6、初商談
お祖母様に紹介いただいて、王都でも有名なサロン・モ・デデールナへ行くことになりました。
はじめての交渉なので、一緒にお父様、護衛兼従者のケンタナスとメイドのサリーです。おじい様も行くといってくれましたが、何かお父様と話して、とてもくやしそうに諦めてくれました。お仕事なのでしょう。
ケンタナスはお父様が貿易商経営時代にスカウトしたそうで、護衛もばっちりの三児の父です。強そう、というより、パワフルなおとっちゃん!大工の姿が似合いそうな護衛です。
「エリーナはすごいなぁ。8歳から交渉にいくなんて。お祖母様のご贔屓のお店だから大丈夫とは思うが、心配だなぁ。。」
頭を撫でながら褒めてくれます。嬉しいですね。
「大丈夫ですわ!お祖母様のご贔屓様で、すでに話もしてもらってるのですから」
あ、貴族だけでなく平民向けにも、ちょっとしたおしゃれで変化があればいいわね。
*****
「あなたがキュリア候爵夫人の孫娘さん?」
「はい。カスティナス男爵家が娘、エリーナ・カスティナス・ルートンです。よろしくお願いします。」
「よしなに、可愛らしい孫娘様。早速ですが本題に。下着についての新しいアイデアがあるとか?」
「はい。馴染みのないものであると受け入れまでに時間がかかるかもしれないので、まずはいまあるもののアレンジの案をお話させていただきますわ。普段お店で商品や使用している一覧をお渡しくださいませ。」
お祖母様のおっしゃる通り全部白い下着です。少しクリームがかった色もありますが、可愛さはゼロです。機能性を求めているんですね。前世に見た可愛い下着を思い出しながら、フリルやレースの位置を話していきます。
店員さんの目がギラギラと興奮しているのが伝わります。流行らせる順番も、指示です。
最後はお祖母様の分を具体的にチョイスです。
「色は薄いピンクね。」
「ええ、これだけの可愛さがあれば、色の変化も良いですねぇ。」
「色のピンクはお祖母様の分だけです。特別仕様ですわ。あと、最初は白で売ってくださいませ。その後、パステル系の白に近い優しい色ですね。変化させて、赤とか黒のセクシー系で攻めていきたいのですが。」
「…売れますね。イイ!イイですよ!」
「…ええ。期待していますわ。」
さて、メイドのサリーの反応は。
「私も一着買っていきます。全財産はたいても!」
いや、まだできてないから。というか、やはり高いか。
「私どもの経営している平民向けのお店がありますが、流石にこれは高いですね。」
「平民向けの下着もアレンジさせてくださいませ」
主にサリーのために。店員さんも力強く頷く。
「では、契約を。ブランド立上げますので、ブランド名、決めていらっしゃいますか?」
「そうですね、『モーア』はどうでしょう?」
「良いですね。西の連邦国で使われてる公用語でしたか。
かわいいの意味ですよね」
「さすが、分かっていらっしゃる。」
にやりと笑う私達。そう。考えてきたのは展開したときに広がりやすい言葉。日本で英語の言葉で名付けたりしてるのと同じね。世界へ繋がる気がします。西は開放的な感じだから下着文化も受け入れやすい。将来的な展開も見据えてのブランド名“モーア”です。
「報酬の割合とデザイン料として、これくらいでいかがでしょうか?」
お父様がやっと乗り出します。今まで空気でしたね。
「ふむ」
嬉しさを隠すように、頷くお父様です。思った以上の好評価みたいです。
「ええ、妥当な金額です」
私も見ました。報酬は売上の1割、デザイン料が一回きりなのに高額。売上に交渉の余地ありかな?
「ブランドですから売上4割できません?」
「ええ!それは流石に無理があります。」
「次回デザインからデザイン料いただきません。」
前世の下着を真似てるだけだしね。
「…承知いたしました。契約書を作成いたします。」
やったね!
「良くできたね。落としどころも納得のいくところだよ。」
お父様にも褒めていただき大満足です。帰っておじい様にもたくさん褒めてもらいました。
さて、お祖母様の下着完成連絡を待ちましょう。
かわいい、それだけで許されることもありますよね。




