33、領地と私
授業のまとめも終わり、いよいよ長期休暇スタートです。もちろん領地へ戻ります。ルナタル様は王都にでいくつか夜会に参加したあと領地へ。他の皆さんも前半領地で後半夜会など、領地への挨拶と夜会でバランスを調整しているようでした。一年生の時は考えもしなかったですね。領地のことばかりでしたから。
私も今回は早めに王都へ戻って夜会へいくことになってます。ルナタル様と一緒の方が安心なんですが、今回は婚約者として、キース様と後半の夜会へ参加です。領地ではご一緒できませんが、迎えにきてくださるとこのこと。楽しみです。
去年の領地はキース様と一緒の思い出がたくさんあります。今年は弟べルートがいるので、べルートと一緒に思い出をたくさんつくりましょう。
今回も、五日間をかけて移動しました。行く前にキース様の領地へ寄ってご挨拶。
護衛二人とメイドのサリーです。護衛の二人は事件のあとすぐに付きました。男の大人が近づくと私の震えが止まらなかったので、離れて護衛してくれてました。最近は少し距離が縮まったような気がします。頼ることも大事とルナタル様に教えていただきましたから。
領地につくと弟が迎えにきてくれました。気になっていた孤児院は弟がしっかり引き継いで経営を立て直しています。前世の知識を単純に映しただけではなく、領地や領民の状況を把握し、バランスを考えて整えるのが大事なんでしょう。オレンズの加工場で直接収入を得ることもできます。託児所はそのまま低年齢の教室になりました。インターン制度はもうほとんどつかわれていません。
成人前の試験の流れが他領によって増えるに伴い、成人前の試験に関して一定の評価が上がり、希望する就職先へのアプローチとして積極的な流れが出来上がったと言われています。
「姉上、昨年のオレンズ祭りの経費のここなんですが、、、」
すっかり身長も伸びたべルートは今年のオレンズ祭りを総監督。私が去年思いつきでやりましたが、今年もすることになったようです。
私はキース様と婚約しましたのでいつかは領地を出ることになります。オレンズ祭り創始者として、毎年戻って来ちゃいましょうか。なんだか寂しくなってきました。
「姉上、卒業後は領地に戻られるんですか?」
「しばらくはモーアの経営があるから、たまに戻って来られたらいいけれど。あと、キース様のタウンハウスと領地で過ごす予定もあるのよ。婚約準備期間として行く予定なの。」
私は先に卒業しますので、あとは領主のサポート実務を学びながらキース様を待つことになりそうです。
「では、領地で過ごすのはこれが最後かもしれないんですね。」
寂しそうに言うものですから
「オレンズ祭りの時には遊びにきたい。」
と、本音が漏れちゃいました。
「たまには戻って来てくださいね!むしろ、キース様から逃げてきてもいいですよ!」
ちょっと食い気味に答えられました。
「そういえば姉上、最近は海岸の北側の岩場から煙がでるところがあるそうなんですよ。見に行きませんか?」
なぬ!?それは温泉ではないでしょうか?ぜひ行きましょう。
岩場を少し歩いたところに湯気らしき気配があります。硫黄の香りはないです。もちろん磯の香りがします。岩の隙間に溜まった海水が温められているようです。ただし、少し熱いようでした。開発しないわけにはいきませんね。岩をどかして入浴スペースを確保しましょう。海水浴の湯治ですね。最高です。やけどに注意して作業していただきます。ついでに簡易の脱衣場も作りました。海側をオープンにして衝立を作り、いざ、入浴です。べルートはこの展開をぼう然と見守ります。
「エリーナお嬢様がまた暴走されてます!」
サリーが屋敷へ連絡したときにはすでに岩をどかしていい感じに浴槽ができました。冷たい海水を引き込むこともできて、ちょうどいい温度になったと思います。大丈夫よ。オレンズも孤児院もなんとかなってるでしょ。
ノリのいい漁師さんたちに適当に小屋と衝立を作ってもらって、脱衣場から下着姿で出た私は岩場の温泉に入ってました。
「はぁ。気持ちいい。」
これは最高です。人数制限されますが、一儲けできますね。ぼーっとしながら考えます。海を見ながらの温泉。あとは美味しいお魚。お酒。
「姉上!出てきてください!」
弟が呼んでます。何でしょうか。
「エリーナお嬢様!!」
脱衣場からサリーが入ってきました。
「サリーも足だけ入っては?」
「…とても、気持ちよさそうですが、今はやめておきます。キース様が来られました。」
ん?キース様?迎えに来るって話してましたけど、早くないですか?
「とにかく急ぎお着替えを。屋敷へ戻りください。」
仕方ない。あとは案をいくつか渡して、べルートに任せましょうね。あの子が領主になるのですから。
「オレンズ祭りを今年は一緒に見ようと思ってね」
慌てて戻るとオレンズクッキーを片手にのんびりくつろぐキース様。
「…で?ほのかに潮の香りがするけれど、私の姫はどこにいたのかな?」
髪にキスして香りを確認されました。別に悪いことはしてないはずなのにイケないことしてお仕置きされちゃう空気です。すかさず説明します。もう、洗いざらい。
「相変わらず思いついたら一直線だね。私も後で入ってみるよ。その前に。」
抱きしめられて、お膝に乗せられます。
「迎えにきたよ。エリーナ。」
囁くキース様が私のささやかな胸元で響きます。急だったので、バランスを取るためにキース様の首に腕をかけちゃったのです。今更外すわけにもいかず、私の顔は今恥ずかしさで真っ赤になってます。
「大丈夫、誰にも見られてないよ。馬車と同じ、二人きり。」
ドアは少し空いてますけどね。
「会いたかったよ。…エリーナは?」
少し離れてお互い見つめ合います。そんな上目遣いで聞かれたら答えるしかありません。イケメンのお願い、弱いんです。
「…私も。キース様。で」
言ってる途中に唇が重なりました。
「『でも、恥ずかしいですわ』、だね」
キース様、にやりと笑います。私は温泉とキース様にのぼせてしまったのでしょう。ポヤポヤとしたまままた軽いキスを受け入れます。リップ音に反応したのか、勢い良くべルートが入ってきました。
「キース様!姉上!婚前交渉はそこまででストップです!」
べルートに止められました。私、温泉で気持ちがゆったりしてたのでしょう。まずはサリーにお水をいただきました。すっきりして、そしてこの状況に固まる私です。急いで立ち上がろうとしました。が、キース様は離してくれません。
「のぼせたのかな?可愛すぎる。」
うなじにスリスリするキース様、くすぐったいし恥ずかしいです。
サリーもべルートももう視線を合わせてくれませんでした。
ごめんなさい。
オレンズ祭りはキース様と回ります。岩場の温泉は祭りの日は足湯として開放されました。二人仲良く夕焼けを見ながらの足湯です。昨年は一緒にいられなかった時間。なんだな急に想いを伝えたくなりました。
「…キース様、私幸せです。これからもよろしくおねがいします。」
「…こちらこそです。愛してます。エリーナ。」
すこしいたずら顔のキース様が、手の甲にキスです。
サリーがべルートを呼びに行き、二人が止まるまであと少し。
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