4話「表現の魔法」③
体に膨大な魔力が駆け巡るのを感じる。
この感覚、懐かしいのじゃ…
制限をして数日だというのに。
だが、これなら十分じゃ!
「アトラ、見ておれ!これが魔法じゃ!」
儂は戸惑うアトラに向けて声高らかに宣言する。
さあ、魔法ショーの幕開けじゃ!
儂は腕を高く上げ、指をパチンッと鳴らす。
次の瞬間、儂の周りに4つの大きい水球が出現する。
さあ、役者達よ。
儂に合わせるが良い。
儂は指揮者のように手を動かす。
その動きは軽やかに、喜びをもって。
水球は指揮に忠実に応える。
4つの水球は分裂と融合を繰り返しながら、鮮やかに宙を舞う。
光によって淡く輝き、風によって穏やかに揺れる。
辺り一体は、まるで別世界のようであった。
まだまだ、いけるじゃろ?
宙に浮かぶ水球は崩れ、地面に溶け込む。
次の瞬間、儂を中心に水の花畑が広がる。
もっと、大きく、楽しくいこう!
水花の煌めきから、蝶が世界を彩るように羽ばたき始めた。
「おいで」
儂はそっと手を前に出す。
すると、水の蝶が1匹、寄り添うように止まった。
さて、アトラは…
「うぁわ…可愛い。って、来すぎー!」
ふふっ、好かれているようじゃな。
アトラは多くの蝶に囲まれながら、笑っていた。
アトラの可愛い姿をもっとみたいが、次に行くとするかの。
儂は、そっと手に止まる蝶を飛び立たせる。
さあ、次はカッコよくいこうかの。
蝶は1箇所に集まり、再び悠然と漂う水球となる。
そして、水球は大きく弾け、美しい翼を持つ一羽の鳥になった。
鳥は大空へと飛び出す。
まるで風のように、世界を自由に飛び回っていた。
水だからなせる自由さを持って、水球は変幻自在に変化していく。
そこに敵意も高尚さもない。
ただ純粋な喜びがそこには広がっていた。
「…すごい」
アトラは目を輝かして儂の魔法を見る。
しかし、魔法はこれで終わりじゃない。
魔法は鑑賞するものじゃない。
表現するものじゃ。
華麗に飛び回る鳥は地面に急降下し、そのまま消えていった。
時が止まるように、一瞬の静寂が場を支配する。
「…顕現せよ、青龍」
次の瞬間だった。
地面から1匹の荘厳な龍が現れた。
水の龍は天へと昇っていく。
そして、天へと昇った龍は宙を一回転し、空に大きな水の花を華やかに咲かせて、散っていった。
美しく咲いた花は大地に優しく雨を降らせる。
世界は美しく輝いていた。
…むぅ。
「アトラ!いつまで呆けておるのだ?」
儂はアトラの前に転移をして、口が開いたままのアトラの手を掴む。
「わぁっ!ルアナさん!?」
「さあ、次はアトラの番じゃよ!」
そして、ふんわりと二人で岩から降りる。
「えっ、なっ、なに?」
アトラは状況を飲み込められなかったようだった。
物凄く、困惑しておった。
だが、ここからが本番じゃ。
「魔法はどんなものじゃ?お主の魔法を見せて欲しいのじゃ!」
畏怖するものかもしれない。
まだ憧れかもしれない。
今のアトラはどう思ってるのじゃろうか?
「わっ、わかった…!」
さあ、アトラはまだ魔法が嫌いなのじゃろうか?
「お願い水球、出てきてっ!」
アトラは魔法を発動しようとする。
アトラの声だけが虚しく響き渡った。
…魔法が答えることはなかった。
じゃが、儂は小さく光った希望を見逃さなかった。
「やっぱり、私には…」
アトラは肩を落とす。
だが、儂は決して諦めぬ。
儂はアトラと約束したのじゃから。
「アトラ、お主はどんな魔法を作りたい?魔法は常にお主の隣にいる!」
魔法はアトラを見捨ててはいなかった。
アトラの心が魔法を拒んでいた。
「想像するんじゃ。魔法を使うお主を!」
だから、あと一歩。
その一歩をアトラが踏み出すんじゃ。
「さあ、見せてくれ!お主の魔法を!」
「私の魔法…」
アトラは自分の手のひらを大きく広げて見つめる
「私はルアナさんみたいに自由に魔法を使いたい!かっこいい姿になりたい!魔法を楽しく使いたい!」
アトラは吹っ切れた様子でだった。
そして、アトラは優しく守るように手を前に出す。
「さあ、一緒に遊ぼう。水球!」
次の瞬間、アトラの手のひらには小さいながらも確かに水球が現れた。
「…やっ、やったぁ!ルアナさん、魔法っ、魔法が!」
アトラは青空のように澄んだ笑みで、幸せそうにはしゃぐ。
その想いに応えるように、水球はきらきらと揺れていた。
…ん?
「ルアナさん!水球が!水球が止まらない!」
魔力暴走じゃな。
水球はどんどん膨れ上がっていた。
「大丈夫じゃ!儂に任せるのじゃ」
アトラの頭を軽く撫でる。
…よし、暴走は鎮まったな。
あとは、このデカい水球だけじゃ。
「さあ、来るのじゃ」
儂は水球の支配権をアトラから奪う、
そして、巨大な水球をグッと縮めて、上に放つ。
次の瞬間、水球は無数の花となり虹を作り出した。
「綺麗…」
アトラは目を輝かせて虹を見つめる。
「そうじゃろう?これが魔法じゃ」
儂は虹を見ながら、小さく笑った。




