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5話「最初の一歩、小さな蕾」①

「はぁ、はぁ、はぁ…」

くっ、苦しい。

せっかくの清々しさが台無しじゃ…

儂は肩で息をしながら嘆く。

一体何があったのかというと…


――


「一本道だから迷わずに進めるわい」

儂は手に持つ昼食入りのバケット大きく揺らしながら、穏やかな道を気楽に歩いていた。


儂の安寧も長くは続かなかった…


「そこのキミ!逃げろぉ!」

後ろからいきなり声が聞こえてきた。


「…ん?」

儂が呑気に後ろを振り向くと、儂の横を3人の冒険者が全力で横切った。

次の瞬間、森から超巨大な蜘蛛がドガーンッ、と現れた。


「なっ!?」

うっ、嘘じゃろぉぉっ!

穏やかな空気は一瞬にして打ち壊された。

じゃが、それよりも…


「ちょっ、待つのじゃあああ!」

あんの冒険者、絶対に逃がさん!

儂は急いで身体強化をかけ、あの冒険者達を追いかけた。


「おい!お主ら!どういうことじゃ!」

儂は走りながら、怒号混じりの声を上げる。


「すまないっ!巻き込んでしまって!」

剣士が申し訳なさそうに答える。

儂には反省している奴の笑顔には見えないのじゃが。


「ごめんね!あのバカのせいで」

杖を持つ女は、辛そうに答えた。


「…」

…こいつはなんじゃ?


「お主ら!これからどうするのじゃ!?」


「わからない!」

なんと、無責任な…


「ああ、くっそ…!なら儂が!」

そう思い、後ろを振り向く。

後ろには巨大な蜘蛛が土埃をあげながら追いかけていた。


「やっ、やっぱ無理じゃ!でかい虫は無理じゃあ!」

あの目、あの体、その他諸々…

きっ、キモすぎるのじゃぁぁぁ!!


「あーもう!もう一回、水槍!」

魔法使いが蜘蛛に向かって魔法を使った。


ガブッ!


「おぉ」

あの蜘蛛、魔法を食べたのじゃ…


「やっぱ、魔法食べるのは反則だってー!」

レアモンスターじゃな。

売れば高くつくぞ。


…て、違う!

このままでは儂らの方が先に食い物にされる!


なら一か八かじゃ。

腹を括るしかない!

儂は心を強く持ち、蜘蛛の方へ振り向く。


「おりゃあ!」

これでも喰らうがよい!

儂は手に持つバケットを蜘蛛の口にめがけて投げる。

投げたバケットは綺麗に宙を舞う。


ガブッ!


よし、食べたのじゃ!

儂の昼飯を食べた次の瞬間、蜘蛛が悶え始めた。


「えっ?どういうこと…?」

魔法使いが困惑する。


「みんな!今のうちだ、いくぞ!」

剣士がカッコよく叫ぶ。


それ、儂のセリフじゃ…


――


そんなこんなで蜘蛛から無事逃げれた儂らは道の外れで一息ついていた、というわけじゃ。


「すまなかった。改めて謝罪をしよう。僕はアイン、よろしく!」

剣士もとい、アインは疲れた様子もなく爽快に答えた。

本当に、こやつのせいでえらい目に遭ったわ。


「私はルフテ。ごめんね、巻き込んじゃって」

ルフテという魔法使いは手を顔の前で合わせた。


「…ナニガシ」

この男は本当になんなんじゃ?


「儂は、ルアナ。よろしくじゃ」

儂だけ息を整えてから自己紹介をした。

…体力つけるべきかの?


「ところでルアナ?あの時何を投げつけたの?」

ルフテは興味深々で聞いてきた。


「あれか?あれは儂の昼飯じゃよ」


「昼飯…いっ、一体何を食べようとしていたの?」

ルフテは恐る恐る儂に聞いてきた。

だから儂は自信満々に言った。


「昨日買った超激辛ハンバーガーじゃ」

あの看板は魅力的じゃった。

じゃから、つい買ってしまったわ。


「…」

…ん?

みんなして、なぜそんな目で見てくるのじゃ?


「なんで持ち歩いているの!?…もしかして、辛いの好きなの?」


「いや、むしろ不得意じゃよ」


「なんで買ったの、そんなの…?」


「ふふん、ただの好奇心からじゃよ」

研究者の性ってやつじゃ。

うん、しょうがないな。

だから、もうそんな目で見ないでくれ。

こら、後ろの2人もじゃ。


「うん!この世界にはいろんな人がいるからね!」

ルフテめ、上手く締めたな?


「ところで、ルアナはどこにいくつもりかい?」

アインは気を切り替えて儂に聞いた。


「冒険者の街、ランゲートじゃよ」

儂も気を切り替えて答える。


「ならもうすぐだ。ほら、そこに見えるだろう?」

そうしてアインは東を指差す。


「!…本当じゃ」

儂はじっと東を見る。

そこには辺境ながらも、栄えた街が悠然と構えていた。


「僕らもランゲートに行くから、途中まで一緒にどうだい?」

それはありがたい提案じゃな。


「うむ、よろしくなのじゃ」

儂に断る理由はないからの。

…変なことが起きぬ限りじゃが。


そうして、儂は新たな縁と共にランゲートへと向かった。

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