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39、予兆

 昨日は夕方に近づく時間でしたから、改めて街並を確認です。店の一つ一つが小さくこじんまりとしていて、屋台のようなお店が多いようです。まずは本屋です。


「観光向けの雑誌はあるかしら?」

「お?嬢ちゃん旅行かい?それならおすすめはこのあたりだよ。」

「ありがとう」

 ついでに流行りもリサーチですね。ふむ。店頭に並んだ本を見ると、まだ女性の告白が流行っているようです。


 この、『モルモット嬢の愛の囁き』は新作ね。お土産に買っていこうかしら。

「俺はエリーナの愛の囁きが聞きたい」

 キース様は擦り寄ると私の首筋の匂いを嗅ぎます。

「…っあっ。」

「…我慢できない。今すぐ宿に戻ろう。」

「駄目です。」

 タイナーさんが止めます。私、流されるとこでした。危ない。すでにモーアを卸しているお店へ向かいます。モーアの下着はそこそこ売れているようです。攻めの下着が人気のようですね。やはり流行に左右されるのでしょう。


 海外製品を主に取り扱うこちらのお店は、見たこともない物が多数並んでます。暑い地域での水着に、透けた素材をふんだんに重ねたドレス、次の新作にしましょう。お土産も買いたいですね。

 自己紹介をして、服飾店へ市場調査し、連邦政府運営の商会センターへ向かいます。三階建ての商会センターで海外出店手続きをしてくださるそうです。まだ視察ですが、先に予約もできるそうなのです。キャンセルもできますし、予約だけしちゃいましょう。ついでにモーアの出店の見積書が出来上がるのを待ちます。出てきた書類にキース様が一言、

「海外の関税が低すぎないか?」

「そうなんですよ。これで、最近では地元の商業が不満が溜まって、特にスパイス系の商業が盛んになってきている南の州らへんはきな臭い動きをしてるそうです。モーアは飲食ではないので直接は関係ないですが、政府との交渉次第では関税の免税率が下がるかもしれません」

「交渉はしてる??」

「はい。たしか、スパイス・カナムのナムさんが中心となって交渉してますよ」

 暴動の気配どころか、すでに交渉に入ってるみたいですね。

「…ナムさんね」

 キース様、気になることがあるのでしょうか。予約したあとは州の真ん中、連邦本部へ行きましょう。観光ですね。一旦宿へ戻り、明日からまた出発です。



「北の工場は?」

「すでに中央へ西の企てを暴くために計画してるそうです」

「…重なりすぎだろう」

「そうですね。これはまずいことになってますね」

「もともと北の農業機械工場からきた不満だろう?豊作をちょろまかした西のウーガル州はまぁ裁かれるとはいえ、南はちゃんと交渉してるみたいだし」

「そもそも北の農業機械の利率割合を決めたのが中央ですから不満はあるはずです。西の農業発展のためにと交渉した結果ですが、今の西側の豊作状況を鑑みると、中央への恨みもやむ無しでしょう。重なれば中央へ暴動が集まります。組合えば暴動へと繋がりかねません」

「ナムさんがすでに北と接触していたらまずいな」


「『隠密・ロク』によるとすでに中央の連邦本部州に集まっているそうです」

「…とりあえず、エリーナを愛でてくることにする」


「ほどほどに、キース様。タイナーはなかなか、守りが硬いようですよ」

「大丈夫、今日はちょっとだけいつもより眠りが深くなるはずだから」

 仄暗い笑みを交わす男二人を私は知りません。


「・・・ん」

 目覚めると黒髪が、見えます。

 ・・・なぜ、ここに??添い寝のキース様。

 私、何もされてませんよね?すかさず着衣を確認。乱れてません。

「タイナーには少しだけ強めの寝酒を用意したんだ。もう少しだけこのままで。」

 ぎゅっと抱きしめられます。キース様の匂いがいつもより近いです。腕枕されたままモゾモゾと動こうとしますが、はなしてくれません。


「今は何もしないよ。もう少しだけ、、、。」


 目を閉じてしまいました。眠ってしまったキース様ですが、離してくれませんので、私も諦めてウトウトとしてしまいます。


「…」

「…おはようございます。もう、事後でしょうか?お召し物を。」

 ちょっと待って!タイナーさん!違います。誤解です!

 必死で事後でないことを説明しますが、既に添い寝のこの状況を言い逃れできません。


「エリーナ様の乙女を守れなくても、それで咎めることはないとは言われてましたけど、不甲斐ないです」

 ショックで蒼白な姿のタイナーさん。


「いや、こっちはギリギリで我慢してるんだから、まあ、そういうこと言うってことはもしかしたらアリなのか?」

 起きたんですね。キース様。


「キース様、ナシです。僭越ながら、初夜を大切にされる思いがあるのであれば、こんな旅先ではなく、せめて、ロマンチックな夜にしていただかないと、こちらも準備は頑張らせていただきますので」


「…初夜の囁き」

 そうよ!下着の新作を思い付いたわ。

 乙女を着飾る清廉でいて、可愛らしいけれどどこかさり気ない卑猥さ、、、

「タイナーさん」

 スケッチブックをすかさず渡してくださいます。

 朝からいくつものデッサンを描きまくります。

 ノリノリの私は昼まで無我夢中で、出発が遅くなってしまいました。


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