41、暴動
夜に走った道をまた飛ばします。と言っても、夜より人通りが多くて時間がかかります。暴動の情報も飛び交うようになってきました。
権利の塔、裁きの塔への同時襲撃のようです。キース様はどちらにいらっしゃるのでしょうか。
私は捕まえた彼を乗せたカクさんから裁きの塔へ行くように勧められました。そうよね。ここまできたんだもの。覚悟を決めましょう。
「しっかり裁いていただきましょう。」
「権利の塔の最新だ!連邦政府は南の自国ハンナン州の権利を守る立場を示した!」
埃っぽい公園へ近づくと、誰かが叫んでます。
ナムさん達は交渉できたのでしょう。これで、こちらの関税は上がりますが、不満は解消されるようです。権利を求めてのこちらはおそらくちゃんとした人間が聞けば大丈夫と思ってましたから。キース様の信書が役に立ったのでしょう。話のわかる人に繋がる伝手は大事です。
私達は徒歩で裁きの塔へと向かいます。馬は公園の近くに停めました。あちらが片づいたのであれば、ちょうどキース様は裁きの塔にはいらっしゃらないでしょう。
ドーン!
地響きが続いている現場へ向かうと、ドアを蹴破ろうとすでに大きな振り子が入口を塞いでいます。怒号が飛び交います。
「西の豊作を隠蔽してたんだ!」
「俺たちが西の豊作を知らなかったと思っていたのか!」
「そうだそうだ!」
「こんな中央クルミナ州なんてクソ野郎だ!」
「裁きをうけろ!」
ヒートアップして民衆がうねりを上げています。
裁きの塔には誰かいるのでしょうか。騒々しい中、裁きの塔の中だけが静まり帰って逆に怖いです。
「やばいね。この中にキースさんの想い人連れて来た俺、殺されるかも。」
さすがのカクさんもここまでは予想していなかったのでしょうか。すでに神官は怯えて震えています。あ、気絶しました。
「さあ、どうしようか。あ、ドアが開くみたい。」
ざわめく民衆です。それもそのはず、ドアは内側外に向かって開きました。
「おはようございます。準備は整いました。どうぞ訴えたい方は並んでください。」
空気読まずに言い切りましたね。広場は一瞬静まります。
「では、訴える。ロックス州は、西のウーガル州の収益を不正に隠蔽した中央クルミナ州及び連邦政府を訴える。さらに収益が上がったにも関わらず、ロックスでの農業機械の工業収入は変更なく、三割減で製作させられていた。不正の売上げの計上精算を西のウーガルへ求める。」
暴動のリーダーらしき人が前にでました。冷静な方のようです。
「かしこまりました。事実を精査しますので、こちらへどうぞ。」
戸惑う人もいますが、ぞろぞろと皆さんついていくようです。
「我々も参りましょう。」
カクさんが神官を担ぎ先を促します。
塔の中は白を基調して、ホール状になっています。舞台のような場所に壇上があり、他は傍聴席のようです。すでに傍聴席は人で溢れています。
「証拠はございますか?」
先程と同じ灰色の服を着た方がマニュアル通りなのでしょうが、淡々と繰り返します。
「証拠はお前たちだろ!!」
「ふざけるな!」
傍聴席側から怒号が飛びます。
「…昨年の豊作であるという証拠の資料です。ウーガルの正直な方に善意でお渡しいただきました。提出者の名前は言えませんが。」
灰色の方、僅かに瞠目し、書類を受け取ります。
「精査いたします。」
書類を持って移動しようとしてましたので、周りからまた怒号が飛びます。
「ここで、精査してください。」
「…かしこまりました。専門家を呼んできます。」
グレーの三人と、私達が捕まえた同じ服を着た神官の方がやってきました。
「やってないやってない。俺は指示されて賄賂を受取っただけだ。ほんのちょっとの数字を書き損じただけだ。」
気絶していた担がれた関係者は起きて、ブツブツと自白を始めました。
「舞台にあがらせましょうか?」
カクさんも同じ意見のようです。
「そうですね。お願いします。」
この混乱の中ですから気合を入れて、
「事件の関係者をお連れしました。通してくださいませ。」
お祖母様譲りの高貴な夫人風、ルナタル様の大きな声の出し方を真似てみました。私がそういうと、壇上までの道が開きました。私は猫が剥がれないよう、慎重に歩きます。
「…あなたは?」
先ほど訴えていた方が尋ねます。
「ナムさんの知人です。偶然この人拾いまして、助けになるかと連れてきました」
裁きの間はその後は予想通り進みます。一部の人間が集まってウーガル州の収益報告書を改ざんしていたようです。関係者は報酬返上や減棒になり、農業機械のみかけられていた減額も廃止されました。対等な形での州同士の関わりができるといいですね。ロックス州の労働者状況を改善されることも約束されました。
「ありがとうございます。ナムさんの友人。他国の方とお聞きしました。貴族ですね?」
感謝されましたが、何もしてないです。カクさんが捕まえて連れてきただけですからね。しかも貴族とバレてますので面倒なことになりそうです。
「いやぁ、びっくりですよ。キースさんに見つかる前にさあ戻りましょう。」
カクさんが話ぶっちぎってさくさくと公園へ歩かせます。
「エリーナ!」
あ、すでに見つかっちゃいました。カクさん、逃げます。が、ラクナさんに捕まりました。私はキース様の腕の中です。
「何でいるのかはロクに聞く。帰ろうか。」
はい。帰りましょう。




