36、プロポーズ大作戦
「ユーリア王太子殿下、私、お話がありますの」
「すまない」
え!!ちょっと待って!!何で謝るの!?話もさせてくれないとか、どういうことですの?!戦う前から玉砕??
泣きそうになったルナタル様は後ろを振り向きその場を立ち去ろうとします。慌てた殿下は思わず、
「ルナタル!!」
大声での声掛けになりました。ルナタル様は硬直しました。ホールも殿下の大声でシーンと静まりました。みんなが注目してます。
「…ちょっとまってくれ。うまくやるのは難しいな。でも俺はこんな時くらい、かっこよくいたいんだ。もう、すでにかっこ悪いとこいっぱい見せてるけど。君がすきだから、一緒にいたいんだ。振り向いてくれないか?」
王子様の笑みで、跪きます。手には指輪です。
ここからは私が提案した通りの流れになるようです。
おそるおそる振り向いたルナタル様が、驚きで口を開けたまま、殿下を見つめます。びっくりしますよね。跪いて、見つめられてたら。
「これからもずっと私の隣にいてほしい。この指輪と共に永遠に愛することを誓うよ。ルナタル。結婚しよう。」
あれ?婚約指輪でしたけど、勢い余って結婚って言っちゃいましたね。
「……」
そして、こっちは返事がありません!!感極まって涙で声が出せないようです。そこは気合で、『はい』でしょう!
ルナタル様、頑張って!!
今までの想いを伝えるって言ってたさっきの勢いはどうしましたの?
私達と偶然目が合いました。さっき頷いたのを思いだしたのでしょう。ここで答えなきゃ女が廃る!勇気を送ります!ルナタル様!
「…はい。私も殿下をお慕いしております」
私の中で鐘がなりました。はい、指輪の交換です。
最初からリングケースも二つ入るように特注です。ルナタル様の指輪は緩やかにウェーブした曲面が柔らかな印象を出し、小さめダイヤを五つ彫り込み入れました。殿下の指輪は同じように緩やかに波うってますが、こちらはダイヤは内側に一つ。シンプルさを優先したので、見えないところにダイヤです。ルナタル様の指輪は重ね付けも想定し、ダイヤを小さめに散りばめました。さらにそれぞれに殿下のコメントを刻んでもらってます。何を刻印したのかは後でルナタル様にお聞きしましょう。
「手を出して」
ルナタル様の指にピッタリです。
「私にも」
少し戸惑いながら、ルナタル様、殿下の指輪を殿下へ。
ニヤリと微笑み、
「お揃いだ。共に生きよう」
自然と起こる拍手。感動しました。結婚式のようです。
プロポーズ大作戦、大成功ですね。
*****
お揃いのリングが売れに売れて困ります。
モーア、アクセサリー部門ができました。下着部門、ドレス部門、あとはカバン関係の雑貨部門、ニコバッグが悔やまれます。
「エリーナ、私達の指輪はいつかな?」
「そ、そそそうですね。キース様の卒業式でしょうか?」
実際待ちが多くて来年までの予約をしてます。プレッシャーですね。
卒業後の私は男性からのモーアの指輪発注と卒業パーティのドレスを見たご婦人からのオーダーの連打に追われて、一ヶ月ぶりの休日となりました。
「なかなか会えなかったね。ぜんぜん捕まらないんだもの。寂しかったよ」
今日はキース様のタウンハウスです。二人がけの椅子にあと一人座れるのではないかと思うほど、キース様が体を寄せてきます。私も久しぶりのキース様の香りにドキドキがとまりません。
「私も、会えなくて寂しかったですわ」
お互いをぎゅっと強く抱きしめます。
「早く結婚したい」
「それは無理ですね」
さっと入室しましたのはキース様のお母様です。慌てて姿勢を正します。
「王家に仕える貴族として、結婚のタイミングはできる限り見計らった方がよいと思うの」
「母様、それなら二人目の子供でタイミングを合わせて、エリーナが経験者として王太子妃を支える考えもあります」
「だとしても、あなたはまだ学生でしょう。せめて卒業まであと二年は待ちなさい」
「結婚、せめて書類だけでも先にお願いします。世間体を考えて、成婚式は卒業後にします」
「…お預けが長すぎて暴走されても困るし、もしかしたらエリーナさんは他国からの輿入れ提案もあるかもしれないし、高位貴族なら先に手を打たないと不安よね。切り札として、書類上は夫婦。ありかもしれないわ。キース、絶対に卒業までは最後までしないと、誓いなさい」
「ありがとうございます!!結婚だ!エリーナ!」
怒涛の展開にちょっとついていけません。
結婚?するみたいです。
式はキース様の卒業後。それまで秘密の結婚です。
その後はお父様、おじい様、領地から急ぎべルートも駆けつけて両家で話し合いです。他国へ急に行くよりは、その選択しかない。二人、好きあってるし。という、概ね前向きな形で話し合いが進みました。キース様のお母様とお父様の熱弁に圧倒されて、あっという間に手続きが終わりました。
キース様の卒業まであと二年です。その後弟が成人します。
領地経営のお手伝いしながら、変わらず忙しい日を送りますが、キース様と一緒にのんびり過ごす日を目指して邁進しましょう。
お読みいただきましてありがとうございました。




