5-5 蒼の試練とは
蒼の試練というよりここは巨大なアスレティックのようだ。数多くの遊技道具が所狭しと置かれている。
「ここは…何のための施設なんだ」
「システィマティックサービスがお答えします。ここは二人が競い合い、勝者を一人決めるために設けられた場所でございます」
「勝者?どうすれば勝者になれる?」
「基本的なルールを説明いたします、現在地はここになります。そして目的は貴方と同じように胸に付けている花を奪う事。各遊戯にはそれぞれのルールがあり、それを破ることは許されません。直接奪い取っても構いませんが、遊技に勝利し続けることで奪い取ることもできます。もう一度説明を聞きますか?」
対戦相手は、誰なんだろう。相手も僕と同じならその姿から元の人物を想定することは難しそうだ。何だかよく分からないが、この勝負に勝つしかなさそうだ。負ければ、恐らく僕に待っているのは廃棄なのだから。
僕はできるだけ得意なゲーム場で相手を待ち伏せすることにした。無暗に攻めていっても返り討ちに遭うだけだ。
「君が僕の対戦者?なら早速だけど遊技を始めようか」
「ここで僕は負けない」
「ふふっ、君がどれだけやれるか見せてもらうのが、私に与えられた使命。君が負けたくないという強い意志を持っているのならそれも叶うかもしれない。ここはゲームの強さではなく、君の意思の強さを測る場所」
「(意思を?もしそうだとするのなら、ゲームの種類でこの場所を選んだのは間違いだったのかもしれない)」
「この場所は卓上ゲームサッカーのフィールドのようですね。では試合を開始しましょう。是非巧みな攻めを見せてください」
僕はあらゆるゲームで挑戦したが、嘲笑うように全てのゲームにおいて卓越した技量を見せられる。
「だから言ったでしょう?ここではゲームに勝つことでは貴方の心意気を見せてもらうと。勝とうとしても無駄なことです。それともどうしても勝ちたい理由でも?」
「このゲームはルールがある。ルールがある以上、勝つこともできる筈」
「次に選んだのはボードゲームですか…。確かに最善手を選べば貴方が勝つこともできるかもしれません。ですが、常に最善手を選べますか?」
「(このゲームなら知っている…最善手を選び続ければ引き分けになるゲームだ)ぐっ、このままでは何もできずに負けてしまう」
どうやら、この儀式はゲームに勝たせる気はないらしい。もう僕に残された手段は唯一つ、相手の胸の花を直接奪いに行くしかない。
「貴方がそう来ることは想定済みです。一緒に踊りましょう?」
「残念だが、貴方の掌の上で踊る予定はない。僕が欲しいのは勝利。貴方と踊る楽しい時間ではないんだ」
「あら、それは残念。てっきり私との試合を楽しんでくれているものとばかり。では仕方ありません。貴方を叩きのめしてこの茶番も終わりにしましょう。さあ最後の遊技場所を選びなさい。そこでどちらにせよ決着です」
最後はサバゲーを選択。競っている隙に花を奪い取ってしまえば僕の勝ち。この競技は自分の急所に球を命中させられれば負けとなる。
「何とかして、近づかなければ僕に勝機はない」
相手は確実にこちらの急所を狙ってきていた。魔法障壁で急所を覆う事は禁じられている。つまりこのゲームの最中胸にさしてある花も普段の試合の時と違い無防備であるという事だ。
「貴方が近づいてくることは予想していました。私に近づいて、無事でいられるとでも?容赦なく急所を撃ち抜かせてもらいます」
連続して僕の急所が撃ち抜かれる。それらをすべて無視して、風の如く我武者羅に相手の花を奪取しに向かう。僕のすべての的が撃ち抜かれればゲームは終了しこのフィールドから強制排除されてしまう。そうなればもう二度と勝ち目はない!
