4話「表現の魔法」②
「こんにちは!私はアトラ。急に話しかけてごめんなさい。でも、聞きたいことがあるの!」
目の前には儂を見下ろす形で、アトラが申し訳そうにしながらも、強い目で儂を見つめていた。
「こんにちはじゃ。儂はルアナ。アトラの予想通り魔法使いじゃよ」
儂は隠居のススメをしまいながら答えた。
「あのルアナさん!私に魔法を教えて欲しいの!」
力強い声でアトラは言う。
「そうなのか。理由を聞いてもいいかの?」
教える立場として、この上嬉しいのとはないのじゃ。
アトラは少し困った様子で答えた。
「実はね、私。来週からヴァルティール大学付属学校で魔法を学ぶの。それで、きゃっ――」
いきなり体がぐらりと揺れる。
立っていたアトラはバランスを崩していた。
「よっと」
儂は少しだけ身体強化をかけてから、転びそうなアトラを腕で支えた。
ふぅ、危ないところじゃった。
「大丈夫かの?」
怪我をしてなければいいのじゃが。
「はっ、はい。ありがとうございます」
アトラは少し照れた表情でそう答えた。
「すまねえ、車が大きな石を踏んじまった!確認するからお客さんは外で待っててくれ!」
馬車の先頭から申し訳なさそうな声が聞こえてきた。
「さ、降りるかの」
儂はアトラの腕を掴んで馬車から降りた。
――
「で、どうして教えて欲しいんじゃ?」
儂とアトラは小道からそう離れていない岩に座っていた。
「私、魔法がまったく使えないの…。だけど、12歳以上は学校で魔法を絶対学ぶでしょ?だから、入るまでには使えるようになりたくて…もちろん色んな人に聞いたよ。でも、だめだった…」
アトラはだんだんとトーンダウンしていった。
もの凄く悩んでいるんじゃな…
「なぜ使えないか、お主はわからないのか?」
「わかんない。前まで魔法に憧れてたの。でも今は、魔法が使えなくて、友達に馬鹿にされて、魔法が嫌になったの…」
アトラの声は徐々に震えてくる。
「なるほど…それは辛かったのお。憧れに見捨てられて、周りからはどやされる。よく頑張った」
儂はアトラの頭を撫でながら、優しく慰める。
魔法が嫌い、か…
じゃが、原因はこれだけではないはず。
儂は軽くアトラの魔力を見てみる。
…なるほどな。
アトラを纏うのは、綺麗な銀色。
魔力も多く、魔法適正も高い。
だか、それが仇となったか。
「だが安心しろ、アトラ」
儂はアトラの手を握り、静かに言う。
「お主は必ず魔法が使えるようになる」
アトラが魔法を使えない理由はわかった。
ならば、儂にできるのはたった一つだけじゃ。
儂はひょいっ、と岩から降りた。
アトラは勇気を出したのじゃ。
その勇気に応じないわけにはいかぬ。
だから、儂は簡易制限をそっと解いた。
「儂に任せるがよい!」
涙を浮かべたアトラに向けて、儂はニヤリと笑みを浮かべた。
次回投稿は
明日 2026/06/20
12:40ごろ
4話「表現の魔法」③
です。




