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2話「第10条?」③

「ふぅ。さいっこう!」

儂は口の中に広がる余韻を楽しんでいた。

儂は順調に街を進んでいた。

しかし、そろそろ疲れたのじゃ。


「休憩でもするかの?」

儂は人の流れから逸れる。

そして、店の壁に背を預けた。


「これが儂らが作ろうとした世界か…悪くないな」

人々が楽しそうに歩くのは嬉しいものじゃな。

儂は街の声に耳を傾け、静かに目を瞑る。

聞こえてくる笑い声に頬が緩む。

昔は…


「ちょっと、ちょっと!そこの、貴方!」

慌てた声に、儂は現実へと戻された。


「ん?」

うっすらと目を開ける。



「…えっ?」

そこには、筋骨隆々な男が立っていた。


「貴方もしかして、魔法で髪を洗ってるんじゃないわよね?」

なんじゃ、こいつ?

おもむろに儂の髪を触っておる。

…ヤバい奴じゃぞ。


「当たり前じゃが?何か悪いか?」

儂は男の手を弾きながら答えた。

何を当然のことを聞いてくるのじゃ?

だが、男には衝撃だったらしい。


「Oh、ノォーー!!貴方、嘘でしょ?」

男は街の中で大きく叫んで、絶望した。


「ちょっ、ちょっ、うるさいのじゃ」

街の全員が儂らの方を見てくる。

流石の儂でも恥ずかしいのじゃ。


「貴方ッ!貴方は人生の9割を無駄にしているわ!貴方の髪を魔法ごときにお手入れさせたら美しさの2割しか出せないじゃない?」

そんな儂を無視し、男は熱弁する。

しかし、聞き捨てならぬな。


「魔法ごときじゃと?」

舐めるでない!

魔法は儂の全てじゃ!

ならば…


「それなら見せてみるがよい!」

儂も大きな声を出してしまった。

じゃが、恥ずかしさなど感じない。

こいつは魔法を否定したのじゃ。

ならば受けてたとうではないか!


「いいわ!私のゴットハンドで貴方を骨抜きにしてあげるわ!」

そう言って男は儂をガシっと掴む。


「…えっ?」

そのまま、儂は軽々と肩に担がれてしまった。


「ちょっ、待つのじゃあああああ!」

儂の静止虚しく、みっともない体勢を晒してしまう。

恥ずかしさを感じかけたその時じゃった。

儂はとんでもない速度で運ばれてしまったのであった。


――


儂は不思議な匂いがする店でようやく解放された。


「はぁ、はぁ、お主、先に言え!」

心臓に悪いのじゃ!

儂は羞恥と恐怖で足の震えが止まらん。


「さあ、やるわよ!みなカモン!」

こいつ、無視しおった。

男はパパンッと手を叩くと、美しい女たちと世紀末を生き抜いたかのような男たちが出てきた。


「私の名前は、ラヴェル。そして、ここは私たちの店、フゼーリアよ!」


「いっ、一体何をするつもりじゃ?」

足よ、早く動くのじゃ!


「今から貴方には全力で美しくなってもらうわ!」

やはり動かないのじゃ…

儂の抵抗虚しく捕まってしまう。

そうして、儂は魔境の中に連れ去られたのじゃった。


――


「流石、私の見込んだ子よ!」

ラヴェルは自慢げに言う。

儂は精神的に凄く疲れたのじゃ。


あの後、歴戦の覇者どもに髪を、いや頭ごと隅々まで洗われてしまった。

見た目とは裏腹に、繊細な指使いじゃった。

こんなの気持ちよくて、抗えないのじゃ。

そして、バラが浮く風呂に入れさせられた。

一息つけると思った瞬間、女性たちに囲まれた。

…凄く恥ずかしかったのじゃ。

彼女らは狼狽える儂に向かって手を伸ばす。

儂は急いで逃げ出そうとしたが、またも捕まってしまった。

そして、儂は体の隅々まで洗われてしまったのじゃった。

風呂から上がる時、儂はフラフラじゃった。

最後にラヴェルが儂の顔や髪に謎の液体を塗り込んで終わった。


「さ、どうかしら?」

ラヴェルは鏡を向ける。

…髪がツヤツヤしておる。

しかも、肌もモチモチしておらぬか?


「すごいな…」

それは魔法では決して出せない領域じゃった。


「…儂の負けじゃ」

まさか、魔法を使わずにここまで魅せるとは…

魔法を使わないのもあり…なのか?


「いいの。私は手の素晴らしさを貴方に伝えたかっただけだから」

そう言って、ラヴェルは儂を引き寄せた。


「さあ、最後の仕上げよ!好きな服をもらって頂戴!」

圧巻じゃな…

儂の眼前にはワンピースからパンツスタイルまで数多の服が並んでいた。

では、お言葉に甘えて早速見るとするかの。

儂は一歩を踏み出そうとした。

じゃが、後ろから肩を掴まれた。


「ルアナちゃん?こっちよ」

後ろを振り返ると、肉食獣と目があった。

この時、儂は知らなかったのじゃ。

これからが本当の地獄なのじゃと…


――


儂は長時間着せ替え人形状態になっていた。

カジュアルな服からマニアックな服まで古今東西の服を着せられた。


「ごめんねー、ルアナちゃん。あの子達気合いが入ると止まらないの」

ラヴェルは茶化すように言う。

確かに、今日一番の疲れじゃった。

じゃが…


「楽しかったから別に良いぞ?」

タダで利用させてもらったしな。

更に、服まで貰ってしまったのじゃ。

…儂には少し可愛い過ぎるかもしれぬが。

だが、貰ったのじゃから、明日にでも着るかの。

ちなみに、今着ている服ももらったものじゃ。

前のは劣化が激しく、雰囲気の似たのを貰ったのじゃった。


「あと、貴方の帽子とマントはボロボロだったから補強しといたわ。あと、これももらって。ホテル内で確認するといいわ」

そう言って、ラヴェルは儂に帽子とマント、そして紙袋を儂に渡す。


「本当か?ありがとう、ラヴェル!」

儂は宝物をもらうように大切に受け取る。

帽子とマントは悲惨な状態だから、凄くありがたいのじゃ。

紙袋の中身は気になるが、指示に従うとするかの。

そうして、儂はかっこよくマントを羽織る。


「うむ!最高じゃ!」

儂は最高の着心地に思わずニヤけてしまう。

まだまだ、共に歩めそうじゃな。

儂は帽子を被りつつ、フゼーリアを出た。


「また来るのよ。美への道は1日にしてならずなのだから。あと、必ずモデルをやってもらうわよ!」

相変わらず声が大きいのお。

じゃが、ラヴェルらしい。


「ああ!また来るのお!」

…奇妙な縁ができてしまったな。

そうして儂はラヴェルの元をあとにした。


「また、お世話になりそうじゃな」

日が傾き、雰囲気が変わりつつある街の中。

儂は、更に軽くなった足取りで道を歩き出すのじゃった。

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