「(頼む、届いてくれ!)取った!?」
僕が花を取るのと相手が僕の胸の急所を撃ち抜くのはほぼ同時。僕は相手を押し倒しながら、勝負の決着のサイレンを聞いた。このゲームは僕の負けらしい。ゲームフィールは解除され、僕の胸にある花弁は全て相手に取られてしまう。
「どうやら、僕の負けの様だね」
「いいえ、そうではありません。最後、貴方は確かに私の花を奪い取った。余りにゲームに勝つことだけに集中しすぎました。この勝負は、貴方の勝ちです。微差ですが」
「本当?じゃあ、この儀式も終わりか…。良いゲームをありがとう。全く勝てなかったけどそれなりに楽しめたよ。また対戦できるかな?」
「私はこの儀式の中だけに存在する存在なのです、残念ですがもう会うことはないでしょう。機械族がまだ世の中に残っていれば話は別ですが…絶滅したと聞きます」
「そうか。じゃあ、さよならだな」
僕は対戦相手と握手をして別れることにした。そして気が付けば元居た場所へと帰って来ていた。
「儀式は無事成功だ!本日はめでたい。皆の者、祝いの準備だ!」
「「「「「うおおおおおおおお」」」」」
やんややんやの大騒ぎとなり到底くつろげるような状況ではなくなった。僕はこっそりとその場所から抜け出し、隣の部屋へと忍び込む。
「ここなら静かで落ち着けそうだ。暫くここにい隠れさせてもらおう」
「それはできない相談でございます。ここの執事を務めておりますクリャイと申します。以後お見知りおきを」
「出来る事ならパーティが終わるまでここでそっとしておいて欲しいんだけど」
「パーティに参加しないのは構いません。私が参りましたのは別の用件でございます。お嬢様が貴方の事をお呼びです。どうぞ一緒に来て下さいませ」
お嬢様の申し出となれば断るわけにはいかない。風が吹き去るように、僕の命何て一瞬で消え去ってしまうだろう。
「漸く来たわね…。まずは試練を乗り越えたことを祝おう」
「これで僕は生きて帰ることができるんですよね?」
「ええ、貴方には二つの選択肢がある。よく考えて答えなさい。このままここに留まるか、それとも出ていくか」
「そんなの出ていくに決まっています。僕は元々個々の人間でもないし歓迎されている訳でもないのだから」
「そうでしょうね…姉が貴方に渡したいものがあるそうです。受け取ってさっさとこの海の聖域から出ていきなさい」
「これを持っていれば、いつでもこの海の聖域に入ることができるでしょう。それから、これを。水龍の魔石が必要なのでしょう?持っていきなさい。また会いに来てくださいね」
僕にとっては何ともない別れだったが、彼女にとってはそうでもないらしく少しの涙がうかがえた。少し気の毒に感じるけれど、それに構っている程僕は慈悲深くはない。早く領地に帰って不貞寝したい。
「ジュディス、じゃあ帰ろうか」
「そうだな、こんな危険な所は早いところ出ていくに限る。それでどうやってこの深海から外に出るんだ?」
「この鱗を身に着けていると導いてくれるらしい。どうやらこの鱗の近くでは水の中でも呼吸ができるようになるみたい。このまま歩いて陸地まで行こう。(大した手間ではないし)」
二人は水龍の鱗の効果で無事陸地まで歩いて出ることができた。だが体はずぶ濡れだ。早いところ乾かさないと風邪をひいてしまいそうだ。
「【温風】で服を乾かしたら、次の目的地に向かうよ次は亀の核だ。今度は海の中じゃなくて、海岸沿いに行けば見つかるらしい。ここから目と鼻の先の場所に棲息しているみたい」
「そうか…すこしおやつを頂いてもいいだろうか?小腹が空いてしまった。服を乾かすついでに休憩としよう」
ポッシェからテーブルとイスを取り出し僕達は海岸沿いの浜辺で優雅にお茶会を楽しんだ。
(´・ω・`)




