35、卒業パーティ
「―――何度も申しますが、領主夫人の仕事は跡取りを残すことが他とは異なります。ここでは夜の儀についての工夫をお伝えします。」
もうすぐ家政科の授業も終わりを迎えます。コースを選択し、女主人、侍女、侍従、執事などの実務研修です。夜の説明はさすがに実務はありませんが、女性だけで恥じらいもみなさん忘れてきたのか、質問もなかなか具体的で破廉恥です。
「エリーナ様は婚約されてますけれど、すでに夜の儀のご経験は?」
アリーナ様、ズバッと聞きますね。アリーナ様は長期休暇中に婚約されたそうですから気になるところなのでしょう。
「まだです。成婚まではされない方がほとんどとお聞きしましたわ。」
「そうよね。婚約破棄が流行りだしてから控えてる方もいらっしゃるようだけど、昔は婚約したあと、子を成してから成婚っていう時代もあったそうよ。」
「それだけ跡取りの厳しい世界ってことよね。」
相変わらずニコバッグメンバーで仲良くしてます。あと一週間で卒業式となりました。お泊り会も卒業後に計画中です。
恋バナで盛り上がりそうです。
そして、本日昼から久しぶりのロイヤルガーデンへお呼び出しです。モーアのデザイナーとしての呼び出しですので、指輪が完成したのでしょう。
「ありがとう。満足のいくサプライズプレゼントになりそうだ。」
「お気に召していただき恐縮です。」
「そちらの首尾は?」
「上々でございます。」
「うむ。善きに計らえ。」
「はっ」
「…何してるの?」
キース様が突っ込みました。一度やってみたかったんですよね。できる部下っぽいシーン。
「殿下の聞き方でつい。」
「いや、令嬢がどう切り替えしてくるかなと。」
殿下、悪乗りしましたね。まぁ実際計画は順調です。
気になるのは逆プロポーズがあるかもしれないと言うことですね。これはサプライズのサプライズで殿下にまだ報告しておりません。報告はルナタル様はちゃんと殿下自身への想いがあります。内容は本人に後から聞いてくださいということでまとめましたから。サプライズにサプライズをぶつけたら、何が起こるのでしょうか。人の恋路だからでしょうかこのエンターテインメント感。お互い惹かれ合ってるのがわかる分、私の胸が踊ってます。
「…相変わらず分かりやすいね。キースの婚約者は。エリーナさん、ルナタルをこれからもよろしくね。」
「…!」
はぅ!ルナタル様を呼び捨て!!幸せオーラに当てられた気がします。これはキュン死にしないかしら。ルナタル様。
「…こちらこそよろしくおねがいします。」
さて、いよいよ迎えました卒業式。
両親も参加しています。無事に卒業式を迎えました。お父様の横は相変わらず空席ですが、お母様、見てくださっていますよね。今日はコバルトブルーのアクセサリーです。お母様。私、今、幸せですよ。
キース様は式には参加されません。この後の卒業パーティからです。荘厳で静粛に行われた卒業式のあと、ざわざわと立食パーティが始まります。
今年の流行は婚約破棄ではなく、女性からの告白が多いようです。ルナタル様は深い暗めの赤ドレス、紫髪のスハラット伯爵ご令嬢は鮮やかな青いドレスです。どちらも気合が入ってます。私はルナタル様が赤と聞いていましたので、(少しアドバイスもしました。)ミントグリーンで涼やかに決めました。
「ごきげんよう。この空気、私も告白しようと思っちゃいます。」
ピンクのAラインで、後ろに大きなリボンがアクセントの本好きフローリア様がいきなりぶちまけます。
「ごきげんよう。確かにこの空気から勇気をもらって自分から告白へいける気がしますわ。フローリア様、頑張って!」
アイリーン様は水色の髪をあえてハーフアップにし、黄色のドレスでシックなマーメイドタイプのドレスです。こちらも似合ってますね。
「ごきげんよう。フローリア様、意中の方、あちらに見かけましたわ。」
カスリン様は薄い水色のドレス。ああ。この色全部揃ったら、ヒーローが赤の前世のアニメを思い出します。緑役が黒か白のバージョンもあります。
自然に集まる私達。もちろんルナタル様もいらっしゃいました。
「ごきげんよう。モーアのデザイナーがそれぞれにアドバイスされて、皆さんのドレスが今話題に上がりっぱなしよ。エリーナさん。」
「ごきげんよう。ルナタル様。ドレスは夜会の武器であるとお教えいただきましたもの。本日の皆様戦いの準備は万端ですわ。」
「・・・確かに。今日しかないわね。行ってきますわ。」
おお!勢いですね。頑張ってください。フローリア様。
さて、王太子殿下は、、、あわわ。青ドレスです。スハラット伯爵が家族でご挨拶中ではないですか。どんな話してるのでしょうか。あ、キース様が近くにいらっしゃるので後で聞いてみましょう。
「何話してるのかしら。」
「気になりますね。」
「婚約の話をしたりするのかしら。もともと、政略結婚でも利益がある3人で選ばれているんですもの。スハラット伯爵のご令嬢は口が悪いのは知ってるかもしれないけれど、それ以外は特にいじめてるとかの悪役令嬢っぷりはないものね。」
「決定打がないだけで中途半端に引き落とせない。」
「充分意地の悪い悪役令嬢だと思うけれど。」
私達の話を聞きながらため息をつくルナタル様。
「同じように悪口になってはなりませんわ。私は悪役令嬢ではないですもの。」
「…そうですね。素直に、お伝えするのが一番よね。殿下への想いを。」
カスリン様が背中を押します。
どうやら、王太子殿下より先にルナタル様が想いを伝えるようです。
両親に伝えて、小さくうなずきました。ルナタル様のお母様はにこやかに送り出したようです。ルナタル様のお父様は心配そうにそわそわしてます。
私達を振り向き、大きくうなずきました。
ちょうど挨拶が途切れたのを確認して、ルナタル様が動きます。




