4話「表現の魔法」④
儂とアトラは再び馬車に乗って揺られていた。
他愛もない会話を楽しみ、やがて、アトラは儂に寄りかかり寝てしまった。
儂は流れゆく景色を眺めながめる。
別れの時は徐々に近づいていた。
「んっ…。おはよう、ルアナお姉ちゃん」
アトラが重い瞼を開ける。
「もうすぐお別れ?」
アトラは儂に寂しそうな声で聞いてきた。
「ああ、そうじゃな。もうすぐ、お別れじゃ」
「そっか。ルアナお姉ちゃんと別れるの嫌だなあ」
寝ぼけたアトラは年齢よりも幼く、ふわふわした雰囲気を持っていた。
ゔぅっ…可愛いのじゃ。
「ならアトラ、お主にこれをあげよう」
儂はアトラの手を取り、一つの御守りを握らせる。
「これは?」
アトラは不思議そうに聞いた。
「御守りじゃよ。本当に困った時、助けられるようにじゃ」
小さな物じゃから、喜んでくれるといいのじゃが…
「…!ありがとう、ルアナお姉ちゃん!」
アトラは宝物のように大切に手で優しく包む。
喜んでくれて良かったのじゃ。
「あと、魔法学はヴァルティール大学のフラン・フォウヴァーに頼るといいのじゃ」
「フラン先生?」
アトラはまたもや不思議そうに聞く。
「ああ、儂の一番弟子じゃ。少し厳しいかもしれぬが、優しく頼りになるいい先生じゃ」
そう、あの性格は…ツンデレってやつだったかの?
いや、あれは違う気がする…
「一番弟子…。私もルアナお姉ちゃんの弟子?」
ふっ、可愛いやつめ。
「ああ、もちろん。アトラも可愛い弟子じゃよ」
儂は眠たげな瞳のアトラを優しく撫でる。
「最後にこれをあげようかの。アトラ、お主が魔法を使えなかった原因やなんかを書いたものじゃ。旅の道中で読むんじゃぞ」
アトラは驚いたように受け取る。
手紙には今のアトラに必要なことを書いておいた。
「ランゲートに向かうお客さんはここで降りな!」
馬車を運転していたおじちゃんが別れの時間を告げる。
「さあ、アトラ。お別れじゃ。寂しくなるな」
儂はゆっくりと腰を上げ、荷物を手に取る。
そして馬車からゆっくりと降りた。
「ルアナお姉ちゃん、ありがとう!私、学校頑張るね!」
アトラが馬車から身を乗り出し別れを言う。
「うむ。頑張れよ、アトラ」
儂は手のひらをアトラに向けて出す。
「うん!」
アトラはすぐに儂の手のひらに、パチンっ、とタッチをする。
儂は馬車から数歩後ろへと動く。
するとすぐに馬車は動き出した。
「ルアナお姉ちゃん!またね!」
アトラが元気よく手を振る。
「お主も元気でな!」
儂もそれに釣られて軽く手を振る。
やがて、馬車は見えないほど遠くへと行ってしまった。
「さて、儂は儂の道を進むとするかの」
そうして儂は、ランゲートへと続く長い道をゆっくりと歩き出す。
空は、どこまでも青く澄んでいた。




