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違う!違う!脳じゃない!〜転生したオレは、パンダ型ヒューマノイドの脳らしい〜  作者: 梶皣 もゆら


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4 炎系最強魔法

 色々ありながらたどり着いたのは、深い森の奥だった。

 暴れ出す危険があるマルーは、ヘッドロックを決めて気絶させた。


「もう少し行ったところにパッラマが住んでいる。この森の主である火吹き竜だ。彼が守っている魔法を取ってこい。炎系最強の魔法だから相当大きいはずだ。のどに詰まらせるなよ」


(……わかった)

「ワカッタ」


「くれぐれもパッラマを傷つけるな。もちろん殺してもいけない」


 パパ、、ンにオレは怒っているんだと示すためにあんな返事をしたが、内心ワクワクしている。いよいよ攻撃系の魔法が手に入るんだ!しかも最強!マルーを置いてさらに奥へへ進む。


 パパ、ンが見えなくなるまではあくまで冷静に。何ならやる気ない感じで。


 ここまでくれば大丈夫だろう。

 スキップしちゃうもんねー。


 ハッ!

 浮かれすぎて忘れていたが、オレは尻尾には真っ赤なリボンがついているパンダだった。

 周りを見渡すが誰もいない。良かった。リボンをつけたパンダがスキップしている姿を見られずにすんだ。


 ルンルンで歩いていたら、小さな池が見えてきた。その奥には大きな岩が。

 行き止まりか?

 おかしいな。パッラマはどこだ?


 様子を見るために池まで歩いていってみると、池の奥に見えた岩が、なんと寝ている巨大な竜だった。キンバーライトの塊ような見た目をしている。

 これがパッラマ……。


 どこに魔法が隠されているんだ?

 起こさないようパッラマの周りを見て回る。特に宝箱のようなものは見当たらない。腹の下か?指でつついても起きないことを確認し、脇腹を軽く持ち上げてみる。それらしきものは見つからない。


 その時だった。

 体がムチのようなものでふっ飛ばされると、木に衝突した。パッラマが目を覚ました。

 どうやら尻尾で飛ばされたらしい。体を起こす前に火を吹き付けられる。このボディじゃなかったら焦げ死んでいた。


 パッラマのいなくなった池の方をみるが、

魔法らしきものは見えない。守っているって、どこに隠してんだよ。


 その間にもパッラマは攻撃してくる。尻尾に火に爪に。持てる武器すべてを使っているようだ。

 オレも反撃したいが、殺しても、傷つけてもだめとなると、力加減のロクにできないオレは躊躇うしかない。


(オレが強すぎる……)

「オレガ ツヨスギル」


 どっちみちオレがやられることはないんだ。できるだけ避けながら魔法を探すことに集中しよう。


 4〜5センチの石……え、あれじゃないよな?


 パッラマの左手にがっしりつかまれた宝玉のような玉。だがこの辺りで宝石っぽいものはあれしかない。水晶似か。


 ダメ元で交渉だ。


(あのー。それもらえません?その左手の)

「アノー。ソレ モラエマセン?ソノ ヒダリテノ」


「断る」


 ですよね。って、えええええええ?!

 喋れるの!?意思疎通可能なの!?


(あ、じゃあじゃあ、攻撃やめてください。ね。ね?話し合いましょう)

「ア、ジャアジャア、コウゲキ ヤメテクダサイ。ネ。ネ?ハナシアイマショウ」


「先に攻撃を仕掛けたはそなただ」


 また火を吹かれる。


(それはすみません。でも攻撃したつもりはなくて、魔法探してただけなんです)

「ソレハ スミマセン。デモ コウゲキシタツモリハ ナクテ、マホウ サガシテタダケ ナンデス」


「絶対に壊させん」


 壊す?


(ああ、違うんです。オレはそいつらを倒すために魔法を集めてるんです。壊しません。飲み込みます。なんなら目の前で飲み込みますよ)

「アア、チガウンデス。オレハ ソイツラヲ タオスタメニ マホウヲアツメテルンデス。壊しません。ノミコミマス。ナンナラ メノマエデ ノミコミマスヨ」


「そんな戯言でこのわしを欺けると思ったか!」


 声を荒げ、空に向かって思い切り火を吹いた。


「そんなヘンテコな見た目のやつが裏組織の手先ではないわけがないだろう!」


 え?パパ、、ン?

 オレ、見た目裏組織っぽいらしいけど。


「尻尾にリボンを縛れば可愛さで騙せると思ったか。たわけが。これっぽちも可愛くないわ」


 それは共感。めちゃくちゃ共感。


 しかし困った。見た目が裏組織じゃ交渉も上手くいかない。攻撃も加減ができない。


 木で練習するか。

 パッラマから離れて木を粉砕する。


 これじゃあ強いのか。


 これなら――


 木が揺れただけで変化はない。


 もうちょっと強く。


 バギッ


 殴ったところで折れてしまった。


 こうか。


「いや待て。何をしている」


(殴る練習です)

「ナグル レンシュウデス」


「……魔法を使えばよかろう」


(まだ飛ぶことしかできないんです)

「マダ トブコトシカ デキナインデス」


「は?」


(かといって殴るのも、オレ強すぎてまだ上手く加減できないんで、パッラマさんを傷つけずに殴る練習しようと思って)

「カトイッテ ナグルノモ、オレ ツヨスギテ マダ ウマク カゲンデキナインデ、パッラマサン キズツケズニ ナグル レンシュウシヨウト オモッテ」


「よく考えるのだ。どう殴ったって、手を出した時点で相手が傷つかぬ道はない」


 言われてみれば。あれ、じゃあオレ手出せないってこと?


