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タークスの日常  作者: @kohe75438489
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4-7 帰還

 船から顔を出し、辺りの様子を見渡す。完全に方角を見失ってしまった。陸地はどちらの方角だろうか?


「私達は大陸の西側を海岸沿いに沿って進んでいた。だから東側に進めば海岸に辿り着くでしょう」

「東ってどっち?」

「太陽の方角からしてあちらですね」

「よし、じゃあ大陸に向けて出発だ!」


 魔獣達を蹴散らかしながら、潜水艦を大陸へと進める。程なくして大陸が見えてきた。港町だ。


「よし、誰にも気づかれないよう近くに上陸しよう」


 『魔法障壁』を展開させ船を移動させて陸地へと上がる。


「くぅ、一週間ぶりの陸地だ!やっほー。陸地は落ち着くなぁ…。早く船から降りてくださーい」

「クレマン港ですね…私達はあの街に行けば何とかなりそうです。停泊予定の場所です、あそこまで一緒に行きませんか?」

「そうなんだ…じゃあ観光名所にも詳しい?」

「まぁそれなりに知ってますよ。何度も往復してますので」

「じゃあ、碧翡翠領への戻り方も分かるかな?まぁ、あの山に向かって進めば、迷う事はなさそうだけど」

「いいですよ。案内して差し上げます。船が壊れてしまっては、暫く仕事もなさそうですから。クリアとハルトも一緒に行きませんか」

「そうね…船が壊れてしまっては、路頭に迷いそうだし…ナナミが行くのなら私もそれに同行させて貰おうかしら」

「俺は船がどうなっていたとしてもこの街に残って船舶関係の仕事を続けるよ。これでもこの仕事に誇りがある」


 ダン領主達とは街でお別れすることに。潜水艦に無理矢理乗ってきた二人ともここの酒場でお別れすることになった。


「では私達も行きましょうか」

「行くってどこに?」

「観光ですよ…この街には独特の良さがあることを紹介して差し上げます」


 最初に訪れた店はクレマンのマスコット人形クックレーが沢山売られている。海洋魚をモチーフにしたかわいらしい人形だ。


「わぁ、このぬいぐるみ可愛い!」

「仕方ないなぁ…プレゼントだ」

「ありがとうございます。大事にしますね」


 現金が本当になくなった。近くの雑貨屋に行って、アルマジロ皮のバッグを何個か売り込み十数枚の金貨を手に入れる。これで暫くは旅の路銀を気にしなくていいかな。


「ナナミばかりずるいですよ。私にも何かプレゼントしてください!」

「僕はお土産製造機じゃないんだ!今日はもう眠るよ。明日、早くにここを出発して碧翡翠領へ向かうんだから」


 僕は二人のお荷物を連れて、帰還することになった。僕はできるだけ早く帰りたいので、当然のように魔法障壁で抱きかかえて自領まで戻ることになる。


「貴方っていったい何者なの?ふつうは君みたいに素早く移動出来たりできないよ。それだけの足があれば、運送業者として大成功するんじゃない?荷物だって幾らでも運べるんでしょ」

