろう。


(パパン、オレを防水にしてほしい)

「パパン、オレヲ ボウスイニ シテホシイ」


 小屋の軒先で合羽を脱ぎながら頼む。

 燃える木を見ながらパパンが大きく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。