 交渉不可。

 手出し不可。

 詰み。


 グワングワングワン


 木はこれっぽっちも揺れていないのに、木を突いたままの拳に振動が伝わってきた。どうやら木の内部だけを衝撃波が伝っているようだ。


 これ、いつか使えそう。

 もう一回。


 ボスッ


 幹に穴が開いた。

 クソっ。


「あー……そなた本当に裏組織の者ではないのか?」


(違います違います)

「チガイマス チガイマス」


(さっきは確か、こんぐらいの力で……ソイヤ)

「サッキハ タシカ、コングライノ チカラデ……ソイヤ」


 ドガッ


 また折れた。


(こんぐらいの力だったと思うんだけどな)

「コングライノ チカラダッタト オモウンダケドナ」


(もっとこう、シュポって感じか?)

「モット コウ、シュポッテ カンジカ?」


 シュポ

 コツン


 びくともしない。


(くっそー。これも違うのか。どうやったんだよオレ)

「クッソー。コレモ チガウノカ。ドウヤッタンダヨ オレ」


「んんんッ。あー、お楽しみのところ悪いがー……」


(ん?)

「ン?」


(あーー!忘れてた!違う違う違うオレ!魔法だよ魔法。オレ魔法使いなんだよ)

「アーー!ワスレテタ!チガウチガウチガウ オレ!マホウダヨ マホウ。オレ マホウツカイナンダヨ」


(ってことで、それください)

「ッテコトデ、ソレ クダサイ」


「裏組織を倒すといったな。そなたのその、アホさでは難しいぞ。魔法よりそのアホさをどうにかせんと」


 ……2回言った。

 アホって2回言った。


 いや、今のは確かに自分でもアホだったと思うけどさ、2回言う必要ある?2回も。


「そなた、生き物ではないな」


 ん?ああオレは、生物と非生物を掛け合わせた史上最強の何かです。


「聞いてはならぬことだったか」


 ああ。またやった。


(違います違います。オレは生物と非生物を掛け合わせた史上最強の何かなんですけど、この会話の機能をまだ使いこなせてなくて)

「チガイマスチガイマス。オレハ セイブツト ヒセイブツヲ カケアワセタ シジョウサイキョウノ ナニカ ナンデスケド、コノ カイワノ キノウヲ マダ ツカイコナセテナクテ」


「難儀なやつ。ここから西に20キロほど行った海に、動物と会話できる魔法を持っている魔法使いが住んでいる。訪ねてみると良い。何かの役に立つかもしれん。パッラマの紹介だと伝えれば受け入れられるだろう」


(これ何とかできるってことですか!?助かった)

「コレ ナントカ デキルッテ コトデスカ!?タスカッタ」


「それと、ほれ。そなたの望むものじゃ」


 渡されたのは、直径10センチは超えていそうな透明な玉だった。


(え、これが炎系最強の魔法?それは?)

「エ、コレガ ホノオケイ サイキョウノ マホウ?ソレハ?」


「これは偽物だ。万が一破壊されても問題ない」


 太陽が森を照らし、魔法が虹色に反射する。

 水晶じゃなくてダイヤモンドか。


 いや、待て。これを飲み込むのか?


「さあ。約束だ。飲んでもらおう」


(とっさに目の前で飲むとか言っちゃったけど、これ飲むのか!?)

「トッサニ メノマエデ ノムトカ イッチャッタケド、コレ ノムノカ!?」


「ほう。飲まぬというのか」


 パッラマが戦闘態勢に入る。


(飲みます飲みます)

「ノミマスノミマス」


 うっ。

 こんなにデカいなんて聞いてない。

 死なないかなオレ。


 どうせいつかは飲むんだ。攻撃系、それも最強が手に入る。今飲んでも一緒だ。


 ふぅー。

 よし。


 うっ。

 ご、っくん。



 ・エルドゴス ファルム・



 エルドゴス ファルム……。

 まただ。頭に何かが浮かぶ。


「体は大丈夫か」


(ああ、オレ、魔法耐性も強すぎてフワフワするだけなんですよ)

「アア、オレ、マホウタイセイモ ツヨスギテ フワフワスルダケ ナンデスヨ」


「なんと。そなた本当に強いのか」


(魔法耐性とこのボディは無敵級らしいです)

「マホウタイセイト コノ ボディハ ムテキキュウ ラシイデス」


「一つ教えてやろう。魔法の出力量は、イメージする光の量比例する。調整それだけだぞ」


(ありがとうございます!!)

「アリガトウゴザイマス!!」


 パパ、、ンはそんなことも教えてくれなかったのか。


「気をつけるんだぞ。ところで名は何という」


(パンです)

「パンデス」


「パン。覚えておこう。ではまた会おう」


 また?またここに来なきゃいけないのか?


(さよなら)

「サヨナラ」




 パパ、、ンのもとに戻ってくると、空腹へ誘う良い匂いがしていた。


「君、ンンッ、パンが気絶させたマルーを鍋にしておいた。魔法は取れたか」


(……取れた)

「……トレタ」


「さすがパパンの子だ。さあ朝食にしよう」


(あとで辞典貸して)

「アトデ ジテン カシテ」


「スペルは、エルドゴス ファルムだ」


 エルドゴス ファルム。あの頭に浮かぶやつってやっぱり……。

 また今度パパ、、ンに聞いてみよう。


 お互いに微妙な空気のまま、マルーの鍋を食べた。

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