10、デビュタント
入学まだできませんでした。
貴族の学園は国家の研究機関も兼ねています。貴族は1年以上、在籍することが決まっています。そこで概ね貴族のなんたるかを、学び、次代へ継ぐそうです。貴族間のお見合いに聞こえます。
初等クラスは11歳から15歳までです。総合授業と、各コースの選択です。その後は高等クラスへ入ったり、領地経営、研究機関へ入ったり、官僚、侍女への道が拓かれます。
私は社交界デビュー後に入学です。お祖母様から頂いたコバルトブルーのアクセサリーに合わせて、私がドレスをデザインをしました。デビュタントは基本白です。モーアのデザイナーとして派手にデビューしまっす。フリルたっぷりの中でも重くならないように下に少しずつ薄い生地で揺れるようにフリルの幅も調整。我ながら素晴らしいです。素敵に仕上げてくれたモーアのメンバーに感謝です。
「エリーナお嬢様、結婚してください」
というのは新しく入った侍女のマイラ14歳。
私が領地にいる間にメイドのサリーを連れまわしてたら、お父様とおじい様が連れてきました。護衛も最近はケンタナスがほぼ専属です。
マイラは昨年学園を卒業した先輩です。候爵家の四女と聞いてます。
仕事はきちっとしてくれますが、たまに私への言動がおかしいです。拝んでますし。
「ありがとう。マイラもデビュタントの経験者よね?」
「はい。私の時は王太子様と一緒でしたので、ご令嬢の気合いも凄まじいと聞いてました。伯爵家のルナタル様と踊っておりましたが二人がお似合いで。―――」
デビュタントお披露目のあとはいよいよ社交界デビューです。王太子もいるのでしょうね。見目麗しいと聞いておりますので、楽しみです。
ドレスの打ち合わせの合間にお祖母様の最終レッスンありました。相変わらず厳しさ満載でしたが、領地生活で鈍っていた姿勢を正せて良かったです。お祖母様のレッスンを糧に、いよいよ王城へ向かいます。
*****
高貴な順で今年12歳になったご子息、ご令嬢が次々と呼ばれます。一人ずつ陛下へ謁見し挨拶し、おじい様達がいる大ホールへ移動します。陛下への謁見。拝礼は最後のレッスンでも褒めていただいたものです。
『エリーナ・カスティナス・ルートン』
いよいよ呼ばれました。淑女たる者、穏やかに嫋やかに微笑み、ドレスが一番美しくなる立ち居振る舞いで向かうのです。
お祖母様に叩き込まれた数々の淑女の技を加えて、淑女の拝礼いたします。
「ルミナス・カスティナス・ルートンが娘、エリーナでございます。」
完璧ね!
「そなたに聞きたいことがある、少しよいか?」
あれ?『あいわかった、今宵は楽しまれよ』ではないの?
何?私、何か?焦りました。ただ、不安な表情を見せては期待してくださったお祖母様に顔向けできないです。気合です。エリーナ。
淑女の拝礼姿勢からぐっと顔をあげます。動揺が見られたらいけないわ。すっと微笑むのよ。
「モーアのデザイナーとは、真か?」
「御意にございます。」
ん?
「なぁに、うちのが気にしておってな。ぜひ描いてほしいと。」
朗らかに笑う陛下です。
隣にいらっしゃるのはもしかして王妃様?私を見つめるウルウルとした熱い視線。失礼ながら、私を褒めるマイラと同じ視線と感じました。不思議です。
お仕事の発注ね。はい。よろこんでまいります。
「お任せくださいませ。」
にこりお祖母様直伝の笑みで答えます。
すでにざわついている周りです。私も驚きました。デザイン発注です。
「うむ、今宵は楽しまれよ」
これで、デビュタントのお披露目は終わりですね。近くにいました執事らしき方と簡単に打合せをいたします。いよいよ大ホールへ移動です。同じように呼ばれます。
ただ、陛下と話したことがすでに伝わっていて、大ホールへ入ったあとはざわつきもあり、心配されました。社交界恐ろしいところです。あとはざわつき、これは私のデビュタントドレスもですね。
ええ。見てください。レースが主流の中に一点、フワリフワリと揺れるこの繊細な生地、下に向けて透明度が上がるように軽い素材を求めただけあります。
全員のデビュタントのお披露目が終わり、国王陛下と王妃が最後に大ホールへ到着です。
「今宵、22名の新しき紳士淑女がデビューとなった。すでに頭角を現しているものもいるようだ。期待している。新しき旅立ちへの祝杯を!」
オーケストラが流れ始めます。ファーストダンスの始まりです。
あのローズピンクに黄色のラインのドレスの令嬢とキラキラとにかく1番派手な紳士服の方が王太子と伯爵令嬢ですね。ちょっとあのピンクはふっくら見えて、柔らかいイメージが強すぎるようです。どちらかというと顔立ちは目が一重でどちらかというとかわいいよりきれいを目指したほうがより一層素敵にみえると感じます。さらにプラチナブロンドの髪でぼやけた感じに仕上がっているようです。
私もお父様と踊ります。
「緊張したかい?」
「緊張はなかったのですが、少し焦りました。それより、ダンスはあまり得意ではないのです。今のほうが緊張しております。」
お父様の美貌は相変わらずだし、私のデビュタントドレスはもちろん注目が集まります。今はレースが主流ですからね。
「大丈夫だよ。よく踊れてる。ステラも喜んでいるよ。」
踊る度に揺れるアクセサリーに母も傍にいるよと、喜んでいると感じるのは気の所為でしょうか。
ファーストダンスの後は、それぞれの懇意のところへ挨拶です。今日は珍しく、宰相がきていらっしゃるそうで、みなさん挙って挨拶へ向かっております。って、あれ?先程の執事っぽい方ですね。宰相だったのですね。驚きです。
私は先ずお祖母様です。モーアの発注の話をしましたら、お祖母様が扇で隠しながら微笑みます。
「社交界のトップに呼び出されるのよ。覚悟なさい。よく似合っているわ。ようこそ、社交界へ。」
と脅しかお褒めか、励ましの言葉をいただきました。
さぁ。王妃さまのデザインをかんがえましょう!
「エリーナは宰相に目をつけられたわね。」
静かにつぶやくお祖母様の声は聞こえませんでした。
マイラ、あんまり出てこないので、覚えなくていいです。




