29、未遂の傷跡
セリナに勇気をもらって、パワーチャージした週明けの午後。いよいよ明後日から、服飾雑貨の授業が始まります。
さぁ、お友達を作りましょう。
と、思ってたんですが、
「足がつくようなことをしたのは貴方でしょ。ヘマしちゃって、良い迷惑だわ」
赤、サラマンマケト伯爵令嬢、謹慎とけたんですね。誘拐もどきで街に放っておこうとしてた人。全然反省してませんね。
青、
「まったくその通りよ!!私なんて、盗娘なんて、通り名つけられたのよ!」
布の盗人を依頼したのはアイラス候爵令嬢。盗娘、なかなかに良いネーミングセンスです。
黃、
「、、、、。」
黙秘ですか、ハーモル候爵令嬢。結果的に私の乙女の純潔を奪おうとした首謀者です。
私から見れば3人ともほんとはた迷惑な信号機でしかないです。近づきたくないです。そろそろと来た道を帰ろうと後ろへ海老下がりすると。
「あらあら、謹慎三人組が集まってまた悪巧み??お盛んなこと。三人揃ったら、また素敵なことでもされるのかしら?今度は修道院かしら。おほほほほ」
仰々しく、大きめな声で話す令嬢が登場です。きっと赤黄青の三人が睨みつけるところにいたのは、
紫の令嬢。パープルヘアーのパープルドレスで、三つ巴の中に乱入です。
「ごきげんよう、サラマンマケト伯爵家のご令嬢。私、ライバルだとはちっとも思っておりませんでしたけれど、まさか、こんな形で婚約者候補から蹴落とされるなんて、御愁傷様ですわ。貴方の親御さんも心配なさっているようで、特にお母様は心労がたたって別邸で愛人と過ごされているとか」
赤、言葉通り、顔が真っ赤に染まります。握りしめた手も、心なしか赤いです。お母さん、愛人のとこから帰ってきてないのですか。
「アイラス候爵のご令嬢は次は何を盗むのかしら?しょぼいいたずらで最近物がなくなることはない?盗まれるなんて、盗娘らしくないわね。お気をつけあそばせ」
青、何で知ってるの。という感じで青ざめた表情へ。
「ハーモル候爵のご令嬢、次はどんな組み合わせをご所望かしら?貴方、いかがわしい本の愛読者とお聞きしましたわ。もしかすると近々、ご自身か経験されることもございましょう。それでは皆様、ごきげんよう」
黄色は青ざめたあとから、表情がなくなり、土気色へ。
紫の令嬢、こちらへ向かってくるではないですか。
あわてて隠れます。
「あら、カスティナス男爵のご令嬢」
「…ごきげんよう、スハラット伯爵のご令嬢」
「今日は貴方の騎士様はご一緒では無いのですね。すでに乙女の純潔はお相手へ捧げましたの?さすがですわね。攫われてからは簡単に足を広げやすいでしょうし」
…私は襲われそうになったあの時のことを思い出し、震えが止まらなくなりました。侮蔑的な言葉に返す戦意もありません。
「ごきげんよう、スハラット伯爵のご令嬢、はしたない発言をなさって、いかがしましたの?同じ王太子殿下の婚約者候補としてお恥ずかしいことですわ」
ルナタル様が私の近くへいらっしゃいました。でも、私はすでにあの時のことを思い出してしまっていたのです。
―――あの時に気を失うことができたら。
―――下衆い笑い声、後ろ首にかかる息。太腿にぞわぞわとした気持ち悪い感覚。めくれるスカート。
何か話してますが全然聞き取れません。
自分の呼吸音ばかりです。震えが止まらなくて、腰にそっと手を添えてくださった時にはぼう然として、そのまま倒れてしまったようです。
目覚めた時には保健室の天井でした。
「・・・・エリーナは?」
「まだ目覚めてないわ。まさか倒れるなんて」
カーテン越しに聞こえます。
「助かった。本人は気丈に振る舞ってるが、あの事件は相当なストレスがかかっているんだ。エリーナと一緒にいたいと思っての謹慎だったが、判断を誤ったらしい」
キース様の声です。そんなことないですよ。貴方と一緒にいるためだったんですよね。私、大丈夫です。頑張れます。キース様。
「今回は間に合ったけれど、ひとり震えて倒れてしまったら、醜聞になってしまうわ。気をつけないと」
「…そうだな。すまない。助かった」
キース様のため息が聞こえます。ごめんなさい。心配かけちゃって。キース様は私が誘拐されてから大人の人が後ろに立つだけで固まって身体が動かなくなることを知ってます。周りからはくっついていつも一緒にいると思われてますが、いつも守ってもらってるのです。情けなくて涙が出てきました。私、お荷物になっちゃいますね。残念なあだ名つけられてますし。本当にごめんなさい。でも、大好きなんです。見捨てないでください。声を堪えて泣きます。涙が止まりません。
「、、、っつ。」
起きた気配を感じたのでしょう、カーテンが開きます。
長くなりましたので2話に分けます。




