3話「出発への支度」①
今、儂は冒険者ギルド前におる。
その理由を話すと少し長くなるのじゃ。
――
「店長、オムライスじゃ!」
「おうよ!」
店長は力強く返事をした。
儂は活気に溢れる居酒屋「黒豚の足」におった。
儂はカウンターに座って、オムライスを待っていたのじゃった。
「はいよ!お嬢ちゃん」
早くも美しい紡錘形のオムライスが出てきた。
「おぉ!いただきます」
礼儀は正しく、挨拶は義務。
異界人から聞いた話じゃ。
早速、儂はオムライスを口に運んでいった。
「ん〜うまい!」
これは最高のオムライスじゃ。
スプーンが止まらぬ!
「こんにちは。あんたも冒険者か?」
隣の席から凛とした声がした。
儂はリスのような頬を向ける。
そこには、見慣れぬ服装の女性がいた。
おそらくサムライじゃろう。
儂は喋ろうと一気に飲み込もうとした。
「う"う"。ゴッホッ、ゴッホッ」
じゃが、儂の喉はそこまで大きくない。
思いっきり詰まらせたのじゃった。
「お、おい!大丈夫か?店長!水、水を頼む!」
彼女は焦った声で店長に水を頼んでいた。
もちろん、儂も全力で焦るのじゃった。
――
「落ち着いたか?」
彼女は心配そうに聞いてくる。
「んあ。なっ、なんとか…」
死ぬかと思ったわい。
「すまない。いきなり声をかけて。私は凛。あんたは?」
凛は儂の隣に座り、手に持つ焼き鳥を食べながらそう答えた。
「儂はルアナ。よろしくじゃ、凛」
…焼き鳥も美味しそうじゃな。
「…いるか?焼き鳥」
凛は申し訳なさそうにそう言った。
儂の思考を読み取った…じゃと。
「もちろんじゃ。ところで、どうしたんじゃ?」
儂は焼き鳥を受け取りながら、質問の答えと疑問を同時に投げつける。
「このカウンター席に座れるのは限られた者だけなんだ。だが、あんたのことを知らなかったから、気になってな。すまない、気を悪くさせたら」
彼女は淡々と、しかし礼儀深く説明をした。
なるほど、この席は特等席だったわけじゃな。
「だが、ルアナか。かの黎明の開拓者、ルアナ・アーヴァントと名前が同じなんだな」
凛は独り言のように小さくそう呟いた。
…いや、儂の空耳じゃろう。
「じゃあ、なぜ店長は儂をこの席に勧めたのじゃ?」
儂はただのか弱い美少女じゃぞ?
そうすると、店長が厨房からひょいっと顔を出した。
「賭け事で後ろの野郎どもから剥ぎ取ったの忘れたのか?嬢ちゃん!」
…なんのことじゃ?
儂は不思議に思い、後ろを向いた。
そこには、数人の冒険者が燃え尽きておった。
「ああ、そうじゃった!儂がやったんじゃな」
あいつらから、巻き上げられるだけ巻き上げたのを忘れてたおったわ。
「あんた、可愛い顔してとんでもないな…」
凛は儂のことを見て少し引いている。
なぜじゃ?
「で、あんたはこれからどうするつもりなんだ?」
凛は焼き鳥と更にビールを頼んでいた。
「どうしてじゃ?」
「ただの勘だよ。…未成年に酒はダメだ」
おっと、儂は凛の酒を凝視してなどおらぬぞ。
…しかも、儂は未成年じゃないのじゃ。
「そうじゃな、明日にはここを出て、辺境の街ランゲートに向かうつもりじゃ」
隠すつもりもないから儂は素直に答えた。
「だったら…ルアナ、明日冒険者ギルド行って冒険者カード発行してもらえ。それがあれば衛所の手続きが楽になる。」
凛は枝豆をつまみながら答える。
なるほど…ギルドカードか。
いいことを聞いたのじゃ。
「冒険者か。なる気はなかったが、カードだけでも作りにいくかの」
せっかく教えてもらったのだ。
使わない手はないのじゃよ。
「…枝豆、いるか?」
凛はイタズラっぽく儂に言う。
「酒がない枝豆には興味はないのじゃ!」
く、悔しい…
儂もケチケチ言わずに頼むか。
「店長!儂にもビールく――」
店長を呼ぼうとした瞬間、ガシッと頭を捕まれた。
「店長ー!こいつにはオレンジジュースを頼む!」
なっ、なんじゃと!?
儂はビールの恨みを込めて、凛を軽く睨む。
この女、酷すぎるのじゃ…!
じゃが、凛は少し呆れた顔を向けてきた。
「だから、あんたには酒は早いだろ?でだ、明日冒険者カードを発行してもらうんだろう?なら私もついていく。私も冒険者ギルドに用事があるし、私は顔が広いからな。いざという時には役に立つ」
なるほど、ギルドに伝手があるのか。
さっき、最低人間かと思ったが…
一応、いい奴じゃな。
「着いてくるのか?それはありがたいのじゃ」
冒険者ギルドを儂は知らぬ。
だから、同行者がいるのは嬉しいのじゃ。
「じゃあまた明日、冒険者ギルド前で集合な。」
彼女は、テーブルにお金を置く。
そして、横に立てかけてあった刀を手に取り、この場を後にした。
――
ギルドの前に立つこと数分。
「おーい!ルアナ、おはよう!待たせたな」
ようやく凛がやってきたのじゃ。
「おはよう、凛!今日はよろしく頼むぞ」
今日は凛を頼らせてもらうかの。
そんな思いで、ギルド内に足を踏み入れていった。