「そんなこと考えたこともなかったです…僕はこじんまりと暮らしてきたから…」

「領主の息子なら、何不自由なく暮らしていけるでしょう?思いつかなかったのも当然でしょ」


 どんな悪路でも何ら問題なく突き進む。あの山の山頂で起きたような妨害さえなければ、領地まで戻るのは時間さえあれば容易なことだった。


「ここはもうワッカー王国ですね。隣国ですよ。隣国」

「海の上で生活してきた私が、まさかこんな内陸部まで来るとは人生ってわからない物だねー」

「まるで人間が塵のようだ、空から見ていると特に」

「一気に帰国するつもりなんですか?一度降りましょうよ」

「そうです。トイレ休憩を要求します!」

「却下。一気に行くから…」


 僕は無秩序に、徹底的に領地目指して飛び続ける。領地では、今日も爆破魔法の訓練をしている姉の様子が見て取れた。その近くに急降下して着地する僕。


「今帰ったよ、シーチェル」

「まぁ、遅いお帰りでしたね…お帰りタークス」


 抱擁される。


「山を迂回するのに、随分時間を食っちゃった。ごめんね、一人にして」

「待たせすぎですわ」


「ここ数週間のうちに何があったのか、洗いざらい話してもらいますから」

「お客様を案内しないとだから、また後でね」


 使用人の為の一室を二人に与えて、新しい従業員だと認知させる。


「暫くはここでメイドとして雇われて。嫌なら、店を開くからそこで働く?」

「まぁ、少しくらいなら構わないですけど…店員の方が慣れていっるから気が楽です」

「激しく同意します…メイドなんて私は嫌です」

「店員としては、働いてくれるんだ?」


 メイドは充分屋敷にいるので、正直言って店員として働いてくれる方がありがたい。僕は何週間ぶりかに書斎に戻る。


「お帰りなさいませ、遅いお帰りでしたね」

「うん、あの山の向こうに行って帰って来た。紙と鉛筆を用意してくれる?旅の事を書き留めてから眠りたいから」

「ここに、既に用意できております。無事にお帰りなされたことを喜ばしく思っております」


 僕は、旅の途中に出会った魔獣達の姿を絵として紙に書き下ろしていく。


「良ければ、名前が分かる魔獣には名札を付けて置いてくれる?僕はもう疲れたよ…」


 旅の疲れが一気にやって来た。僕は椅子に座ったまま机に眠ることになった。


「お休みなさいませ」


「思い通りには、いかないものですね…キト、来ているのでしょう?姿を見せなさい」

「結局、山は通り抜けられ通行を阻むことはできなかった…けど、タークスは新しい目的を持ったようだ。問題はないみたい…僕達が関与してもしなくても彼は強く生きていける」

「私は心配です。いつか彼を繋いでいた糸が切れても問題ないように、もっと大きな目標を持たせておくことが必要です。更なる敵を用意することはできますか?」

「そのくらい簡単なことだが…どうする」

「この街を、襲わせます」

「正気か?無辜の民たちに犠牲になれと?」

「それも止むを得ない事でしょう。大の前では小は呑み込まれるのです」

「分かった…でも、直接襲わせるのは、なしだ。湧き型にする。それなら、襲われるまでに兆候があるし時間もある。対応の仕方もある」

「分かりました。了承します」

「固い言い方だな…嫌ならいいんだ。僕達は手を貸さない。自らで全てやればいいさ」

「私は、御主人の不利益になることはできません」

「悪だくみはできるのに、か?自ら手を下したくないだけじゃないのか?ずっと善意の黒幕にいられるとは思わないことだよ…きっと、いつか、ばれる。その時のことを、覚悟しておくんだね」


 闇に紛れてキトは去る。


「私のしていることはいけないことなのでしょうか…せめて、折れても立てるだけの力を持ってほしいと願う事はいけないことなのでしょうか…たとえ何人の無実な善良な市民が犠牲になったとしても、私にとって御主人こそが全、全にして真なのです」


 私は、深く眠りにつく御主人様をベッドに運び優しく顔を撫でる。


「私が黒幕ですか。いい響きです。私が自ら手を下す…そんな時が来なければいいのですが…」


 自ら嘗て手に掛けてしまった主人の事を思い出しながら、私は大きく首を振る。


「タークスは暴走したりしない…そう願います」


 私は朝が来るまで、節約モードとして待機する。

 庭ではがさりと何かがこちらを探っている音が聞こえる。どうやら、嘗て私が雇ったタークスを暗殺してもらう為の組織が調査に来ているらしい。私は、気付かないふりを貫くことにした。


「貴方達には期待していますよ。タークスに自らの未熟さを思い知らせてあげなさい。それが彼に鋼の精神を与えるのです。ですが、只で返しては私まで甘く見られてしまいます。それは、許せません。メッセージカードを持たせて帰らせましょう」


 万年筆でさらさらと文章を書き、カードを投げて相手にメッセージを伝える。愚かなコソ泥はそのカードを受け取り巣に帰っていくようだ。




















昨日は休み

以下マイペースに更新していく予定です。

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