5、かわいいは正義
私の先生はおじい様です。読み書き算数はすでに叩き込まれてます。前世の知識入れたら算数は問題なさそう。
ただ、貴族としての嗜みをしらないので、お父様のお母様、候爵家のお祖母様に教えていただくことになりました。お母様の亡くなった今、デビュタントと同時に私がお父様と貴族のやりとりをするつもりです。
弟が成人するころには領地経営を引き継いで領地でひっそりのんびりしたいです。おじい様は私が貴族社会の魑魅魍魎が跋扈する混濁の中へ(おじい様がそう言った)行かせたくないと、苦労するのが分かっておるのに。と泣きながら反対しました。男爵家は一応貴族の端くれですから、貴族の通う学校へも行きます。その時にお母様がいないことの世間の目を考えてもちゃんとしたいと話をし、認めてくださいました。
おじい様。最近…お母様が亡くなってから、涙もろくなってる気がします。心配です。
さて、レッスンは王都のお祖母様のお屋敷に通います。前世の数合わせたらもうすぐ三十代だもの。もうベテランね。
・・・すみません。舐めてました。
前世は平民、出るわ出るわ貴族のルール。おじい様に習っていたのなんて付け焼刃でしかない。
「頭が高いわ。顎をひいて。背筋は伸ばす。…そう。それが一番キレイなカーテシー。覚えておきなさい」
今日はお祖母様のレッスンデー。ゴテゴテのドレスはまさに社交界の戦闘服。金髪をキツキツに結い上げてカーテシーの練習です。
淑女とは…深い。下半身がプルプル振るえてる。ま、私八歳だから大丈夫。たぶん。
成人は十二歳。貴族も平民も同じで、それぞれお祝いがあるそうです。貴族はデビュタントもあり、夜会デビューとのことです。夜会や、お茶会での情報交換もあります。経済を動かすのはこんな人たちなんでしょう。
私は後四年後。素敵な淑女を目指します。
というか、お祖母様、ちょっと細かすぎませんか??小指の位置や、肘の角度って。わからないです。優雅に見える姿、奥が深い。
「今日のレッスンはここまで。お茶にしましょう」
お祖母様の一言で一斉に動く侍女さん達。
そうです。メイドではなく、侍女さんがいるんです。しかも一人ではないです。候爵家でも安定してくるとこの規模だそうです。優雅ですね。
今日の紅茶の銘柄や、お菓子についてもきっと教えていただきます。このような経験を積むことが大事とお話してくださいました。
「今まで孫達にも教えてきたけれど、あなたが一番筋がいいのよね。もっとできるはずと期待している分、厳しくしているから嫌われていないか心配しているのだけれど」
これ、この貴族の会話。期待してると褒めているけれど、実は建前の言葉で、厳しくしているのがごめんねの意味なのか、表面だけの意味で理解して喜びたいですが、そうなると期待してるに答えていない気がして、そして嫌われてるに対しての返答もしないと後に響く、なんと悩ましい。
ここは
「お褒めに預かり光栄です」
とりあえず、ありがとう!でどうだ。
「あら、本音ですわよ。おホホホ」
あ、普通に褒められてた。
てか、やっぱり厳しくしてるんかい!
「顔に出てますわよ。ニヤニヤしたあとに厳しいの私だけー!ってフフフ。エリーナがお父様のお手伝いができるのはまだまだ先ね」
むむむ。悔しいがその通りです。淑女たる者、無暗に表情を見せてはいけない。精進します。お祖母様。
今日は王族に会う時の正装スタイル。ゴテゴテのドレスを初めて着ました。が、中の下着について聞いてみたいです。はっきり言って、かわいくないんです。
「お祖母様、私初めて正式なドレスを着ましたが、中に着るものはお祖母様も同じなのでしょうか?」
「そうねぇ。サイズ以外は色も形も変わらないわ」
とのこと。白、1色ね。
「ドレスのようにフリルがついたりは」
「ないわね。見たことないし、考えたこともなかったわ」
お祖母様、何やら考え始めたようです。
「でも、別に必要はないのかしら?」
「お祖母様、かわいいは正義ですわ。ドレスだけではないのです。すでに小物も含めて、自分の武器として身につけなさいとお祖母様にご指導いただきました。身につけるもの、すべて、であれば中に着るものも、もちろんですわ。挑戦する価値があると思いますの」
「…かわいいは、正義」
理解を得て、お祖母様御用達のドレスや小物のお店と共同開発したい。
「お祖母様にお借りしたこちらのドレスのお店教えていただけないでしょうか?とても素敵な仕上がりですし、相談してみたいです」
「…出来上がりは私も立ち会いますわ。孫娘のブランドになるかもしれないですものね」
にやりと微笑む。分かってくださったようです。
お祖母様はイケ女です。ヒーロー的なイケメンが不足してますね。




