3話「出発への支度」②
冒険者ギルドは、朝から既に活気で溢れておった。
「ようこそ、冒険者ギルドへ。私も途中までいるから、サクッと終わらせるぞ」
…かっこいいのじゃ。
儂は凛に導かれた。
窓口ではピシッとした制服に身を包む、少しふわふわしてそうな女性が待っていた。
「おはようございます。本日はどうなされましたか?」
「うむ、おはよう。今日は冒険者カードを作りたくての」
流石に凛に任せっきりは良くないのじゃ。
だから、儂から要件をサクッという。
「冒険者カードの発行ですね。少々お待ちください」
そうして受付嬢はカウンターの奥へと潜っていった。
「私がやると言ったがいいのか?」
スラっとした身長の凛は、儂を見下ろす形で不思議そうに聞いてくる。
「頼りっぱなしは儂の性じゃないのじゃよ」
儂は堂々とそう答える。
そうして、儂と凛は少しの沈黙を共有したのじゃった。
「お待たせしました」
間も無くしてカウンターの奥からさっきの受付嬢が出てくる。
手には一枚の紙を持っていた。
「ではまず、こちらに記入して下さい。終わりましたら、軽い試験をします」
そういって、一枚の紙とペンを渡してくる。
「えっーと…名前と役職などを書くのか」
儂は受付嬢から受け取り、早速空欄を埋めていく。
じゃが、思った以上に難しいのじゃ。
なかなかペンが走らぬ。
「本籍なんて…どこにあるかわからんぞ」
「埋められるところだけでいいからな、ルアナ」
凛が横から助け舟を出す。
「だが、冒険者カードは身分証みたいなものじゃろう?適当でいいのか?」
そうでなければ、衛所で使えないじゃないかの。
「ああ、私がいるからな。だから、最低限だけ書けばいい」
凛がなんとはなしに言う。
…こやつ、誤魔化したな。
儂は凛に言われた通りに軽く書いた。
「本当にこれだけでいいのか?」
儂は凛を信用して、受付嬢に用紙を渡す。
「はい。大丈夫です」
本当にいいのか…
「でも、どうしてじゃ?」
「それは暮羽様がSランク冒険者だからです」
「Sランク冒険者?」
儂は聞きなれない言葉に首を傾げる。
「えっと、ルアナさんですね。もしかして、冒険者ギルドについて詳しくないのですか?」
「依頼しか知らぬな…」
すると受付嬢は軽く説明をしてくれた。
「わかりました、説明しますね。冒険者はS、A、B、C、D、E、F、Gの8段階にランクが分かれています」
「ほう、冒険者をランクで分けているのか。」
「そして、ランクで受けられる依頼の内容が変わります」
「なるほど、冒険者の安全のために定めているのんじゃな」
「…凛は本当にSランクなのか?」
儂は少し怪訝な声で凛に聞く。
本当にそうなら、あれは…職権乱用じゃ?
「ああ、そうだが?」
凛は威張るわけでもなく淡々と言う。
…大丈夫かの、この組織。
「更にその上に評議会というものがあります」
評議会。聞き馴染みのない言葉じゃ。
「ギルド内で最も強く信頼された10人から構成される意思決定機関です。正式名称は評議会。ですが、多くの人は“白夜の継承者”と呼びます。世界最高位の称号の一つですね」
…なんじゃ、それ?
いきなりスケールがデカくなったぞ。
「…誰がいるのじゃ?」
わからないと思うが、一応聞いてみる。
「この街で有名なのは、かの黎明の開拓者ルアナ・アーヴァント様の1番弟子、フラン・フォウヴァー様があげられますね。あとは…いえ、なんでもありません」
「…」
最近会ってないと思ったら、そんなことしていたのか。
ふふん、鼻が高いのじゃ。
「そう思うとルアナ様はいい名前をしていますね」
受付嬢はまじまじと儂の顔を見てそう答える。
「そうかの?」
儂は満更でもなく答える。
「それはもちろん!だって、あのルアナ・アーヴァント様と同じ名前ですよ?冒険者ギルドは黎明の開拓者に倣って作られた組織ですからね」
おぉう、勢いがすごいのじゃ。
…一つ揶揄ってみるかの。
「もし、儂がルアナ・アーヴァント本人だったらどうするのじゃ?」
「それはあり得ません!ルアナ・アーヴァント様は冷徹な真紅の瞳、そして輝く月のように美しい銀髪をお持ちと言われています。それに比べて、ルアナ様の瞳は淡い青色で髪は灰色ではありませんか」
受付嬢は少し怒ったように言った。
「おっ、おう。すまぬな」
…少しショックじゃ。
そんな否定すること、ないのじゃ。
まあ、揶揄った儂が悪いんじゃけども。
「さて、ルアナ様。魔力測定をお願いします」
儂は少し落ち込んだ感じで魔力測定に向かうのであった。




