5-1 トールとの会話
「どうして盗み何かを働いたのか教えてもらってもいいかな?」
「どうして?どうしてだって?そんなの決まってる、俺達は盗むことでしか生きていけないのさ。世の中のはみ出し者の集まりなんだ」
「君は少なくともそうは見えないが…なんでも仲間を逃す為だけに身を挺したらしいな?」
「…確かにそうだがそれがどうしたっていうんだ?仲間も守ることの何が悪いんだ?」
「悪いだなんてそんなことは言ってない。寧ろ素晴らしいことだ。そんなこと滅多にできない…残念なことに盗賊たちは完全に逃がしてしまったが、その頭である君を捉えることができたんだ。彼らの事は忘れることにしよう。無罪放免だ。その代わり、君にはそれ相応の罰を受けてもらわなければならない。分かるね?」
「ああ、その覚悟はある。罰ならいくらでも受けよう」
「殊勝なことだな…よし、じゃあ今日から君は盗賊団の頭ではなく小物店クリアージの警備責任者となってもらう」
「何だ、それは?俺達が盗みに入った店の警備をしろっていうのか?変わった提案だな」
「やってくれるの?それとも拒否する?」
「俺に残されている選択肢は少ない…その提案、受けさせてもらう。子分たちが無罪放免となるのなら…警備をする位容易い事だ」
トールは次の日から警備員として働くことになった。特徴的な青い着物を着て働く姿は、来る婦人達から密かな人気を得た。
「この腕、何とかならないかな?元通り動かせるようになりたいんだけど」
「残念だけど、そう言う事は教会に行きな!どうして武器屋に相談する気になるんだ?あんたの気が知れないね!!」
「教会に行ってもなくなった腕を治してくれるようには見えない。そんな事より、元の腕のような物を取り付けて欲しんだ。できれば自らの意思で自由に動くような何かを」
「あんた、正気か?今まで、武器屋をやって来てそんな変な注文を受けたのは初めてだ。いろんな意味で驚かせてくれる。正直に言って、ちょっとやそっとでは作れない代物だってこと、分かってる?」
「う、うん。何となく?」
「はぁ、あんたには何を言っても無駄ね…貴方の腕を作るためには少なくとも4つの物が必要だわ。まず火竜の鱗、これは強度を高める為に更に魔法の伝導率を高めるために必要な素材だわ。次に必要なのが水龍の魔石や胆石、これは火竜の鱗を加工するために必要な素材よ。3つ目は亀核、これは魔力を火竜の鱗に通すために必要な素材よ。最後に必要なものは鉄土竜の爪、これは貴方の腕のパーツを作る時の骨格として役に立ってもらうわ。貴方にこれらの素材を集められるかしら?」
「うーん、どうだろう。ちょっとギルドに行って聞いてくるよ。上手く集められたらまた持ってくるから、その時は宜しく」
「まったく、非常識なんだから…。今あたなたが何を言ったのか理解しているんでしょうか?」
火竜の鱗を求めて総合ギルド本部へとやって来た。昼の内はここでギルド長が働いている。受付のお姉さんに僕が来たことを告げると面会の許可が出た。これも貴族だけの特権だろうか。
「それで今回は何の用なんだ?協力できそうな事なら手を貸そう」
「それは物凄く嬉しいけど、一体どういう風の吹き回しなの?本来なら僕に協力することはいけないことなんでしょう?」
「確かにそういう面もある。特に何も考えがある訳ではないが、ギルドのルールを曲げる位の価値のある事だと分かった…そういう事だな。ここで話されたことは外には漏れないから安心するといい」
「そ、そうですか…。では質問させてもらいます。ここに書かれた4つの素材の場所を教えてください。僕が可能ならば採取してきたいんです」
「うーん、こいつらはどれも大物だな。ギルドでは確かにこれらの魔獣がどこにいるのか把握しているぞ。でも討伐しに行くのなら充分な準備をしていった方がいい。少し待ってくれ、資料にある場所を書き写すから…できた、この4つの場所に魔獣達は棲息している。残念ながら気性すぎてギルドではその素材は取り扱ってないんだ」
「元からギルドにあるとは期待していませんから…それよりも助かりました。ある場所さえ分かれば後は取って来るだけですから難ない作業です」
「ははっ、こいつは将来大物になりそうだな。じゃあ、君が大物を捕獲して帰って来るのを祈っているよ。用件はそれだけかい?」
「ええ、そうです。本日はありがとうございました。また来ます」
「いつでもおいで。ギルドは君のことを歓迎している」
僕は得られた情報をもとに、どうやって素材を収集するのか思考を巡らせることになった。こういう時一番役に立つのがティミィの映写機能だ。
「それじゃあ地図上に正確な4つの地点の位置を表示してくれるかな?」
「4つの地点を地図上に描画します」
「どう巡れば最短で行って帰って来れるか、経路を計算して表示できるかな?」
「その程度の候となら容易です。赤線の道順に沿って旅をすればそれほど時間を掛けずに帰ってくることができるでしょう」
「僕は数週間留守にするけれど、その間この領地の事は任せてもいいかな?ティミィがいれば安心して素材集めに行けそうだよ」
「片腕を失っていて問題はありませんか?もし何か戦闘行為に支障があるようならば、私も付いてきますが」
「ううん、そう言う事はないかな…この素材が集まれば、片腕を作ってもらえるんだから、張り切らざるを得ないよ」
「念のためこれをお持ちなさって下さい、この領地の紋章が刻まれた短剣です。何かの役に立つでしょう」
「ありがと、キトにも挨拶したらすぐ出かけるよ」
僕は訓練場で自主トレをしている三人を発見する。
「相変わらず仲がいいね、同じ時代から来たのは分かるけど、別にこの時代の人と仲良くしててもいいんだよ?」
「やぁ、戦いに来たのかい?態々こんなところまで来るなんて」
「ううん、シャシャと戦う為に来たのではなくてこれから素材集めの旅に出かけるんだよ」
そう言って別れを告げようとすると、三人の後ろから鬼気迫る表情で刀を構えながら一人の女性が現れる。
「ちょっと待った、その素材集めとやらに私も同行させて貰おう!忘れたとは言わせない、私の事を」
「ちょっとちょっと、危ないからその武器は仕舞って。君は…確か僕がここに連れてきたジュディスだったっけ…?どうして…?僕は逃げる訳でもないし、ここにまた戻って来るのに」
「貴殿が沼の悪魔ではないという事は理解したつもりだ。だから既に討伐するつもりはない。だが、それに準ずる邪悪なるものなのは間違いがない。私が隙を見て貴殿を討伐させてもらう」
「そ、そんな危険な人を連れていく訳にはいかないよ…」
「良いではありませんか、敵だけではなく味方にも注意をそらさず戦うことこそ真の戦場です」
「そ、そうだな、私のその意見には賛成だ」
「ティミィもキトもそんなこと言うなんて…分かったよ連れていけばいいんでしょ…ところでジュディスは空を飛べないよね?」
「ああ、残念ながら私が習得しているのはこの『鮫剣』の使い方だけだ」
「なら抵抗せずにじっとしててね。わかった?じゃあ、皆行ってくるよ。領地のことはみんなに任せたから!!」
「御武運を」
僕は翼をはためかせ、空へと舞い上がった。空はどんな人でも受け入れてくれる。特に決まった規則もなく自由だ。だから、僕は空を飛んでいる時だけは真に自由になれる。
ただ何時もとは違い、今日の飛空はジュディスの喚声が鳴り響いていた。だが僕は耳に栓をして全て聞こえないようにして空を飛び続けるのだった…。
(´・ω・`)




