5-6 大亀討伐?
「どうして僕を攻撃してこないんだ?君は僕を倒すことが目的なんだろう?」
「不完全な状態の貴殿を倒したところで何ら名誉にもならない。完全に腕が修復してから、挑ませてもらう。それが騎士道という物だ」
「そ、そうなの…僕には良く理解できないけれど…それなら今回の素材収集している間は安心なのか…不意打ちしてくるものだと」
「確かに最初はそのつもりだったのだが…気が変わった。貴殿には後に正式に挑ませてもらう。それで今までの蟠りや鬱憤を払拭させてもらう」
「じゃあ、そろそろ出発しようか。陸地での移動だから、少し時間が掛かりそうだけど」
「そう言う事なら私が召喚獣を用意しよう。来い【召喚[シルバーホース]】」
魔法陣から銀馬が現れる。如何にも乙女しか乗せてくれそうにないが、僕も乗ることができるのだろうか…?
僕の予想通り、馬には乗れないようだ。僕は余っている鉄で荷台を作り、シルバーホースに曳いてもらう事になった。
海岸沿いにゆっくり進んでいくと、数多くの魔獣が辺りに棲息しているのを感じる。街道はあるが、人通りはない。時間帯が悪いのかもしれない。
閑散とした道を進んで数時間、目的地に到着したようだ。
「目的地とは漁村の事なのか?このままだと村に入ることになるが。それとも村を通り過ぎたほうがいいのか」
「どうだろう…ちょっと待って。地図を確認するから。えっと、方向はこっちで合ってる。漁村の更に向こう」
「人の住んでいる場所に求める亀核があるとは到底思えないのだが…」
「ま、村に入って聞いてみようよ。そうすればあるかないかはっきりするよ!」
「ちょっと待て!村に入るのならせめてもう少しましな服装をするんだ。このままでは怪しまれる」
「そ、そうかなー。わかったよ。じゃあ、一応貴族の衣装を着るよ。ジュディスもそれらしい恰好した方がいいんじゃない?」
「私はこのままで構わない。慣れてない服装で戦えないようでは困るからな」
「ふーん、ま僕は服装にとやかく言う気はないから。じゃあ、村に入って亀核の事を聞こう」
村には形ばかりの検問所が用意されていたけど、ジュディスは立派な冒険者のライセンスを持っている為問題なく通れた。僕は残念ながらその随行者ということになってしまったけれど。
「こういう時、やっぱり情報収集と言えば酒場でしょう」
「酒場、何かに行くより普通にギルドに行く方がいいだろうが…」
小さな漁村なので、僕達が酒場に向かうとそこはギルドと併用している建物だった。
「じゃあ、亀核について情報を聞いてくるよ!その間ジュディスはどうする?」
「私は先に海辺へ行って様子を見てくる。現地が近いんだ。何も人から聞く必要はない」
「じゃあ、後で通信を飛ばすから通信石を持って行って?僕も情報を聞いたら海辺にすぐ向かうよ」
通信石とは片方から話しかけると向こうの通信石を持っている人物に話しかけることのできる石の事だ。高価なものだと、腕輪を使って数多くの人と会話できるディスプレイ型も開発されている。
僕は酒場に入り、ジュディスは海へと向かう。
酒場の中は当然のことながら酒臭かったが、潮風が吹き込んできていて程よく心地よい。
「しゃいませー冒険者の方ですかー?」
「うん、そうなんだ。亀核について詳しく話を聞きたいんだけど」
「タートルコア祭りが行われるほど、この漁村はそれで有名な場所なのよ。当然それを知ってここまで来たのでしょう?でも残念ね、今は丁度シーズンオフなのよ」
「シーズンオフ?それっとどういう…」
そんな話をしている途中、先ほど別れたジュディスから連絡が入った。何だか慌ててすぐ来てくれと言われた。何かあったのだろうか?僕はギルド関係者の人との会話を御座なりにして、海の方へと向かうことにした。百聞は一見に如かずってこと。
「見てくれ、これではここに住んでいる亀は駄目になってしまう」
そこにある風景は、異常な魔獣の大反乱とそれを討伐しようとしている海の漢たちであった。
「何、これ…。少し暑苦しいね。亀が生まれてこないっていうのはどういう事?」
「魔獣達にも縄張りがあり相性があり強さの序列という物が存在するというのは知っているだろうか?ここに住む魔獣が大亀だったするのなら、今大反乱しているこの魔獣が縄張りを主張している限りここに現れることはないというのは確かなことだ」
「そうなの…それは困ったなぁ…流石ギルドに所属しているだけのことはあるね!どうしてそんなこと知ってるの?」
「前にギルドで偶然調べたことがあるだけだ(言えない…美容のために必要な魔獣の生態を調べていたなんて…騎士らしくある私の柄じゃない)」
「ここにはいないのは分かったけれど、それなら大亀は何処に行っちゃたのかな?近くを探せば見つかるかな?」
「何処かにはいるのだろうな…いっそのこと海に入って探してみるか?偶然私達の元にはそれを可能にするアイテムがあることだ」
「また水に濡れるのはごめんかな…」
「その程度のことを厭うようではよい冒険者にはなれないぞ。時には毒々しい沼地の中を平気で通らなければならないこともあるのだから。だが、水に濡れたくないというのなら防水服を着ればよいだけ。冒険者に必要な事前準備ができていれば問題ない」
「そっか、なら諦めてずぶ濡れになるしかないのかな…」
僕は水龍の鱗を弄びながら、海に向かう。
「フルさん、ここが海というなら出て来てくれないかな…(レヲラさんでも構わないけど)」
物事はそう都合よくは起こらないものだが、今の状況に限っては例外だともいえる。ここが海で水龍の鱗がありフルに注視されていたという状況が、その言葉を真実に変える位の実行力を持っていた。
「呼びましたか?」
「わぁ、びっくりした!急に海の中から現れるなんて、水龍はみんなそういう能力持ってるの?」
「いいえ、蒼の儀式によって私は貴方の位置をなとなく確認できるだけです。水龍であってもそこまでの能力はありません。私が渡した物の中に、変わった石があったでしょう」
「てっきり魔石とばかり思っていたが、確かに一つだけ色の違う石が混ざっていたぞ!」
「その石は通信石と同じような使い方ができるのです。つまり、声ではなく届けるのは物質になりますが、原理は同じ写像です」
「シャゾウ?…それが何かは今のところ置いておいて、来てくれてありがとう。困っていたんだ」
「容易い事です。それで、どのようなことでお困りに?」
「亀核が欲しいんだけど、ここにいたはずの大亀がどこか違う場所に行ってしまったんだ。何処にいるのか知らないかな」
「私はこの地に詳しくはありませんが、ここが海というのなら簡単な方法があります。それは大亀さんをここに呼び寄せてしまえばよろしいのです」
「呼び寄せる?そんなことができるの?」
「ええ、これでも私は水龍なのですよ」
僕達人間には聞こえないような高音ボイスが辺りに響き渡る。その声と共に集まってくる魚たちが伝令を伝え大亀さんたちの居場所を突き止める。それを近くにいたイルカさんが超音波で結論を伝える。
「分かりました、では大亀さんたちを呼びに行ってまいります。少々お待ちくださいませ」
呼び寄せるというのは、声で呼び寄せるのではなく呼び寄せる(物理)のことだったのか…と僕は少しの間驚愕せざるを得なかった。
「なんだ、歌で呼ぶのではないのか…残念だ」
ジュディスも同じことを思ったのか、意外そうに佇んでいる。僕達は少しの間、海辺で待たされることになったのだ…。
(´・ω・`)




